以前、カンダミサコさんが新作の革製品を納品して下さった時に、「出来ましたね!」と言ったところ「出来たのではなく、作ったんです」とにこやかに注意されたことがありました。
もちろんカンダさんが苦労して作り上げてくれていることは理解しているつもりでしたが、作り手の苦労を本当に理解しているのかと思うと、全く分かっていないのだと思う。
作家さんは私たちが考えるよりずっと長く真剣に素材に向き合い、製品を作り出していて、そのひとつひとつが彼らの時間と魂と引き換えに生み出されています。私の言葉がそれを軽く見ているように聞こえたから、カンダさんが笑いながらそんなことを言ったのだと思います。
いずれにしても当店のステーショナリーが他所の店と違うものになっているのは、カンダさんをはじめとする革職人さんの存在が大きく、当店になくてはならないものになっています。
当店とカンダミサコさんとの取り組みで、その年の革を決めて、1年間はその革で様々なものを作る試みをしています。今年で4年目になり、今年の革は鮫革(シャーク)です。
昨年は、ピンクゴールドのアルランメタリックゴートレザーという女性好みの革をでしたので、趣の違うものをやってみてはどうかというカンダさんからの提案もあって、そうすることにしました。
シャークは丈夫で独特の模様があり、いつか作っていただきたいと思っていた好きな革です。
先日発売した「長寸用万年筆ケース」がシャーク最初の商品になりました。
カンダミサコさんのシステム手帳は、ベルトもペンホルダーもないとてもシンプルなデザインですが、実は特殊な構造になっていて、180度平らに開きます。このシンプルな中に使いやすい工夫がある仕様が、とても気に入っています。
バイブルサイズのシステム手帳は、特に用途を決めると使い勝手の良いサイズだと思います。横書きすると1行が短くなるので、長文を書くより箇条書きをする方が使いやすく、私は調整の記録用として使っていますし、ダイアリーとしても使いやすいと思います。
シャークは硬そうなイメージがありますが、実際は柔らかく手触りの良い革です。システム手帳に向いている革だと思いました。カンダさんがお勧めしてくれた理由が分かります。
個体差が大きく、天然素材なので模様は1つずつ違うし、同じ色でも個体によって染まり方が違ってきます。
今回は同色の革を選んで仕入れてもらって、長寸用万年筆ケースとバイブルサイズのシステム手帳にしてもらいました。
次は同色でも少し違う色の革になると思いますが、今年はシャークで引き続き他のものも作っていきたいと思っています。