
ペン先の研ぎ〜オリジナル三角研ぎ、上弦の三角研ぎ〜
7/12(土)、13(日)、590&Co.さんイベントスペースで綴り屋作品即売会を開催いたします。今回の即売会のために製作された新作も並びます。
私も会場に常駐し、綴り屋万年筆をお買い上げの方のペン先調整を承れるようにいたします。ぜひご来店下さい。
綴り屋万年筆の静謐(せいひつ)、漆黒の森、アーチザンコレクション(ロング)に、今回のイベントから当店オリジナルの14金ペン先をつけています。これは万年筆コンチネンタルクラシックインスピレーション1985のゴールドニブと同じものです。
オリジナルのペン先は最初かなり大きめのペンポイントがついていますので、それを研ぎ出して万年筆につけています。ペンポイントの大きさ、長さに余裕がありますので、「上弦の三角研ぎ」ができるようになりました。
この研ぎをご説明するためには「三角研ぎ」から説明しなくてはいけません。
万年筆のペンポイントの研ぎによって、文字の形や雰囲気は変わってくると思っています。主観になりますが、ペリカンの万年筆で書いた文字が温かく見えるのは、ペリカンのペンポイントの形状が丸く研がれていてインク出が多めだからで、それがペリカンの特長とも言えます。
パイロットも丸い研ぎですが、字幅によるメリハリがちゃんとあって、細めの字幅ではインク出も抑制されています。
プラチナは中字以上だと丸みのある四角い研ぎになっていて、それが紙への接地面積を稼いでいてまろやかな書き味を得られるようになっています。書く文字にもその感じは表れます。
メーカーそれぞれペンポイントの研ぎの形があって、それが書き味を違える要因のひとつにもなっていますし、縦書き向きか横書きに合っているかなどの使用感も左右するものだと思います。
その研ぎへの執着によってできたのが当店の三角研ぎです。
三角研ぎは大きさが限られたペンポイントで最大限太い、細いの差が出せることを追究した研ぎの形です。
寝かせて書くと筆記面が紙にピタリと接地するので太く、立てて書くと三角形の頂点で書くので細く書ける。
そしてその研ぎの形から書ける文字にキレが出て、ペン先を親指側にひねって書くなど書き方によっては筆ペンで書いたような文字を書くことができます。
オリジナルのペン先ではペンポイントが大きいため、それほど極端に筆記面を作らなくても太い線が書けるので、筆記面をなだらかな孤を描くような放物線としました。
それにより太さの変化がなだらかで、使用感がマイルドになりました。
三角研ぎでは面を合わせて書くとヌルヌルとした滑らかな書き味が得られましたが、上弦の三角研ぎでは面を気にせずとも滑らかな書き味が得られるようです。
オリジナルペン先ほど大きなペンポイントを持たないペン先にも上弦の三角研ぎは可能です。太い線はあまり書くことができませんが、キレのある文字は書けます。
ルーペでみた景色は、三角研ぎは鋭角的でとても斬新な形状になります。上弦の三角研ぎは古典的な長刀研ぎに近い形状になります。
三角研ぎも上弦の三角研ぎも日本の職人さんたちが古くからやっていたペン先の研ぎ方とそれほど違わず、漢字や平仮名を美しく書けるようにしたいと思うとこれらの形に近付いていくのかもしれません。
ペンポイントの研ぎをルーペで見ることは若い頃から好きでやっていましたが、それは今でも変わらず、毎日様々なペン先を見ています。