久しぶりに、WHAL-EVERSHARPの万年筆が入荷しました。
アメリカの外出制限はかなり厳しくて、ウォール・エバーシャープ社長のシドさんも週2回しかオフィスに行くことができず、出荷までにかなり時間がかかってしまいました。
苦しい時期の発注だったけれど、当店が日本で唯一扱っているお店なので何とか手配したかった。アメリカのコロナウイルス禍は日本よりも酷い状態だと聞いているけれど、修理品のやり取り、細かい発注の調整など丁寧に応対してくれているので助かっています。
シドさんとは、言葉は違うし、メールのやり取りしかしていないけれど、ウォール・エバーシャープの万年筆を扱っていく者同士の連帯感のようなものができてきたような気がしています。
ウォール・エバーシャープの万年筆は、レギュラーサイズのシグネチャー、オーバーサイズのデコバンド、スリムなスカイラインという3つのラインナップがあります。
今回は、シグネチャーについて書きたいと思います。
ウォール・エバーシャープに興味を持たれて、使いたいと思って下さった方にまずお使いいただきたいのが、多くの方に扱いやすいサイズの「シグネチャー」です。
レギュラーサイズのボディは、M800など他のレギュラーサイズの万年筆とほぼ同じですが、軸径が少し太いので、頼もしく感じられます。
内部に金属パーツを多用しているので、重量は36gあります。ボディ重量が書き味に与える影響は大きく、軽すぎるとペン先のしなりが感じられなくなります。重量はペン先の柔らかさを引き出すひとつの要素だと言えます。
ボディに対して、ペン先が大きく見えるアンバランスさも面白く、ペン先の小さな金ペンの万年筆が多くなっている中、異色の存在だと思います。
書くときに、ペン先がフワッとペンの重さを受け止めてわずかに広がり、インクが出る。
大きくは動かないけれど、筆圧に応じて細かく動く柔らかいペン先とペン先に密着したエボナイト製のペン芯がシグネチャーの特長で、それらのこだわりの素材のペン先が生み出す優しく甘い書き味にうっとりとします。
ボディカラーも豊富で、それぞれに金と銀(ロジウム)金具が選べます。ブラックとローズのボディはエボナイト製です。エボナイトは紫外線を浴び続けるとマットな質感に変わる特性がありますが、それも革や木のように、エージングしてきたと思うと、愛着が出てきます。
モザイクの美しいカラー軸はアクリルレジン製で、さすがにそれらはエージング変化しませんのでいつまでもきれいなままで使うことがきます。
クリップや装飾、尻軸に刻印された「MADE IN USA」の文字も小さく控えめに仕上がっていて、自己主張のはっきりしていそうなアメリカの印象とは少し違う美意識が感じられます。
ペリカンM800、M1000、アウロラ88クラシック、オプティマ、ファーバーカステルクラシック、モンブラン149など一通りの万年筆を使ってきて、次をどうするかと考えている方、最初の本格的な万年筆だけど、あまり人が持っていないものを使いたいと思っている方にも、ウォール・エバーシャープシグネチャーも使っていただきたいと思っています。