イタリア人の家族経営の会社の多くが、事業を拡大させることよりも仕事の質を上げることを大切にしていることを、いくつかの本を読んで知りました。
彼らはアメリカ式の均一にサービスを提供するチェーン展開のように、たくさんのモノを売ったり、作ったりすることを良いとは思わない。
提供できる数に限りがあっても今のクオリティを維持し、できればもっと良くして、自分たちが提供するサービスのファンになってくれている人にもっと喜んでもらえるものを提供したいと思っていて、そうすることが自分の仕事を長く続くものにすることにつながると信じています。
そういう考えを繰り返し読んで、自分にもその考えが染み付いたのは、直感的にイタリア人の経営の哲学に共感したからなのだと思います。
全ての日本人とイタリア人がそうではないと思うけれど、両者は似た感覚を持っているように思います。それは世界的に見てもユニークで、日本人とイタリア人だからこそ持ち得たものではないか、と思うのです。
堅実な経営をする小さなイタリアの会社が多い中で、オマスとデルタの倒産は非常に残念でな出来事でしたが、それだけイタリアの経済は日本以上に不況に喘いでいるのかもしれない。
アウロラも万年筆の会社としては小さいとは思わないけれど、世界的に見ると小さな会社で、万年筆を中心とした高級筆記具だけを作り続けています。
他の業界と同じように、ヨーロッパではメーカーを越えて部品の共用化が進んでいて、各パーツの専門業者から供給を受けることで、生産の効率化が図られています。それが今の物作りで、仕方ないことなのかもしれません。
しかしアウロラは今も自社による一貫生産にこだわっていて、全てのパーツがオリジナルで、自社で作られています。
そんな物作りをしている万年筆メーカーは日本のメーカーとアウロラだけで、非常に稀有な存在です。
特徴的な書き味の14金ペン先も使い込むと柔らかい書き味に変化していき、万年筆を使って育てることを教えてくれますし、限定品などに使われている18金ペン先は柔らかい書き味を持っていて14金を使用する定番品と差別化されています。
ほとんどのメーカーが、その優れた生産性の高さから、プラスチック製のペン芯を使用していますが、アウロラはエボナイト製のペン芯にこだわっていて、これも使い込むほどに書き味が良くなっていくのに役立っていて、アウロラの特長になっています。
アウロラは来年100周年を迎え、99周年の今年も多くの限定品を発売してきました。
最新作は、サトゥルノは、定番品の88をベースとしています。
アウロラには88とオプティマという代表的な定番モデルがあります。
88は両エンドが丸く、バランス型と言われるボディ形状をしていて、その分大きく見えます。オプティマは両エンドがカットされた平らな形状になっているベスト型で、コンパクトな印象のあるペンです。
少し前に発売された限定品オプティマ365タルタルーガはオプティマがベースとなっています。
どちらにも共通するのは、大人っぽい抑えた華やかさを持ったペンで、イタリアらしい美的感覚で作られたペンだと言えます。
真紅のマルス、明るいオレンジ色のソーレという、これらもとてもイタリアらしい強い色彩を持つ現在販売中の限定万年筆ですが、それらにもまた違ったイタリアらしさを感じます。
経営の仕方や物作りの哲学など、イタリアと日本で共通の感覚はあっても、デザインの感覚や製品はかなり違っていて、イタリア人に日本製のような安価で良質なオーソドックスな万年筆は作れないし、日本人にはイタリア製のような美しい万年筆は作れないと、多くの製品を見て思いますが、お互い持ち得ないところを持っています。
ユニークで独創的なアウロラの万年筆がイタリアの万年筆の象徴で、今のような堅実で自社の強みを生かした経営を続けてもらいたいと心から思います。
いつまでも存在し続けて、100年、200年と万年筆を作り続けてもらいたいと思っています。
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