オマス「マザーオブパールマルーン」 小豆色の復活

オマス「マザーオブパールマルーン」 小豆色の復活
オマス「マザーオブパールマルーン」 小豆色の復活

以前、老舗と言われる万年筆メーカーは黒の他に定番の色として小豆色のモデルを揃えていました。

万年筆の色のラインナップとして、黒が外せないように小豆色もまた外せない色だと思っていましたが、1990年代イタリアの新興万年筆メーカーが台頭してきて、気が付けば小豆色の万年筆がなくなっていました。

ペリカンも、最後の砦であったモンブランも、そしてこのオマスも。
そういえば、あまり売れないながらも国産の万年筆にはなぜか小豆色は残っています。ですがこれは世界的にカラフルな万年筆が増えるという流れに取り残されたままだからなのか。

黒いボディに金の金具の万年筆はあまりにも男臭く堂々とし過ぎていて、好みではないと思っている人の声はよく聞きます。
そういう男性のためにも小豆色はちょうどいい落ち着いた色だったのではないかと思います。

オマスがそういうところを狙って小豆色を復活させたのかどうかは不明ですが、「マザーオブパールマルーン」という新色を発売しました。
正確に言うと新色で、以前あった小豆色に輝きを加えた現代的なスパイスも入っています。

でも案内をいただいた時に、そうかこの色があったかと思い当たったくらいなので、小豆色の復活と言ってもそれほど外れていないと思います。
最近万年筆のカラーボディはオレンジ、真っ赤、真っ青などの非常に鮮やかな色が多く、これはデルタドルチェビータがヒットしてからの流れだと思うのですが、人知れず私は万年筆のカラフル化をドルチェビータショックと呼んでいます。

オマスはボディサイズをパラゴン、ミロードと用意しています。
パラゴンは大きなペン先と直径16mmの極太で大きなボディのオーバーサイズの万年筆です。
ボディが大きいので、首軸を金属にすることでバランスを取り、大型万年筆にありがちな後ろ重心を解決しています。
ミロードは直径14mmの標準サイズの万年筆で、ペリカンM800、モンブラン146、パーカーデュオフォールドなどとほぼ同じサイズです。
このアルテイタリアーナミロード万年筆を昨年のオマス社訪問の時にプレゼントされて使っています。

黒いボディにシルバーの金具のハイテクフィニッシュ(気持ちは分かりますがなぜハイテク?)の一番変哲のないモデルです。
このミロードハイテクにもオマスらしさが感じられ、使うのが楽しい万年筆です。
12面体のボディや特長的なリング、クリップなどにオマスらしい意匠は凝らされています。

しかし、私がいつもこだわっていて、喜びを感じるのは書いている時のフィーリング、書いている時に手に伝わる「らしさ」で、それを持っているところがとても気に入っています。

M800やデュオフォールドは、その実用性の追求から、非常にがっしりした硬い書き味を持っていて、それはそれで心地よい滑りの良さと頼もしさを感じますが、オマスには味わい深さを感じます。

テキパキと仕事をこなす感じではなく、ダラダラといつまでもその書き心地を確かめながら書いていたいような感じ。
それは同じイタリアの老舗アウロラにも感じていて、2つのブランドの共通点としてエボナイトのペン芯の存在に思い当たります。

オマスもアウロラもエボナイトのペン芯にこだわっています。
現代では主流になっているプラスチック製のペン芯の方が細かい細工が可能で、各社の研究によるノウハウを反映させることができます。
インクの違いによるインク出の差異がなく、インク選びにシビアにならなくてもいい。
使い出してすぐでもしっかりとインクが出てくれる。
ペリカン、パイロットなどのペン芯にはその良さがよく表れています。

それに対して、エボナイトのペン芯はインクが馴染むまでに2週間ほどの時間を要する。
使用するインクによって、出方がかなり違う、とプラスチック製とは正反対の特長(?)がありますが、長年使い込んだときのペン先に寄り添った馴染んだインクの出方はエボナイトならではだと思っています。

イタリアの万年筆がドルチェビータショックで、外装の美しさに注力していると思っていた中、アウロラ、そしてこのオマスの老舗は書き心地や使用感の「らしさ」も追求していたと思って嬉しくなりましたし、それらの長く使う前提の味わいには落ち着いたボディの小豆色も合っていると思います。


万年筆の書き味・1

万年筆の書き味・1
万年筆の書き味・1

万年筆の良い書き味を言い表す言葉、ヌルヌルヌラヌラ(以後ヌルヌラ)は太字の万年筆の醍醐味あるいは、太字のみの特権のように言われますが、それは細字の万年筆でも実現するものです。

ヌルヌラはペンポイントと紙の間にあるインクがクッションのような役割をすることによって起こります。
自動車教習所で習った、雨の日の高速道路で気をつけなければいけない「ハイドロプレーニング現象」のようなことがペン先に起きて、何の抵抗もないペン先の滑りが得られるのです。
太字の万年筆はペンポイントの平面が大きいので、ハイドロプレーニング現象が起こりやすく、ヌルヌラが得られます。
ペンポイントの平面をスイートスポットと言います。
ヌルヌラの抵抗のない、気持ち良い書き味で、クッキリした線を書くことができます。
スイートスポットを野球のバットに例えると、ピッチャーの球威をあまり感じずにボールを遠くまで飛ばすことができる芯にあたります。
バットの真芯でボールを捉えた感覚は本当に気持ちよく、フィーリングといいそれからもたらされる最大の効果といい、バットの芯とスイートスポットは私にとってほぼ同じものです。

話が少しくどくなりましたが、元に戻すと細字の万年筆の書き味にもヌルヌラ存在します。
それは長年使い込んでいくと使う人の角度に合ってペンポイントに平面ができ、そこにもやはりハイドロプレーニング現象が働くからです。
その平面のつき方は使う人それぞれで違っていますので、平面がある万年筆ほど違う人が書くと引っ掛かりが出たり、インク出があまり良くなかったりします。

この平面を人工的にペン先調整で作り出すことができます。
使われる方の筆記角度、ペン先の向きに合わせて平面を作ります。

使い込むこと、あるいは調整によって細字の万年筆であっても、ヌルヌラは実現するものであるということを知らない人も多く、ぜひ知っておいて頂きたいと思いました。

ペンレスト兼用万年筆ケース3本用完成

ペンレスト兼用万年筆ケース3本用完成
ペンレスト兼用万年筆ケース3本用完成

シンプルなものほど工夫が必要で、形になるまで時間がかかるものだと思いました。
出来上がりはスマートでシンプルなものだけど、その見た目とは違って、当店と製作者のカンダミサコさんの工夫が詰まった、思い入れのあるものになりました。
このペンケースが形になるまでにカンダさんに何度も試作を作ってもらい、少しずつ修正していきました。

最近ペンケースにシンプルなものがたくさん出てきました。
フラップなどがついておらず、ペンを差し入れるだけのものですが、こういったものは意外と実用性が高く、私も使ってみましたが机に置いておいてペンを取り出すときにこれほど便利なものはないと思いました。

ズボラ(標準語では面倒臭がり)な性格で時々ペンケースのフラップを開けることさえ面倒なときがあるからですが、私のようにズボラでなくても、忙しい時などフラップを開けずにペンを取り出せたら便利だと思いますので、こういったものの需要はあると思いました。

しかし、そういったペンケースは取り出しやすい反面、持ち運びの時少し不安があります。
誤ってペンケースを逆さまにしてしまった時にペンが脱落する危険性があって、そそっかしい私は何度かペンを落としてしまいました。
取り出しやすい利便性とペンの脱落を防ぐ機能を併せ持たせることができたら。
それがこのペンレスト兼用万年筆ケースの始まりでした。
ふた部分を枕のように使えるように、そして中のペンを取り出しやすいようなデザインはイメージしていましたが、実際の革でそれを実現するのは数ミリ単位での調整が必要で、試作は大変だったと思います。

使い方は、持ち運び時にはふたを閉めて万年筆の脱落防止と保護の役に立つクローズ状態。机などに置いて使っている時は、ふたを枕のようにペンの背後に入れ込んだオープン状態にしていただくと出し入れがしやすくなっています。

モンブラン146、ペリカンM800などのレギュラーサイズの万年筆を標準としていますが、モンブラン149のようなオーバーサイズの万年筆も入ります。

使い始めた時、少しピッタリとしていますが、素材であるシュランケンカーフは柔軟で中身に合ってくるようなところがありますので、使っているうちに出し入れしやすくなります。
シックな黒はお仕事などのフォーマルな時、スーツによく合うと思います。
アイリスはカジュアルな服装の時にも合うし、パッとした気分が晴れやかになる色だと思います。

出来る限りシンプルなデザインでありながら、必要な機能性を持たせたペンケースに仕上がっています。

⇒Pen and message.オリジナルペンレスト兼用万年筆ケース(3本差し)gid=2127777⇒Pen and message.オリジナルペンレスト兼用万年筆ケース(3本差し)page=3″ target=”_blank”>⇒Pen and message.オリジナルペンレスト兼用万年筆ケース(3本差し)

工房楔 コンプロット4ミニ完成

工房楔 コンプロット4ミニ完成
工房楔 コンプロット4ミニ完成

欲しいと思っていた万年筆がある程度揃ったら、次はそれらの万年筆をコーディネートして楽しんでいただきたいと思います。
ペンケースにその日の仕事をいかに楽しくできるかを考えた機能重視の組み合わせの万年筆を揃えて持ち出すのは、朝の楽しい儀式になるのではないかと思います。
コーディネートしようとしているうちに欲しい万年筆が浮かんできたりすることもあるかもしれませんが・・・。

万年筆のコーディネートを必ず楽しくしてくれるペンケースが工房楔の新作コンプロット4ミニです。

コンプロット4ミニは、従来作で大型のペンを納めることができる10本入れのコンプロット10をレギュラーサイズピッタリに縮小して、4本だけ納めるようにした携帯版とも言えるもので、美しく納めたコンプロット10は、とても魅力的だけど、書斎だけで見ているのはつまらない、携帯して持ち歩きたいと思っていた方には待望とも言えるコンプロット4ミニの完成だと思っています。

机上、あるいは自宅でのペンの保管庫的な要素が強く、その重量ゆえに持ち運びには不向きだったコンプロット10でしたが、常にインクを入れていつでも使える状態にしたものを選んで納めておいて、開いて見とれたり、どれを使うか迷ったり、楽しみを提供してくれるものでした。

でもコンプロット10はペンを10本納めることができるただの収納ケースではなく、納めたペンをより美しく見せてくれる演出的な効果もあります。
保管庫としてのコンプロット10ですが、コンプロット4ミニはコンパクトでその日使うだけのペンを収納して持ち歩く、夢の小箱のような存在だと思っています。
木目の美しい木の宝石とも言える銘木をくり貫きという最もプリミティブな方法で美しさを残して、機能を付け加える。
工房楔の作品は全てがやりすぎないように銘木を生かすように作られていますが、コンプロット10もコンプロット4ミニも工房楔の良さが最も表れている作品だと思います。

*コンプロット4ミニは、花梨、ウォールナット、楓ちぢみ杢の3種類でのラインナップで、今の所ウォールナットはご予約をいただいてから1ヶ月後のお渡しになります。

⇒コンプロットサイトページへgid=2125800″ target=”_blank”>⇒コンプロットサイトページへ