子供の頃から天邪鬼で、親の言うこと、特に母親の言うことの反対のことばかりしていました。
母が焦れば焦るほど私は勉強の嫌いな子供になっていきました。
そんな子供だったのに、万年筆ではいつも両親が使っていたものを思い出しますし、インクの色は二人が使っていたインク、父のパイロットブルーブラック、母のモンブランブルーブラックがいまだに万年筆のインクの色のイメージになっていて、真似するつもりはないのに、私がいつも使ってしまうインクの色はいつもブルーブラックになっています。
季節によってインクの色を変えたいとか、用途によってインクを変えたいと思うけれど、私の使い分けはいつも使う紙に対して、同じブルーブラックでインクの性質を使い分けるオイルのような使い方になってしまうのです。
私がインクの色の冒険をしないのは、絵心のなさも影響しているのではないかと思っています。
いろんな色で書きたいという欲求があまりありません。
でも様々な色のインクで書かれているノートを見るときれいだと思いますし、自分もそんな風にノートを彩りたいと思います。
もしかしたらすぐに戻ってしまうかもしれないけれど、ブルーブラック以外のカラーインクを使うようにしたいと思いました。
私のようなカラーインクとの付き合い方に、エルバンは容量が少なくてちょうどいいと思っています。
エルバンが良いと思う理由はもちろん量だけでなく、その色とストーリーのある名前のセンスがいいと思っています。
当店でもオリジナルインクを発売していますが、ストーリーとかセンスを大切にしたいと思っています。
そう言いながら、いつもブルーブラックのインクを入れて万年筆を買っていただいた方に硬い手紙を書いているペリカンの万年筆に「ビルマの琥珀」を入れてみました。
とても柔らかい発色で書いたばかりの時、少しビチャビチャした印象を受けるけれど、乾くとしっかりと発色してくれる不思議な質感。
ビチャビチャした感じは、万年筆の詰まりにくさに貢献しているように思い、どの万年筆に入れても安心して使うことができるインクという、エルバンの定評を裏付けています。
エルバンは1670年から続いているメーカーで、創業343年という、ファーバーカステルの252年を超える文具業界では老舗中の老舗で、340周年の時1670という名前のメモリアルインクを発売して大好評を博しましたが、その1670インクを復刻発売しています。
オーシャンとカーマインの2色がメモリアルインクとして発売されていました。
オーシャンはエルバンには珍しく強めの色合のブルー。カーマインはオレンジ色に近い赤色で、もちろんどちらの色も従来のトラディショナルインクにはない色になっています。
ペリカンのスタンダードインク4001はエルバンのインクと並んで定評のあるインクで、万年筆売場のほとんどが試し書き用にペリカンのロイヤルブルーを採用しているところがそれを裏付けています。
ペリカンロイヤルブルーは、しっかりと水洗いすると万年筆に残りにくいですが、万年筆に吸入させて使うと、乾きの早さが際立っていて、とても使いやすいインクです。
ペリカンのインクのボトルをゴージャスにして、よりインク出をスムーズにしたものが、エーデルシュタインインクです。
エーデルシュタインインクは、毎年限定インクを発売していて、インク・オブ・ザ・イヤー2013はアンバーです。私が色インクとして選んだエルバン「ビルマの琥珀」と同じ系統の色ですが、温かみがある色で間違いなく人気が出る色だと思っています。
なるべく色インクを楽しむようにしたいと思っていて、皆様のお手元に色インクで書かれた私からの手紙が届く日がいずれ来るかもしれません。