書道の文字は黒だから日本の文字は黒であるべきで、万年筆のインクも黒を使いたいという黒インクのマイブームは時折訪れます。
日本の文化や日本人とは、と考えた時に、自分は西洋の習慣である青い色で文字を書いていていいのだろうかと思ったりすることがあって、そういう時に黒インクを使いたくなってきます。
最近はペン習字教室で黒インクを使っていて、最も美しい文字を書きたいと思っている状況で使うインクなので、どうしても厳しい目で見てしまいます。
今は行書を習っているのでカチッとした楷書と違って、勢いのある所、ゆっくり書くところなど、線の強弱をつけたい。だから色は黒過ぎず濃淡が出るもの。むしろ薄くていい。
長時間キャップを開けて書いているし、書き味を考えるとインク出は渋くなくて、サラサラ出るものが良い。でも紙にはにじんで欲しくない。
以上の条件を兼ね備えたインクは非常に難しく、特にサラサラ出るインクはたいてい紙ににじみやすい。
いろいろ調べた結果、これはあくまでも私の好みですが、パーカーのブラックが私にとってベストのインクだと今のところは思っています。
当店オリジナルインク冬枯れもとても良く、堀谷先生は冬枯れを愛用して下さっていますが、私がよく使うアウロラやプラチナとの相性を考えるとパーカーの方がサラサラと出てくるような気がします。
同じように日本字にこだわり、万年筆でもとても勢いのある行書でお手紙を下さることがある狂言師の安東伸元先生はいつも墨をイメージされているのか、真っ黒に書けるインクを好まれます。
デュポン、シェーファーなども黒いですが、万年筆用インクで真っ黒性能が高いのはセーラーなのではないかと思っていますので、今度安東先生にお勧めしてみるつもりです。
アウロラもネットリとした性質の黒が際立つインクで、この辺りを好まれる方も多いようです。
黒インクでも本当に様々あり、単純に薄い・濃いだけでなく、赤みがかったもの、青みがかったもの、というふうに分けられます。
前者の代表はモンブラン、モンテグラッパ、後者はパーカー、ヤードレット、デルタなどです。
書道の墨も本当にいろんな色があって、奥の深さに驚嘆しますが、万年筆のインクも各メーカーによって様々で選択に迷うところだと思います。