何か新しくモノについて知ろうと思ったり、使い始めようと思った時、その世界の定番中の定番から入ってみることが一番良い取り組み方なのではないかと思っています。
それは自分の直感や感性に自信がないから思うのかもしれませんが、長く使われてきたもの、多くの人が使ってきたものには、やはりどこか良いところがある。そういうものが定番と呼ばれ、面白味は少ないかもしれないけれど、そのモノに求められる機能は十二分に果たすし、飽きが来ない。使いこむことで得られる喜びも併せ持っているもの。
それが定番品だと思っています。
万年筆において定番品と言うと、ペリカンスーベレーンM800です。
万年筆を日常的に使い始めたばかりの頃にそう教えられて、そう信じてきましたが、この仕事をしてきて、それは正しかったと思っています。
自分で初めて買った万年筆がM800でした。万年筆のお手本と言われるものを最初に手に入れたことで、その後の私の人生が変わったのかもしれないと、今では思っています。
万年筆を使い慣れていない手にはM800は長く、重く感じられました。
なるべくキャップを尻軸に差して使いたいと思ってけれど、最初の数年間はキャップをつけずにしか書けなかった。
その後に購入したアウロラオプティマの方がM800より遥かに使いやすいと思いました。
実はM800のキャップをつけた重さに手を任せて書くようにすれば、無駄な力を入れずに書くことができる。それに気付けば万年筆使いとして一人前だと思いますが、私はそう使えるようになるまで5、6年かかりました。
でもそのペンの重さに任せて字を書く感覚を覚えたら、M800ほど書きやすい万年筆はないかも知れません。
そうなると、あれほど大きいと思っていたボディが実は大きくも何ともなかった、むしろ普通だったと思うようになれるものです。
書くことにおいて、こんなに自然な使い心地の万年筆はないと思えるようになるのがM800で、オマスパラゴンやM1000のような、書いていて楽しいと思える手応えのようなものはないけれど、手応えを求めるのはまた違う次元の話のような気がします。
ペリカンの万年筆は私たちのイメージでは緑縞が代表的なイメージですが、この縞模様自体他のメーカーにない特徴的な意匠だと思います。
ペリカンのホームページによると、ストライプの入ったスーツを好んで着た英雄、1923年には首相も務め、その後外相として活躍し、1926年にはノーベル平和賞も共同受賞したグスタフ・シュトレーゼマンから由来して、ペリカンのストライプ模様の万年筆を本国ではシュトレーゼマンと呼ぶ人もいるとのこと。
このたび(2月予定)、スーベレーンM800のシルバーの金具仕様のM805に黒の縞模様、ブラックストライプが発売されることになり、その万年筆はM805シュトレーゼマンという名前を冠しています。
定番品M800の新たなバリエーションと言うことで、かなりの人気が予想されます。シャープで抑えた印象の黒縞にシルバーの金具のM805、この万年筆らしい色づかいのものなのかもしれません。
※ご注文いただいた方には2月以降の入荷次第順次お渡しするつもりでおりますが、遅れも予想されます。ご了承下さい。