私は若い頃、一日を振り返る日記を書くという行為が後ろ向きなことのように思っていましたが、それは書いた事が無かった私の勘違いでした。
日記を書くということは、その時の自分の行動を記録するだけでなく、自分の考えを練り固める役に立つのではないかと思っています。
例えば同じテーマについて考えたことを日記に繰り返し書いていくと何かしらの解決の糸口のようなものが見えてきて、自分の中でストンと落ちるような答えが見つかることがあることは私も経験したことがあります。
やはり繰り返し書くということは何らかの効果をもたらすことなのだと思います。
毎日書く日記を読み返して振り返ることは過去の自分と向き合うことで、それは自分自身に教えられることもあるので、たくさんの本をひたすら読むことも勉強に違いないけれど、書き残すということも同じくらいか、それ以上の勉強だと思います。
なかなか出ないことの答えは、外にあるのではなく、自分の中にあるということも結構あるのだと思います。
過去の日記をわざわざ読み返さなくても、昨年の自分、あるいは一昨年の同日に自分が書いたものを書きながら読み返すことができるのが、連用日記です。
きっとかなり以前からあるものですが、私は最も進んだ日記帳の形式だと思っています。
連用日記の良いところは少しネガティブかもしれないけれど、一日の書く欄が小さいので、続けなければというプレッシャーが小さくなる所かもしれません。
当店のお客様で3年ないし5年、10年の連用日記を継続して書かれている方は多く、そんな方々を私は尊敬しています。
連用日記を始めるのはその年数が長くなればなるほどプレッシャーが強くなることも理解しているけれど、ぜひ私も始めたいと思っています。
日記帳にどんなインクで書くのかはその人の自由ですが、ブルーブラックなど少し落ち着いた感じの色で日記帳の最初のページをスタートさせたい。
私がブルーブラックのインクを使うのはその色だけでなく、ある効果を期待して使うことが多いのです。
冬以外の季節はあまり気にならないけれど、冬になるとインク出が多くなったり、ボタ落ちしそうになる万年筆が結構あります。そういう場合は万年筆のインクをペリカンのブルーブラックに入れ替えます。
以前はインク出を抑える効果のあるブルーブラックのインクは何社かありましたが、今ではペリカンとプラチナだけになってしまいました。
春先に最近インクもれするようになった、という相談を受けることが多いですが、それは冬の方が外気との温度差があって、手で握って書いているうちにインクタンク内の空気が膨張して、インクを押し出そうとする力が、他の季節よりも強く働くためです。
ちなみに手の熱を伝えやすいのは、金属やプラスチックのボディで、伝わりにくいのはエボナイトや木のボディのペンになりますので、冬は特にそれを中心に選ぶと快適に日記を続けることができると思います。
一日の終わりに日記を書く。それは楽しみに充分なり得ることなのではないかと思っています。ぜひ始めてみて下さい。