独立して仕事をしようとしている人にとって、その人の成功を願って応援してくれる人の存在は必要不可欠です。
人脈を紹介してくれたり、商品を供給してくれたり、あるいは作っているものを扱ってくれたり。
私もそういう人に恵まれて、多岐に渡る分野の人を紹介してもらったし、商品を供給してもらいました。
その応援があったから店を始めることができたし、今もこうして続けていられる。店を始めて5年が経って、応援したいと思う人に出会うことが何度かありました。
それほど力にはなれていなけれど、心から応援したいと思い、ともに良くなっていけたらという想いで一緒に仕事をさせていただいています。
イル・クアドリフォリオの久内さん夫妻にも私は心から彼らの成功を祈って応援したいと僭越ながら思っています。
イル・クアドリフォリオの作品にももちろん魅力がありますが、いつも皆を楽しい気分にさせてくれる明るさ、人柄の良さに周りにいる人たちは楽しい気分にさせられる。
彼らは私が持っていないものを持っていて、とてもまぶしく感じるし、彼らが大好きな仕事でずっと生きていけたらと願っています。
それはWRITING LAB.を一緒に企画している駒村さんも同じ気持ちで、お二人に出会った時、何か一緒にやりたいと思ってWRITING LAB.として話し合って、アイデアを出し合ってできたのがシガーケース型ペンケースSOLOでした。
最近はあまり見なくなりましたが、以前は海外のメーカー数社からも発売されていたシガーケース型のペンケース。でもそれらとは少し雰囲気の違うものが出来上がりました。
幸いSOLOは多くの人に使っていただいていて、イル・クアドリフォリオの名前が万年筆の世界でも知られるきっかけになったと思います。
私も自分にとってとっておきのペンであるオリジナル万年筆「Cigar」を入れて、仕事の日も休みの日もサニーゴールド手帳のネタ帳とル・ボナー3本差しペンケースとともに、ル・ボナーのポーチピッコロに入れて持ち歩いています。
SOLOはCigarには少し大きく、ペリカンM1000やモンブラン149などがちょうど良く収まるサイズですが、そういうことはあまり関係なく、これだけのペンケースに合う万年筆はCigarしかない、あるいはこれだけの万年筆に合うペンケースはSOLOだけだと思っています。
最近、私の場合は書くということは欲望に近いのではないかと考えるようになりました。
書くことが好きという感じではなく、書くことは快感を得られるものだから、書きたくなる。
書くことは文化的な行為だからそれが好きな自分は文化的な人間かもしれないと少し思っていましたが、それは大きな間違いで、自分の書くという行為はとても本能的なものかもしれない。
そして、本能的であるからその行為に上手いも下手もなく、自分にとっての快感をひたすら追い求めて書き続ける。
書くという行為が人間の根源的な欲によるものであったなら、万年筆はその欲による行為をさらに気持ちよくしてくれる道具だということになり、それそれで辻褄が合っていると思いませんか?
欲望による行為である書くということをより気持ち良くしてくれるのが万年筆なら、ペンケースなどその関連するものはそれを演出する、よりムードを高めてくれるものに他ならない。
ただペンを収納するだけの革製の入れ物というだけでは寂しすぎる。
フィレンツェ伝統の絞り技法によるペンケースSOLOは1本しかペンを入れることができない贅沢な仕様で、日本の製品の中では異色な、欲望を美しく演出してくれる種類のものにひとつだと思っています。
もちろんSOLOに続くものも作っていかなければなりませんが、SOLOをベースとした遊びを久内さんたちは始めていて、1月12日、13日のイベントで発表してくれるようです。
2012年のペン語りはこれで最後になります。今年1年も私が欲のままに書いた文章をお読みいただいて、心から感謝しています。
来年は、もう少し読みやすく、良いものにしていきたいと思っておりますので、何卒よろしくお願いいたします。
良いお年をお迎えください。