万年筆に初心者用というものはありませんが、万年筆を初めて使ってみたいという人に、それほど値段の高くないものとしてお奨めするのはラミーサファリにおいてないと思っています。
理由はサファリは万年筆の楽しみ方や良い万年筆とは何かを教えてくれる存在だと思うからです。
サファリは万年筆を使う人を増やすのに一役かってくれる万年筆です。
万年筆の楽しみ方のひとつにメーカーの物作りに触れるというものがあります。
その万年筆がどのような背景で作られ、どういう人に使ってもらいたいかを考えた機能があり、どういった所に特長があるか。
もちろん使いたいと思わせるデザイン的な魅力も重要な要素です。
サファリには何にも似ていないオリジナリティがあり、ラミーの万年筆哲学だけでなく、良いプロダクツとはどのような考えで作るのかも教えてくれものです。
サファリを味わうことは、良いプロダクツとはどんな考え方で機能を盛り込むべきかを知ることにも繋がり、私たちのような万年筆を仕事にしている者も参考にできるところがたくさんあります。
サファリは学校で万年筆を使うヨーロッパの学童向けの万年筆として、1980年に作られましたので、かなり新しいデザインに見えますがすでに30年以上も継続して作り続けられています。
サファリには、メーカーが定めたコンセプトやターゲットに必要な万年筆像を見据えたコンセプトがデザインを崩すことなく、機能に盛り込まれています。
学生の鞄のストラップやポケットに留めても壊れない頑丈なクリップ、キャップを外して机に置いても転がらない面のあるボディ、インク残量が一目で分かるボディに空けられた窓、くびれた部分に指を添わせて持つだけでペン先の書きやすい所が紙に当たるようになっているグリップ、コンバーターを使う時にコンバーターが外れないように、ノブを回転させた時に一緒に回って空回りしないように固定する切り込みなど、サファリのそれぞれの機能からは万年筆を使い始めたばかりの子供たちへの優しさが感じられます。
万年筆を使い始めたばかりの人でなくても、サファリを愛用している人はたくさんいます。
それはこの万年筆を好きで使っているという雰囲気さえ持っています。
デザインや機能にオリジナリティがあって何の真似もしていないので、値段が安い万年筆ですが貧しいところが全く感じられないのが、その理由かもしれません。
ペン先はステンレスですが、しっかりと調整されたサファリは滑らかで愛用に足る書き味を持っています。
値段は安いですがとても優れたプロダクツであるラミーサファリ。万年筆でなくてもこんなに優れたプロダクツにはなかなか出会えないかもしれません。
*画像のカタログは1986年のものです