
もう一年前になりますが、ル・ボナーの松本さん、590&Co.の谷本さんとドイツを旅した思い出は人生の宝物になりました。
拠点であるニュルンベルグから、他の予定があった谷本さんと別行動して訪れた美しい街ハイデルベルグの小旅行も楽しい思い出です。松本さんが手配してくれたホテルの大きなバルコニーのある部屋で、ハイデルベルグの夕方の陽の移ろいを感じながら長い時間話しました。
その時に松本さんにアイデアスケッチを見せながら構想を話したオリジナル万年筆も、やっと形になって販売を始めています。
金ペン先と同時にスチールペン先モデルを作ることは、数量的に当店にとってかなりの冒険だったけれど、軒並み価格が上がった現在の万年筆の状況にあっては、本当に作っておいて良かったと思っています。
同じドイツの旅でカヴェコ本社を訪ねました。
社長が自ら案内して下さって、カヴェコのペンについてたくさんお話を伺いました。カヴェコに対して良いイメージを持ってドイツから帰ってきました。
最初にカヴェコ本社で見せていただいて590&Co.さんとともに販売を始めたのが、デッドストックのエボナイト製のローラーボールでした。
日本のオートの水性ボールペン芯に合わせて作られていて、とても使いやすいものです。1本1本削り出しによって成形される大量生産には向かないエボナイトという素材の持つ魅力と、製作されたのが1980年というビンテージ感もあって、何とも味わいがあります。
ローラーボールの後、1.18mmのペンシルもラインナップに加わりましたが、同シリーズの万年筆があることが分かりました。
エボナイト万年筆はローラーボールと共通のボディで、キャップを閉じた状態では万年筆とローラーボールの見分けがつかないほどです。
インク供給はカートリッジ/コンバーター両用式です。カートリッジはペリカンなどのヨーロッパ規格のショートタイプ、コンバーターはカヴェコ用のミニコンバーターが適合します。スチールペン先ですが、柔らかい書き味で驚きました。
ペン先、ペン芯などのパーツは、ドイツのリフォーム社というOEMを専門にしていたドイツのメーカーのものですが、2003年に倒産しています。この会社で使われていた機材は他所の国の会社に渡ってしまったそうで、同じ刻印のあるペン先を見ることもありますが、書き味は違うのかもしれません。
エボナイトの軸もデットストックですが、その書き味の良いペン先、ペン芯のユニットももう作ることのできないとても貴重なものです。万年筆は他に比べて数が少ないため、ぜひ早めにお求め下さい。