綴り屋漆黒の森 溜塗テクスチャーPen and message.オリジナル仕様

何かを始めたいと思った時、アイデアは自分の頭の中や、お客様や仲間たちとの会話の中にあることがほとんどでした。ネットの中で探さなかったから、他所のお店と違うことをすることができたのかも知れません。

自分と向き合うことと、人と話すことはアイデアの源泉だと思っています。

そしてそれが実現するには、それを作って下さる方との縁がないと形にはなりません。

今までオリジナル万年筆は縁があった時にいくつか作らせていただきましたが、いずれも海外のメーカーでした。

その方が他のお店が取り組んでいないことができると思ったし、何よりも縁があったからでした。

日本のメーカーさんとはそういう縁ができなかったけれど、良いものがたくさんあることは知っています。そんな定番品の中で、良いものなのにあまり脚光を浴びていない万年筆を当店なりのやり方でご紹介する、ということを続けていました。多くの方に共感していただけるのも喜びだったので、それでもいいと思っていました。

綴り屋さんに対しても、鈴木さんのセンスによるモノ作りが好きだったので、綴り屋さんのモノをそのまま販売していましたが、扱っていくうちにその関係は次のステップに進んでいきました。

今まで綴り屋さんの万年筆には、当店でパイロットのペン先をつけていました。それは当時できる最良の選択だと思っていますが、当店の「オリジナル」ではありませんでした。

当店の万年筆であると表現できるオリジナルペン先を開発しなければ、綴り屋さんの軸と釣り合わないのではないかと思い始めました。

次々と新しいアイデアで作り出される綴り屋さんの万年筆を販売する店として、相応しい仕事がしたい。それがペン先調整を看板に掲げる店らしく、オリジナルペン先を持つ、ということでした。

縁あって、中国の工場の若い代表と出会うことができて、様々な話をしました。もともとは国営企業で働くエリートでしたが、20歳から集め出した万年筆を仕事にしたいと思い、今の仕事を始めました。収入は減ったけれど、好きなことを仕事にすることができて充実していると言っていました。仕事に対する考え方や万年筆作り、仕事の仕方についても共感する部分が多くありました。

中国と言うと私たち日本人の昭和世代には粗悪なものを大量に作るイメージがあるけれど、それも古い話だと分かりました。

中国の人も生活が良くなるにつれて良いものを知って、自分たちが本当に欲しいと思えるものを作らなければいけない、という意識が若い人の間では普通になっています。

最初は私も昭和世代の偏見を持っていましたが、彼と話しているうちに、そしてその工場も某有名イタリアメーカーの下請けで万年筆を作っていることなど色々な実績もお聞きして、この会社であればお任せできると思いました。

中国とのビデオ会議ではそれぞれが次々と意見を出し合って、すごいスピードで物事が決まって行きました。最初は少し驚きましたが、すぐにそのスピードが心地よくなりました。それが彼らのやり方で、全てを話し合い、意見を出し合って、次々と物事が決まっていきます。

実際にペン先を作る時は、実際の現場の方とペンポイントの選択から全て、細かく話し合って作り上げることができました。

ペン先作りのごく初期の段階から関わることができた経験は大きく、これでこそ当店のオリジナルペン先と言えると思いました。出来上がった時は喜びも愛着も今までで一番大きかった。

今回の当店オリジナルペン先お披露目のために、綴り屋さんが当店オリジナル仕様の漆黒の森溜塗テクスチャーモデルを作ってくださいました。

溜塗の表情が出るテクスチャー部分を天冠部分だけにとどめ、よりシンプルにしたものですが、これも鈴木さんとのやり取りで決まりました。

また山吹色の下地に潤み色の表塗りのものは当店オリジナル色で、継続して作りたいと思っています。

ペン先作りにも、軸の仕様にも関わることができたオリジナル万年筆。ペン先調整の店として次の段階に進んだことと、綴り屋さんとの繋がりも表現することができたと思っています。

*来週は出張で不在のため、次回の更新は23日(金)となります

⇒綴り屋 漆黒の森溜塗テクスチャーPen and message.仕様 山吹×潤み色(オリジナル色) オリジナルペン先