
セーラーの万年筆は、私にとってきれいな文字が書ける万年筆のひとつです。
と言っても私が書く字なので、通販で万年筆をお買い上げ下さったお客様なら、同梱している私の手紙をご覧になって「自分の中では」と前置きが付くことはお分かりだと思います。
私の持っている万年筆の字幅は、手帳用以外はほとんど中字です。それは用途がノートや手紙を書くことが多いからです。
これは完全に私の独断と偏見ですが、もっともセーラーらしさが表れる字幅は中字以上だと思っていますので、自分の好みと合っていてよかった。
最近自分用に買った別注品KOPsmokeも、以前から使っているプロフィット21も中字です。
なぜ中字以上だとセーラーらしいと思うのか。それはセーラー独特のペンポイントの研ぎが中字以上だとはっきり表れているからで、その研ぎの形によってセーラーらしいキレのある文字が書けるからです。
同じ国産のパイロットとプラチナは、引っかかり防止のためかペンポイントが丸く研がれています。
セーラーはペンポイントが五角形のような形に研がれていて、これがセーラーの万年筆でないと書けない文字が書ける理由ではないかと思っています。
ペン先の向きがズレると引っかかりが起こる可能性があるけれど、きちんとペンポイントに合わせて書くとヌルヌルとした書き味が得られ、量産メーカーでありながら、合わせて書くことを要求するあたり昔ながらの職人気質を感じます。
独特なペンポイントの研ぎをしているということでもセーラーは玄人好みの万年筆を作る会社だと言えます。新たに発売された万年筆でもセーラーのマニアックさを感じさせるものがありました。
セーラーの代表的な万年筆のプロフィット21がモデルチェンジにより廃番になり、代わりに14金ペン先の「プロフィット14」、18金ペン先の「プロフィット18」、21金ペン先の「プロフェッショナルギアアンカー」が発売されました。3種類とも同じ大型と言われるサイズのペン先が付いています。同じMで書き比べてみました。
・プロフィット14(14金ペン先)
14金ペン先は、硬めでしっかりした書き味が特長です。
プロフィット14もこの3本の中でもっとも硬い書き味を持っていました。筆圧の影響を受けにくく、安定して細かい字を書くことができますので、細字や極細などで細かい文字を書くのに向いています。多少筆圧がかかっても安心して書くことができますので、特に筆圧の強い方は使いやすく感じられるかもしれません。
金ペン先において、硬いというのはネガティブなイメージを持ちがちですが、筆圧がかかった時にペン先が開きにくいため、余計な引っかかりのない滑らかな書き味を持つ万年筆が多いです。
また太字の字幅ではその滑らかな滑りによって書き味の良さを感じていることが多く、あまり柔らかさを必要としないため太字の場合14金の選択もいいかもしれません。
・プロフィット18(18金ペン先)
プロフィットらしさは18金のプロフィット18に受け継がれていると思いました。柔らかすぎず程よい柔らかさで、絶妙な味付けを持つバランスの良い書き味のペン先です。
18金になると書く文字に強弱が出やすくなり、書いていて楽しいと思います。海外の万年筆の重厚な書き味にも引けを取らない書き味に仕上がっていると思います。
・21金のプロフェッショナルギアアンカー
プロフィットは軸の重量が軽めで、もう少し重い軸でもペン先のしなやかさが引き出せるのではないかと思っています。
21金ペン先のプロフェッショナルギアアンカーは首軸、尻軸が金属パーツになっていて、30gという最も理想的な重さになっています。
重めの軸によって21金ペン先の柔らかさをより感じやすくなっていて、かなり柔らかく感じられるのではないかと思います。
筆圧を低く書ける方、ゆっくり書く方にプロフェッショナルギアアンカーは合っていると思います。
同じ大きさ、同じ形で、金の含有量の違いによる書き味の違うペン先を用意するというところがセーラーらしいマニアックさで面白いと思っています。