大阪中之島の東洋陶磁美術館は好きな美術館のひとつです。長くリニューアル工事のために閉まっていたけれど、最近やっと開館して行くことができました。
数々の陶磁器の美術品が収蔵されていますが、特に茶碗が見たいと思いました。茶道を習っていたということも関係しているかもしれませんが、茶碗というフォーマットの中で美を表現しているということに惹かれているのだと思います。
飾っていつまでも眺めていたい美術品ではあるけれど、何ならお茶を点てて使うこともできる、用の可能性のあるものでもある。
それは蒔絵万年筆に近い美の在り方なのかもしれません。蒔絵万年筆は万年筆というフォーマットの中に美を凝らすところに魅力があって、万年筆という制約の中に描かれるから精緻さがある。私たちはそこに感動するのかもしれない。
実際、国宝の天目茶碗でお茶を点てる人はいないし、蒔絵万年筆にインクを入れて使おうとは私なら思わないけれど。
バゲラさんのPineconeのすごいところは、高田奈央子さんがそのセンスの赴くままに組み合わせた貴重な革を手縫いで仕立てて、ひとつの完成されたアート作品にしているところですが、Pinecone自体が何のフォーマットでもないところにもあると思います。
財布とはちょっと違うし、名刺入れや定期入れでもない。何のフォーマットでもないから、それを新しく取り入れるために自分のライフスタイル自体を変える必要があります。Pineconeを持つことで新しい時間を過ごせるのではないかと思わせてくれるところが、このモノのすごいところだと思っています。
実際にPineconeを手にした人は、Pineconeとスマホだけ持って出掛けたくなるし、買い物の時にPineconeからカードを出して支払いをするということを楽しめるようになるようです。
今まで大きな財布を持ち運んでいた時と、きっと鞄も違うものになると思います。
それを手にしたことを想像して、毎日がガラリと変わることを期待できるモノ。そういうモノはあまりないと思います。
でもバゲラさんの革作品はフォーマットの制約において作られたものでも自分を変えてくれる力があるのではないかと思わせてくれます。
バゲラさんの正方形ダイアリーカバーにも期待が膨らみます。これを使うといままで当たり前のアイデアしか浮かばなかったのが、面白いアイデアが浮かんで一皮剥けた自分になれるのではないかと夢見させてくれる。
でもすごいものとの出会うはそんなものなのかもしれません。今まで使っていた正方形ダイアリーに書く内容が今までときっと変わるのではないかと思います。
ペンケースも本当に大切に思っているペンを収めて、そこから取り出す所作にもこだわりたくなるし、それ以外のものは入れたくないと思ってしまう。
そういうペンが3本もあればとても幸せだと思うけれど、バゲラさんのペンケースに入れてもらえるペンを提供できる店でありたいと思います。
生活自体を変えてくれる力のあるモノ。それがバゲラの革作品だと言っても言い過ぎではないと思っています。