ペリカン175周年ジュビリーペンが発売になっています。
世界238本、日本国内15本というとても希少性の高いものになっています。
ペリカンの創立記念モデルなので、もっとたくさん作ってもいいのではないかと思いますが、希少性を重視したのでしょうか。
当店は今創立5年半ほどで、ペリカンの175年という歴史と比べようのない新しさですが、それでもそれなりに色々な出来事や分かれ道などがあり、今に至っています。そしてそのことは全て私の誇りになっています。
ペリカンの前回の創業記念モデル170周年が発売されたのは、この店を始めて半年程経った頃でした。
何となく向かっていく方向にかすかな光が見え始めた頃に、ペリカンから170周年記念万年筆を発売するという案内がありました。
定番モデルマジェスティを総金張りにして、天冠に3つのダイヤモンドをあしらったモデル。
170周年記念万年筆はとてもゴージャスに見えました。
それは書くということをもっと楽しくしてくれる、書き味の良い筆記具という、今まで私が持ってきた万年筆の価値観を遥かに超えたものでした。
店を始めたばかりの余裕のない時ということもありましたが、それよりも私の視野の狭さ、了見の小ささから170周年はこの店には必要ないとして見送ってしまいました。
それから月日が流れて、書く道具という側面以外の万年筆の魅力について考えるようになってから、その存在を受け容れることができず、遊び心を持って万年筆を見ることができなかったことと、170周年を見送ったことが重なり、後悔となって心にいつまでも残っていました。
そういったこともあって、ペリカンの創業175周年の万年筆は見送ることなく、仕入れたいと思いました。
今年発売された限定品M101リザードのボディ、キャップにキャップトップとボディエンドをスターリングシルバーにして、天冠には170周年同様3つのダイヤモンドを埋め込んでいます。
特別仕様の18金のペン先の書き味は金属パーツのために増した重量のせいもあるのか、大変良い書き味を持っています。
今から75年前、ペリカンの100周年の年に華々しく発売したモデル100Nの中の異色の万年筆101Nリザードを現代風にアレンジしたものがM101Nジュビリーペンです。
顧客から期待されているその歴史を尊重した物作りに応える、そしてそれらを踏まえて新しいものを生み出していくというペリカンの姿勢、決意が感じられる、メッセージ性の高いものだと解釈しています。
老舗ペリカンの175周年という大変長い歴史を記念するラグジュアリーな1本は、万年筆はペン先だけではない、ボディの装飾や造形などの設えを含めた、その全体を作品としてとらえて楽しむこと、そして背景についても考えさせられる。
そして周辺のものとの取り合わせにもこだわる文化なのだと語りかけてくれているように私には思えます。