細くて硬いペン先~カスタムヘリテイジ912ポスティング

細くて硬いペン先~カスタムヘリテイジ912ポスティング
細くて硬いペン先~カスタムヘリテイジ912ポスティング

システム手帳を使ううちに細字の万年筆への欲求が高まってきました。
コンチネンタルのシステム手帳はバイブルサイズで、紙面のスペースも限られています。スペースを有効活用するためと、使う紙の枚数を少なくするために書く文字がだんだん小さくなってきたのです。
既に細字の万年筆は数本持っているし、その気になれば使っていない万年筆を細字に研ぎ出すこともできるので、それらを使えばいい。
実際、手持ちの万年筆でシステム手帳に記入するので満足していました。
その万年筆を知るまでは。

お客様のKさんと話していて、1990年頃に作られたパイロットカスタム72という万年筆の話になりました。
Kさんによると、その万年筆が京都の古くからある文房具屋さんにデッドストックで残っているという。
私は、ぜひ欲しいので、京都に行く際に買ってみますと話していました。
Kさんは、私が持っている万年筆の中でも異色なデルタコサックの元持ち主で、私に新たな世界を見せようとする何となく悪友のような存在。
なかなか京都に行く機会が持てず、カスタム72を入手できずにいる私の代わりに、先日Kさんが、ついでがあったからと私の代わりに買ってきて下さいました。
パイロットカスタム72を使い始めて、硬い細字のペン先の魅力に大いに魅せられています。
カスタム72は通常のカスタムシリーズよりも硬いペン先を備えた万年筆で、筆圧の強い人、運筆の早い人、カリカリの書き味が好きな人には好まれるものですが、すぐに生産されなくなって、今では入手することが難しくなっています。

硬いペン先の万年筆を使ってみて分かったことは、均一な文字が書けるということでした。
このペン先は私の欲していた手帳用の万年筆の条件にピッタリでした。
カスタム72はもう定番品ではないので皆様にお勧めはできませんが、パイロットカスタムヘリテイジ912のポスティングというペン先のものが、これに当たります。

パイロットの昭和2年の古い文献には既に今のペン先のラインナップが全て紹介されていて、このポスティングについて「一般の厚紙の帳簿に記帳するのに適当で、ブックキーパー(ペン先種類)の如く数字用でなく、普通の文字を細字に書くのに用ゐられます。極細であるから、弾力が硬い肉厚のものでなくてはならぬのは勿論、穂先は短か穂になっています。そしてブックキーパー程輪郭の鮮明な線は書けない代わり、紙当りを良くする目的から、イリジュウムの角々を丸めて研ぎます。従って書かれた線は濃淡の変化がなく、一本調子で勢いに欠けますが、繊細で清楚な感じを覚えます。」とあります。

繊細で清楚な線とはよく言ったもので、このポスティングも手帳に小さな文字をビッシリと書いても、スッキリと見やすい文字を書くことができます。
柔らかくてインク出の多い万年筆も味わい深くて良いけれど、システム手帳など手帳を書くことにこだわると硬いペン先の細字の万年筆の良さが見えてきます。

⇒パイロット カスタムヘリテイジ912

今年最も印象に残った万年筆~プラチナセンチュリー3776~

今年最も印象に残った万年筆~プラチナセンチュリー3776~
今年最も印象に残った万年筆~プラチナセンチュリー3776~

今年最後のペン語りになります。
仕事である万年筆や、その周辺のものや考えをお客様に提案して、ともに考えたいという気持ちだけは強く持っている私のとりとめのない文章に今年一年お付き合い下さったことに心から感謝しています。
来年も何卒よろしくお願いいたします。

今年最も印象に残った万年筆をプラチナセンチュリー3776だと言うと意外に思われるかもしれません。
アウロラ、ペリカン、オマスそして工房楔とのオリジナルこしらえなど、思い入れの強い万年筆はいくつもあって、そのどれも自分でも愛用している万年筆なので、それらの中から選びたいとも思いました。
しかし、あえて自分で使っていないプラチナセンチュリー3776を挙げたのは、それを選んでくれたお客様たちとのやり取りが最も心に残っていたことも理由のひとつです。

今まで出席を拒んでいた同窓会に今年初めて出席して、高校の時の同級生たちとの交流が始まりました。
同窓会の後、真っ先に万年筆を買いに来てくれたKくんはレストランをいくつか経営しています。
多忙な中当店の近くの英会話教室に通っていて、その前に立ち寄ってくれました。
前もって来ることを知らされていましたので、レストランオーナーに相応しい万年筆をいくつか用意していましたが、その中で最も飾り気がなく、実用的なプラチナセンチュリー3776シャルトルブルーを選びました。
元々書くことが好きで、彼のスケジュール帳は文字で埋め尽くされていたので、その選択は実務家の彼らしかったのかもしれないと思っています。

高校の時あまり交流はなかったけれど、Kさんもすぐ万年筆を買いにきてくれて、Kくんと同じセンチュリー3776のブルゴーニュを使い始めてくれました。
ご自分で商売をしていて、アメリカ、フランス、日本とその活動の範囲は広く、一軒の店で精一杯の私とはそのスケールが全然違うけれど、私の商売も面白がって、興味を持って話を聞いてくれる。
Kさんはその後シャルトルブルーを青インク用にオリジナルインク朔を入れて、ブルゴーニュを赤インク用にWRITINGI LAB.オリジナルインクオールドバーガンディを入れて使ってくれていますし、カッコイイからとアウロラ88クラシック使いだしてくれています。

お客様で友人のS等さんと靴の話をしていて、日本の靴メーカーは安いものでは奇抜なロングノーズの流行りもののようなデザインのものばかりを出している。安いものこそスタンダードな形のものを出すべきで、それこそが文化を作りだすことだと言っていたけれど、大変もっともな話だと思いました。
日本の万年筆メーカーは、初めて万年筆を使う人が選ぶことが多い、金ペン先がついているものの中で一番安い価格の1万円クラスの万年筆をベーシックなデザインにしていて、文化を作っているという責任感のようなものが感じられます。

センチュリー3776もベーシックな万年筆のデザインを踏襲しているけれど、もう一歩踏み込んで、半透明のブルー(シャルトルブルー)とレッド(ブルゴーニュ)を用意したことは、万年筆を、それも大人が使うべき金ペン先の万年筆使用者を増やすのに、先述した同級生の例のように、大いに役立っていると思っています。

今年最も印象に残った万年筆として、このセンチュリー3776を挙げたのは、万年筆の文化を支えているもののひとつだと思ったことと、私の個人的な想いである高校時代に置き忘れてきた友情を、この万年筆が思い出させてくれたからでもあります。

⇒プラチナ萬年筆#3776センチュリー

日本の技術とさりげなさ~パイロットキャップレス~

日本の技術とさりげなさ~パイロットキャップレス~
日本の技術とさりげなさ~パイロットキャップレス~

ある世界的ブランドが、先日パイロットキャップレスをベースに従来品の10倍ほどの値段を付けて発売したのですが、好評だそうです。
有名な潜水艦の名前をつけて外装もそれらしくデザインしてありますので、とてもカッコ良く魅力的なので、けっして高くないと思います。

ペン先が引っ込むタイプの万年筆で、ペン先が乾かないのはキャップレスだけで、スティピュラやさすがに大丈夫だろうと言われていたラミーでさえ、乾かないキャップレスタイプの万年筆を作ることができなかった。
それほどペン先を収納するキャップレスタイプの万年筆は構造的に難しいのだと思いますし、それだけにその技術力の高さ、長年かけて改良に取り組んできたという粘り強さは、パイロットらしいと思います。

完璧な造形の美しいラインを持つものに対して、パイロットキャップレスはあまりにも実用的な配慮により、武骨なデザインになっているけれど、それが日本のデザインなのだと思っています。
あった方が使いやすいクリップは、筆記の邪魔にならないよう細心の注意を払った形状になっているし、尻尾のようの出っ張っているノックバーは、実はとてもノックしやすい。
キャップレスのペン先はとても小さいけれど、その形から想像できない柔らかく心地よい書き味を持っています。
メモを書く万年筆としてこれ以上の資質を備えた万年筆は他にないと思えます。

使い手の好みによって選択できるようになっている3種類のボディについてご説明します。
1・キャップレスデシモは最もキャップレスのコンセプトに忠実なものになっています。
軽いアルミ製のボディは細めで、ポケットにさしても邪魔になりません。書き味の良い18金のペン先も備えています。
2・真鍮のボディのキャップレスマットブラックは、書くことにおいてはキャップレスデシモよりも上質な書き味を持っていて、これは重量感と握りの適度な太さによるところだと思います。

3・キャップレスフェルモ
キャップレスは普通の万年筆と比べるとかなり前重心で、ペンの後ろを持って寝かせて書く方にはそのバランスがあまり向きませんでしたが、キャップレスフェルモはそのバランスが普通の万年筆に近く、机上で使うキャップレスとしての機能に特化していると思っています。
キャップレス、キャップレスデシモはノックしてペン先を出しますが、キャップレスフェルモ だけ回転させてペン先を出すようになっています。

すでに一部店舗で出始めていて、来年初め頃から安定供給されそうですが、木軸のキャプレスも定番モデルになり、キャップレスのバリエーションは少しずつ多くなっていることで、需要が高まっていることが分かります。

きっとこのキャップレスが冒頭の世界的ブランドの目に留まり、今回のオリジナル製作ということになったのだと思いますが、ダンヒルに蒔絵万年筆を供給していた時にはダブルネームを頑として譲らず、ダンヒルナミキの名での発売を実現したのに、今回はパイロットの名前が表に出ていないのは少し寂しい気がします。
でも、このちゃんと使えるキャップレス構造の万年筆の偉大さを世界中の人が、大ブランドのモデルにより知ったのだとしたら、それよりも前からその存在を知っていたということを誇りに思いますし、それを10分の1の値段で実用本位なさりげないデザインを貫いてきたキャップレスに、これぞ日本製だというこの万年筆に愛着を覚えます。

⇒キャップレスデシモ
⇒キャップレスマットブラック
⇒キャップレスフェルモ

革の色~コンチネンタルのシステム手帳とペンケース~

革の色~コンチネンタルのシステム手帳とペンケース~
革の色~コンチネンタルのシステム手帳とペンケース~

最近ではあまり言われなくなりましたが、靴と鞄、靴とベルトの革の色はなるべく同じにしたいと思っています。
朝間違えて持って出たり、身につけてしまったらとても後悔するし、一日中少し憂鬱になってしまいます。
それと同じように思っているのが手帳とペンケースの色で、その二つは同じ色にしたい。
色だけでなく革質も同じにしたいと私は思っています。
色合わせをして、合う色同士を組み合わせた方が絶対にお洒落に見えるし、当店の女性目線ブランド「DRAPE」ではそれをなかなか上手に提案できていると思っています。

でも私は感性が古いのだと思うけれど、どうしても革の色は統一したい。
革の色が服装のコーディネートの中でアクセントになることくらいは分かっているので、その中に革が溶け込めばいいなあとは思っているけれど。
オリジナル商品で、と、
A7メモカバー(商品名クリックで移動します)は、シュランケンカーフの黒にこだわって、必ず黒をカラーバリエーションに入れています。
それは同じシュランケンカーフの革でいろいろなものを持って、統一感を楽しんでもらいたいと思ったからで、その中でも革の表情や質感に集中できる黒を選択しました。
美しいカラーバリエーションが多くあるシュランケンカーフの中で黒を選ぶというのは、本当にもったいないと思われるかもしれないけれど、黒のシュランケンカーフには他の色にはない飽きない魅力があると思っています。

当店オリジナルのに使っているダグラスという革の色、少し使い込んだ時のキラキラしたような艶が気に入っています。
こういう表情が見たくて、私はこの革にこだわっていて、そのような変化が大陸的だと銘打ったこの手帳らしさだと思っています。
コンチネンタルシステム手帳の内革はアノネイ社のバーガンディカラーのボックスカーフで、少し男性的な外革のダグラスと比べると対照的なノーブルなイメージの革になっています。この二面性が当店の地味な遊びで、この手帳の面白みになっています。
革の色を揃えたいといつも思っていますので、コンチネンタルシステム手帳と同じダグラスの革を使った当店の看板商品ペンレスト兼用万年筆ケースをカンダミサコさんに作ってもらい、コンチネンタルシリーズのペンケースとしています。
正直に言うと、使いやすさはしなやかなシュランケンカーフの方がいいけれど、太めのペンを入れて盛り上がったところにできる艶はこの革独特の色気があり、とても気に入っています。
革の色あわせがあって、服装のワンポイントになる。
ステーショナリーの革製品も、私は服装と調和していて欲しいと思うし、それを考える遊び心のような余裕を持っていたいと思っています。

⇒コンチネンタルペンレスト兼用万年筆ケース
⇒コンチネンタルシステム手帳

ダイアリーについて考える

ダイアリーについて考える
ダイアリーについて考える

カンダミサコさんのA5ノートカバーが再入荷しました。外側のシュランケンカーフ、内側のブッテーロなど、上質な革を贅沢に使ったものです。
特長的な構造で裏表紙にあたる内側のブッテーロ革を幅広くとっていますので、下敷き効果もあり、とても書きやすくなっています。更に外側に適度な丸みを持たせる効果もあって、考え抜かれた革カバーだと思っています。

12月は来年のダイアリーの試用期間かもしれません。
ほとんどのダイアリーが1月からではなく、前年の12月くらいから始まっていますので、今までの手帳と併用したりしながら新しく導入しようと思っているものを使い始めてみるといいのかもしれないと思い、私も始めてみました。
先日来店されたお客様が、来年は正方形のダイアリー(当店のオリジナルダイアリー)のマンスリーとデイリー(フリーの1日1ページ)を組み合わせて使おうと思っているとおっしゃっていて、私も同じことを考えていたので驚きました。

スケジュールはなるべく広く見渡せた方いいし、後からもう一度見たい事項も、なるべくページ数が少ない方が見つけやすい。そこでマンスリーダイアリーに書き込むことにしようと思いました。
1日1ページの効果は、その日あったことをそのページに全て書くという潔さを持たせることで、後から見つけやすくなります。
その日やるべきことも、あったことも全て同じページに書く。
とてもシンプルで無理のないやり方なのではないかと思います。

来年からは、自分なりのやり方で日記をつけたいと思っています。
あまり大きなものは自信がないので、サニーゴールド手帳などは自分の日記帳としていいのかもしれない。
ページ数が206ページなので1日1ページというわけにはいかないけれど、それくらいのコンパクトさがいい。
これも先日メールでやり取りしていたお客様がおっしゃっていて、ハッとしました。

最近、手帳用にエルバンの「TERRE DE FEU(ティエラ・デル・フエゴ)」というインクを使い始めて、とても気に入っています。
南米パタゴニア地方の最南部ティエラ・デル・フエゴという土地をイメージしたインクで、赤みがかった茶色のインクです。
見ようによっては落ち着きのあるボルドーのようにも見えて温かみがある。

ティエラ・デル・フエゴは非常に寒い、自然の厳しい最果ての地ですが、火山活動が活発で地熱あり温泉も出る場所。
そういったイメージをインクの色にしたらこうなるのかもしれないと思い、知らない土地へのロマンも感じられて楽しい。
大陸的と銘打ったコンチネンタルのシステム手帳に託した想いと、内側のボックスカーフのバーガンディカラーにもピッタリの色とイメージだと思っています。

ダイアリーひとつで仕事の効率も変わります。
ダイアリーが変われば、気分も大きく変わります。
1ヶ月間練って、来年1年快適に楽しみながら使うことができる手帳について、そして何か皆様にご提案できるものを考えたいと思っています。

カンダミサコ 文庫手帳カバー

カンダミサコ 文庫手帳カバー
カンダミサコ 文庫手帳カバー

先週に続けてカンダミサコさんの商品をご紹介することになりますが、それだけ年末に向けてカンダさんの製作のピッチが上がっているということと、当店とカンダさんとの距離が近くなっていると(色々な意味で)感じています。カンダさんは最近納品などでよく当店を訪れて下さるので、色々話をしています。

ただ良いものを作るだけではなく、店の様子や需要をその目で確認して、ご自分が作るべきだと確信を持ったものとのバランスを測っているプロフェッショナルな仕事をカンダさんから感じています。
カンダミサコさんの商品は、男性寄りの商品が多い当店の品揃えの中で異彩を放っているけれど、女性のお客様に来ていただくきっかけのひとつになっています。

カンダミサコさんの文庫サイズノートカバーが入荷しました。
厚さ10mmくらいまでの文庫サイズ(A6)サイズのノートなら収めることができる革カバーです。
私は買う必要もないのに、あちこちの文具店でシーズン真っ只中のダイアリー売り場をウロウロしていますが、文庫サイズのダイアリーの多さに改めて気付きます。
コンパクトだけどそれなりに書くスペースもある文庫サイズは手帳やノートにとってもちょうどいいサイズで、何よりもいつも鞄の中に本を入れておきたい活字中毒の方には最も馴染みのあるサイズだと思います。
このカバーの特長は、一般的なカバーに比べ比較的太径の万年筆も収めることができるバタフライストッパーの存在と、上質な革を使用しているところです。
バタフライストッパーはノートが広がらないようにする役割も担っていて、ペリカンの万年筆でM600まで収めることができますので、携帯用の万年筆には充分なサイズと言えます。

素材であるシュランケンカーフはその発色の良さと、色数が特徴的ですが使い込むことで艶が出てきたり、しっかりとしていながらしなやかさを合わせ持っている理想的な革です。
さらにカンダミサコさんの多くのカバーの特長として、表紙から折り返した前後の裏表紙部分を大きく、革を贅沢に使うことで表紙を補強していることもあります。
このしっかりとした表紙は書き込みがしやすくなるというメリットがあって、カンダミサコさんのこだわりどころになっています。

古い話で恐縮ですが、20年ほど前は文庫サイズの手帳というのはほとんどなく、手帳の多くが男性をターゲットにしていて、スーツの内ポケットやYシャツの胸ポケットに入る、各メーカーオリジナルサイズになっていました。
以前から革の表紙にダイアリーを入れて、毎年中身を交換して使いたいという需要は少なからずあったけれど、サイズの問題がありなかなか難しかった。
それでも最近は文庫サイズなど、本や紙の規格に合わせたものが女性をターゲットに出始めたこともあり、カバーなどは作りやすくなったと思っています。

気に入った革の手帳カバーは長く使うと味が出てきて、毎日使えることが喜びになってきます。
手帳の内容は使ってみないと自分に合うか合わないか分からない。
複数の選択肢がある文庫サイズのダイアリーなら、表紙をそのままに中身をまた買い替えることもできるので、ぜひ来年用のダイアリーの候補にしていただけたらと思います。

革を敷く

革を敷く
革を敷く

私にとっての理想的な大人の仕事風景は、机の上に紙を1枚だけ置いて愛用の万年筆が1本ある・・というもの。
テレビも音楽もついていない静かな部屋で紙を前にじっと考えて、思いついたアイデアをポツポツと書いていく。
そんな風に仕事したいと思うし、そうやったからと言って古臭いアイデアしか出ないわけではないし、パソコンを点けてネットを駆使していろいろ調べまくってもいい仕事ができるとは限らない。
万年筆の愛用者だったという、先日亡くなった高倉健さんはそんな風に著書の原稿を書いていたのではないかと想像している。

地味な毎日の繰り返しの我々にとって、健さんの演じる寡黙な人物はお手本のような存在だったので、ご高齢だったとはいえ早すぎる、もっと健さんの演じる男を観たかった。
惜しい人を亡くしたと思っています。

紙1枚の下に革のデスクマットを敷くとさらに快適に書くことができるので、そのシンプルな仕事の装備に、デスクマットと机上にわずかに彩りを与えてくれる少しの小物も加えて欲しいと思います。

カンダミサコのデスクマットはブッテーロという良質な素材を使っているので、使えば使うほど艶が出てくるし、傷が目立ってきたらブラシ掛けや水拭きで目立たなくすることができます。また、銀面、床、フェルトの三層構造になっていて、革のデスクマットが最も直面する反りに強い構造をしています。

私たちの机上事情に合った小さめのサイズというところも、発売から4年半経っても作り続けていることができる理由だと思います。
机の天板に革を敷くことは、机上用品を揃える基本だと思っています。

デスクマットの上に紙1枚だけ置いて万年筆で書くととても書き味が良くて、気持ちいいですが、その下敷き効果だけでなく他の働きもあります。

私はとても大事なことだと思っていますが、革のデスクマットがあれば、万年筆をその上に安心して置くことができるし、アクセサリーや時計なども同様だと思います。
大切にしているものをなるべく硬いものの上にそのまま置きたくないので、革の上に置くということも革のデスクマットの存在意義なのです。

デスクマットが敷けたら、あとひとつ小物も追加してほしい。
当店の品揃えの中にはペントレーなど様々なものがありますが、その中で私がとても気に入っているものは、借景のペンレストです。
ペンを1本置ける後ろにポストカードを1枚立てられるようになっていて、背景のポストカードでペンのある風景を演出するものです。
当店では、SkyWindさんの写真のポストカードを全て揃えていて、このポストカードと万年筆を組み合わせるために作った商品です。

SkyWindさんは女性の写真家ですが、道具に全くこだわっていなくて、お使いのレンズの倍率やスペックなどを興味津々に聞いても、何を使っているのかよく分かっていないことが多い。
上手な人というのはそういうものなのかもしれない、撮る前からレンズの性能とかカメラが、とかと言っている(それも楽しいことだけど)我々男性とは違っている。
でもその姿勢は、紙1枚と愛用の万年筆1本でまず何を書くかを考える、私が思い描く大人の男の姿勢に近い、理想的な表現者の姿だと思っています。

シンプルに生きる、シンプルに仕事をすることを考えた時、革のデスクマットを敷いてポストカードを1枚飾り、少しの彩りを添えた机上を想像しています。

⇒カンダミサコ ブッテーロ革デスクマット
⇒WRITING LAB.借景のペンレスト(栃・黒檀)

連用日記を始めよう

連用日記を始めよう
連用日記を始めよう

私は若い頃、一日を振り返る日記を書くという行為が後ろ向きなことのように思っていましたが、それは書いた事が無かった私の勘違いでした。
日記を書くということは、その時の自分の行動を記録するだけでなく、自分の考えを練り固める役に立つのではないかと思っています。
例えば同じテーマについて考えたことを日記に繰り返し書いていくと何かしらの解決の糸口のようなものが見えてきて、自分の中でストンと落ちるような答えが見つかることがあることは私も経験したことがあります。
やはり繰り返し書くということは何らかの効果をもたらすことなのだと思います。

毎日書く日記を読み返して振り返ることは過去の自分と向き合うことで、それは自分自身に教えられることもあるので、たくさんの本をひたすら読むことも勉強に違いないけれど、書き残すということも同じくらいか、それ以上の勉強だと思います。
なかなか出ないことの答えは、外にあるのではなく、自分の中にあるということも結構あるのだと思います。
過去の日記をわざわざ読み返さなくても、昨年の自分、あるいは一昨年の同日に自分が書いたものを書きながら読み返すことができるのが、連用日記です。
きっとかなり以前からあるものですが、私は最も進んだ日記帳の形式だと思っています。
連用日記の良いところは少しネガティブかもしれないけれど、一日の書く欄が小さいので、続けなければというプレッシャーが小さくなる所かもしれません。

当店のお客様で3年ないし5年、10年の連用日記を継続して書かれている方は多く、そんな方々を私は尊敬しています。
連用日記を始めるのはその年数が長くなればなるほどプレッシャーが強くなることも理解しているけれど、ぜひ私も始めたいと思っています。

日記帳にどんなインクで書くのかはその人の自由ですが、ブルーブラックなど少し落ち着いた感じの色で日記帳の最初のページをスタートさせたい。
私がブルーブラックのインクを使うのはその色だけでなく、ある効果を期待して使うことが多いのです。
冬以外の季節はあまり気にならないけれど、冬になるとインク出が多くなったり、ボタ落ちしそうになる万年筆が結構あります。そういう場合は万年筆のインクをペリカンのブルーブラックに入れ替えます。
以前はインク出を抑える効果のあるブルーブラックのインクは何社かありましたが、今ではペリカンとプラチナだけになってしまいました。

春先に最近インクもれするようになった、という相談を受けることが多いですが、それは冬の方が外気との温度差があって、手で握って書いているうちにインクタンク内の空気が膨張して、インクを押し出そうとする力が、他の季節よりも強く働くためです。
ちなみに手の熱を伝えやすいのは、金属やプラスチックのボディで、伝わりにくいのはエボナイトや木のボディのペンになりますので、冬は特にそれを中心に選ぶと快適に日記を続けることができると思います。

一日の終わりに日記を書く。それは楽しみに充分なり得ることなのではないかと思っています。ぜひ始めてみて下さい。


オリジナルダイアリーカバー完成

オリジナルダイアリーカバー完成
オリジナルダイアリーカバー完成

ル・ボナーさんが製作してくれているオリジナルダイアリーカバーの新作が完成しました。
今回はダイアリー本体にもかなり手を加えていて、今のところできることは全てやったと思っていますので、お客様の反響が楽しみです。
その声を聞いて、ダイアリーをもっと良いものにしたいという気持ちはいつも持っています。
今回は、評判の良い大和出版印刷さんの新製品「グラフィーロ紙」を採用できたこともあり、万年筆で書くということをコンセプトにしているこのダイアリーの使い勝手にどのような影響を及ぼすか見てみたいと思っています。

中身同様、ダイアリーカバーも変わり始めています。
ル・ボナー松本さんが企画してくれたものは、従来通りシンプルな仕様のものをクリスペルカーフで作っていますが、限定色のネイビーが追加されています。
クリスペルカーフはパリッとした見え方で、スーツなどのキチッとした服装にも合うのと思っています。
クロームなめしの革ですがわずかにエージングもあり、使い込むと艶が出てきます。

当店には以前から支えてくれている女性のお客様が何人かおられて、その方々のためにも、最近多く来られるようになった女性のお客様のためにも、何かしたいと思っていました。
そんな当店の女性のお客様をイメージして女性スタッフKが企画しているのが「ドレープ」で、今回の当店のダイアリーカバーはドレープとして企画しています。
今までシンプルに徹するために装着を拒んでいた、ベルトとペンホルダーを付けて、ダイアリーカバーとペンのコーディネートも楽しめるようになっているし、何よりもダイアリーを書こうとした時にペンがすぐあるというのはやはり便利でした。
かなり太目のペンまで入れることができて、パーカーデュオフォールドセンテニアルも入ります。

女性じゃないと企画できない、そして女性が使うことをイメージしていないと使わないようなきれいなサーモンピンクの革、仏アノネイ社のボックスカーフとブラウンのコンビ。
少し男性も意識しているブラウンは、使い込むとピカピカになって艶を出してくれるエージングも楽しみな革、伊フラスキーニ社のブレンダボックス革を使用しています。
昨年から販売し続けている手触りの柔らかさと傷つきにくさを両立したシュランケンカーフと、さらに傷つきにくく、水気にも強いノブレッサーカーフと、バラエティに富んだ種類の中から選んでいただけるようになっています。

私たちのオリジナルダイアリーは、これらの革カバーと組み合わせて使うことが前提になっています。
ウィークリーとマンスリー、又はウィークリーと大和出版印刷の正方形方眼ノートrect(レクト)と組み合わせることもできるし、マンスリーと厚みのある方の正方形ノートあるいはマンスリーと分度器ドットコムオリジナルの正方形ツバメノートと組み合わせて、革カバーに収めることができる。

ル・ボナー製のこれらのカバーも、オリジナルダイアリーを使いたくなる魅力のひとつになっていると思います。

⇒オリジナルダイアリーカバー(Pen and message.オリジナルTOPへ)gid=2127777″ target=”_blank”>⇒オリジナルダイアリーカバー(Pen and message.オリジナルTOPへ)

工房楔とのオリジナル万年筆「こしらえ」

工房楔とのオリジナル万年筆「こしらえ」
工房楔とのオリジナル万年筆「こしらえ」

「こしらえ」はペン先のついていない、あるいは書くことができない当店のオリジナル万年筆だと言うと乱心したのかと思われるかもしれないけれど、ペン先をつけなくても、持っているだけで嬉しくなるほどのものだと思っています。
それほど銘木の魅力に溢れたもので、眺めていても、触っていても、磨いても楽しめるものなので、仮に書くことができなくても楽しい万年筆(?)なのです。

パイロットカスタムヘリテイジ912/カスタム742という、字幅の選択肢が多く、どれを選んでもペン先の厚みのようなものが感じられる頼もしい書き味を持つ名刀を仕込むことができる「こしらえ」は、工房楔の永田氏が作る当店のオリジナル万年筆で、私はこのこしらえを誇りに思っています。

こしらえは使い馴染ませたペン先をボディを交換して使うことができるということと、使い込んで美しく艶が出たボディをペン先を交換して様々な用途で使うことができるという両側面において、万年筆を長く、より楽しみながら使う役に立つ演出だと思っています。

日本の万年筆は、海外の状況に比べてこういったカスタムボディが少なく、保守的な印象をずっと受けていました。
今ついているプラスチックのボディはメーカーが専用に設計したもので、それがベストの組み合わせだという見方もあるかもしれないけれど、それは大量生産が可能で、好き嫌いの出ないという、当たり障りのなさの追求に思え、この上質なペン先には物足りないと思っていました。

長年私や万年筆をある程度使い続けた人たちが思い続けてきたことに対して、永田さんがこしらえという軸で答えてくれました。
ボディの素材がプラスチック以外のもの、木であればいいというわけではなく、工房楔が作って意味のあるもの、一人の木工家が自身の作品として伝えるために残したいと思えるものがこしらえです。

工房楔の永田氏の場合、求められるもの、売れそうなものを相応の数作るのではなく、良い素材との出会いがあって、それが一番引き立つものを作る。そしてひとつひとつの木目が美しく出るように作るので、そもそもその作る動機というか、根源的なところから、大量生産のものや木であっても画一的に作られているものとは違っている。
そういう思想から生み出されている永田氏が作るものを私は製品ではなく、作品だと思うし、そのひとつひとつのモノには品格が備わっているように思っています。

このたびこしらえのバリエーションを増やし、ステンレスだったパーツを今回はエボナイトで作りました。
ステンレスパーツは木の素材とのコントラストが作品自体を締ったものに見せていましたが、エボナイトは木との親和性のようなものが感じられ、自然な印象。
ステンレスパーツのアクセントのあるバランスに対して、エボナイトは本当に軽く優しい感触です。

私もエボナイト仕様のこしらえを使い始めています。
工房楔の永田さんにお願いして桑の木で作ってもらいました。
海外の個性溢れる素材も大変面白いし、興味もありますが、やはり日本の木を1本持っておきたいと思いました。
パイロットの10号ペン先を名刀と見極めて、そのための装身としてのこしらえと名付けたからには日本の木を使いたかった。

道具類の柄などに使われる素材で、経年変化は削ったばかりの黄金色からこげ茶に近い色まで変化する。
桑の杢の日本の木らしい穏やかな表情が気に入っています。
手触りも、永田さんの仕上げのセンスによるところだと思いますが、サラサラとわずかな手応えがある手触りが気持ちいい。
実は桑のこしらえは2本あって、1本はSF、1本はフォルカンのペン先をつけています。
エボナイトのパーツのこしらえはステンレスに比べて10gほど軽いので、弾力の強いペン先よりも、柔らかめのペン先の方が向いていると思いました。
SFはプラスチック軸の時、そのペン先の柔らかさが少し使いにくく感じましたが、エボナイト仕様のこしらえでは全く気になりません。
かすかな柔らかさを感じながらダイアリーにゆっくりと書き込むのに使っています。
フォルカンの軽い筆圧で書いた時でも濃淡が出るような、フワッとインクが出てくるようなフィーリングはとても心地いい。
ダイアリーのようなものに書くには少しくどい感じがして、向いていない気がしますが、手紙や日記、報告書のような感情を込めてもいいようなものには合っていると思いました。

今まで両サイドが深くえぐられたようなペン先の形が気になっていて使ってみたことがなかったけれど、もっと早く使っていればよかったと思いました。
柔らかいペン先は本当に使い手を選ぶところがあって、筆圧のコントロールができる人でないとなかなか使いこなせない。

ペン先が開いて内面がガリガリと引っかかったり、インクが途切れたり、書き出しが出なかったりと、フォルカンのようなペン先を手に入れるには相当な覚悟が要ることだけはお伝えしておかなければなりません。
でも、そういう使いこなしが難しいけれど、攻略したいと思っている優れたペン先をつけたいと思わせるところがこしらえにはあります。

出会った時から永田氏の木の杢へのこだわりは相当なものだと思ったけれど、最近ではその作るものに何かが宿り始めているとさえ思えます。
上手く表現できないけれど、神がかってきたというと大げさかも知れませんが、永田氏の作品に迫力が出てきている。

こしらえにもそれが宿っていて、名刀を収めるというコンセプトに充分に沿ったものだと思っています。