このコロナ禍で、多くの万年筆メーカーが以前のように万年筆を供給できなくなっています。そんな状態でもアウロラだけが変わらずにペンを作り続け、更に新しく限定品も発売して、日本に届けてくれています。
この状況下で、アウロラだけがなぜ変わらない仕事ができているのか。
もちろんコミュニケーションを欠かさず、商品を確保し続けている日本代理店の努力は相当なものだと思いますが、アウロラが部品の多くを自社で作っていることが大きく関係していると思います。
こんな状況になる前から、アウロラは全ての部品を自社で作っています。だからこそ、発売してから何十年経ったペンでも直すことができる。そのことを誇りにしていましたが、それが現在のように世の中の動きが止まった時にも強味になりました。
自社で全てのパーツを作るということは、もしかしたら効率の悪いモノ作りの仕方で、様々なバリエーションの製品を作るのには無駄が多いのかもしれません。
イタリアの多くのモノ作り企業の在り方に、私はいつも主流のものに対する反骨心のようなものを感じています。
大きな動きやその時代に主流となっているものがあったとしても、それに流されずに自分たちの信じた道を行く。
いつの時代も正解なんてないけれど、今は特に世の中が混乱していて様々な意見があり、先の見通しが立たない状況です。
そんな世の中においては、自分たちの信じた道を行くということが正解なのだと、アウロラの姿勢から学ぶことができます。
私たちは今の状況で起っていること、戸惑ったことを、世界が元に戻った時に忘れてしまうかもしれません。しかし、それではいけないのだと思います。今感じていることを覚えておいて、それを評価できる時に声を上げなければならない。
今のアウロラの活躍を万年筆の歴史の一つとして覚えておいて、この状況が過去になった時、知らない世代に伝えたいと思っています。
アウロラが限定品の新たなシリーズをスタートさせました。
地球環境をテーマに、守らなければならない様々な自然の姿をテーマにした限定品で、第1回目のアンビエンテ・ギヤッチャイオは「氷河」です。
青み掛かった白い氷河を、この万年筆は軸の色で表現しています。
このモデルは、他のアウロラのペンよりもスターリングシルバーのパーツを多く使っているため、40グラムの重さがあります。そして18金ペン先の柔らかさが伝わりやすい、厚みを感じる豊かな書き味をしています。
首軸に氷河をイメージした線が施され、氷河をイメージしたフレグランスを纏わせたブックレットがセットされるという凝った仕掛けになっています。
これは私の持論ですが、多くの筆記具の中から万年筆を選んで使っている人は、多くの人と同じようにすることに懐疑的で、流行や大きな動きに対して反骨心のようなものを持っている。そして自分のスタイルを持っている人だと思っています。だからこそ万年筆を使うのだと思います。
アウロラはそういう人の心にピッタリと合う仕事をする万年筆メーカーだとずっと思ってきましたが、今回のコロナ禍でも、やはり私たちの心を掴む仕事の仕方をしていたと思いました。