万年筆との関りは、大人になってその良さを知ってから変わっていないと思っています。いまだに万年筆で書くことが楽しいし、万年筆というモノの存在が好きでいつも握っていたい。
これを仕事にしているわけなので飽きたら大変ですが、奥深い楽しみのあるものだと思っています。
それに書くことが好きなのでいつも何か書いていたい。次は何を書こうかと、書く必要に迫られていなくても、仕事を離れるとそのことばかり考えている。
自分の生き方を象徴するものとしても万年筆は在って、きっと万年筆店をしていなかったとしても、万年筆は使い続けていたと思います。
でも店をしていなかったらこんなに多くの万年筆を知ることはなかったので、きっと定番的なものを使うにとどまっていただろう。
多くの人が使う定番万年筆ももちろん良いけれど、そうじゃないものの中で良いものを伝えることも、私の役割だと思っています。
そんなひとつとして、パイロットシルバーンを紹介したいと思います。
日本の万年筆において、最近はペン先の大きなクラシックタイプが主流となっています。
シルバーンのようなペン先が首軸に接着されたタイプの万年筆は、同じパイロットのエリート、ウォーターマンカレン、他には廃番になりかけているシェーファーレガシーくらいではないかと思います。そのスペックは、万年筆としての機能にどう関係しているのかは分からないけれど、どれも万年筆の名品だと思います。
ボディエンドを極端に絞った形も、キャップの入りが深いのも、バランスの重心を中心に寄せるという実用的な理由があります。
ペン先の形からか、書いている文字が見やすく、ペンポイントも狙ったところに置きやすい。
実用的に優れた、ひとつひとつのスペックに理由のあるシルバーンですが、私は何よりも、時代に取り残されたようなクラシックな佇まいが好きで、多くの人に共感してもらいたいと思っています。
シルバーンの欠点は、ペンの格に対して使えるコンバーターの容量が小さいということです。それが嫌で、今までカートリッジしか使っていませんでしたが、最近シルバーンに容量が大きいプッシュ式のコンバーター70が普通に使えることが分かりました。
個体差によるもので、たまたま私の使っているシルバーンが使えるだけなのかもしれないし、メーカーは推奨していないので、大きな声では言えないけれど、お持ちの方は試してみて欲しいと思います。
今ペリカンのインクの良さを見直して、そればかり使っているのでその発見に救われましたが、いまだにこんな発見をして大喜びをしています。
遊び心は感じられないけれど、書く道具としての機能のみを追究した誠実さのようなものが感じられる。そんなところも時代遅れなのかもしれないけれど、パイロットシルバーン、いい万年筆だと思っています。