
気が付いたら色々な分野で価値観が変わっていると実感しています。
自家用車が高級車であることがステイタスを物語るものではなくなったし、高級時計もステイタスシンボルではなくなっている。そもそもステイタスシンボルという言葉が死語になりつつあるし、モノの価値観が多様化している。
そんな時代に高級なモノを売る仕事は、人々に何を訴求したらいいのか分からない、とても難しいものになっていると思います。
今の時代の万年筆の新しい動きの中心は、アジアだと思っています。
ヨーロッパの老舗メーカーは相変らず健在で、それぞれの会社の伝統に則った製品を生み出しているけれど、価値観が変わってきている中苦戦していて、それはいろんな分野で起こっていることだと言えます。
中国系の新興メーカーはいくつもあって、それらは技術力、生産力の高さからヨーロッパのメーカーのOEMをしていることが多いですが、同じアジアのクリエーターたちと組んだりして、新しい動きを見せています。
中国は気が付いたら、粗悪で安いものを大量に作る国から、洗練された良いものをスピーディーに作れる国になっていました。
日本がアジアの新しい動きに入っているのかどうか微妙だけど、過去の栄光にすがったり、驕りがあったら、あっという間に周りの国に置いて行かれてしまうと思う。
どんな小さな渦でもいいので、当店もアジアの新しい動きの一部になれたらいいなと思っています。
台湾は確実にムーブメントの中心にあって、その中でもツイスビーはそれを牽引する存在のように思います。ツイスビーは50年以上前から海外メーカーのOEMをしていた歴史のある会社ですが、自社ブランドのペンを作り出したのはそれほど前のことではありません。だからこそ今までの万年筆の流れと違うものを作ることができたのかもしれません。
ツイスビーの万年筆は今までの万年筆の価値観とは違っていて、ペン先は金ペンにこだわらないし、軸の素材も伝統的に価値があるとされてきたセルロイドやエボナイトなどは使わない。
それらの素材に価値を見出しているヨーロッパの万年筆の価値観とは一線を画していて、安くて良いものを作るにはどうしたらいいかということを追究している会社だと言えます。
ツイスビーの代表的なモデルはダイヤモンドです。軸のバランスが良く、たくさんのインクを吸入することができます。大型のペン先は、ステンレスですが良い書き味に仕上げられています。
先日ダイヤモンドシリーズに、ダイヤモンド580ALアイスバーグが新色として追加されました。
ツイスビーの新色攻勢はとどまるところを知らず、色数が多すぎて分からなくなるほどですが、好みの色を見極めて、万年筆を楽しんでもらいたいという姿勢の表れなのかもしれません。
話を戻すと、ダイヤモンド580ALは首軸をアルミ素材にすることで従来のダイヤモンドより3グラム重く前重心になっています。それによって、バランス的にキャップを尻軸につけずに書くダイヤモンドを、より書きやすいものにしています。
新たに万年筆を使い始めようとしている人は、この万年筆から始めてもいいかもしれません。
万年筆を何本も持っている人も、このツイスビーダイヤモンドは無視できない存在になると思っています。