このペン語りの中で数回に一度、初めて万年筆を使う人に向けてお伝えしていきたいと思います。
万年筆を使い慣れている方には必要のない情報ですが、身近に万年筆を使ってみたいと思われている方がいて、何か勧めたいと思っておられる方はぜひ参考にしていただきたいと思います。
そして、これから万年筆を買って使いたいと思っておられる方も参考になればと思います。
もちろん他にも良い万年筆がありますし、ご自分が使いたいというものが他にある時は、その気持ちを優先していただきたいと思います。
万年筆を初めて使ってみたいと思って当店にご来店される方は、実は皆様が想像されているよりもきっと多いと思います。
気に入った万年筆が見つかって、その万年筆をこれから使おうとされているお客様を店から送り出す時、万年筆を使われる人がこれでまた一人増えたと、私は初心を思い出します。
初めて万年筆を選ぶ時に何を基準に選べばいいかというのはよく聞かれる質問ですが、お好みのデザインで選べばいいですよ、とよく言っていました。
それももちろん間違ったことではないけれど、お好みのデザインが分らないから聞かれているということに、私たち販売員は気付くべきでした。
例えば初めてちゃんとした、そして趣味としての革靴を買おうとしている時に、それはもちろん普段の服装でも違うと思いますが、オールシーズン、晴雨関係なく履くことができる定番的なものとして、トリッカーズやパラブーツを勧めてくれる人がいたらとても感謝したと思います。
そういう靴は、その後靴が増えていってお気に入りの一番手ではなくなったとしても、履かなくなることは絶対になく、履き慣らした味をその靴は醸し出してくれて、特別な存在になる。
万年筆でもそういったものがあって、使い続けることでどの万年筆にも替え難い良い書き味を持ちますので、それを使わなくなることは避けたい。
その世界を少し知るとあまりにも定番的でオーソドックスな選択で面白くないかもしれませんが、万年筆でのトリッカーズやパラブーツを紹介したいと思います。
用途がはっきりしていて、書く機能だけを追い求めるということでしたら国産の2万円クラスの万年筆がその資源の全てがペン先に注がれていると言っても過言ではない特異な存在として、ここでは外しています。
書き味やボディのデザインなどの外見的なオリジナリティ、インクの交換なども含めた万年筆全てを楽しむことができるものをいつも使って欲しいと思っています。
インクの性質によって書き味や性能の違いがあまり出ない、優れたペン芯を持った扱いやすいものとして、やはりペリカンを初めて使う万年筆としてお勧めしてしまいます。
ペリカンはそれぞれのモデルの用途を理解していると、どれも存在価値のあるもので、後にどんな素晴らしい万年筆を手に入れたとしても使わなくなることがないと思っています。
M300、M1000はかなり趣味性に偏った特殊な存在なのでここでは外しますが、M400、M600、M800の3種類を初めて使う万年筆としてお勧めします。
他に万年筆が手に入った時にそれぞれ適した用途(胸ポケットに差して携帯するM400、机上用としてペンケースに入れて持ち歩くM800、そのどちらにも使いやすいM600)に徹して使うようにすればいい。
字幅はEF(極細)をお勧めします。
日本のメーカーのEFはかなり細く、手帳用としても細いくらいですが、海外のメーカー、特にドイツのメーカーのペン先はかなり太めなので、EFを選択してノート書きにちょうど良く使うことができます。
インク出が多く、少し太くなるけれど手帳にも使えないわけではなく、手紙や葉書などノートより大きな文字も書くことができて、用途も広いと思います。
ペリカンのこれらの万年筆は、どんなに万年筆を長く、たくさん使っている人でも愛用の1本に入っている使い続ける価値のあるもので、なるべく早く使い始めて、数年後には自分の書き癖のついた書きやすい万年筆を手にしていて欲しいと思います。
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