作家さんたちのステーショナリー

出張販売の準備をする時は、自店の強みというかオリジナリティについてじっくり考えます。

小さな店なので品揃えという面ではある程度限られますが、小さい店ならではの強み、お客様のお顔が見える・声が届くということを活かして、お客様が当店に何を期待されているかは分かっているつもりです。

ペン先調整が求められていることは日々感じています。お店へのご来店の他、ペン先調整については毎日お問い合わせがあり、全国からご相談のあった万年筆が届きます。出張販売でもご依頼が多いので、当店の存在価値になっていると思っています。

他には、職人さんや作家さんのオリジナルで、あまり買えるお店がない商品を扱っていることを強みとしていきたい。これはお客様のお声というよりも当店のご提案になりますが、お客様にぜひ共感していただきたい分野です。

システム手帳リフィルメーカーの智文堂さんの商品は、当店だけが扱っているわけではありませんが、智文堂のかなじともこさんは当店のオリジナルリフィルを作り始めたことが今のお仕事のスタートになっていることもあって、深いご縁を感じています。

智文堂のシステム手帳リフィルの使い方を説明した、全頁かなじさんの美しく読みやすい手書き文字で構成されている小さな本「ZINE」や、かなじさん手作りのバインダーに収められたスターターキットなど、かなじさんのハンドメイド商品は智文堂の真骨頂で、M6サイズシステム手帳を使っている人、これから使いたいと思っている人にはぜひ見ていただきたいものです。

智文堂さんのシステム手帳リフィルを扱っていることは、今も当店の強みで自慢なので、各地の出張販売にもお持ちいたします。

このリフィルは万年筆との相性も考えて選ばれていて、インクの収まりが良く手応えのある書き味の紙です。

そしてもう一つ、私が安心して皆様にお勧めできる紙を使用したバイブルサイズのリフィルも扱い始めました。書き味がとても良く、にじみや裏抜けのほとんどない、吉川紙商事さんのノイエグレーという紙のシリーズです。

システム手帳リフィルは、横罫、方眼、ドッド方眼、無地のベーシックなラインナップです。薄いグレーの紙はブルーのインクとの相性が特に良く、美しく引き立ててくれます。印刷もきれいにできるので、自分でオリジナルリフィルを作る方にもぴったりの紙だと思います。

他に探していたのはM5サイズのシステム手帳でも使える小さなスタンプで、男性でも気兼ねなく使えるシンプルなものを探していましたが、どこにもありませんでした。

そんな時、佐野酒店という屋号で活動している佐井健太さんに相談して作っていただいたのが、手帳用項目スタンプです。

本当は120種類もの項目スタンプが存在しますが、当店のお客様に選ばれそうなものを選んで扱っています。

佐井さんはアールデコ、アールヌーボー調のクラシックなデザインを得意としていて、フレーム模様やL字型のスタンプも作られています。なかなか実際見ることが難しい、佐井さんのスタンプも出張販売に持って行きます。

万年筆の良い書き味を感じていただく以外にも、ステーショナリーの様々な楽しみ方をご提案して、それを使う方の毎日をより豊かなものにする役に立ちたいと心から思います。

⇒智文堂TOP

⇒バイブルサイズリフィル・ノイエグレー

⇒佐野酒店・レーザーワーク木製ステーショナリー

オーソドックスで素朴なデザインの万年筆~クレオスクリベントクラシック~

5月14日(土)15日(日)に590&Co.さんと共同開催する出張販売“&in横浜”  https://www.p-n-m.net/?tid=5&mode=f15 まで1か月を切りました。

ペン先調整、万年筆の調整販売をご希望の方は、こちら(当店HPの予約フォーム)から→ Pen and message. (p-n-m.net) ご予約をお願いいたします。商品のご購入などは、予約の必要はありませんので、お気軽にお立ち寄り下さい。

出張販売にお持ちする商品は、なるべく種類を多くと思っていて、オリジナル商品、革製品、木製品、システム手帳リフィル、スタンプ、インクなどの準備を進めています。

万年筆は私がお勧めしたいスタンダードなデザインのものを中心にと考えていて、特にクレオスクリベントをある程度種類を揃えて持って行くつもりです。

派手なもの、押し出しの利いたデザインのものが持てはやされる現代において、クレオスクリベントはシンプルで素朴なデザインのものが多く、それが特長的でもあります。

万年筆においてそういうものは本当に少なくなりました。

金ペン先の万年筆で素朴なものというのは本当になくて、クレオスクリベントクラシックはまさにこれだと思いました。飾り気がなく、とてもシンプルな素朴な万年筆は懐かしささえ感じさせてくれる万年筆です。

使ってみると少し長めであまり太くないボディはとてもバランスが良く、自由自在に操れる感じがし、通好みの渋い万年筆だと言えます。モンブランNo.24などの1960年代の、万年筆が実用品だった時代の万年筆に通じる雰囲気を持っていると思いました。

クラシックゴールドというモデルが金ペン先を備えたものですが、銀色の金具のクラシックロジウムはEFのみ14金ペン先仕様という変わり種です。

コストパフォーマンスも高く、1本持っていてもいいモンブラン、ペリカンなどと個性がかぶらない万年筆だと思います。

クレオスクリベントは横浜だけでなく、札幌、東京、福岡などの出張販売でも持って行く予定です。

東ドイツの慎ましやかな国民生活をイメージさせる、クレオスクリベントの今の万年筆にはない素朴で実用本位な趣も、魅力的だと思っています。

⇒クレオスクリベントTOP

サドルプルアップレザーの文庫カバー

若い頃は実用書やビジネス書など、何かのためになりそうな本ばかり読んでいました。昼食代を浮かせては本を買って、それを自分へのささやかな投資にしていた。

それらを読むことで自分の仕事が良くなると信じていたし、いずれそれらが自分の血となり肉となると思っていました。実際に仕事に対する考え方や心の持ちようなどは、本から教わったこともあると思います。

その頃からだいぶ齢をとって、今ではもっと幅広いジャンルの本を読むようになりました。小説も読むようになって、読書を今まで以上に楽しんでいます。

通勤時間は集中して本が読める大切な時間で、片道1時間弱のこの時間を楽しみにしています。電車の中でスマホで音楽を聴いたり、映画を観たりするのと同じように、読む人によって見える情景の違う「本」というエンターテイメントを楽しんでいます。

通勤で読むのは文庫本や新書が中心なので、内容や厚みに合わせていくつか持っている文庫本カバーを選んで使っています。

本が好きな人ならきっと私と同じようにブックカバーを取り替えて使うだろうと思って、厚み調整のついていない嵌めころしタイプの文庫カバーを作りました。その方がピッタリ合ったら持ち心地も良いし、見た感じもかなりスマートになります。

イメージしたのは少し厚め、2センチ程度の厚みの本がピッタリ合うようにしています。きっと皆さんのお手元にも合う本があると思いますが、身近なところで言うと新潮文庫の司馬遼太郎の「関ヶ原」などがピッタリです。

他にも例えば厚みの合う文庫サイズのノートを探してみると、本革ノートにもなります。

製作してくれた若い職人さんは、持ち心地の良さを狙ってなるべくステッチが外側を通るようにしてくれています。その方が文庫本とカバーの一体感が増しますし、細かく正確なステッチはブックカバーにより端正な趣を与えてくれています。

最近は、文庫本でも栞のついていない本があります。読み始めてしまってから困ることがあって、そういう経験から今回は栞も作っていただきました。ブッテーロの端材で作った栞は、ブックカバーの内側と同じ素材なので、統一感もあってセットしておきたくなります。

革で商品を企画すると、端材でも何か作れないかと考えます。周りにいる職人さんたちはそういう意識を持って取り組んでおられる方が殆どです。端材なので作れるものには限界があるけれど、大切な資源を無駄にすることなく使いたいと思っています。

サドルプルアップレザーは、滑らかな手触りとタフな質感を併せ持った革でとても気に入っています。実用と美しさを兼ね備えた、理想の文庫カバーができたと思っています。

⇒サドルプルアップレザー 文庫カバー

M6サイズジョッター

お客様と話している時に、メモしたいと思ってもノートや手帳を開くことが憚られます。小さなメモ帳であっても「取り出して開いて書く」という行為が相手の話を遮ってしまうような気がするし、厚いシステム手帳や大きなノートなら尚更です。

昨年11月当店に泥棒が入った次の日、予定していた旅行に半ばヤケクソで出掛けましたが、その旅先でメモジョッターの代わりになりそうなものを見つけました。それをアレンジしてペンホルダーをつけて使っていましたが、これだとお客様と話している時でも自分の精神的抵抗が少なく、とても快適に使うことができました。ジョッターという存在をもっと早く思い出すべきでした。

メモジョッターは、情報カードが使われていた時代にはよく使われていたもので、昔から微妙に違う様々な形のものが作られていましたし、私もいくつか使ってきました。

シンプルなだけに使い勝手は良く、取り出してすぐに書くことができて、薄いのでジャケットのポケットやシャツの胸ポケットに入れておくこともできる。

自分なりにアレンジしたものを半年ほど使ってみましたが、皆さんにお勧めできるものだと思いました。そこでM6手帳を作ってくれた若い職人さんに、M6リフィルと5×3カードが入り、ペンホルダーが付いたジョッターを作っていただきました。その革には、丈夫で美しい銀面を持つサドルプルアップ(チョコ)と、エージングで滑らかな手触りと美しい艶が出るブッテーロ革(ワイン)の組み合わせを選びました。

筆記面と背面がサドルプルアップレザーのものは、紙押えとペンホルダーがブッテーロ。

筆記面、背面がブッテーロのものは、紙押えとペンホルダーがサドルプルアップレザーになっています。

M6用紙と5×3情報カードでは、M6の方が少しだけ幅広ですが、共用で使えるようになっています。

ジョッターの使いやすさのポイントは、紙のセットのしやすさと挟んだ紙の外れにくさだと思っていて、それを満たしたものを職人さんが形にしてくれました。今までこんなに紙がセットしやすいジョッターに出会ったことがありません。

ペンホルダーの一部が紙押えも兼ねていて、これがこのジョッターオリジナルのアイデアになっています。シンプルでとても使いやすいものになりました。

写真で目立つように撮りましたが、革を3段重ねたコバの部分も気に入っています。

私はジョッターに挟んだ紙にその日のメモをいくつも書き込んでおいて、それを家に帰ってから整理してM6システム手帳に転記しています。

厚めのM6用紙だと12枚程度が予備の紙を収納できるスペースに入るので、出先でメモを使い切ってしまう心配もないと思います。

人それぞれメモの使い方があると思いますが、ジョッターは薄くて邪魔にならないという点、表紙のないシンプルな構造であるという点において、様々な使い方に対応する究極のメモ帳としてステーショナリーの定番的な存在だと思っています。

ジョッターはステーショナリーの定番ではあってもマイナーな存在で、今まで仕様にこだわって、良い素材を使ったものは少なかったと思います。当店も5年ほど前にノートカバーの付属品としてしか作っておらず、復活させたかったステーショナリーのひとつでした。

このジョッターのペンホルダーに収まるペンは細めのものをイメージしました。あまり太いペンだとかさ張ってしまって、ジョッターの使いやすさを阻害してしまいます。

イメージしたのは、ファーバーカステルクラシックのボールペン、ペンシルや時計作家ラマシオンの吉村さんがハンドメイドで作っているgate811のボールペン、あるいは鉛筆など9.5mmほどのペンがピッタリ合います。

昔から使われていたけれど、最近あまり使われなくなったものの中にも良いものはたくさんあります。ジョッターもその一つで、こだわった良い素材で、しっかりした良い作りのものができたと思っています。

⇒M6サイズジョッター

ペンを撮る

素人ながらもホームページの写真にはこだわっています。

店を始めたばかりの時はこだわる知識も余裕もなかったし、写真の重要さに気付いていなかったのかもしれません。

必要だったから写真を撮り続けていましたが、お客様方の影響もあって徐々にこだわるようになって、カメラもレンズもそれなりのものを揃えて撮るようになりました。

プロの人に言われたことがありますが、北向きの当店には午前中とてもいい光が入ります。

その光の中で撮った写真は、たまに私の腕でもとても良い出来栄えになります。楽しくていつまでも撮っていられます。ペンを撮っていて困ることはペンを撮る時に転がるという問題です。

何か固定するものを使いたいけれど、店によくあるアクリル製のペンの枕は、木の机の上では写真が何となく白けるようでなるべく使いたくない。

そんな時あればいいなと思っていSMOKE(スモーク)の加藤さんに作ってもらったのが、ウォールナット製のペンの枕です。ご自分のペンを撮ってSNSに上げたりする人は多く、そういう人にもぜひ使ってもらいたいと思いました。

加藤さんにはペンテーブルやブロッター“パゴダ”を作っていただいているので、その端材を活用できたところにも価値があると思っています。

写真を撮らない人でも小さくてシンプルなペン置きは便利な存在で、ペンケースに入れておいて出先で使うことができます。

もうひとつ本格的なペントレイを作ってもらいました。適度な間隔を取ってペンの取りやすさも考えた3本用ペントレイです。

オーバーサイズのペン、例えばモンブラン149などならペンの3分の1くらいが溝に沈むようになっているので転がる心配がありません。

そういうものが机上にあるとペンの決まった置き場所になっていいし、3本置けるというのはとても実用的です。

スモークの加藤さんは均一的に色の揃ったウォールナットよりも、色の濃い所と薄い所のあるような変化のある素材をあえて選んで使っています。そいうものの方が面白いし、自然だからと言われます。

私も加藤さんの言葉に強く共感します。

せっかくの自然素材なので均一さをそこに求めるのではなく、そこに景色を見るのが大人の感性なのではないかと個人的には思っています。

加藤さんの木製品は、寡黙なその人以上に雄弁にいろんなことを語っているような気がします。

⇒SMOKE(スモーク)3本ペントレイ

⇒SMOKE(スモーク)ペンの枕