少々マニアックな話になるかもしれませんが、ルーペで美しいペンポイントの形を見るのが好きです。
ペンポイントの形で好きなもののひとつに、ペリカンが2000年代始め頃までしていた角研ぎと言われるペンポイントがあります。
きれいに四角く、切り割りを寄せ気味に仕上げられたペンポイントは、スッキリとした印象でした。
角研ぎのペンを書こうとすると、ペン先は紙に正対させないとインクが出ないし、指先の動きに鋭く反応するようになるには、書きにくいのを我慢して2年くらい使うか、自分の筆記角度に合わせて調整してもらう必要がありました。
少しややこしいペン先で、書き出しが出ないなどのクレームも多かったペン先です。今ならきちんと説明して、しっかり書けるようにしてあげられるけれど。
そういう使いにくいペン先が実は美しいというのは面白く、書きやすさとルーペで見た時の美しさはなかなか両立しないのかもしれません。
でも、私はいつも両立させたいと思っています。
ルーペで美しいペンポイントを見るのが好きだということからもお分かりだと思いますが、私が今自分の仕事の中で一番こだわりを持ってやっていて、やるべきことだと思っているのはペンを研ぐことです。
ペンを研ぐというのは、ペンポイントを削ることだけを指すのではなく、ペン先ペン芯の合せを最適化したり、ペン先の寄り加減を調整したり、ペンポイントの形を整えたりする、言わばペン先を冴えさせることの総称だと思っている。
ペン先が冴えるというのはどういうことかと言うと、ペン先が紙に触れただけで書くことが出来て、指先に敏感に反応してくれる。書き味が滑らかである。インクが出過ぎたり、少な過ぎてかすれたりしないということになります。
そんな冴えたペン先にしたいといつも思って万年筆を調整しています。
まだまだペン先調整は認知度が低いけれど、万年筆を調整することによってもっと書きやすくなるということを多くの人に知ってもらいたい。
そして、当店の研ぎは万年筆を冴えさせるものだと認知されたいと思っています。
それは私にとってロマンを追い求めることだけど、そうなっていかないと、私たちの仕事は廃れていってしまうような気がします。