絶対的な存在に立ち向かうペリカンM1000

モンブラン149という象徴としての万年筆の絶対王者と比べることができる、唯一の存在の万年筆がペリカンM1000だと思っています。

上質な万年筆はもちろん他にたくさんありますが、149は象徴なので、書き味や性能などの実用性を超越したところに存在すると思っています。そういう絶対的な存在に反発したくなる私のような天邪鬼な人は他にもきっといるはずで、その人たちは実力でのし上がってきた(?)M1000を推すに違いない。

ペリカンM1000とモンブラン149を比べてみると、サイズはほぼ同じ(厳密にはM1000の方が3mm短い)、ペン先の大きさもほぼ同じで、どちらもオーバーサイズと言われるカテゴリーに属する万年筆です。

形は両端を絞った紡錘形(万年筆の世界ではバランス型といいます)の149に対して、M1000は両端が平らで円柱に近い形状(ベスト型)をしています。

万年筆を紡錘形にする理由は、デザイン的なこと以外では、両端をなるべく軽くすることで重量を中心に集め、筆記バランスを良くする、という目的があります。

対してM1000のような円柱に近い形状は、ペンのどこを握っても同じような感覚で握ることができるため、こういう形の万年筆を持ちやすいと思う人も多いと思います。

書き味もデザイン同様、かなり違っています。

149のペン先は剛性感があり、硬いペン先が紙を滑るような感じ。M1000は柔軟な書き味で、筆圧の加減で文字に強弱がつくような、1文字1文字きっちり書くことに向いているような柔らかい書き味を持っています。

ただサイズが近く、同じカテゴリーに属しているということ以外は何もかも違う149とM1000、どちらを選ぶかは好みが分かれるところですが、キャップをつけずに書く場合M1000の方がボディの長さが5mmほど長く、この差がキャップをつけずに書く場合利いていて、キャップなしで書く場合はM1000の方がバランスが良いように思います。

またボディの出っ張りが少ないという点では、M1000の方がペンケースの選択肢は多そうです。

最近の蒔絵万年筆はM1000で作られることが多く、それもペリカンが自社最高の万年筆と位置付けていることの裏付けとなっています。

2016年にM800ルネッサンスブラウンという万年筆が特別生産品として発売されましたが、このたびM1000ルネッサンスブラウンを発売しました。

ルネッサンスブラウンのM1000は軸の色が違う以外にもキャップリング、尻軸リングが専用のデザインになっていて、さらに差別化されています。

ペリカンの特別生産品は直感的に美しいと感じる軸が多く、この分かりやすさが潔くていいと思っています。M1000ルネッサンスブラウンも、その軸色から重厚なインテリジェンスを感じるのではないかと思っています。

ペリカンは186年もの歴史があり、過去の万年筆を現代の技術で復刻させた限定品のシリーズもありますが、特別生産品M1000ルネッサンスブラウンはすでに高い評価を得ているスーベレーンシリーズというペリカンの型を使いながら、万年筆を面白くしてくれる存在だと思っています。

⇒ペリカンM1000 ルネッサンスブラウン