自然な使用感に惹かれる

590&Co.さんとの共同出張販売「&in福岡」のために、福岡に行ってきました。

数年前から毎年福岡に来ていましたが、今までは大名にある表通りに面したギャラリーで出張販売をしていました。
でもコロナ禍などの影響もあってそのギャラリーが閉鎖になり、今年から警固(けご)にあるギャラリートレザイールさんを会場にさせていただきました。

天神に近く人通りも多い大名とは違い、警固周辺は静かなところで、個人経営のカフェやお店などもある比較的落ち着いたところでした。

マンションの間に商店が混じった、暮らしと遊び場が同居した感じは、当店のある元町に近いと思いました。ホテルも警固だったので、福岡滞在中警固周辺から出ることなく、その中で快適に自然体でいられました。

きっと谷本さんもそうだと思いますが、私たちにとって警固の落ち着いた雰囲気が心地よく、合っていたのかもしれません。

福岡でも綴り屋さんのペンは注目されていました。

12月9日(土)10日(日)、590&Co.さんの店舗を会場に綴り屋さんの作品販売会を開催します。

イベント期間中に綴り屋さんの万年筆をお買い上げのお客様は、当店にてペン先調整をさせていただきます。

このイベントは当店と590&Co.さんとの共同企画で、初の試みになります。

出張販売での反省では、今自分がどういうものを好み、こういうものを良いと思っているということをもっと表現するべきだと思いました。

モノに関する好みですが、デザインが良いモノももちろん良いのですが、使用感が自然なものの方が、私の場合長く使っているような気がします。

綴り屋さんの万年筆漆黒の森は重量が軽い割に太軸で、力を抜いてペンの重みに任せて書く必要がなく、自然な感じで書ける万年筆です。

万年筆を使い慣れた人も、長く使って来た人もきっとこの漆黒の森は手に馴染みやすいと思える、自然な使用感を持った万年筆です。

インクもその色に惹かれて使い始めますが、いくら色が良くても紙の上に乗るような、紙に馴染まないインクはあまり好きではありません。

書いた後スッと紙に沈んでくれる自然な感じがするということが絶対条件で、色以上にそんな性質のインクに惹かれます。

当店のオリジナルインクの話で恐縮ですが、冬枯れやメディコ・ペンナ、虚空がそんな性質で、それらのインクを好んで使っています。

紙馴染みの良い自然な使用感のインクはたいてい発色も大人しく、少し沈んだ落ち着いたトーンになります。しかし、そんなところも私には自然に見えて良いと思えますので、オリジナルインクでそういうトーンのインクが多いのも、そんな理由があるからです。

革表紙のメモはデザイン的には凝ったところはありませんが、自然に快適に使えることを追究したものになります。

土台となる底の革は厚く丈夫なサマーオイル革で、安定感があり、書きやすさに貢献しています。表紙の革は柔らかいミネルヴァボックス革で、めくりやすく、開いたままにしておけるので、書いている時に邪魔になりません。

中紙は当店の試筆紙と同じユトリロ上質で、にじみが少なく、裏抜けもないけれど、特殊な表面加工がされていませんので自然なインクの吸収と書き味を持っています。

切り取りやすいマイクロカットミシン目が入っていますので、サッと切り離すことができます。

各素材をそれぞれの用途に適した特性のあるものにして、自然な使用感のメモ帳を目指したのが革表紙のメモです。

いろんなものを使ううちに、こういった自然な使用感を持つものが良いものだと思うようになりました。

 新しいものでなくても、長く扱っているもの、作り続けているものには無理のない自然体の使いやすさがあって、当店の定番と言える存在になっています。

⇒Pen and message. 革表紙のメモ