かなり以前のことになりますが、イタリアボローニヤを訪ねて万年筆メーカーオマス本社を訪ねたり、ポルティコの回廊が続く街で文具店巡りしたことがあります。
ボローニャは街の中に大学の教室が点在していて、街自体が大学の機能を持っているそうです。大学の街だからなのか、自治意識が高い街でもあります。
中央からの行政の押し付けを嫌い、戦時中には街からイタリア軍とナチスドイツ軍を市民が闘争の末追い出すことに成功しています。
そんな自治意識が高く、自由と反骨の気風のあるボローニャだからこそ、オリジナリティのあるオマスのような万年筆が生まれたのかもしれません。
オマスは今はアメリカの会社がオーナーを務めていますが、今もイタリアの工場で作られています。
今のオマスは現代的で洗練されたものになっているけれど、私たちがボローニャを訪れた時に感じた主流への反骨心であるオマスらしさは、大切にしているように思います。
独特の美しいシルエットで、オマスの中では比較的抑えた価格のオジヴァ。
オマスから引き継いだセルロイドを使い、細部まで作り込んだパラゴン。
オーソドックスな円筒形のフォルムながら、オマスらしさに溢れたボローニャコレクション。
オマスの現在のオーナーは元々万年筆コレクターで、オマス愛が高じて新生オマスを立ち上げることになったそうです。
今の万年筆業界を動かしているのは、そういう好きだからやる、というエネルギーだと思います。だから今の時代らしいメーカーの生まれ方ではないかと思いますし、そういう単純なビジネスの利害だけでない力が一番強いのだと思います。
元々のオマスが廃業せざるを得なくなったのは、当時のオマスの親会社がビジネスとしての万年筆に見切りをつけたからだと聞いていますので、万年筆やオマスへの愛情からオマスを運営している現在のオーナーに出会えてよかったと思います。
ボローニヤを訪ねる前にボローニャについて知りたいと思って本を探しました。
その時に井上ひさし氏の「ボローニャ紀行」を見つけました。
書かれて10数年が経ちますが、面白おかしくおしゃべりのような文体で書かれていますが、内容が充実していて著者のボローニャへの憧れというか、愛情のようなものが感じられるとても面白い本です。
井上ひさし氏は小説を執筆する時に、遅筆として知られていました。
その内容と直接関係のないことにまで及ぶ膨大な量の下調べを、小説を書くたびにしていたためですが、ボローニャ紀行を書く時にはボローニャについて調べた資料がたくさんあったそうです。
1月19日(日)までオマスフェアを開催しています。 期間中オマスのペン(万年筆)をお買い上げ下さった方に、このボローニャの街について知ることができる最良の本だと私が思った本井上ひさし氏の「ボローニャ紀行」の文庫本をプレゼントいたします。