揃いを嗜む

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その分野では必ずその店を利用するという馴染の店を持つ人は幸せだと思います。
個人的には当店が万年筆を使う人みんなにとってそうなれたらと思いますが。
馴染みの店と同じように、この物なら必ずこの銘柄のこの商品と決まっている人も幸せだと思います。
それだけ自分の好みや持って生まれた体型などにピッタリ合うものに出会えたのですから。

私にもこの店で買うこの商品と決めているものがいくつかあって、そのひとつがシャツです。
一通りさ迷って落ち着いたのが、ブルックスブラザーズのオックスフォードシャツでした。インクが飛んでも目立たないジーンブルー色、そしてとても丈夫な生地が気に入っています。
別に西宮のその店で買う必要はなく、世界中で同じものを買うことができるのだけど、できた縁を大切にしたいと思うので行けば知ってくれているスタッフの人が必ずいるその店に行きます。

私にとってはピッタリ合ったシャツと同じくらいそれは大切に思えることなのです。
1週間毎日着ることができるように7枚は常備したいと思っています。
まだ1足しか持ってなく、揃えていないけれど、靴ではパラブーツのウイリアムがピッタリと足に合いとても気持ちいい履き心地。
天候を気にせずに履くことができるのも、自分相応なところです。
ウイリアムはこげ茶があるので、茶と黒があれば完璧だと思います。

ですがこうやって自分に合っていると思ったら同じものばかり欲しくなる気持ちは男性特有のものなのか、妻には理解されません。
シャツが毎日同じなら、「ずっと同じ服着ていると思われるやん」とのこと。

万年筆にもそういうことがあると思います。
私もそうですが、ペリカンM800が手に合うという人は多いかもしれません。
M800をインクの色に合わせて色違いで4色揃える。
手帳用にはブルーブラックのインクを入れて青縞のEF。ノート書き用はグリーンのインクで緑縞のF。手紙用は黒インクで黒軸のM。デモンストレーターやブルーオブルー、茶縞などの限定品がたまに発売されますので、そういうものに遊び用のカラーインクを入れてBにするなど。

気に入った同じ万年筆ばかり4本も持っているのはとても幸せな気分になると思います。
他の揃いの提案としては、アウロラ4部作ということも可能です。
オプティマのカラーバリエーションブラックパール、ブルー、グリーン、バーガンディと揃えることも可能ですし、次回オレンジが発売されるということになっているマーレリグリア、ティレニアと続いたイタリアの海シリーズ4部作を揃えることも楽しい。

今後発売していく当店オリジナル企画「こしらえ」も字幅違い、ボディの素材違いで揃えてもらえます。
これが万年筆を使う以上の嗜むということなのかな?と思っています。
揃いの万年筆を嗜むのに、工房楔のコンプロット4ミニ以上に相応しいものを他の知りません。
蓋を開けると4本の万年筆の姿全部を見ることができる。
外装の銘木も使い込み、磨き込むと艶などの味が出てくるものばかりです。

コンプロット4ミニにペリカンM800を4本入れて持ち歩く。日頃は隠しているけれど、分かってくれそうな人が現れるとおもむろに取り出して、フタを開ける。
これが大人の遊び心なのではないかと思っています。

*画像は当店スタッフの私物です(コンプロット4楓・M450・M600ピアッツアナボーナ・M600グランプラス・M800)

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技術継承されたパイロットのペン先バリエーション

技術継承されたパイロットのペン先バリエーション
技術継承されたパイロットのペン先バリエーション

パイロットのカスタムヘリテイジ912、カスタム742、カスタム743には他社にはない非常に多くのバリエーションが存在し、自分に合ったもの、好みに合うものを選ぶことができます。
私はこのパイロットのペン先バリエーションの多さにパイロットの技術を伝承する力を見ています。

万年筆が筆記具の中心的な役割をはたし、多くの人が使っていた時代には様々な需要が存在し、それに応えて様々な仕様のものが作られていました。
パイロットのペン先のバリエーションも昭和の時代の前半、戦前には確立されていたと言うと驚かれる方も多いと思います。
セーラーの長刀研ぎペン先もセーラー独自のものではなく、万年筆のペン先の研ぎ方としてユーザーや職人の間では知られたもので、万年筆興隆期にあった研ぎ方を現代に復刻させたものでした。
昔を知る長原宣義という名人を介して現代によみがえらせた、これもひとつの技術伝承の形だと思います。

パイロットは会社に保管されている貴重な資料の存在により、豊富なペン先バリエーションの復活がかなったのではないかと想像しています。
ボールペンが主流になって万年筆が廃れた後、また万年筆が見直された時にこういった資料が役に立って、誰も受け継いでいなかったはずの技術を再現できたのではないでしょうか。
しかしほとんどの人にとっては、バリエーションが多すぎて選ぶのが難しいのではないかと思いますので、ご案内させていただきたいと思います。
*通常の字幅EFからBBまでは、ここで説明すると長くなってしまいますので割愛させていただきます。

BBより太いペン先C(コース)というものがあります。
これは大きなイリジュウムの球をつけて、球の中心に筆記面をつける研ぎ方、ペン先の形です。縦横同じ太さの極太線を書くことができるのと、調整によってさらに太い線を書けるようにしたものです。
イリジュウムが最も大きいので万年筆の寿命が長いことも特長で、大切に使うと何世代も受け継ぐこともできるかもしれません。

MS(ミュージック)は縦線が太く、横線が細く書くことができるので、とても面白い文字を書くことができる、書いていて楽しいペン先です。
幅の広いペン先なので、イリジュウムの隅までインクが行き渡るように、切り割りが2本切ってある外観的な特長です。
ミュージックがどれくらい使いやすいかで、そのメーカーの技術力が分かるのではないかと思います。パイロットのものは滑らかに、違和感なく使うことができる優れたミュージックペン先だと言えます。
楽譜を書く人は右利きの場合、ペン先を90度親指側にひねって縦線を細く、横線を太く書くように使います。

PO(ポスティング)は万年筆全盛期、帳簿を書くために作られたペン先です。
極細のペン先を下にお辞儀させることで、ペン先が開きにくくして、インクの出が筆圧の影響を受けて増減しないように、安定して細い線を書くことができるようになっています。
帳簿はもちろん、手帳に細かい文字を書き込むのにとても適したペン先だと思います。

WA(ウェーバリー)はポスティングの逆で、ペン先を上に反らせることで、ペン先が開きやすく、柔らかい書き味にしています。SMなどソフトペン先は柔らか過ぎて、気持ち良く書くには扱いが難しいですが、WAはペン先の厚みなどは変わらないので安心感のある柔らかさが特長です。
パイロットの中字のペン先は柔らかく、書き味が良いですが、さらに気持ち良く書くことができる快感の書き味を持っています。

SU(スタブ)はミュージックの少しマイルドなものだと思っていただくといいと思います。
ミュージックほど太くないので、普通のノート書きにも使うことができます。
横線が細いので、意外と小さな文字を書くことができます。

以上、簡単でしたが、パイロットカスタムヘリテイジ912、パイロットカスタム742、743の難解なペン先バリエーションを読み解く参考にしていただければと思います。

⇒Pen and message.オリジナル銘木軸「こしらえ」cbid=2557546⇒Pen and message.オリジナル銘木軸「こしらえ」csid=1″ target=”_blank”>⇒Pen and message.オリジナル銘木軸「こしらえ」
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万年筆銘木軸「こしらえ」

万年筆銘木軸「こしらえ」
万年筆銘木軸「こしらえ」

もし本当にそうだったとしたら私は何度も斬られているかもしれないけれど・・・万年筆は私たちにとって、刀であって欲しいと真剣に思っています。
少なくとも私にとっては自分の精神を象徴するものであり、生活していくためのものであり、長く携えるものだと思っています。

万年筆を刀だと考えると、ペン先は一番大事な刀身で、それが貧弱なものだと長く使うのに値しないかもしれない。
とても書きやすいと思えて、自分の想いを気持ち良く紙に伝えてくれるペン先に出会うことができればそんな幸せなことはないし、それを持っていればそれは宝物だと思います。

パイロットの2万円クラスの万年筆のペン先は実用において完璧で宝物になり得るものだと思っています。
実用範囲内を逸脱することのない柔軟性と良い書き味を永続的に保つ硬いペンポイント。
充分なインク出を保つ、精密な設計と耐久性を持つペン芯。
そんなペン先=刀身は、それに見合った気持ちにさせるボディ=拵(こしらえ)に収めたいと思います。
パイロットカスタムヘリテイジ912やカスタム742の純正のボディは、バランスや握りやすさも考慮されていて実用には充分足りるものですが、そのペン先の性能から考えると若干味わいに欠け、アンバランスに感じてしまいます。
そういった当店の意向から工房楔の永田氏がそのペン先に見合った拵=ボディを当店オリジナルとして作ってくれました。

使われる素材はその時々にある最高のコンディションのものを使っていきたいと思っていますのでどんどん変わっていきますが、初回としてブラックウッド、ケンポナシ、チューリップウッド、マースルバーチで作ってみました。
ケンポナシは工房楔も初めて筆記具に使う材ですが、伝統工芸の指物では古くから使われる素材で、使い込むと飴色に変化するエージングを楽しむことができます。日本の木ということも拵の演出に合っている。

日本の木はあまり派手な木目を持たないので、工房楔の永田さんは余程のものでない限り使いませんが、ケンポナシのこの個体は杢が出ていて、かなりの良材だということで今回採用することになりました。
チューリップウッドも油分を多く含むのか、使い込むとピカピカの艶を持つようになりますし、滑らかな木肌が美しく、手触りが気持ちいいブラックウッドも同様です。
マースルバーチもエージングが期待できる明るい色目の木で、複雑な模様が個性的で見ているだけで飽きません。

個人的にはアウロラオプティマと88のペン先が同じなので、好みが変わったり、気分によって付け替えて楽しんでいました。
それと同じようにパイロットのペン先を使い込んでボディだけを変えていくことができればいいと思いました。
皆様も大切な刀身に見合った拵に付け替えてみてはいかがでしょうか。

⇒Pen and message.オリジナルTOPへcbid=2557105⇒Pen and message.オリジナルTOPへcsid=7″ target=”_blank”>⇒Pen and message.オリジナルTOPへ

~使いたいと思わせる存在~ ファーバーカステルクラシックコレクション

~使いたいと思わせる存在~ ファーバーカステルクラシックコレクション
~使いたいと思わせる存在~ ファーバーカステルクラシックコレクション

私には何人かの先生と言える人がいて、その方々のおかげで自分の仕事を良くしてくることができたし、本道から反れずにいられたと思っています。
いい歳と言える歳なので少しは若い人の人生や仕事が良くなるような助言を語れるような人間になりたいと思いますが、先生たちの前に私の人生哲学など出る幕はなく、いまだに教えを受けるばかりの立場にいるのは、もしかしたら幸せなことなのかもしれません。

電話での先生の言葉によって私の中にかすかにあったものに裏付けが加えられることもありました。
でもまだ課題として積んだままにしていることもあって、まだまだ教えを受ける立場であることを自覚しています。
息子と写真を撮った時に特に感じることだけど、自分が老けたことを認めざるを得ない。
齢相応と言えばそうなのかもしれないけれど、その自分を見てこれは誰だろうと思うことがあります。
それだけ自分は若いつもりでいても外見からはそれなりに見えている。自覚と姿とのギャップは齢とともに開いていきます。
いつまでも若いつもりでいてはだめで、自分の外見に合った中身になっていたいと思います。

話を戻すと万年筆には様々なタイプのものがあって、その価値はペン先の柔らかさだけではないというのは、自分の中でくすぶっていたものでした。
やはり姿形が美しいもの、存在感のあるものを最上に考えたいと思えるようになったのは、万年筆だけでなく、様々なものに興味が飛ぶ性質の結果のなのかもしれませんし、様々な美しいものの形を教えてもらえたからなのかもしれません。

ファーバーカステルクラシックコレクションは私にとって間違いなく、美を体現している万年筆で、多くの人が同じように思っておられると想像できます。
扱いが難しくてもいいから持っていたいものと言うと語弊があるけれど、バランスが難しくてどのように持ったらいいのか分からない、キャップをつけるべきなのかどうか、などと戸惑うことが多いですが、デザインがとても良いと思うので何としてでも使いたいと思える。

私もクラシックコレクションエボニーを万年筆とボールペンのセットで使っています。
筆記具というせいぜい長さ150㎜、直径15㎜以内の小さな限られたスペースで、他とは似ていない特長を出しながら、美しいと思わせるということは本当に難しいことだと思いますが、そういったことにとても興味があります。
ファーバーカステルクラシックコレクションの造形は筆記具という枠の中でオリジナリティと美しさが高い次元で実現されています。
細身のボディとキャップの特長的な形によるシルエットの美しさ、スプリングを仕込んで布地を傷めないように配慮した無垢材によるクリップと無駄な装飾のなさ。
そして自然の素材によるボディの艶と色合い、触感の良さなど。

このデザインで、ファーバーカステルクラシックコレクションは筆記具の代表的な逸品と言えるのだと思っています。
自分が良いと思えるものは、他の人にも使ってもらいたい。
そしてこの万年筆のデザインの良さと使いこなしについて語り合いたいと思います。

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