オーバーサイズへの誘い

Pen and message. 特別注文KOP smoke

私は手が大きい方ではありませんが、オーバーサイズのモンブンラン149とペリカンM1000は愛用の万年筆です。

私の場合もう一回り小さなレギュラーサイズの万年筆の方が合っているのでは、とよく言われますし、その方が選択肢もたくさんあります。

でも私はあまり美しさを気にして文字を書く方ではないので、レギュラーサイズの万年筆ならではの繊細なコントロールのしやすさはあまり必要ではなく、楽にペンを握ることができるオーバーサイズの方が合っているのかもしれないと思うこともあります。

小ぶりな手でオーバーサイズの万年筆を握ると手に余ると思われるかもしれませんが、私はそんなふうに感じたことはないし、オーバーサイズの万年筆を握った時の喜び、嬉しい気持ちは何年経っても変わらなくて、書くぞと思った時にはオーバーサイズの万年筆に手が伸びてしまいます。

他の万年筆よりも大きく太いオーバーサイズのインク吸入量は、意外にもレギュラーサイズの万年筆と変わりません。むしろそのサイズ感の印象から、あっという間にインクが無くなった気がするのはレギュラーサイズ以上です。

オーバーサイズでも内部インクタンクのサイズは同じということになり、無駄に大きいのかと思われるかもしれませんが、その分軸が肉厚だということになります。それは丈夫さにつながると思っていて、旅に持ち出して鞄の中に放り込んでおいても、安心して歩き回れると思っています。

だから私はオーバーサイズの万年筆は旅に携える万年筆でもあると思っています。

私が若い頃、オーバーサイズの万年筆はモンブラン149と発売されたばかりのペリカンM1000くらいでした。

モンブラン149はタフでハードなペン先で、プロの書き手がハードに使っても耐えてくれる強さを持っています。対してペリカンM1000は極端に柔らかいペン先を持っていて、その書き味を楽しむ趣味の万年筆、というふうに性格がはっきりと分かれていました。

今はそれぞれが少しずつ変化して、その違いは以前ほど大きくはありませんが、それでもペン先の硬さの違いはかなりあります。

モンブラン149、ペリカンM1000よりもかなり手頃な価格で手に入れることができるオーバーサイズ万年筆に、台湾のメーカーの「ペンラックス」があります。

軸色と柄のバリエーションがかなり多いので好みの軸が見つけられるし、インク吸入機構もしっかりとしているうえペン先にはドイツ製のステンレスのものが使われています。

149やM1000の他のオーバーサイズのバリエーションのひとつとして選ぶ価値はあると思いますし、ペンケースも華やかになります。

そんなオーバーサイズ万年筆市場に日本で最初に参入したのはセーラーのキングプロフィットです。キングプロフィットが登場したばかりの時、モンブラン149に似ていると皮肉られることもありましたが、その書き味は柔らかく、インク吸入機構もカートリッジ・コンバーター両用式で、吸入式しかなかった今までのオーバーサイズ万年筆とは一線を画していました。

今ではキングプロフィットは完全に定着していて、万年筆の定番のひとつになっています。

当店でキングプロフィットの両切りタイプKOP(KING OF PEN)の別注仕様をセーラー万年筆さんに作っていただきました。

1930年代~50年代のセルロイド製のオーバーサイズ万年筆のような雰囲気にしたいと思い、軸を半透明のグレーにしました。重厚な雰囲気のモデルに、少し軽やかさがあると思います。

セーラーKOPの別注モデルは6/27(金)11時からWEBショップと代官山出張販売で同時に発売開始いたします。

他のお店では買えないオーバーサイズ万年筆をお探しの方は、是非お求めください。

モンブラン149⇒

ペリカンM1000⇒

ペンラックス⇒

セーラーKOP当店別注モデル⇒

鞄職人が作り上げた理想の革〜デンマークソフトカーフのデブペンケース〜

40歳を前にして独立することについて考えていた時にル・ボナーの松本さんに出会いました。

松本さんに出会ってル・ボナーというお店を知って、何となく弾みがついたというか、背中を押された気持ちになって今の状況にありますので、すごく感謝しています。

松本さんとの出会いは奥深い革との出会いでもあり、革についても全て教えていただきました。それまでも革製品は仕事で扱っていたので、ある程度は知っているつもりでしたが、何も知らなかったと反省しました。

それほど「ル・ボナー」は様々な革が溢れている革のワンダーランドだったし、革への愛情がこもった蘊蓄をたくさん聞いてきました。

そんな松本さんを介した革との付き合いの中で、見て、触れて、嗅いで、お話を聞いて、デンマークソフトカーフもとてもいい革だと思っていました。

デンマークソフトカーフという革は実はル・ボナーさんでしか使っていない、ル・ボナーさんのオリジナル革です。

革の原皮は北部ヨーロッパのものが最も良いと言われていて、特にオランダのものは最高級と言われます。しかし、知名度が上がり価格が高騰し過ぎてしまいました。

そのオランダ産の原皮と変わらないクオリティがありながら、品質が安定していて、価格的には安いデンマーク産に松本さんは注目していました。そしてデンマーク原皮を使用したルボナーオリジナルの革デンマークカーフに続き、デンマークソフトカーフも作りました。

デンマーク産の原皮をウェットブルー(初期なめしだけした)の状態で輸入し、日本のタンナーで鞣したものがデンマークソフトカーフです。

高級ブランドが使用する知名度の高い革と変わらない、あるいはそれ以上の柔らかく滑らかな手触りとしなやかな強さも併せ持った、上質な質感のエレガントな革がデンマークソフトカーフです。

自分の腕と感性で有名ブランドの鞄と比較されるほどの鞄を作るル・ボナーの松本さんの反骨心が作り上げた革。

有名タンナーが作ったとか、有名ブランドが採用したという革ではないけれど、50年近い職歴のある鞄職人が理想の革を実現するためにオリジナルで作った革は、私には遥かに魅力的に思えます。

ル・ボナーさんでもデンマークソフトカーフで鞄以外のものは作ったことがないと言われて、注文する時少しドキドキしましたが、とても良いものが出来上がってとても嬉しく思いました。

適度なしなやかさ、キメの細かさがありながら、強靭さも併せ持っている上品な雰囲気のある革、デンマークソフトカーフのデブペンケース。

今までのデブペンケースとはまた違った、ル・ボナーさんのロマンも感じられるものができました。

デブペンケースデンマークソフトカーフキャメル⇒

デブペンケースデンマークカーフネイビー⇒

デブペンケースデンマークカーフマルーン⇒

ブペケースデンマークカーフアントラジス⇒

デッドストックのカヴェコエボナイトシリーズ

もう一年前になりますが、ル・ボナーの松本さん、590&Co.の谷本さんとドイツを旅した思い出は人生の宝物になりました。

拠点であるニュルンベルグから、他の予定があった谷本さんと別行動して訪れた美しい街ハイデルベルグの小旅行も楽しい思い出です。松本さんが手配してくれたホテルの大きなバルコニーのある部屋で、ハイデルベルグの夕方の陽の移ろいを感じながら長い時間話しました。

その時に松本さんにアイデアスケッチを見せながら構想を話したオリジナル万年筆も、やっと形になって販売を始めています。

金ペン先と同時にスチールペン先モデルを作ることは、数量的に当店にとってかなりの冒険だったけれど、軒並み価格が上がった現在の万年筆の状況にあっては、本当に作っておいて良かったと思っています。

同じドイツの旅でカヴェコ本社を訪ねました。

社長が自ら案内して下さって、カヴェコのペンについてたくさんお話を伺いました。カヴェコに対して良いイメージを持ってドイツから帰ってきました。

最初にカヴェコ本社で見せていただいて590&Co.さんとともに販売を始めたのが、デッドストックのエボナイト製のローラーボールでした。

日本のオートの水性ボールペン芯に合わせて作られていて、とても使いやすいものです。1本1本削り出しによって成形される大量生産には向かないエボナイトという素材の持つ魅力と、製作されたのが1980年というビンテージ感もあって、何とも味わいがあります。

ローラーボールの後、1.18mmのペンシルもラインナップに加わりましたが、同シリーズの万年筆があることが分かりました。

エボナイト万年筆はローラーボールと共通のボディで、キャップを閉じた状態では万年筆とローラーボールの見分けがつかないほどです。

インク供給はカートリッジ/コンバーター両用式です。カートリッジはペリカンなどのヨーロッパ規格のショートタイプ、コンバーターはカヴェコ用のミニコンバーターが適合します。スチールペン先ですが、柔らかい書き味で驚きました。

ペン先、ペン芯などのパーツは、ドイツのリフォーム社というOEMを専門にしていたドイツのメーカーのものですが、2003年に倒産しています。この会社で使われていた機材は他所の国の会社に渡ってしまったそうで、同じ刻印のあるペン先を見ることもありますが、書き味は違うのかもしれません。

エボナイトの軸もデットストックですが、その書き味の良いペン先、ペン芯のユニットももう作ることのできないとても貴重なものです。万年筆は他に比べて数が少ないため、ぜひ早めにお求め下さい。

⇒カヴェコエボナイト万年筆

⇒カヴェコエボナイトローラーボール

⇒カヴェコエボナイトペンシル

フェリスホイールプレスの世界観のある万年筆

2007年に創業して今年で18年が経ちます。始まったばかりの頃はお客様のほとんどが40代以上の男性で、若い男性や女性が店におられると珍しいという雰囲気がありました。

16年前に当店のスタッフMがまだ高校生の時、当店に万年筆を買いに来てくれたのですが、居合わせたお客様方に興味を持たれていたのを思い出します。でもそれは彼が若かったからだけでなく、和服を着ていたということもあったからだけれど。

それほど若い人と女性は少なかった。

そしてその時は、万年筆のインクはそれほど注目されていなかった。

当店が当時オリジナルインクを始めたのは、当店の世界観をインクの色で表現するという目的があったからで、インクがたくさん売れるとは思っていませんでした。

そのオリジナルインクの「冬枯れ」が、雑誌「暮らしの手帖」で紹介されたことがあって、日本中から女性のお客様が来て下さるということが数年続きました。

でもそのブームが落ち着いたら、やはりオリジナルインクは静かに売れていくというものに戻りました。

今から6、7年前頃から日本中のオリジナルインクが売れ始めて、少しずつ女性のお客様が増え始めて、ガラスペンの人気も高くなって行きました。最近では女性のお客様の比率が半分を超えていると実感します。海外からもお客様が来られるようになって、気が付いたら世界は変わっていました。

コロナ禍になってしばらくしてから、フェリスホイールプレス(FWP)を当店でも扱い始めました。

独特の世界観を持った美しくデザインされたパッケージやボトルにこれからのインクの姿を見ました。

FWPのインクの品揃えは、ラメ入りのシマーリングインクが多数で、それらはガラスペンでしか使うことができませんが非常に人気があり、当店でもなるべく揃えるようにしています。

FWPはインクのメーカーと知られていますが、私は万年筆にも注目しています。

FWPの万年筆はそのインク同様に様々なデザイン的な工夫が凝らされていて、書くだけでなく、見る楽しみも大いにあり、従来の万年筆とは切り口が違う万年筆だと思っていて、ガラスペンのように美しいものが好きな方にもぴったりだと思いました。

当店としては、今ガラスペンを使われているお客様に万年筆にも興味を持って欲しいと思っていて、そういうお客様との接点になるものだと思っています。

まず扱いを始めたのはマルキーズとビジューという2つのシリーズです。

マルキーズは宝石のカットの名称で、その名前が表す通りの六角形の凝った形状の軸となっています。キャップを外すと首軸にも細かい彫刻が施されています。

ペン先は大きく、ステンレスペン先でありながら、柔らかい書き味が特長です。

ビジューは宝石という意味で、軸に細かい彫刻が施された優しいペールトーンの色合いの万年筆です。

ペン先は小さく硬めのしっかりした書き味で、軸が細めでガラスペンから持ち替えをした時にビジューの方が持ちやすいと思う人もおられるかもしれません。

私が今までの万年筆と同様の見方で考察するのも何か違うと思わせるFWPが紡ぎ出す物語に則ったデザインの万年筆。当店では他の万年筆同様に書き味良くペン先調整してお渡ししています。

当店WEBサイトでは万年筆とインクを一つの項目として新たに作りましたので、ぜひご覧下さい。

⇒フェリスホイールプレスTOP

オリジナル万年筆のスチールペン先仕様追加

様々なモノの美しさがありますが、私はオリエンタルなものに惹かれます。

その中でもシルクロードや西域という所が特に気になるのは、好きで読んでいる小説の影響が大きいのかもしれません。そもそもそういうものに惹かれるようになったのは、子供の頃、両親と観たNHK特集シルクロードの影響なのかもしれません。

5月初旬に、期間限定で公開されている薬師寺玄奘三蔵院の大唐西域壁画を観てきました。
何年も観たいと思っていて、やっと念願が叶いました。

中国からインドまでのシルクロードの旅を描いた壁画を見るには、東京スカイツリーの展望台の入場料くらいの金額を払わないといけないので、余程好きな人でないと見に来ないし、余程好きな人は公開が始まってすぐに観に来るのか、期間末に私が行った時には他に誰もいなくて、ゆっくり観ることができました。

平山郁夫氏による玄奘三蔵のインドへの旅を描いた壁画は、その地の風景の中にいるような、自然と一体になる強烈な色彩を持つ東洋の風景が描かれていました。

当店オリジナル万年筆「コンチネンタルクラシックインスピレーション1985」(以後コンチネンタルクラシック)も、そんな東洋への憧れが形になった万年筆です。

キャップは一見黒に見えますがエボナイト製で、微妙に違う味わい深い色合いになっています。琥珀柄の軸は、素材メーカーで廃番になっていたのですが、どうしてもこだわりたくてこの万年筆のために再生産してもらいました。

オリエンタルなものを万年筆で表現しようと思った時に、鳳凰のペン先とともに琥珀色の軸はどうしても譲れないところでした。

今年から発売開始しているコンチネンタルクラシックに、この度ゴールドプレートペン先(スチールペン先)モデルも加わりました。
このボディの企画を決めた時にはすでに、ゴールドプレートペン先仕様の製作も決まっていましたが、完成が遅れていました。

14金ペン先モデルは55000円(税込)なのに対して、ゴールドプレート先モデルは22000円(税込)で、違いはペン先の素材だけになり、ペン先のデザインも同じになりますのでいかにゴールドプレートペン先モデルのコストパフォーマンスが高いかお分かりいただけると思います。

色々なものの値段が上がって、国産の万年筆が倍近い値段になってしまっている今、一軒の店がこだわって作った万年筆をなるべく安い値段で販売したいと思いました。

いつまでこの値段でできるか分からないですが、こんなご時世だからこそ意味がある価格設定だと思っています。

ゴールドプレートペン先の書き味は、けっしてガチガチに硬いものではなく、滑らかで心地良さのある使いやすいペン先で、自信を持ってお勧めできます。

字幅がEFとFの2種類で、手帳やノートに使いやすい字幅です。

当店のペン習字教室を開催して下さっている堀谷龍玄先生は、柔らかく強弱がつけられるペン先だと言って下さいました。

14金のペン先は、かなり大きいペンポイントがついた状態で入荷しましたので、当店で研ぎ直して調整しています。そのため字幅の種類が豊富で、研ぎの種類もお選びいただけるようになっています。

研ぎの種類についてそれぞれご説明いたします。

〇国産細字・国産中細・・・筆記角度により字幅が変わらない丸研ぎにして、ノート、手帳などに使いやすく仕上げました。

〇三角研ぎ・・・寝かせて書いた時と立てて書いた時の字幅の差が大きく、筆ペンで書いたようなキレのある文字、トメハネハライが表現しやすい研ぎです。

〇上弦の三角研ぎ・・・なだらかに弧を描く筆記面を持ち、筆記角度による字幅の変化は三角研ぎより少なくなっています。

〇標準・・・なるべく大きめのペンポイントをそのまま活かして、滑らかな書き味を追究しています。

〇丸研ぎ・・・筆記角度、ペン先の向きを気にせずに滑らかに書けます。字幅はBに設定しています。

コンチネンタルクラシックの14金ペン先モデルでは、ペン先調整をする店として様々なペン先の仕上げ方を示して、当店が目指す万年筆の楽しみ方を表現したいと思いました。

そのためにはオリジナルペン先を持つオリジナル万年筆でないとどうしてもいけなかった。

同モデルのゴールドプレートペン先では、こだわって作った万年筆をより多くのお客様に使っていただけるようにしたいと思いました。

オリジナル万年筆コンチネンタルクラシック1985は、5月31日(土)に開催されるNANIWA PEN SHOW 2025にもお持ちいたしますし、各出張販売にもお持ちいたします。

オリジナル万年筆コンチネンタルクラシックインスピレーション1985 14金ペン先仕様⇒

オリジナル万年筆コンチネンタルクラシックインスピレーション1985 ゴールドプレートペン先仕様⇒

ペンホルダーに差すボールペン

4月下旬に仙台でのイベント「文具事変in仙台」に参加しました。590&Co.の谷本さんが知人の文具店や作り手さんに声を掛けて集めた10店舗による小規模なイベントでしたが、たくさんのお客様が来場されて驚きました。

天気にも恵まれたし、近くでクラフトフェアも行われていましたので、日程もよかった。そして何より参加者の皆さんが文具事変の告知の努力をしてくれていたからなのだと思いました。

イベントが終わって後片付けを終えたら、最終の飛行機には間に合いませんので、翌日の夕方に仙台を発つ便を取りました。半日ほどの時間、当店の森脇、590&Co.の谷本さん、590&Co.の手伝いをしていた作家のHさんとの4人で、参加者さんたちの荷物を送りだした後、仙台の文具店を見て回りました。

仙台の文具店は、数は多くはないけれどそれぞれの店が充実していて、見応えがありました。

Googlemapで表示された文具店を巡っていると、ドイツで文具店を巡った時のような懐かしい気持ちになりました。

仙台駅から少し離れた町にも文具店がありました。ドイツではわざわざまわり道して行ったのに空振りということがよくありましたが、空振り覚悟で思い切って行ってみました。

店内に入って筆記具のウインドーを見ると、思いがけないものを見つけてしまいました。

S.T.デュポンのディフィというペンが好きで、ボールペンをいつも使っています。

ディフィにはボールペンとシャープペンシルを装備したマルチファンクションペンというものが短期間だけ存在していましたが、気付いた時には廃番になっていました。

もともと複合筆記具(業界ではそう呼びます)が好きで、好きなデザインのディフィで複合筆記具なんて惹かれないはずがありません。

廃番なので難しいとは思いながらもデュポンジャパンさんから在庫リストが届くたびに確認していましたが、在庫が戻ることはありませんでしたし、昨年ル・ボナーの松本さんと谷本さんとドイツに行った時もお店に入るたびに見ていましたが、どこにもありませんでした。

ドイツの店にもなかったフランスのペンが、仙台にあるとは思ってもいなくて、他のものを見るのも忘れてすぐにディフィマルチファンクションペンを購入しました。

愛用している正方形のダイアリーの革カバーにはペンホルダーがあって、いつもS.T.デュポンディフィのボールペンを差しています。

ダイアリーに細々と書き込むのは万年筆で書き込みますが、ToDoを忘れないうちに書いたり、仕事中に急いで書く時はペンホルダーに差したディフィで書きます。

ダイアリーのペンホルダーに差して持ち運ぶというのは、私にとって最も華やかな役割です。当然、最も好きなデザインのペンがそこにあって欲しいので、最近はずっとディフィのボールペンがセットされています。

正方形のダイアリーはしっかりした紙質なので、ボールペンで書いても筆圧が軽ければ大丈夫ですが、強く書くと跡が残ってしまいます。

Teriw The Matt(テリューザマット)さんとコラボして作った正方形のテリューザマットをいつも正方形のダイアリーに挟んでいて、ボールペンで書く時は硬い面を上にして書くようにしています。

ひっくり返すと柔らかい面があって、そちらは万年筆筆記の時に使っています。

ディフィも正方形のテリューザマットも、私にとって気に入って使っている一番華やかな存在です。

デフィのマルチファンクションペンを手に入れて思いましたが、探し求めていたペンは100本のペンでもその存在にはかなわないものだと思いました。

次回の「ペン語り」は5/23(金)の更新になります。

S.T.デュポン

TERW THE MATT 正方形

正方形ダイアリー

刑事(デカ)手帳とLiscio-1・M5リフィル

久しぶりにM5サイズのオリジナルシステム手帳を作りました。

今まではどちらかと言うと遊び心のあるものを作っていましたが、今回は徹底的に道具として使うM5手帳にしたいと思いました。

リフィルよりも少し大きいだけのコンパクトさで、ベストやシャツの小さなポケットに入るものにしました。

革は万年筆レザーケースLで既に使っているゴート茶利革です。しっかりとした質感の革で、水分や傷に強く、道具として使うのにとても良い革です。

表紙は硬く180度平らに開くようになっていますので、立ったままのメモ書きもやりやすいと思います。

人の話を聞きながらメモをとる時、大きなノートを広げて書くのはなかなか憚られるものですが、手の平に収まるこのサイズの手帳ならサッと出してさりげなく書くということがとてもやりやすいと思っています。

それら全てを表現する言葉として刑事(デカ)手帳という名前がピッタリだと思いました。

当店は兵庫県警察本部のすぐ近くにあるので当然警察関係のお客様もおられ、中にはM5手帳を長年愛用している方もおられました。そんなイメージから出来上がった手帳でした。

M5手帳というと趣味性が高く、便利な機能が付いているものが発売されるようになりましたが、そのサイズを生かして道具に特化したものを作りたかった。

オリジナルのM5用リフィルは以前から販売しています。シンプルな方眼罫のリフィルですが、4mmという方眼のサイズ、罫線の濃さなどとても使いやすいレイアウトのものだと自信を持っています。

このリフィルにはディバイダ―を2枚付属していますので、それを手帳の最初と最後に綴じていただくとより書きやすくなります。

用紙は万年筆での極上の書き味を持った、Liscio-1(リスシオワン)紙を使っています。この紙は数年前に廃番となっていますが、オリジナルリフィルは大量に作りましたので、当分は安心してお使いいただけると思います。

オリジナルではディバイダ―も販売していますが、見出しはなく少しだけ厚手の紙を使って、めくる時に指に掛かるように企画しています。刑事手帳は本体がリフィルに近いサイズなので、仕切りたい場合などにちょうど良いと思います。

先日の10店舗が集まった仙台でのイベント「文具事変in仙台」で一緒に出店していた、革工房ブランドのLemma(レンマ)さんが縫製してくれています。

Lemmaさんは、美しくしっかりとした仕事をして下さるので、自信を持ってお勧めできます。シンプルで上質な革を使った実用的な手帳、実は意外と少ないのかもしれません。

⇒オリジナル 刑事(デカ)手帳 ゴート茶利革/M5システム手帳

オリジナルM5リフィル4mm方眼罫リフィル(Liscio-1仕様)

⇒オリジナルM5リフィルデバイダー

~イタリア限定万年筆黄金時代のモノ作りを再び~マイオーラ~

イタリアデルタ社は1982年に創業して、1990年代中頃から2000年代はじめまでのイタリア限定万年筆ブームをビスコンティ、スティピュラとともに牽引しました。

映画「クローズドノート」では主人公がデルタのドルチェビータ万年筆を使っていたということもあって、ドルチェビータは大ヒットしました。

そんなデルタ社も2018年に社内の紛争などが原因で操業できなくなってしまいました。

当時のデルタの社長ニノ・マリノ氏は何とかデルタを復活させたいと奔走し、2022年に再開した会社がマイオーラでした。

当時は権利の関係で、社長のニノ・マリノ氏でさえもデルタという社名を使うことができませんでした。そこで再スタート成功の願いを込めて、新たにマイオーラという名前をつけました。

マイオーラでデルタ再興を願ったニノ・マリノ氏でしたが、立ち上げ後も資金不足で苦しんでいました。しかし近年出資者が現れて,マイオーラの他に、よりデルタに近いブランド名D-Nも立ち上げています。

今回ご紹介しますマイオーラの筆記具は、デルタの元社長ニノ・マリノ氏がもう一度最もイタリアらしい万年筆メーカーだったデルタを復活させたいと夢を持って取り組んだ最初のシリーズでした。

デルタ復活を願って作った最初のペンだけあり、イタリアらしさに溢れたものだと思います。中でもコスティエラは日本限定で、ボールペンは55本、万年筆は20本のみの生産数となっています。

今ではもう手に入らなくなった美しい色柄の軸。クリップ、キャップリングなど金具の作り込み。妥協なくできることは全てやったと言わんばかりのモノ作りの情熱が感じられるイタリアらしいと思えるペンに、遅ればせながら出会うことができました。

あまりにきれいなペンで、その美しいペンを当店のお客様に今更ながらご紹介したいと思い、今手に入れることができるものだけでもと仕入れました。

万年筆はカートリッジ・コンバーター両用式、ボールペンはG2規格(パーカータイプ)芯のオーソドックスな仕様です。

この美しい軸の万年筆かポールペンをバゲラクラスの手帳のペンホルダーに挟んで使いたい。そう思うモノはなかなかないと思います。それほどモノの力を持ったペンだと思います。

⇒マイオーラTOP

綴り屋万年筆とペン先の研ぎの時代

綴り屋さんのアーチザンコレクションと静謐が久々に入荷しました。そして今回は、昨年受注製作した朧月万年筆の予備パーツを使って2本だけですが朧月も入荷しました。

今回入荷した朧月には色が濃いものと薄いものがあります。
濃いものは8月に受注製作を承ってお作りしました色と同じで、薄い方はその時よりも薄い色になります。

今回から、静謐・アーチザンコレクションの尻軸の形が変更されていて、キャップポストをした時の安定感が増しています。少しずつこういう改良が常に加えられて、進化しています。

綴り屋さんのペンはデザインも雰囲気ももちろん素晴らしいですが、作り手の鈴木さんのより良いものを作るという意気込みと修理の対応の早さが私たち売り手にとっては頼もしく、安心して販売することができています。

オリジナルのペン先があって、それを調整して販売している当店にとって、綴り屋さんの存在は本当に有難い。当店の東洋風の鳳凰のペン先と、綴り屋さんの軸の雰囲気の相性は良く、図柄もサイズ感も合っていると思っています。

もともと綴り屋さんの軸に付けたいと思ってオリジナルのペン先を開発したという経緯がありましたので、それも当然かもしれません。

ペン先調整だけでなく、オリジナルの研ぎを追究するためにもオリジナルペン先は必要でした。

古い万年筆のペン先を見たり、お客様の要望をお聞きしているうちにするようになったのが三角研ぎです。

三角研ぎ(M)

書く文字への効果は、寝かせ気味にして書くと太く、立て気味にすると細く書けて、漢字など日本の文字を美しく表現できるというものです。

研ぎをする場合、私は書き味の次にその造形の美しさにもこだわりますが、三角研ぎは名前の通り三角の形とメリハリのある線を描くことができるという、実用性と造形の美しさを両立した研ぎだと思っています。

これはどの字幅にも出来る研ぎで、太字だと万年筆でありながら筆ペンのような文字を書くことができ、細字でも線のキレの良さを感じられると思います。

そして最近始めた研ぎで、上弦の三角研ぎというものがあります。

筆記角度を変えた時の変化は三角研ぎよりも少しマイルドで、線の変化も緩やかになります。そのため自然に使いやすく、様々な角度、ペン先の向きで書き味良く使っていただけると思います。書き味と造形の美しさを高い次元で両立するように研いでいます。

古くからあるペン先の研ぎ方で長刀研ぎというものがあります。この長刀研ぎに脚光を当てて、研ぎを前面に出したのがセーラー万年筆の伝説の職人長原宣義先生でした。

長原先生への憧れもあるけれど、私達調整士は研ぎについて考えると、いつか長刀研ぎというものと向き合うことになります。それぞれの調整士が長刀研ぎを自分たちなりに使いやすく表現したものがあって、当店ではそれがこの上弦の三角研ぎなのだと思います。

私は若い頃から万年筆のペン先をルーペで見るのが好きで、本当に色々なペン先を見てきました。

たくさんのペン先を見るうち、いくつものパターンの理想的なペンポイントの形が自分の中ではっきりしてきました。ペン先調整はそれを再現することだと思っています。

研ぎを表現したり、調整で理想的な形、書き味を再現するためにペン先調整をすることは好きでしています。気が付いたら自分が惹かれていた研ぎの微妙な違いを示しながら研ぐことも珍しいことではなくなっていました。

私と同じ仕事をする若い人たちが出てきて、ペン先調整も特別変わったことではなくなってきています。ここまで時代が進むとは思っていませんでしたが、こういう万年筆の面白さのあり方、示し方は自分も求めていたことで、同業の人たちとお互い切磋琢磨していきたいと思っています。

⇒綴り屋TOP

⇒オリジナルペン先研ぎ、筆記見本

ペンラックスフェア 4/1~5/6

PENLUX グランデ ウェーブスカイブルー

作家呉明益氏の「自転車泥棒」という小説が好きで、その世界観に浸りたくて何度も読みました。台湾文学の名作として有名な小説なので、ご存知の方も多いかもしれません。

台湾の小説家は他に好きな人がいます。文学に限らず台湾は独特で繊細な文化を生み出す場所だと思っています。

蓮見恭子先生が当店を取材して書かれた、神戸の万年筆店が舞台の小説「メディコ・ペンナ」が中国語に翻訳されて台湾でも出版されました。やはり本がよく読まれる国なのだと思います。誠品書店という有名な書店もあり、台湾に行った時は私も長居しました。

そんなお国柄なので、万年筆やペンのメーカーがいくつもあります。

当店でも、インキ止め機構を持つ遊び心のある万年筆を作るオーパス88と、ヨーロッパメーカーのOEMを長く請け負って技術力があるツイスビー、メーカーの枠を超えて様々な芯を使用することができるマルチアジャスタブルボールペンのアントウと、オーバーサイズの万年筆を手頃な価格で作っているペンラックスを扱っています。

4/1(火)~5/6(火)まで当店でペンラックスフェアを開催していますので、ペンラックスの充実したラインナップの万年筆をご覧いただけます。

そして期間中ペンラックスのペンをお買い上げの方には、水筒やペンケースが入る縦長の「PENLUXオリジナルバッグ」をプレゼント致します。

ペンラックスの特長は、モンブラン149などと同じ吸入機構を備えたオーバーサイズの万年筆を、美しくカラフルな軸色に繊細な装飾を施して、より魅力的な万年筆に仕上げているところです。

金ペン先もありますが多くはステンレスペン先で、手頃な価格にしていい万年筆をより多くの人に使ってもらいたいという、台湾メーカーらしい志を感じます。

ステンレスのペン先は、大きく柔らかささえ感じるものなので、滑らかに書けるように調整できますし、ステンレスペン先にもフレックス仕様があり、ステンレスペン先でありながらしなりを持つものもあります。

ペンラックスの吸入メカニズムは金属パーツで作られたしっかりしたもので、耐久性の高さもあり、長くお使いいただけるものになっています。

4/25(金)26(土)に開催される「文具事変in仙台」というイベントに、当店も参加します。

590&Co.さんが中心となって、交流のあるお店を集めた今までなかったタイプの文具イベントで、お客様方に楽しんでいただけるものにしたいと思っています。「文具事変in仙台」にもお持ちして、仙台にご来場のお客様にも調整済みのペンラックスを使っていただけるようにいたします。

⇒PENLUX TOP