自分が日々書くものは、パソコン打ちしてデータにしてしまうと捨ててしまいます。
書いたものに対してもちろん愛着はあるけれど、それは今の気分、今日の考えであって、明日はそれにこだわらず違う考えに進みたいと思いますので、それらを読み返すことがありません。
何かネタがあって、それをノートに書き留めておく。そしてそれを何かの機会がある時に引っ張り出してくるようなことを何度かしようと思いましたが、書いていて楽しくなかったので、結局しなくなりました。
ノートに書き貯めておくというやり方は自分には向いていない。それよりも頭の中に置いておいて、必要な時にそのネタを拾い上げて、今の気分で紙に書く方が合っている。
原稿を書き記す紙はあくまでも下書きをするためのもので、書き残すためのものでは自分の場合はないようです。
そういう自分の仕事のやり方と、なるべく何も残さないという美学のようなものを合わせて考えると、WRITING LAB.で企画したサマーオイルメモノートほど適したメモ帳、ノートはなく(自分のためのものを発売して使っている後ろめたさは少しはありますが)ぜひ多くの人に使っていただきたいと思っています。
サーマーオイルメモノートには、切り取り線やきれいに折り返せる表紙などの便利な機能はないけれど、趣きを持っているという点では抜群だと自信を持っています。
趣きとは形で言い表すことのできない曖昧なもので、上手く言えませんがステーショナリーのほとんどが機能は完璧でも、趣きを持ち合わせているものがほとんどなのを感じていました。
分かる人には分かるし、分らない人には筆舌を尽くしても共感してもらえないものが、趣きなのかと思っています。
サマーオイルメモノートは、私がル・ボナーさんからいただいた革を加工して、その辺にある紙に穴を空けて綴じていて使っていたのを駒村氏が見つけて、商品化することになったものです。
自分としては完璧なメモ帳で、これを使い出してから他のメモ帳を使いたいと思うことがなくなりましたが、他の人が良いと思ってくれるとは思っていませんでした。
今まで、自分が良いと思うものを企画してきましたが、これだけは難しいのではないかと思っていました。そのためWRITING LAB.で商品化することになったときは、嬉しかったけれど前述しました通り後ろめたかったのです。
でも販売を始めて2年近くが経ち、賛同してくれる人が多くおられることが分かりました。皆さんご自分が使うメモ帳に趣きのようなものを求めていたのだと思い、とても嬉しく思っています。
機能を追求することも素晴らしいことだけど、形のない趣きのようなものを私たちは追究していきたいと思っています。