万年筆店にとって、自前のペンケースを持つことは自分たちがどのように万年筆を思っているかを表現することであり、オリジナルの万年筆以上に大切なことだと思うことがあります。
つまりオリジナルのペンケースを見ることで、その店の思想のようなものを見ることができるのではないかと思います。
オリジナルペンレスト兼用万年筆ケースは、当店の万年筆への考えが反映されたペンケースであると、自信を持って言うことができます。
発売を開始して3年が経ちましたが、このペンケースをご理解いただいた多くの方に愛用していただいています。
このペンケースは万年筆を道具としている人のためのケースであり、そのための機能と質を持ち合わせています。
持ち運ぶ時はフタをペンに被せるように閉じてペンが傷つかないようにし、ペンを使っている時はフタをペンの枕のようにしておくことですぐにペンを取り出せる。
ちょっとしたことかもしれませんが、ペンの出し入れを繰り返す時、フタを開かずに取り出すことができるというのは、大変便利だと私も使っていて感じています。
ファーバーカステルクラシックエボニーの万年筆とボールペン、細字用として完璧な万年筆パイロットシルバーンが私の鉄壁のオンタイム3本セットで、ペンレスト兼用万年筆ケースにいつも収まっています。
シュランケンカーフは、柔らかさがないと成り立たない構造の役に立つしなやかさを持ちながらも、型崩れしない強靭さも併せ持っています。
このペンケースが長く愛用できるものであるのは、シュランケンカーフという上質な素材に依るところが大きいかもしれません。
シンプルなデザインですが、実はその被せる革の長さや縫い合わせの幅で開け閉めのしやすさが全く違いましたので、製作してくれているカンダミサコさんの腕の良さと行き届いた丁寧さがあって実現したものであることは言うまでもありません。
当店の万年筆の思想。それは何よりも替え難い大切なものであるけれど、仕事など日常の道具として使われるもの。
そういう万年筆をいつもご提供していきたいと思っていますので、そういう仕舞い方ができるペンケースを作りたかった。
それがペンレスト兼用万年筆ケースの起こりで、40本あまりの万年筆を日々駆使しているヘビーユーザー(?)とも言える当店スタッフKの思い付きがこのペンケースに生かされています。
スタッフKは、かなりズボラ(関西弁で面倒臭がりの意)な性格で、私以上にペンケースのフタの開け閉めが面倒だと思っていました。
ペンを取り出す時面倒でなく、素早くペンを取り出すことができて、持ち運ぶ時誤ってペンを落としたりしないようなペンケースが欲しいと思っていた彼女は、手近にあった布でそんな理想に叶ったペンケースを作って使っていましたが、それがペンレスト兼用万年筆ケースの原型でした。
そこからの試行錯誤があり、機能性とデザイン性を兼ね備えたペンケースとして仕上がっていると思います。