大和出版印刷 芸工大ノート

大和出版印刷 芸工大ノート
大和出版印刷 芸工大ノート

大和出版印刷の武部社長がル・ボナーの松本さんの感化にあって、万年筆の魅力に目覚めた時、店の開店準備中だった私は松本さんに連れられて大和出版印刷さんを訪れました。
武部社長はものすごい勢いで万年筆の魅力にとりつかれていて、大和出版印刷さんが万年筆をより楽しく使うためのノートの開発を始めた時と、当店がオープンしたのが同じ時期だったのは、当店としてはとても恵まれたことでした。
オープンしたばかりの店に、そこでしか買うことができないノートがあるということは、その店にとって非常に大きなセールスポイントだったのです。

大和出版印刷さんがまず製品として世に送り出したのが上製本ノートでした。

職人さんによる卓越した技術による製本と厳選した紙を使用した、当時の大和出版印刷がノートに対して出来得る限りの最高を目指した存在感のあるもので、5250円という価格もインパクトのあるものでした。
相当な決意がないとこのノートを使い始めることができないけれど、今でも着実に売れている大和出版印刷のスタンダードだと思っています。

武部社長と出会う5年前以前に、大和出版印刷の川崎さんが私が当時勤めていた店を訪れてくれていました。

ル・ボナーの松本さんに話を聞いて来てくださったのですが、その時はお互い若く、何かが動き出すものでありませんでした。
でも、お客様の少ないひとつのフロアーにいた私から見ると、松本さんや川崎さんは開かれた外界の華やかな世界の住人に見えて眩しかった。

店を始める前にホームページの制作をお願いしたのが川崎さんで、その後実務に長けた多田さんにバトンタッチしますが、川崎さんが私を訪ねてくれなかったら当店のホームページも完成していなかったと思います。

昨年末から大和出版印刷さんはかなり実験的な試みを始めていて、デザイナー菅原仁氏を迎えて「白罫線ノートCIRO」や「端を折ってチェックするメモ帳オリッシィ」などの製品を作り出しています。
それらの大和出版印刷さんの担当者が川崎さんで、活発に活動されています。

川崎さんはご自身の母校である神戸芸術工科大学の学生さんたちからデザインを募集してノートを製作するという企画も立ち上げました。
16種類の表紙のノートたちは文具メーカーではあまりない自由な感覚でデザインされていて、当店も年明けから店頭に出していますが、女性のお客様の反応がとても良く、当店にとっても、大和出版印刷さんにとっても、とても良いことだと思っています。

私も原稿書きで使っている万年筆での書き味を追究したリスシオ紙を使用したノートをベースに、綴じ糸を表紙と合わせた色糸にして、装いの全く違うものになっています。

芸大生の皆さんがデザインしたという話題性やデザインのユニークさは感じていましたが、このノートがお客様方に支持されるかどうか、正直私には分かりませんでした。

でもいつものことですが、お客様方の方が私よりもずっと先に行っていて、このノートの良さを認めてくれた。
神戸芸工大の学生さんや川崎さんにも一本取られたと思ったノートをご紹介したいと思いました。

⇒リスシオ紙を使った紙製品一覧cbid=2557537⇒リスシオ紙を使った紙製品一覧csid=3″ target=”_blank”>⇒リスシオ紙を使った紙製品一覧

シガーケース型ペンケースSOLO新作

シガーケース型ペンケースSOLO新作
シガーケース型ペンケースSOLO新作

1本差しのペンケースを突き詰めれば専用ケースということになるのだと思います。
それがペンを1本だけ収納するということであり、ペンケースがただペンを収納する入れ物ではなく、万年筆で書くということ、持つということを演出するものに昇華したひとつの形なのではないかと思いました。

シガーケース型ペンケースSOLOにアウロラオプティマやドルチェビータ専用のものを作ってはどうかというアイデアは、IL Quadrifoglio(イル・クアドリフォリオ)の久内淳史さんがSOLOでもっと遊んだらどうなるかという、WRITING LAB.の駒村さんからのお題で思い付いたアイデアでした。

久内さんは当店と関わる前からアウロラの万年筆を持っていたし、最近もデルタの美しい万年筆トスカーナを手に入れていて、実は万年筆にとても興味を持っています。
私のようにいつも万年筆で何かを書くことを考えているタイプとは違い、万年筆をいかにかっこよく演出できるかを考えるのに最適な人なのかもしれないと、イタリアでの修行で、靴作りの技術やセンスだけでなくイタリア人のライフスタイルも身に着けた彼を見ながら思います。

きっと万年筆を1本だけ入れるペンケースとはどういうことかを考えて、自分ならこういうものが欲しいというものを考えてくれたのだと思います。

アウロラの万年筆のプロポーションが私も以前からとても好きでした。
太さはペリカンM800やモンブラン146などのレギュラーサイズの万年筆くらいあるけれど、丈が短めになっている。
実際の寸法よりも太く見えるキャップを閉じた姿。
そういったプロポーションはモノとしてとても魅力があります。

愛らしいキャップを閉じた状態のアウロラですが、そのボディの短さのせいで、ペンケースに入れると全体が沈んでしまい、取り出しにくいと思った経験のある人はたくさんいると思いますし、球形のクリップが意外と膨らんだ突起のようになっていることにも思い当たる人は多いと思います。

それらのアウロラの特長的なサイズを収めることができるペンケースSOLOが、先日のイベントでお披露目となりました。

アウロラのマーブル模様を模したパティーヌ技法による色つけは、中に入っている万年筆を予感させるもので、面白いアイデアだと思いますし、出っ張ったクリップはクリップを通す切り込みで対応しています。

アウロラは昨年末、名作ダンテをカラーリングを変えて復刻させたダンテインフェルノや、久々に新色として使いされたオプティマブラックパールなど話題性もあり、面白いコラボレーションだと思いました。

同時にクリップの出っ張りが邪魔でSOLOに入らなかったドルチェ・ビータミディアム用や、パイソンやリザード革を使ったシリーズなどが生まれました。
シガーケース型ペンケースSOLOがシンプルな単色のモデルからイル・クアドリフォリオの特長がやセンスが表れたものへと発展し始めています。

*画像は久内氏製作のオーダー靴と、同革で作られたSOLO「タピーロ」です
⇒SOLOはこちらから

~古いデザインを現代のメカニズムで~ ペリカンM101Nリザード

~古いデザインを現代のメカニズムで~ ペリカンM101Nリザード
~古いデザインを現代のメカニズムで~ ペリカンM101Nリザード

様々なご意見、ご見解があると思いますが、ビンテージの万年筆には魅力を感じるけれど、安心して使うことができないと、どうしても思ってしまいます。

それは万年筆でなくても、例えばトヨタ2000GTがデザインそのままで、現代のエンジンなどのメカニズムで復刻したらとても人気が出ると思うように、古いデザインにはとても魅力を感じるけれど、それを道具として使いたいと思った時には、中身は新しい方が安心して使うことができるということになります。

そんなお客様が多くおられたのだと思いますし、ペリカン自身もその需要を確信したのでしょう、2000年頃の100シリーズの限定復刻からペリカンは自社の往年のモデルを限定品として復刻しています。
2000年に復刻された1931ホワイトゴールドには心奪われて手に入れて使っていますが、最もよく使う万年筆のひとつです。

ビンテージの万年筆の魅力に柔らかい書き味というものがありますが、復刻された1931ホワイトゴールドは硬めのペン先がついています。
これを嫌って、オリジナルのペン先と交換したりしている人もいますが、私はこの硬さの中にも素材の良さからくる味のようなものを感じて、書き味にも魅了されています。

古いデザインをそのままに現代のメカニズムで復刻する限定品のシリーズは、2003年の1931トレド以降途絶えていましたが、2011年にM101Nトータスシェルブラウンが発売されました。
コンパクトで紳士の小品的趣きのある100シリーズに対して、101N シリーズは1937年に100をさらに使いやすくするために大型化されたもので、さすがに握りやすく、軽く使いやすい万年筆だと思いました。

定番のスーベレーンとは違うペン先のフィーリングも柔らかめで、軽い101N のボディと合っています。

トータスシェルブラウンに続いて、今年M101Nリザードが発売されます。
キャップ、ボディ全面のリザード(トカゲ)柄は独特の存在感があります。
海外ではコブラ柄と言われることもあり、巳年にこの柄の万年筆が発売されるのは、偶然なのか、それとも蒔絵など東洋の美に理解のあるペリカンが意図して発売を今年に合わせたのか。

万年筆店店主の割には所有する万年筆が20本というのはあまり多い方ではないと思います。
それは私がコレクションとして、万年筆を所有しているのではなく、手紙やノート、手帳書き、原稿書きなどの用途があって、実用のものとして全てを使っているからなのだと自分で思っています。

万年筆を使い始めて20年くらい経って、気持ちが動いたもの、この万年筆ならどんなものが書けるのだろう。きっと自分の仕事を良くしてくれるだろうというように、新たな万年筆への好奇心が芽生えたものだけを手に入れてきたのが20本でした。
そんな20本の中にペリカンの万年筆が4本あります。
数ある万年筆メーカーの中で、これは比率的に多いと思いますが、それはペリカンが限定品であってもコレクションのためのものではなく、実用心を刺激する万年筆をいつも作っているからなのだと思います。

ペリカンは3月にM800茶縞を発売します。こちらのご予約は、メール penandmessage@goo.jpにてお申込みください。