
綴り屋さんのアーチザンコレクションと静謐が久々に入荷しました。そして今回は、昨年受注製作した朧月万年筆の予備パーツを使って2本だけですが朧月も入荷しました。
今回入荷した朧月には色が濃いものと薄いものがあります。
濃いものは8月に受注製作を承ってお作りしました色と同じで、薄い方はその時よりも薄い色になります。
今回から、静謐・アーチザンコレクションの尻軸の形が変更されていて、キャップポストをした時の安定感が増しています。少しずつこういう改良が常に加えられて、進化しています。
綴り屋さんのペンはデザインも雰囲気ももちろん素晴らしいですが、作り手の鈴木さんのより良いものを作るという意気込みと修理の対応の早さが私たち売り手にとっては頼もしく、安心して販売することができています。
オリジナルのペン先があって、それを調整して販売している当店にとって、綴り屋さんの存在は本当に有難い。当店の東洋風の鳳凰のペン先と、綴り屋さんの軸の雰囲気の相性は良く、図柄もサイズ感も合っていると思っています。
もともと綴り屋さんの軸に付けたいと思ってオリジナルのペン先を開発したという経緯がありましたので、それも当然かもしれません。
ペン先調整だけでなく、オリジナルの研ぎを追究するためにもオリジナルペン先は必要でした。
古い万年筆のペン先を見たり、お客様の要望をお聞きしているうちにするようになったのが三角研ぎです。

書く文字への効果は、寝かせ気味にして書くと太く、立て気味にすると細く書けて、漢字など日本の文字を美しく表現できるというものです。
研ぎをする場合、私は書き味の次にその造形の美しさにもこだわりますが、三角研ぎは名前の通り三角の形とメリハリのある線を描くことができるという、実用性と造形の美しさを両立した研ぎだと思っています。
これはどの字幅にも出来る研ぎで、太字だと万年筆でありながら筆ペンのような文字を書くことができ、細字でも線のキレの良さを感じられると思います。
そして最近始めた研ぎで、上弦の三角研ぎというものがあります。

筆記角度を変えた時の変化は三角研ぎよりも少しマイルドで、線の変化も緩やかになります。そのため自然に使いやすく、様々な角度、ペン先の向きで書き味良く使っていただけると思います。書き味と造形の美しさを高い次元で両立するように研いでいます。
古くからあるペン先の研ぎ方で長刀研ぎというものがあります。この長刀研ぎに脚光を当てて、研ぎを前面に出したのがセーラー万年筆の伝説の職人長原宣義先生でした。
長原先生への憧れもあるけれど、私達調整士は研ぎについて考えると、いつか長刀研ぎというものと向き合うことになります。それぞれの調整士が長刀研ぎを自分たちなりに使いやすく表現したものがあって、当店ではそれがこの上弦の三角研ぎなのだと思います。
私は若い頃から万年筆のペン先をルーペで見るのが好きで、本当に色々なペン先を見てきました。
たくさんのペン先を見るうち、いくつものパターンの理想的なペンポイントの形が自分の中ではっきりしてきました。ペン先調整はそれを再現することだと思っています。
研ぎを表現したり、調整で理想的な形、書き味を再現するためにペン先調整をすることは好きでしています。気が付いたら自分が惹かれていた研ぎの微妙な違いを示しながら研ぐことも珍しいことではなくなっていました。
私と同じ仕事をする若い人たちが出てきて、ペン先調整も特別変わったことではなくなってきています。ここまで時代が進むとは思っていませんでしたが、こういう万年筆の面白さのあり方、示し方は自分も求めていたことで、同業の人たちとお互い切磋琢磨していきたいと思っています。