包み込む ~残心A7メモカバー~

包み込む ~残心A7メモカバー~
包み込む ~残心A7メモカバー~

久し振りに六甲アイランドにル・ボナーさんを訪ねました。
用件はあるにはありましたが、それは別に会わなくても済むようなことでしたが、私としては理由をつけて松本さんの顔を見ておきたかった。
それほど長く会っていないわけではないけれど、年が変わったからそう思うのかと、自分で分析しています。

店が終ってからだったので、六甲アイランドに着いたのは8時になっていて、真っ暗で人通りも少ない。でもル・ボナーさんの灯りが見えて、何かホッとさせるような、そこに向かってしまうような気分になります。
いつも訪れる間隔が空いてしまうので、店内のレイアウトがいつもどこか変わっていて、いつも新鮮な感覚があります。
初めて訪れた時は今の半分の広さでしたが、今では隣の店も吸収してそのまた隣も倉庫として使っている。
寂れていく六甲アイランドセンター周辺の中でル・ボナーさんが周りのお店を吸収するほど元気なのは、松本さんがその仕事を楽しんで、様々なものを世に送り出しているからだと思います。
私もそれはお手本にしたいと思っていて、自分の仕事を目一杯楽しむということが、今年のテーマになっています。

昨年末から、一昨年に発売していた残心シリーズが復活しています。
残心シリーズはデザイン、作りともに今までの革小物の常識にとらわれていないものになっています。
シンプルで最小限の加工のそのシリーズは、松本さんが頭を切り換えて革製品のデザイナーとして考えたから生まれたのかもしれません。

全ての製品を自作するのではなく、協力してくれる工房に製作を依頼するやり方に切り変えることができたのは、松本さんの中にデザイナーとしての部分と、職人としての部分がバランス良く存在していたからではないかと思っています。
薄くした革はかえって柔らかさが出て、包み込むような製品の風合いに貢献している。
残心シリーズのA7メモカバーは当店も扱わなくてはならないものだと思っていましたので、ル・ボナーさんを訪ねた時に譲っていただきました。

発売してすぐ売り切れてしまいましたが、クリスペルカーフは光沢のあるとても滑らかな手触りの革で、スーツなどフォーマルな服装に特に合います。
黒桟革は柔らかい黒毛和牛に漆の粒を蒔いて傷に強くした丈夫な革。
シュランケンカーフは柔らかい手触りですが、傷に強く発色の美しい革で、それぞれ質感の好みや服装に合わせて選べるようになっています。

要があって使う大きなノートやダイアリーもいいけれど、思いついたこと、覚えておきたいことなどを一言書いておく。
なくても困らない小さなメモ帳は漫然と流されてしまう時間の過ごし方を変えてくれる。
大きめのフラップにピッタリ合う万年筆を選んで持ち歩きたいと思わせる、何とかつかいこなしたいと思わせるメモカバーです。

当店で扱っているA7サイズのノート・メモは問題なく入りますが、私は厚手のものを入れたいと思い、ダイゴー社のダイアリーE1008を余分なところを切って入れています。
4月始まりダイアリーも発売されていて、E1101というものもあります。
最近分った情報では、タナベ経営のブルーダイアリージュニアは表紙を外すとこのカバーにきれいに収まるようです。

⇒ル・ボナー革製品トップへgid=2125743″ target=”_blank”>⇒ル・ボナー革製品トップへ
⇒ライフ ノーブルノートA7
⇒コクヨ A7ノート(ミシン目入り)
⇒ル・ボナーの一日(ル・ボナー松本氏のA7手帳カバー紹介ブログ)

~万年筆の遊び~ 2つのペン収納具

~万年筆の遊び~ 2つのペン収納具
~万年筆の遊び~ 2つのペン収納具

万年筆で手帳にきれいに書けたり、手紙を書きながらその書き味にうっとりしたりするのも楽しくて、それも万年筆の良いところですが、それだけではもったいない。
そのデザインや存在を、そして複数の万年筆が集まった時の組み合わせも楽しみたい。
それぞれに何か共通点を持たせてより強い空気感を作ることが、揃えを楽しむことです。
それは万年筆を書き味以外に楽しむ、遊びのようなものかもしれません。
万年筆は、大した遊びらしい遊びを知らない私にとって、大切な仕事道具でもあるし、遊び道具でもあります。

万年筆の遊びをさらに演出してくれるものに出会いました。
WRITING LAB.にペンケースSOLOなどの革小物を提供してくれていて、オーダー靴の製作もしているイル・クアドリフォリオさんの工房の階段の手すりなどが、意匠が凝らしてあって、とても面白いと思っていました。
イル・クアドリフォリオの久内さんの友人の家具職人加藤亘さんが製作したとのことで、加藤さんは、オーダー靴には欠かせない木型も作っているとのこと。

加藤さんが作った試験管立てをイメージしたペンケースSOLOの展示台もあって、それらに遊び心のようなものを感じていましたので、ペンケースSOLOの展示台をベースとしたペンスタンドを作ってもらいました。

WRITING LAB.のメンバーと加藤さんとで昨年末から打ち合わせを重ねて、2つのペンスタンドが出来上がりました。
ペンカウンターはその名の通り、バーのカウンターの様に横一列に3本のペンが並ぶもの。
ペンテーブルはサークル状に5本のペンを立てることができるようになっています。
このペンスタンドにそれぞれのペンを並べる時に、色を合わせたり、冬は温かみのある木軸にしたり、夏は鮮やかな色のものにしたりして、季節感なども取り入れたりしたら、机上の装飾としても面白い存在になると思います。

かなりこだわって、ペン通しのサイズ、高さ、細部の磨きなどの仕上げなど注文をつけましたが、加藤さんもそれに充分応えてくれて出来上がりました。
素材はウォールナットを使用していて、仕上げに軽くオイルを馴染ませています。

手作業で丁寧に仕上げられているため、受注生産で納期が3週間ほどかかりますが、ぜひ私たちのペンの遊びにお付き合いいただきたいと思います。

同じタイミングで、長く品切れしていました工房楔のウォールナットのトレイも完成しました。
こちらは既に多くのお客様にお使いいただいているもので、永田氏の安定感のある仕事振りが感じられるしっかりしたものです。
オーソドックスなスタッキング可能なトレイで、それぞれの層をチーム分けして収納したい。
意匠に凝っているわけではないけれど、とてもサマになっている。
たくさんあるコレクションを、楔のトレイに収納しておいてもいいし、飾る場合はアクリルの窓のついたフタを使うとペンを見せることもできます。

家具職人のアイデアが生きるペンスタンドと、実力派木工家のしっかりとしたペン収納具。どちらも万年筆の遊びを演出してくれる、あると楽しいものだと思います。

⇒ペンスタンド「ペンテーブル」
⇒ペンスタンド「ペンカウンター」
⇒工房楔・机上用品TOPcbid=2557546⇒工房楔・机上用品TOPcsid=5″ target=”_blank”>⇒工房楔・机上用品TOP

「手帳の風景展」作品の募集

「手帳の風景展」作品の募集
「手帳の風景展」作品の募集

年が変わったので、リスシオダイアリーのカバーをシングルに代えて使っています。
年をまたぐ直前、12月の初め頃からは2013年と2014年の両方とものダイアリー持ち歩く必要がありますので、ダブルのカバーに2年分のマンスリーダイアリーとウィークリーダイアリー入れていました。
翌年の予定が入ることもあるし、新たな年が始まるまでに方針やスケジュールなどについて考えておきたいと思っていましたので、とにかく2年分のダイアリーは持ち歩きたかった。

2014年のダイアリーを持ち歩いたおかげかどうか分からないけれど、今年は今まで以上にスケジュールについて考えることができたと思っています。
ダブルのダイアリーカバーは3年前に作ってもらったクリスペルカーフのもの。
サラッとした手触りと、作り込まれた感のある厳かな革の質感にダブルという厚さも加わり、良いもののオーラを放っています。

今年から使い始めたシングルのカバーはシュランケンカーフのブラックに茶色のステッチで内側ブッテーロのチョコ色のものにしました。
若さはないけれど、男っぽい感じがする色の組み合わせだと思っていて、とても気に入っています。
クリスペルカーフの質感も好きだけど、シュランケンカーフの柔らかな手触りは心地良く、そのくせ傷がつきにくく、扱いやすいすごい革だと思っています。

使い込むとこのフワフワ感は薄れ、光沢が出てきます。
中身のウィークリーダイアリーとマンスリーダイアリーの組み合わせは一昨年から固定されて、何不自由なく使っている。
たまに他のものを使いたい衝動にかられるけれど、これに代わるものはないと分かっているので、他のものに代えることはなくなりました。

私のリスシオワンダイアリーの使い方は、スケジュール用のマンスリー、ToDo用のウィークリーというように決まっているけれど、きっと他の人はまた違う使い方をしているはず、いろんな使い方があるはずだと思っています。
皆がリスシオワンダイアリーを使っていれば、それはそれは素晴らしいことだけど、他のダイアリーを使っている人も、それをどのように使っているか見てみたい。
ダイアリーでなくても、ノート、手帳をどのように使われているか見てみたいと思っていました。
そこで、私の楽しみにかなり偏っているけれど「手帳の風景展」を開催したいと思います。

使われている手帳の中身やそれを書いているペンを撮った写真を写真展形式で、当店にて展示します。
展示終了後には、作品をまとめて冊子にできたらと考えています。

展示期間は、5月10日(土)~6月8日(日)、作品募集の締切りは4月29日(火)です。
手帳とペンなどの道具をお持ちいただきましたら、その場で撮影してすぐお返しさせていただきます(日曜日は除く)。
ご来店は難しいけれどご参加いただける方は、当店宛にメールの添付で写真をお送りください。

不明な点は、電話078-360-1933あるいはメール penandmessage@goo.jpにてお問い合わせください。
多数のご参加お待ちしております。

小さなノートと小さな万年筆のプレゼント

小さなノートと小さな万年筆のプレゼント
小さなノートと小さな万年筆のプレゼント

靴をプレゼントするとその相手がその靴を履いて逃げるという迷信を私は信じていて、靴をプレゼントすることはないし、もらったこともありません。
若い頃、彼女からワークブーツを贈ってもらった後にすぐに別れたことが迷信を本気で信じる経験になっているけれど、靴をプレゼントするというのは、サイズ、足の形、好みなど様々な要素があるものを贈るのはそれだけ難しいということなのかもしれません。

でもペンは個人に合わせたサイズなど存在しないので贈りやすい。
ペンというのは何本あっても邪魔になるものではなく、絶対に使わないということはないのではないかと思います。
万年筆店をしているから思うのかもしれませんが、何かの時にペンを贈るというのは特別な意味のようなものがあって、良い贈り物です。
ペンを贈る心には親愛の情のようなものが込められていて、ペンを贈られた人は、そのペンを使うたびに贈ってくれた人のことを思い出すだろう。
それは男性同士の友情の証にもなって、例えば別れのときにお互い大切にしていたペンを交換し合う。
余程の仲でないとそんなことはできないけれど。

バレンタインデーが近づいているので、こんなことを書くのですが、万年筆を使っていて詳しい人にあえてペンを贈ることに臆しないで欲しいと思います。
そこにこうやって使って欲しいというメッセージのようなものが込められていれば素晴らしい。
私は休みの日専用の小さな手帳を持ち歩いていて、そこに行動記録をその都度書いています。
何時から何時、どこにいて、何をしていたかを箇条書きに、客観的事実だけを淡々と書いていくのだけど、もっと早くからやっておいたらよかったと思いました。
それが記録として何かの役に立つような気がしませんが、休みの日一日の意識が今までと全く違います。

場所を移動したり、何か違うことをするたびに時計を見て書き入れるだけ。歩きながらでも書くことができます。
今まで、もう一日が終ってしまったと漫然と休みの日を過ごしていましたが、時間の経過にいちいち意識あって、何か時間に流されていないような、時間を自分の意思で泳いでいるような感覚になりました。
こういう自分の経験から、奥様から旦那さんへのバレンタインデーのプレゼントとして提案したいのは、休みの日も仕事の時と同じように気を入れて過ごしてもらうための、小さなノートと小さな万年筆です。

小さなノート(A7サイズ)にはカンダミサコさんの革のカバーをつけることができて、それならより愛着を持つことができる仕様になります。
そんなノートに似合うのは、やはり小振りな万年筆。
パイロットレグノ89Sなどはキャップがパッチンと閉める勘合式で、さっと外して、ちょっと書き込んで、パチンと仕舞うことができる。
14金のペン先は書き味が良く、柔らかく気持ちは小さな万年筆といって侮れないものがあります。
木のボディは使っていくうちに艶が出てくるので、これもまた愛着が湧く仕様です。

普段の何でもない休日をより輝きのあるものにするのは、本当は大したことではなくて、小さなノートと万年筆で充分でした。
きっと旦那さんに感謝されて、ホワイトデーには何倍にもなって返ってくるかもしれませんが、それは保証できません。

⇒パイロット レグノ89S

純銀製羽根ペンクリップ再製作完成

純銀製羽根ペンクリップ再製作完成
純銀製羽根ペンクリップ再製作完成

20代前半の頃、スズキのジムニーという軽自動車の四輪駆動車に乗っていました。
たまには林道などの未舗装の道を走ったりして、それはとても楽しかったけれど、ほとんど街中の道を走っていました。
極限の悪路をその車で踏破することなどなかったけれど、メーカー以外からも売られている様々な装備をお金を貯めては自分で付けていました。

実用と関係なくてもいい、自分のオリジナリティの仕様に車がグレードアップしていくのがとても楽しくて、バイト代は車のローンとガソリン代とパーツ代に消えていました。
今もお金があれば自分の好きなものを買ってしまって、貯金する習慣は今もついていないけれど、今それは関係ありません。

私は若い頃に乗っていたジムニーが最も楽しい車だと思っているけれど、それは様々な装備によって、自分仕様に仕立てることができたからだと思っていて、万年筆にもそんな楽しみがあっていいと思いました。

書く機能に何の関係もなくてもいい、自分が愛用する万年筆が自分仕様になってくれればと、思う人は多いのではないでしょうか?
万年筆は書く道具であるけれど、私にとっては同時に遊び道具でもあるので、ジムニーのような楽しみがあっていいと思います。
万年筆の装備と言っても、それほど手を加えることができる部分は多くなく、ネジパーツで外すことができるペリカンのクリップは遊べるパーツのひとつだと、目をつけていました。

ペリカンM800、M600いつけることができる、当店のマークでもある羽根ペンをモチーフにしたクリップを作りました。
前述したように機能的には、何ら変わりはありませんが、ペリカンがデルタのようなインパクトのある外観に変わりますので、そのカスタマイズを楽しんでいただけると思います。

羽根ペンクリップは、スターリングシルバーで、光沢仕上げといぶし仕上げがの2種類があります。

ボローニヤの思い出

ボローニヤの思い出
ボローニヤの思い出

ル・ボナーの松本さん、分度器ドットコムの谷本さんとドイツ、チェコ、イタリアを巡る旅をしたのは今も鮮明に覚えているけれど、もうずっと昔のように思えます。
その懐かしい旅行を思い出すことができる物のひとつが、オマスアルテイタリアーナミロードハイテクの万年筆です。
イタリアボローニヤの万年筆メーカーオマスを訪れた時に記念でいただいたもので、3人が同じものを持っています。
その旅で訪れた街々の中でもボローニヤは特別に楽しかった街のひとつでしたし、オマスでも温かい歓迎を受けましたので、ボローニヤにはとても良い印象を持っています。

改めて聞いたりはしないけれど、二人はこのミロード万年筆を使っているのだろうか。
日本のメーカーを訪れたことは過去にあったけれど、海外の万年筆メーカーの本社を訪れることなどそうそう経験できることではないので、オマスは私たちにとって特別な存在であり続けています。
なるべくならオマスの万年筆を使いたいと思うし、オマスの万年筆を使った感想を、良いところも欠点も他の人と共有したいと思っています。

いただいたミロードはいつも手紙用に使っていて、他のメーカーとは違う独特の使用感を味わっています。
ボディの装飾は皆無、唯一外見上の特徴はボディが12角形になっているというだけですが、それが充分個性になっていて、この抑えたデザインの良さがゆっくりと分かってきました。

書き味と書ける文字にも特徴があって、オマスの味を持っている。
使い始めた時、その良さにピンとこなくても時間が経つほどに好きになっていくものというのは私は多くて、ミロードもそんな万年筆でした。
持っていることを自慢できるような希少な万年筆よりも、自分が使ってみてその感想を多くの人と共有できる定番品の万年筆をいつも使いたいと思うのは、万年筆店の店主としても当然のことなのかもしれません。

2013年の記念として、そして新たな万年筆人生、物書き人としての人生の新たな局面を願ってアルテイタリアーナパラゴン万年筆を使い始めました。
大きな万年筆を手帳から手紙まで全てに使いたいと思いましたので、EFのペン先にし、色はやはり黒ボディに金金具。
オマスはマザーオブパールマルーンという革と相性の良さそうな色もありますが、自分の万年筆の定番の色を選んでしまいました。

キャップをつけるとそこそこの重量があって書き味も良くなり、寝かせて書く手紙のような用途にはいいですが、ダイアリーに書く時はそれほど寝かせて書かず、キャップをつけずに書いています。
ミロードとは違い、首軸が金張りの金属になっていて、大きなボディとバランスをとるために重量を先の方で稼いでいるようです。

金張りの首軸は、指にピッタリと添って滑りにくい。
そして何よりもその存在感がいい。極太軸を手に乗せて書く感じは文豪になった気分を味わえます。
手に届くまでは、EFを選んだので細すぎて手紙や原稿用紙には辛いのではないかと心配していました。
でもペリカンロイヤルブルーで使っていますが、エボナイトのペン芯の恩恵もあって、インク出が豊かで全く問題ありません。
最初に少しペン先の寄りなどを修正して、イリジュウムの形を整えた程度で使い始めましたが、大変快適に使っています。

最初の目論見通り、手帳から手紙まで使っていて、他の万年筆をここ数日使ってあげられていないことが気掛かりです。


~仕事にも使える遊び道具~ペリカンM101Nリザード

~仕事にも使える遊び道具~ペリカンM101Nリザード
~仕事にも使える遊び道具~ペリカンM101Nリザード

小学校低学年の頃だったと思うけれど、スーパーカー消しゴムをボールペンで弾いてレースをするという遊びが大流行しました。
多分全国的なものだったと思うので、私と同年代の方は覚えておられると思います。
それは消しゴムとボールペンという、学校に持って行っても何ら不自然ではない文房具だったのがポイントで、小学生にとって親や先生から苦言を呈されることないもので遊べたのが魅力でした。

万年筆も似たところがないだろうかと、35年前の車の消しゴムをボクシーのボールペンで弾いていた時の自分の気持ちを思い出してみて気付きました。
仕事にも使うことができる遊び道具。
以前、万年筆を覚えたての頃は書き味が良ければ、あるいはペン先が柔らかければ、自分にとって良い万年筆でした。
しかし、それはあまりにも狭い了見でしか万年筆を見ていなくて、万年筆を書き味だけで語るのは片手落ちというか、この筆記具の楽しいところを充分に味わえていないのだと、中年と言われても文句の言えない年齢になってから気付きました。

ペン先が硬くても、柔らかくても気持ち良く書くことができるのは当たり前だけど、いかに遊べるかという条件が万年筆の優劣を判断する基準に加わるようになりました。
遊べるかというのには、そのペンに対していかに話ができるかということも含まれていて、その万年筆を肴にして盛り上がることができれば、それは遊べるペンだということになります。

ペリカンが自社の往年の名品を復刻させたシリーズの今年のペンがM101Nリザードで、この現代の万年筆にない個性の強さは、充分に遊べる万年筆の資格を持っています。
まずリザード革模様のボディが強烈です。
オリジナルはなぜこの模様を万年筆にしようと思ったのだろうか。
ペリカンは175周年の記念すべき年である今年を記念する万年筆、ジュビリーペンにもこのデザインを採用していて、思い入れの強さを感じてしまいます。

175周年をお買い上げいただいたお客様で、101Nと同素材、同色であるグレイ色のペンケースSOLOとインクケースCADDYをオーダーして下さり、お作りしたことがあります。
これも、同素材、同色で揃えることも万年筆の遊びのひとつで、何て粋な遊びだろうと思いました。

万年筆単体だけでなく関連する品も揃えて楽しむ。
個性が強いだけに、より他の素材や違うものでも揃えを楽しむことができる。
ペリカンM101Nリザードには、そんな遊び心を持った人が使うのに見合ったところがあると思っています。

~アクセサリーのようなペン~アウロラアクア

~アクセサリーのようなペン~アウロラアクア
~アクセサリーのようなペン~アウロラアクア

現代の世の中の仕組みを考えると、もしかしたら仕方ないことなのかもしれませんが、メーカーが違っても同じパーツが使われていることに気付くことがあります。
特にペン先、ペン芯などの重要なパーツが共通なことが多く、それに気付くと少し寂しく思います。
各メーカーは、パーツメーカーが供給するそのパーツを使うことによって、開発コストをかけずに他のところに力を集中して万年筆を作ることができるので、その部品メーカーの業界への貢献は非常に大きいけれど、それはまた別の話になります。
ペン先、ペン芯が同じであることは、時計のムーブメントがメーカーを超えて共通して使われていることと似ていて、それが今の物作りの仕組みということになるのかもしれません。
でも世界の仕組みから外れて物作りをしているメーカーが中にはあって、そのようなメーカーと同じように、仕組みから外れて心細く感じる自分の弱気と戦いながら自由にやっている当店との共通点を見て、親近感を覚えています。

アウロラは世界の経済の仕組みからも、物作りの仕組みからも外れている、孤高の存在であり続けている業界でも珍しいペンメーカーです。
ペン先、ペン芯などのパーツも自社で製作していて、デザインにおいても独特のものを持っています。
他のメーカーのように次々と新製品や限定品を発売することがなく、その活動はとてもゆっくりでマイペースだけれど、アウロラが何か新しく発売するといつも気になります。

アウロラの新作アクアは美しいブルーで、2010年に発売されたマーレリグリア、2000年に発売されたマーレと、同色の素材が使われていますが、このブルーはアウロラ独特の色合いで、他のメーカーで同様のものを見ることはありません。
ミニペンにカテゴリーされるアクアですが、小型万年筆の定番のひとつペリカンM400と1cmほどしか違わないことからも、充分実用的に使うことができるサイズになっていますし、小さいながらもこれもアウロラ独自の仕様であるリザーブタンク内蔵の吸入機構も備えていて、何となくこういうところにも実用性と同時に遊び心も感じてしまいます。

ボールペンはコンパクトで手帳のペンホルダーにも収まりやすいサイズです。
替芯はとてもポピュラーな、細いステンレス製の短い芯で、これは国産のものでも入ります。
国産で言うと、ゼブラ、三菱、パイロットなどから同サイズの替芯が発売されていて、様々なものの中から選ぶことができます。
書きやすい万年筆は、もっと価格の安いものでもあるけれど、そういうものにない魅力をアクアは持っています。
ただ書きやすいだけでなく、見ているだけで楽しい、持っているだけで嬉しいアクセサリーのようなペンです。


〇画像は左からアクアボールペン・アクア万年筆・マーレリグリア(参考商品)・ルナ(参考商品)

“縁日の水鉄砲” ペリカンM205DUOシャイニーグリーン

“縁日の水鉄砲” ペリカンM205DUOシャイニーグリーン
“縁日の水鉄砲” ペリカンM205DUOシャイニーグリーン

この万年筆を買われたお客様との会話。
「なんだかおもちゃみたいな色ですね」
「昭和のプラスチックの色・・・かな?」
「なるほど!」
そんなやり取りがあって、この万年筆の色にやっと思い当たりました。
縁日で買ってもらった記憶がある水鉄砲の色でした。
いきなり今回ご紹介する万年筆に失礼な書き始めですが、私は親しみと懐かしさを込めてこの万年筆を縁日の水鉄砲だと決めつけています。

まさかドイツ人が昭和の子供のおもちゃである緑色の透明の水鉄砲をイメージしたわけでは絶対にないけれど、日本の男の子はそれを必ず思い出すと思います。
子供の頃のおもちゃ的な色の万年筆ですが、ラインマーカー代わりに使うというところも遊び心に溢れていて、オフィスのおもちゃだとも言えます。

万年筆をラインマーカーに使いたいという万年筆を使う人誰もが思うことを形にした、一昨年に発売されたイエローデモンストレーターに続く第2弾がこの蛍光グリーンのインクが付属したシャイニーグリーンです。
本を読む時に、資料を読み解く時にラインマーカーを愛用する人は多く、几帳面な人は定規を当てて真っ直ぐな線を引くけれど、万年筆に定規はペン先が削れてしまうので、あまり相性は良くありません。
でもこの万年筆は金ペン先ではないステンレスのペン先なので、定規を当てて線を引いても擦り減らないと思われます。

このステンレスのペン先、他のペンのステンレスペン先に比べると出来がかなり良くて、とても良い書き味、柔らかささえ感じられ、以前から評価の高かったペリカンのステンレスペン先の評判と違わぬ出来を見せています。
ラインマーカーというと100円くらいのものなのに、それに敢えて万年筆を使う。
しかもボトルインクからインクを吸入させて使うことが私には何とも粋で、この懐かしい色あいの万年筆を取り出して作業する様は、ずっと以前に発売されていましたモンブランマイスターシュテュックの146サイズの蛍光マーカーとはまた違う感じでカッコよく思えてしまいます。

ラインマーカー専用ということで、ペン先は太い線にも対応できるBBのステンレスのペン先がついていて、これが前述通り思いの外書き味が良い。
そんなギャップも楽しめてしまう、遊び心のある万年筆、それがペリカンM205DUOシャイニーグリーンです。

心を込めて、楽しく年賀状を書く

心を込めて、楽しく年賀状を書く
心を込めて、楽しく年賀状を書く

今年も無事に年を越せそうで、本当に有難いことだと言うと、そんなに苦しいの?と心配して下さる方がおられますが、私は年を越せるのが当たり前だとは思っていなくて、仕事を続けさせてもらっていることを常に感謝しています。
大袈裟に言うと、生きているのが当たり前と思える現代人ではなく、生きていることが有難いと思える戦国武将のようなものかと粋がっています。

無事年を越す前に訪れる大仕事が年賀状書きです。

当店もお客様やお世話になったメーカーの方々に年賀状を書きますが、いつもデザイン・製作・宛名書きを久保が、一言コメントを私が書くのですが、枚数が多いのでなかなかの大仕事になります。

宛名は比較的太い文字が書ける万年筆で書いた方がどっしりとして、かっこいいけれど、コメントは細字の万年筆の方が都合が良いので、年賀状書きには太字と細字の万年筆を使い分ける人がほとんどではないかと思います。
どの万年筆の太字を使い、どの万年筆の細字を使うかいろいろ考えてから年賀状書きに向かう人が多いのかもしれませんが、インクなどの備えも非常に大切な問題です。

官製の年賀はがきには再生紙とインクジェット用の2種類があって、表面(宛名を書く面)はどちらも問題ありませんがインクジェット紙の裏面に、万年筆で書こうとすると、酷くにじんでしまいます。
インクジェット紙には、ボールペンを使わないといけないところですが、たくさんの枚数をボールペンで書くのは疲れますし、楽しくありません。

どうしても万年筆を使いたい場合、顔料系インクを使うと、万年筆でにじまずにインクジェット紙に書くことができます。
顔料系インクは紙につくと表面に留まって固まってくれますので、にじまない紙の影響を受けないインクです。
プラチナのカーボンインク、セーラーの極黒が代表的で、それぞれのメーカーでカラーバリエーションがあります。
セーラーには青墨というブルーの顔料インクがあるし、プラチナはブルー、セピア、ピンクがあります。
セーラー極黒、青墨、プラチナカーボンブラック、顔料ブルーには、それぞれカートリッジインクもあって、顔料インクの吸入でペン先の刻印にインクが付着するのが、気になる方は顔料インクをカートリッジで使われることをお勧めします。
また雪国など、水分が年賀状に付きやすいと思われる地方への年賀状の宛名にも顔料インクで書いておく方が安心です。

他には表面がツルッとした紙もまた、万年筆のインクが乗りにくく、万年筆を使うことを諦めそうになりますが、その場合パイロットのスタンダードなインク、ブラック、ブルーブラック、ブルーは光沢のある紙にも乗りやすいのでお勧めです。

あと年賀状書きにあればとても便利なのが吸取紙です。
年賀はがきはインクの吸い込みが遅いので、すぐに重ねたり、ひっくり返すことができません。吸取紙を一度当てておくと、重ねても安心です。

WRITING LAB.オリジナルの吸い取り紙をそのままの大きさで使っていいし、はがきの大きさにカットして使ってもいい。
ある程度装備を揃えて始めると、年賀状書きは大変ですが、心をこめて楽しく書きやすいのではないかと思います。