月3回、定休日に書道教室に通っています。
教室は板宿にある積水書道会で、妻と通える書道教室を探していた時に、インターネット上に情報が少ないこの業界において、ホームページを開設していた数少ない教室のうちのひとつでした。
自作されたというホームページから、窪田三奎先生の人柄も伝わってきたし、時流を読んでホームページで情報を発信しているという姿勢も、他の書道の先生と違っていて、この先生から習いたいと二人の意見が合い、通うようになって半年が経ちました。
最初、自分の仕事については話していなかったけれど、先生と話しているうちに、自分が万年筆を仕事にしていることを言わなければならなくなりました。
教室では毛筆を習っているけれど、宿題でペン習字の宿題が出て、次回添削してもらうということをしていて、万年筆での硬筆習字の話になることも多い。
今まで満足して使える万年筆に出会ったことがないと先生が言われるので、試筆できるものを数本用意して、その中から好みに合うものを選んでもらいました。
様々なものを試していただいた中で、先生はパイロットカスタム743<中細>を選ばれました。
フォルカンや細字軟などの柔らかめが選ばれると思っていたので少し意外でしたが、ペン先調整に関しても私には意外なお申し付けがありました。
カスタム743<中細>の縦線の太さは先生のご使用に合うようですが、横線を細くして欲しいと言われました。
縦線が太く、横線が細いスタブ形状のペン先はアルファベットや横書きの文字に向いていて、縦書きの日本字や行書などには向かないと思っていましたので、先生の指示に少し驚きました。
でも今練習している毛筆の楷書も縦線が太く、横線が細くなっていることが多いし、漢字には「壽」のように横線がやたらと多い文字が結構あって、それらの文字をすっきりと書きたいということでした。
パイロットカスタム743<中細>のペン先をスタブにしたものが、窪田三奎先生の愛用の万年筆になり、先生の硬筆書道で必ず使われるようになりました。
硬筆書道においてのカスタム743の良さは、ボディのバランス、持ち応えの他に、柔らかい書き味と、滑りの良さ、そして筆圧を加えたり、抜いたりして文字に強弱がつけられる粘り強さにあるようです。
筆圧を込めて文字を強くすることを先生はペン先を割る、と言いますが、本当にペン先が割れるまで筆圧を掛けてはいけませんが、ペン先を割ってもそれに応えてくれる柔らかさと限界の高さに貢献する粘り強さがこのペン先にあって、これだけのペン先を備えた万年筆は少ない、と私も思います。
窪田先生からのお墨付きをいただいて、カスタム743を真剣に書く人のためにもっと勧めたいと思うようになりました。