出張販売と綴り屋の万年筆

11月3日(金)~5(日)の3日間、福岡のトレザイール(福岡市中央区警固2-12-12警固丸ビル)で590&Co.さんとの共同出張販売「&in福岡」を開催いたします。

今年はペンショーなどのイベントの他に、出張販売を多めに企画しましたので、あちこちに出掛けたという印象があります。

それは共同出張販売の相方である590&Co.の谷本さんがいて促し合っていたこともあるし、当店スタッフ森脇が同行するようになったことも大きいと思います。

それに店として、多くのお客様がおられるところに出向いて行くというのは生存本能に近いものがあるのかもしれません。

神戸の街は自分たちのホームグラウンドと言える場所ですが、同じ場所でお客様を待っているだけではいけないと思うようになりました。

今年の出張販売で人気があるものとして、綴り屋さんの万年筆が挙げられます。

特に590&Co.さんとの共同出張販売「&(アンド)」の時は、綴り屋の鈴木さんが当店と590&Co.さんのフレンドショップ企画として、同じ素材でボールペンと万年筆を作ってくれたりしてバックアップしてくれています。

綴り屋の鈴木さんは2本と同じ万年筆を作ることはしなくて、いつもどこか仕様を変えてきます。それは軸の磨き方のこともあるし、リングの色やリズムだったりします。

でもどこか改良できるところを見つけて常に新しいことを試み、同じところにじっとしていないのは、ペン作りを楽しみながらしていることの表れで、その姿勢に共感しています。

今綴り屋の鈴木さんがいろんなパターンで作っているのは、同じ塩尻市の漆職人小坂氏との仕事です。綴り屋さんの端正な万年筆「月夜」に溜塗を施したものは、この細身の万年筆の良さを引き立てていると思います。

綴り屋さんの代表的な太軸万年筆「静謐」には小坂氏による漆塗りを施したものが当店に入荷しました。

軸に施した拭き漆は、木軸の補強、防水の効果がある他に木目を際立たせる役割もあります。

キャップトップには布着(ぬのぎせ)の技法を凝らして、これが日本古来からある丈夫で美しい姿の道具のような、民藝的な仕上がりにしていて、この万年筆に道具としての強さを与えています。

円安の影響もあって、最近海外のメーカーのペンの値段が上がり売れにくくなっています。

その流れで国産の万年筆が見直され始めていて、中でも綴り屋さんの万年筆は他にない個性のあるものを求めるお客様から求められています。

私も販売する立場ではありますが、次に綴り屋さんがどんな万年筆を納品してくれるのか楽しみにしています。

⇒綴り屋TOP

使ってみてよかったもの~A7メモカバー~

開店前に、店から買い物や散歩に出たり、旅先でちょっと出掛けたりする時にいつも使うスエード革のサブバックがあります。これは大手のT鞄のものなので、当店と全く関係がないけれど、使ってみてよかったという類のものでした。

小さく折りたためて丈夫で、見栄えも良い。

よく雑貨店などでサブバッグは売られているけれど、あまり良いと思えるものと出会ったことがありません。中には最初に使った時に破れたものもありました。

たまにですが、あまり期待していなかったけど使ってみたらすごく良かったというものに出会えると嬉しくなるし、そのメーカーの印象もとても良くなります。

私たちもこういうものを作らなければいけないと思います。

当店でもそういう隠れた名品はあって、例えばカンダミサコさんが作ってくれているシステム手帳用革下敷きやペンホルダーは評価が高く、ずっと売れ続けています。

とてもシンプルなものですが、使ってみると想像以上の使いやすさで、モノというのは本当に使ってみるまで分かりません。

カンダミサコさんの商品では、他にもA7サイズのメモカバーがあります。

コロナ前くらいからM5システム手帳が流行していたこともあって、サイズ感が似ていることからA7メモカバーは作っていませんでした。

考えてみると薄くてポケットに入れておけるA7メモカバーは、M5システム手帳とは用途が全く違っていたのかもしれません。

覚書や雑記、アイデアなどを忘れないうちに書き留めたりするのに、いつもポケットに上質な革のメモ帳が入っているととても便利だし、何となく嬉しいと思います。

カンダミサコA7メモカバーはライフノーブルノートミニ、コクヨ切り取りメモなどを入れることができますが、他にも使えるものはいくつかあるかもしれません。

このメモカバーの特長は、折り返し部の幅を広くして段差をなくすことで下敷きのような効果を持たせ、立ったままでも書きやすくしているところです。

これは、こういうカバーにはあって欲しい機能だと思います。

システム手帳もいいけれど、時系列にメモを取りたい私のような人には、A7メモカバーのシンプルなものが使いやすいのかもしれません。

久しぶりの製作でしたが、今回は当店でも人気のある革で作ってもらいました。

エレファントは独特の模様やシボがあって、使い込むとこのシボが潰れて良い風合いになります。

使っていくうちに艶が出てくるダグラスⅡ、柔らかくて手触りが良く、ビジネスシーンでも使いやすいトリヨンオルダラ。

どれも趣向の違う革をご用意して、ぜひお好みの風合いの革を見つけてお使いいただきたいと思っています。

⇒カンダミサコ A7メモカバー

プラチナセンチュリー~小さな文字を書くペン~

ふと頭に浮かんだテーマについて考えて書くことを趣味にしています。

テーマの浮かび方はいろいろあって、街を歩いていて思いつくこともあれば、本屋さんで見た本のタイトルから連想することもあります。

何かの役に立てるとか、誰かが読んでくれるアテがあるわけではないけれど、それを書くことが好きだから書いています。

そうやって書いたものが結局ホームページのブログになったり、何かの原稿になることもあるので、趣味と実益を兼ねたものになっているかもしれないけれど。

テーマが浮かんだら、ギリギリまで頭の中で考えて、書けそうになったら一気に書き始めます。

一気に書く時は万年筆を使いますが、あまり大きな紙ではなく、小さなノートやシステム手帳などに小さな字で細々と書いています。

最近、大きな文字よりも小さな文字を書く方が、自分は集中できると気付きました。

そういう場合のペン先は細字で、それも国産のものが合っているようです。

今まではもう少し大きな字を書いていたので、持っていた万年筆は国産でも外国のものでも中字のものばかりでした。

最近になって、小さな手帳に原稿を書くためにプラチナセンチュリーを使い始めました。

ペン先が硬くインクの出も少なめで、イメージしていたより細かったけれど、書きたかった小さな文字も潰れずちゃんと書けるのでとても気に入っています。

年4回発行のフリーペーパー「ふみぶみ」という冊子に、創刊から寄稿させてもらっています。

書くことは好きだからと、ご依頼いただいた時は二つ返事ですぐに引き受けました。テーマは自由、お任せで好きなことを書かせていただいていて、小さな手帳に書いた原稿がふみぶみの原稿になっています。

ふみぶみは手紙を書く人を増やしたいという志を持って始まった本で、当店にピッタリの本だと思いました。

様々な分野の人が寄稿していて、中にはものすごく文章の達者な人もいたり、旅がテーマのコーナーもあったりする、読み応えのある冊子です。

ふみぶみは2021年にフリーペーパーオブザイヤーの「伝える気持ち賞」というものを受賞するなど、少しずつ広まって、多くの人に認められるようになりました。

店頭でお客様にお渡ししながら、その存在感が増してきたことを実感しています。

書くことが好きだから、自分の書いたものが役立つのなら、と乗った小さな船が、気付いたら大きな船になっていたような感覚です。

ふみぶみに書くことで、普段当店のことを知りようのない人が当店のことを知って下さるという効果もあったりして、本当に書くことは趣味と実益を兼ねていると思います。

⇒プラチナ センチュリー#3776

ペンシル1本持って

ル・ボナーの松本さんと590&Co.の谷本さんと来年の5月にドイツニュルンベルグへの旅行を計画しています。

計画していると言っても、もう飛行機もホテルも予約したので行くことは決まっていて、3人のグループLINEで昼夜問わず話し合いをしています。

そして旅行と言っても、蚤の市や地元の文具店を回って商品を仕入れる予定なので、これは観光ではなく正真正銘のビジネストリップです。

このメンバーでは13年前にも旅行しました。ドイツ、チェコ、イタリアを10日ほどで回るとてもハードなもので、体力的にはすごくきつかったけれどとても楽しく、一生の思い出になりました。それは私だけではなく、松本さんも谷本さんも同じように思っていたようで、3人集まるといまだにその旅の話になります。

その旅から13年も経ったということが信じられません。13年間色々なことがそれぞれにあったけれど、3人とも変わらずに自分の店の仕事をしていて、その仕事の役に立つ今回の旅ができるのだから、幸せなことだと思います。

今回はニュルンベルグやその近郊の街を巡る1週間の日程で、移動が少ない分体力の消耗は少ないかもしれませんが、きっと朝早くから夜まで外を歩いているのだと思います。

ニュルンベルグは前回の旅でも2日ほど滞在しました。

ステーショナリーメーカーも多くあるステーショナリーの街で、近郊にもたくさんの文具店があります。今回の旅では、それらをじっくり巡ってきたいと思っています。

優雅なゆっくりできる旅ではないので、荷物はなるべく軽く、小さくしたい。

いつも旅には万年筆ですが、今回はペンシルを持って行こうと思っています。

普段から愛用しているペンシルはペリカンD400で、ごくシンプルなデザインのノック式のものです。バランスや握り心地が良く、考えながらポツポツと書く用途に使っています。

スケジュールを書く時も変更の可能性があるのでペンシルを使う、という風に、今ではペンシルは私の生活の中に存在するようになりました。

今回の旅では予定していませんが、ドイツ南部を旅すると考えた時にラミーのことをすぐに思い浮かべました。ラミーの本社もドイツ南部の美しい街ハイデルベルクにあります。

そのラミーが限定で、本国では定番ですが日本で発売されていなかったペンシルと複合筆記具を発売しました。

日本では海外ブランドのペンシルは売れない、ということで発売されていませんでしたが、最近ペンシルの特性が理解され、見直されて、愛用する人が増えたせいもあるかもしれません。

ペンシルは学生だけのものではありません。大人も万年筆と使い分けてペンシルで書くことを楽めると思います。

当店に入荷したラインナップは、アルスターと2000プレミエステンレス、そして黒、赤のボールペンと0.5mmペンシルを搭載したトライペンSTです。

アルスターは軽いのにしっかりとした強度もあるアルミボディで、初回リリース品のみにLAMYの消しゴムが付属します。

2000プレミエステンレスのペンシルは、40グラム超の重量感のあるステンレスの塊感のある軸で、精密な金属加工の技術が感じられる完成度の高いものになっています。重量があるので、0.7mm芯の仕様が合っているのかもしれません。

トライペンSTは今回の中心的な存在だと思っています。

古き佳き時代のラミーを思い出させるデザインのトライペンを見ると、以前のラミーのデザインは渋かったのだと思いました。

こういう良い複合ペンを探していた人は多いと思います。シンプルなデザインで仕事にも使いやすいし、まっすぐなフォルムは手帳のペンホルダーにも収めやすい。

ボールペンとペンシルが付いているので、もしかしたら旅にはこういうものが合っているのかもしれません。

ラミーが限定発売したペンシルと複合ペン、万年筆とは違うシチュエーションでの使用を考えて、書くことを楽しむためのものとしてご愛用いただけたらと思います。

⇒LAMY TOP