好きなことをして生きていく時代に

最近若い人がステーショナリーに興味を持つようになってきていると感じています。中にはペン先調整や木軸のペン作りなどもする人もいるし、内容もかなり本格的ですごいことだと思います。

先日フィリピンからご家族で来られた若い男性(おそらく10代だと思います)が、プレゼントだと言って自作のインクを下さいました。

パッケージもきちんと印刷されたオリジナルのものになっていて、話を聞いてみると、インスタグラムで告知して直接販売しているとのこと。

今の時代の若い人の特長は、ただ好きなだけでなく、自分が好きなことで生きていきたいと思って、その道を模索していることだと思います。

好きなことで生きていこうと早い段階で決めて、その道を進んで行くことも、海外の店の店主に自作のインクをプレゼントすることも、私たちが若い頃には考えられなかった。

色々な意味で時代が変わったと実感します。

私も好きなことで生きているけれど、それを決断できたのは40歳直前でした。好きなことを仕事にして生きていくという考え方はあまり一般的ではなかったので、店を始める時の周りの反応は決して良いものではなかった。

自分自身ではそれが唯一好きなことだったし、自分の性格として好きなことでしか生きていけないと分かっていたので迷いはなかったけれど、そんな状況の中でル・ボナーの松本さんの存在はすごく励みになりました。

今の時代は、お子さんが好きなことで生きていこうとすることを親御さんも応援するというし、好きなことで生きていくことに抵抗のない時代になっていると思います。

そんな若い人たちは、ステーショナリーを仕事にして生きている私たちの背中をどのように見ているのだろうか。

当然自分の将来を考えた時に私たちの姿に重ねることもあると思います。こうはなりたくないよりも、こうなりたい、という姿を見せていたいと思います。

590&Co.さんのお店に来た若いお客様が、近所の当店にも来て下さることもあって、そういう人たちは木軸のペンだけでなく、万年筆にも興味を持ち始めています。

筆記具を突き詰めればそれも当然のことですね。

すでにサファリやツイスビーは持っている人が多くて、そういう人たちには、がんばってお金を貯めて、2,3万円くらいの国産金ペン先の万年筆を買って下さいと言っています。

それくらいの値段帯になると書き味も違うし、バランスも良くて長く愛用することができるからです。

万年筆の醍醐味は長く使い続けて、そのペンがさらに書きやすくなっていることを実感することだと思っています。自分の経験から、色々なブランドのペンが増えても結局私にとってプロフィット21が一番書きやすく、自分なりにきれいな文字が書ける万年筆のひとつであり続けているからです。

1/26(金)27(土)28(日)品川に590&Co.さんと共同出張販売に行きます。きっと若い人たちも来場されるだろう。そこでもセーラープロフィット21、パイロットカスタム742など、オーソドックスなデザインだけど、飽きずに長く使うことができる書き味を持っている万年筆を若い人に紹介したいと思っています。

綴り屋イベント入荷商品掲載

12月に開催した綴り屋さんのイベント後に仕入れた万年筆を、年明け最初の営業日である今日、WEBショップに掲載しました。

アーチザンコレクションは綴り屋さんで最も話題になっている最近の代表作です。綴り屋の鈴木さんの物静かな雰囲気からは想像できない、それぞれの素材を荒々しいほどに生かした万年筆です。

木軸のペンはどの作家さんのものか私には分かりにくいものが多いですが、綴り屋さんのものは一目で分かります。中でもアーチザンコレクションはすぐに綴り屋さんと分かる強烈な個性を放っています。

今回は新たにメープル、アンボイナバール(花梨こぶ杢)を使ったものが入荷しました。

綴り屋の鈴木さんはペンの素材として様々な木を使われますが、木にこだわるというよりは、ペン作家という言い方が合っていると思っています。

エボナイト、アクリルレジンなどの素材も使い、木もそういった鈴木さんが使う素材の中のひとつです。

そういう立ち位置なので、木という素材を思いきり生かしてペンにすることができた。綴り屋の鈴木さんだからこそ、アーチザンコレクションを作り出すことができたのだと思います。

今回初登場の「漆黒の森・テクスチャー溜塗」は、鈴木さんが4種の工具を使って表情を出したエボナイトに、同じ塩尻市の木曽漆の巨匠小坂進さんが溜塗を施したものです。

溜塗は下地に色漆を塗り、表面に生漆を塗っていますので、エッジの部分は使っているうちに少しずつ下地の色が出てきます。

この特性を生かして、溜塗の表情が出るように凹凸面をエボナイトのキャップと軸に作っています。このユニークな加工がテクスチャー表現で、鈴木さんらしい面白い他にない工夫だと思います。

「&one」は今回のイベントを記念して作っていただいた、漆黒の森をベースにした特別な万年筆です。

アクセントになっている部分に、当店のショップカラーをイメージしたパープルハートと590&Co.さんをイメージした黒檀を使っていただき、通常はシルバーですが金色の真鍮リングを使っています。

従来の漆黒の森とは雰囲気の異なる、特別な1本になりました。

次回の綴り屋さんのイベントは今年の8/24(土)・25(日)を予定していますが、毎回こういった限定品を作っていただきたいと思っています。

「フォーダイト」は、デトロイトにあったフォードの工場から発見された人工の鉱物です。

当時車の塗装は、ラッカーで塗った後加熱処理をしていました。床や壁に飛んだラッカーが何層にも重なり、色の層になっていたのを工員さんが発見しました。

フォーダイトは偶然出来上がったもので新たに作ることができない希少な素材です。綴り屋さんは、細軸の月夜にアクセントとしてフォーダイトを組み合わせました。月夜は筆のような感覚の扱いやすい万年筆で、当店で14金10号ペン先を装着しています。

綴り屋さんのペンで個人的に気になっている万年筆は静謐です。

太軸で万年筆らしい堂々としたシルエットですが、エッジ部分は鋭く繊細なラインで、綴り屋さんらしい研ぎ澄まされた美しさを感じることができます。当店では静謐の太軸に見合った、大型の14金15号ペン先を装着しています。

人気のあるアーチザンコレクションはこの静謐がベースになっています。

イベントから1か月近く経ってしまいました。

大人の落ち着いた豊かな時間が、そのイベントには流れていたと思います。そんな人たちの興味を引き、集めるのも綴り屋のペンの魅力なのだと改めて思っています。

⇒綴り屋TOP

ラグジュアリースモール~ペリカンM600グラウコ・カンボン~

店を始めて間もなく、ペリカンM450バーメイルトータスというペンを使い始めました。

M400サイズで、万年筆の中では小さい部類に入るかもしれません。軸は今も作られているM400ホワイトトータスと同じ鼈甲風の模様で、キャップはスターリングシルバーに金張りが施されたゴージャスな仕様でした。

M400サイズなのであまり大きくないけれど、ペン先は18金で値段はM1000と同じでした。

それなら多くの人がM1000を選ぶだろうと思うところですが、私はM450バーメイルトータスに惹かれました。

小さいけれどギュッと中身が詰まったような質量の高さや煌びやかさに、現代の他の高級万年筆とは一味違う、昔ながらの高級感というものを感じました。

でもそのM450は、軸にヒビが入ってインク漏れがするようになったので修理に出したら、トータス柄の部品がもうないとのことで、黒軸で戻ってきました。

トータス柄とはかなり趣がちがうけれど、金キャップに黒軸というのも、さらに昔っぽくて今も気に入って使っています。

小さな万年筆で高級感のあるものは意外と少ないと思います。

高級な万年筆はサイズが大きなものが多いのは確かで、様々な技巧を凝らして高級感を演出するためには、その方が有効なのかもしれません。

でもそこに小さなものがあるとより印象に残ります。

ペリカンは比較的小さな万年筆で高級感のあるものを出してきました。

M700トレドはその代表的な存在だし、往年の100シリーズの復刻の1930番台のシリーズなども小さいけれど、高級感のあるペンです。

あまりにもさりげなく発売されて目立ちませんでしたが、最近発売されたペリカンアートコレクションM600グラウコ・カンボンも小さめなM600ベースの高級感のある万年筆です。

カタログやネット画像で見た時には、黒軸に絵柄をあしらっただけのものに見えましたので、価格が高いかもしれないと思いましたが、実物を手にしてみると、仕入れた数が少なかったと後悔しました。

それはきっとペリカン日本も同じで、国内300本は少なすぎると思います。

サイズはM600 と同じですが、軸はこの万年筆専用のものです。

この万年筆に重量感をもたらす真鍮製の軸には縦方向に細かな溝が切られていて、そこに1909年にペリカンが開催したポスターコンペティションに入選したグラウコ・カンボンの作品のイメージが描かれています。

グラウコ・カンボンの作品は数年前に発売された「Plikan The Brand」という本にも掲載されていました。

軸は絵柄の上からラッカーが何層も塗り重ねられていて、手触りも良く、筆記バランスの良さの役にも立っています。

M600グラウコ・カンボンは、貴金属を使ったクラシックな良さではないけれど、現代の技術でM600を高級感のある仕上がり仕立てた、現代のスモールラグジュアリー万年筆だと思います。

この万年筆は後々いい万年筆だったと、中古品を探す人が増える類の希少なものになるような気がします。

⇒Pelikan スーベレーン M600 アートコレクション グラウコ・カンボン

クロコアクセントジョッター完成

パーフェクトペンシルを使い始めて、2本目の鉛筆になりました。

はじめ面白がって原稿や手帳などいろんなものに使ってみたけれど、やはりメモを書くのに使うのが自分には一番合っていると思いました。鉛筆自体が高価なので、少しずつ少しずつ削って使っていましたが、今は2本目を育てています。

硬めの芯のメリットは、減りにくいので一回削ると何日もそのまま使うことができるところだと、パーフェクトペンシルを使うようになって知りました。

HBの濃さは適度に薄いので、例えば電車の中などで書いても、周りの人から読まれないと思います。

子供の頃使っていた鉛筆は非常にガサガサした書き味でしたが、それを当たり前のものとして使っていました。でもいつの間にかパーフェクトペンシルの滑らかな書き味に慣れて、普通の鉛筆の書き味に満足できなくなっていました。

私はジョッターを毎日使っていますが、パーフェクトペンシルとの相性がとても良く使いやすいので、革職人の藤原さんにまた作っていただきました。

今回は、先日発売して売り切れてしまったバイブルサイズのシステム手帳と同じデザインにして、サドルプルアップレザーにクロコのアクセントをあしらいました。

当店のジョッターは、一般的に売られている5×3サイズではなくM6サイズシステム手帳のリフィルサイズになっています。

ある程度書くスペースがあるけれど大き過ぎず、ポケットに入れたり、手帳に挟んだりすることがしやすいサイズです。M6サイズは一般的なサイズで、リフィルが入手しやすいと思います。

ジョッターにセットする時は、リフィルの穴の開いた部分を挟むので筆記スペースを邪魔することもなく、書いたものをそのままM6手帳に綴じることができます。

私の場合ジョッターは仕事に使っています。それは使いやすさだけでなく、手帳に挟んだり、ポケットに入れたりできるくらい薄いのに、見栄えもするという、他のメモにはないモノの力があるからです。

クロコのアクセントを入れてもらって、それはより強力になりました。

ジョッターは最近あまり使われなくなりましたが、仕事中などにスマートにメモをとるものとして、見直してみてもいいものだと思います。

*品切れのシステム手帳も1月に出来上がる予定です。

⇒ジョッター サドルプルアップ・クロコアクセント

⇒ファーバーカステルTOP(パーフェクトペンシル)

カスタム743、742のペン先の違い

1月1日から値上げが予定されている、パイロットの万年筆の話が連続します。カスタム742、743についてのお話です。

当店ではカスタム742を、「適度な大きさの10号サイズの書き味の良いペン先とバランスの良い軸が揃った完璧な万年筆」と位置付けています。

日本製なら2万円で書くことにおいて高いクオリティの万年筆を買うことができます。それを当たり前のように思っていましたが、メーカーの志と努力の成果だったのだと、色々なものが高くなった今になって気付きました。

完璧なカスタム742に対して、カスタム743はさらに耐久性の高い15号サイズのペン先を持ち、プロ仕様の万年筆としています。

私が書道を習いに行っていた時、先生に頼まれて万年筆を用意したことがあります。

先生は書道教室で毛筆の他に硬筆も教えていました。その時は硬筆に付けペンを使っていましたが、その代わりに以前使おうとして諦めた万年筆をもう一度使いたいと思われたようです。

付けペンを使っていた理由は、力を入れてペン先を開かせて書くことができるからで、先生はそれを「ペン先を割って書く」とおっしゃっていました。

カスタム742でペン先を割って書くと、ペン先が必要以上に割れてインクが途切れてしまいますが、743だとギリギリのところで粘って、インクが途切れることがありませんでした。

私たちの普段の筆記でそこまでペン先を開かせて書くことはなく、742と743の違いを感じることは少ないのかもしれませんが、742と743のペン先の違いについて分かる象徴的な出来事でした。

カスタム743の方がペン先が大きいですが、それは柔らかさに寄与するのではなく、粘り強さ、耐久性を持たせるために必要な大きさだったのです。

たしかにカスタム742のペン先の方が柔らかく、カスタム743の方が硬く感じることがありますが、ハードに書いた時にさらに違いが出てくるのです。

万年筆を長くハードに使った時、ペン先がヘタってくるということがありますが、カスタム743の粘り強いペン先は、ヘタリにくさも持ち合わせていると予想します。

一生ものの道具即ち生涯の相棒にできる万年筆がカスタム743なのだと思います。

このカスタム742と743の関係は、モンブラン149と146の関係に似ています。

149と146は軸のサイズがかなり違いますが、カスタム742と743の軸のサイズはほぼ同じになっていて、このサイズは万年筆において最良のものだと確信していることも伺えます。

カスタム742と743にはたくさんの種類のペン先がラインアップされています。

それぞれの字幅は例えば手帳に書くのならEFかFとなるように、用途によって選ぶものが違ってきます。

字幅によって書き味や使用感が違っていて、個々の好みはあるけれど一般的にはペン先は太くなるほど書き味が良いと言われています。

しかし太字以上の字幅では、ペン先の中心を意識して書かなくては書き出しが出なかったりして、うまくインクが出てくれません。それはいわゆる「ペン先を合わせて書く」ということになります。

早く書くにはある程度太い方が滑りが良くていいですが、太すぎると今度は合わせて書かかなければならず、かえってスピードが遅くなります。

合わせて書くことを意識せずに滑りが良く書ける限界はMくらいではないかと思っています。FMやMくらいが楽に使うことができて、最も早く書くことができる太さということになります。

カスタム742、743には特殊ペン先もあって、かなりユニークな存在です。

SU(スタブ)は横細、縦太の味のある線が書けるペン先で、書く文字にハマれば面白い効果が得られます。

PO(ポスティング)はペン先が硬く開きにくいので、一定の太さ、濃さで細かい数字や文字が書けるペン先です。手帳にも合うかもしれません。

WA(ウェーバリー)は、ペン先が反っている特殊な形状をしています。もともと寝かせて書く人にはあまり恩恵が感じられないかもしれませんが、ペンを立てて書く書き方でも柔らかい書き味を得られるというものです。

FA(フォルカン)はペン先が極端に柔らかいので、軽い筆圧の加減で文字の強弱がつけやすくなっています。筆圧の強い人には扱いにくく向かないペン先です。

S(シグネチャー)はサイン用ということで開発されたペン先です。90年代のペリカンの角研ぎに似た形状ですが、角を落としてあり、書き出しが出にくいということがありません。Mをそのままの形で幅だけ広くしたようなペン先になります。

特殊ペン先はかなりユニークなものですが、パイロットが創業間もない昭和初期には既に実用化されていました。万年筆の可能性を広げるペン先の開発を社運を賭けて行っていて、その仕事は今も輝いている。むしろ万年筆が趣味のものになった現代においての方がその意味合いは大きいのかもしれません。

⇒パイロット カスタム742

⇒パイロット カスタム743

パイロットカスタム845と2024年1月1日の価格改定

万年筆の中でどの部分を好むかというのは人それぞれで、書き味を重視する人もいれば、軸のデザインを大切にする人もいます。

私の好みを言うと、やはりペン先の良さということになります。あとは筆記時のバランスで、その2つが良ければデザインにはあまりこだわりがありません。

むしろ黒金(黒軸にゴールド金具)の万年筆のように、オーソドックスでシンプルな方が良いとさえ思います。

カスタム845の、しなやかさと安心して書ける粘り強さを併せ持つ書き味は、間違いなく国産最高の万年筆のひとつだと思います。

そしてシンプルな黒金、あるいは朱と黒の軸は、漆が何層にも塗り重ねられて「蝋色漆」という状態に仕上げられます。カスタム845の漆塗りの軸はシンプルでありながら、本物の上質さを追究したものです。

パイロットの価格改定が2024年1月1日に予定されていて、このカスタム845は現在の55000円から88000円に変更されます。

値上げということになりますが、国産最高の万年筆が88000円というのはそれほど高く感じないように思います。そう思うと今が安いのかもしれません。

パイロットの万年筆は、日本の万年筆の価格とスペックの基準を示すような存在だと思っていました。

10,000円、20,000円、30,000円、カスタム845の50,000円クラスと、各クラスに定番万年筆を隙なくラインナップしていたことで、パイロットの万年筆を基準に考えてしまう癖が私たち業界の人間にはあると思います。

他メーカーが価格を上げていく中、パイロットが動かなかったことを当然のように思っていました。

しかし、カスタム74シリーズが発売された31年前から基本的には万年筆の価格を変えずに耐えてきたパイロットも、とうとう価格を変更せざる得なくなりました。

パイロットの代表的なモデルの来年1月1日以降の新価格を下記しておきます。

・カスタム漆96,800円→121,000円

・カスタム845 55,000円→88,000円

・カスタム743 33,000円→39,600円

・カスタム742 22,000円→26,400円

・シルバーン55,000円→66,000円

・カスタムカエデ 22,000円→26,400円

・キャップレスLS 38,500円→46,200円

・キャップレスマットブラック 19,800円→24,200円

・キャップレスデシモ 16,500円→19,800円

・エリート95S 11,000円→17,600円

⇒パイロット TOP

オリジナルダイアリーを使い始めると使いたくなる革カバー

テレビ朝日で日曜夜10時放送中の「たとえあなたを忘れても」は、神戸が舞台の切ないドラマです。

主人公がキッチンカーをいつも止めて営業しているのが六甲アイランドで、カメラがキッチンカーに向く時、右後方にいつもル・ボナーさんの入り口が映ります。

松本さんの姿が見えないかいつも気にして見てしまうけれど、まだ見えたことはありません。

神戸は山と海が街のすぐ近くにある公園のような街なので、ドラマや映画のロケ地に向いているのかもしれません。こういう取り組みは神戸の町おこしにつながると、関係している人は思ってくれたのだと思います。

年末なので、手帳関連、ダイアリー関連のものが、少しずつ入荷しています。

入荷時期がバラバラなのは発注のタイミングによるもので、来年はもっと早く、全てのカバーがダイアリーの完成とともに入荷するように調整したいと思います。

オリジナルダイアリーを作り出したばかりの頃はル・ボナーさんがダイアリーの革カバーを作ってくれていました。

10年近く前になりますが今も使い続けて下さっている方もおられて、使い込まれたカバーを見ると、当時のことが思いだされて懐かしい気持ちになります。

新作のバゲラさんのオリジナルダイアリーカバーには驚かれた方も多かったと思います。すぐに売れてしまって今はありませんが、近日中には入荷する予定になっています。

バゲラの高田さんは当店のオリジナルダイアリーをしばらく使って下さって、高田さんの思う正方形ダイアリー用のカバーを作ってくれました。

エキゾチックレザーなど様々な革を組み合わせて、バゲラの世界観が表現されているものだと思いました。

毎年作っていただいているカンダミサコさんのダイアリーカバーも入荷しました。

1枚の革でできているシンプルで、柔らかい印象のカンダさんらしいカバーです。これもカンダさんらしい仕様だけどくるみボタンがワンポイントになっています。

当初私はダイアリーにビニールカバーだけを掛けて使っていました。その方が荷物が軽く、コンパクトになると思ったからです。

たしかにビニールカバーで使うとスッキリとダイアリーを使うことができますが、使ううちに革カバーを使いたいと思い始めてしまいました。

そして最近、ミネルヴァリスシオのオリジナルカバーを使い始めました。

見た目の感じ、手で感じる感触など、やはり革の表紙で持つと愛着がより一層強くなっていいものだと思えます。

私はなるべく傷を付けたくないので、正方形ノート用「square note bag」に革カバーのダイアリーを入れてから、鞄に入れています。

出張販売にもオリジナルダイアリーをいつも持って行って、なるべく多くの方にこのダイアリーを知ってもらえるようにしています。

出張販売は、オリジナルダイアリーを遠くの人に知ってもらうための旅だと言うと言い過ぎかもしれないけれど、オリジナルダイアリーを代表とする当店のオリジナル商品を知ってもらうことが出張販売の目的ですし、オリジナルダイアリーをより魅力的にしてくれる革カバーは、当店になくてはならない大切なものとなっています。

⇒正方形ダイアリーカバー・正方形ノート TOP

茶碗と万年筆

お茶の茶碗は数人分の濃茶を点てて回さないといけないので大きさも自然と決まってくるし、茶碗としての用途も当然満たさないといけないので形もほぼ決まってきます。

茶碗に興味のない人にとっては柄などが違っていないと同じようなものに見えるのかもしれません。

でもある程度見慣れてくると、ひとつひとつが全然違うと思えるようになります。

見慣れないうちは全て同じに見えるということでは、万年筆と茶碗は似ているのかもしれないと思いました。

万年筆も筆記具である以上ある程度大きさも形も決まってきます。

本来の目的である書くという機能を完璧以上に備えた上で、この小さな1本の棒の中に意匠を凝らしたり、シルエットに凝ったりしていると思うと、茶碗と同じように見ることができるのかもしれません。

中之島香雪美術館に茶の湯の茶碗展を観に行ってきました。

以前千利休について本を読み漁っていたこともありましたし、茶道を習っていたこともありましたので、茶道のお道具を観るのは好きでした。

お道具の中でも茶碗は、華々しい場面で使われる花形的な存在だと思います。

私も分かって見ているわけではありませんが、美術館に展示されているものなので、変なものがあるはずがないと思います。

こういう名物を見て、自分はどういうものが好きなのか確認しているのかもしれません。

組織力で作る繊細で研ぎ澄まされた天目茶碗や豪快で力強い井戸茶碗に対して、その時日本で主流だった侘び茶の設で使われることを前提に、日本で1人の作家によって作られた楽茶碗の言葉で言い表せない凄み。

海外の豪華な限定品や日本の蒔絵を施したものが最近の観る要素のある万年筆でしたが、綴り屋の万年筆はそういったものと同じように、観ることができる万年筆だと私は思っています。

蒔絵以外で日本でこういうものが出てきたのは久し振りだと思います。

綴り屋の静謐は鋭いラインが出るまで攻めて削り込んで、木なのに硬さ、冷たさのようなものを感じる万年筆で、その名の通り静謐さを感じます。

私はこの静謐に惚れて綴り屋さんの万年筆を当店で扱うようになりました。

攻めて削り込んだものというと、月夜の万年筆もそういうものになります。

キャップも軸も薄く仕上げて、とても軽い、細い万年筆に仕上げている。

見た目も筆のような趣があり特長的ですが、書くことにおいてもコントロールのしやすさを月夜は持っていますので、ペン習字などでも役に立つペンだと思っています。

月夜に漆の溜塗を施したものを当店では扱っていますが、攻めたラインと漆の光沢による冷たさが合ったいいものに仕上がっています。

静謐を発展させて、荒々しい自然な味を付加させたのがアーチザンコレクションで、こういう手法のものはお茶道具の花入れなどでも見られます。

自然のままの姿を生かすためにとことん手を入れてこの形をとどめているアーチザンコレクションはとても人気があって、入荷するとすぐに売れてしまいます。

漆黒の森は一見当たり前に見えて、そう見えるように最大限の努力がされている。キャップを薄く作り、ボディは厚く残して重量のバランスをよくして、首軸とボディの段差を最小限にしているなど、いくらでも言えるところがある万年筆。

私たちの念願だった綴り屋さんの作品販売会を元町で開催いたします。

上記の綴り屋さんの人気の万年筆やボールペンの他にも新作もご用意して下さっているとのことで、私も楽しみにしています。

当店と590&Co.さんの共同開催で、590&Co.さん店舗内で開催します。

12月9日(土)10時~19時

12月10日(日)10時~17時

15時まで予約制とし、こちらで→ https://airrsv.net/590andCo/calendar

ご来店のご予約をすることができます。

尚15時以降はフリーで入場可能です。

当日綴り屋万年筆をお買い上げの方は、当店でペン先の装着、調整をさせていただきます。

ご来場お待ちしております。

⇒綴り屋 TOP

自然な使用感に惹かれる

590&Co.さんとの共同出張販売「&in福岡」のために、福岡に行ってきました。

数年前から毎年福岡に来ていましたが、今までは大名にある表通りに面したギャラリーで出張販売をしていました。
でもコロナ禍などの影響もあってそのギャラリーが閉鎖になり、今年から警固(けご)にあるギャラリートレザイールさんを会場にさせていただきました。

天神に近く人通りも多い大名とは違い、警固周辺は静かなところで、個人経営のカフェやお店などもある比較的落ち着いたところでした。

マンションの間に商店が混じった、暮らしと遊び場が同居した感じは、当店のある元町に近いと思いました。ホテルも警固だったので、福岡滞在中警固周辺から出ることなく、その中で快適に自然体でいられました。

きっと谷本さんもそうだと思いますが、私たちにとって警固の落ち着いた雰囲気が心地よく、合っていたのかもしれません。

福岡でも綴り屋さんのペンは注目されていました。

12月9日(土)10日(日)、590&Co.さんの店舗を会場に綴り屋さんの作品販売会を開催します。

イベント期間中に綴り屋さんの万年筆をお買い上げのお客様は、当店にてペン先調整をさせていただきます。

このイベントは当店と590&Co.さんとの共同企画で、初の試みになります。

出張販売での反省では、今自分がどういうものを好み、こういうものを良いと思っているということをもっと表現するべきだと思いました。

モノに関する好みですが、デザインが良いモノももちろん良いのですが、使用感が自然なものの方が、私の場合長く使っているような気がします。

綴り屋さんの万年筆漆黒の森は重量が軽い割に太軸で、力を抜いてペンの重みに任せて書く必要がなく、自然な感じで書ける万年筆です。

万年筆を使い慣れた人も、長く使って来た人もきっとこの漆黒の森は手に馴染みやすいと思える、自然な使用感を持った万年筆です。

インクもその色に惹かれて使い始めますが、いくら色が良くても紙の上に乗るような、紙に馴染まないインクはあまり好きではありません。

書いた後スッと紙に沈んでくれる自然な感じがするということが絶対条件で、色以上にそんな性質のインクに惹かれます。

当店のオリジナルインクの話で恐縮ですが、冬枯れやメディコ・ペンナ、虚空がそんな性質で、それらのインクを好んで使っています。

紙馴染みの良い自然な使用感のインクはたいてい発色も大人しく、少し沈んだ落ち着いたトーンになります。しかし、そんなところも私には自然に見えて良いと思えますので、オリジナルインクでそういうトーンのインクが多いのも、そんな理由があるからです。

革表紙のメモはデザイン的には凝ったところはありませんが、自然に快適に使えることを追究したものになります。

土台となる底の革は厚く丈夫なサマーオイル革で、安定感があり、書きやすさに貢献しています。表紙の革は柔らかいミネルヴァボックス革で、めくりやすく、開いたままにしておけるので、書いている時に邪魔になりません。

中紙は当店の試筆紙と同じユトリロ上質で、にじみが少なく、裏抜けもないけれど、特殊な表面加工がされていませんので自然なインクの吸収と書き味を持っています。

切り取りやすいマイクロカットミシン目が入っていますので、サッと切り離すことができます。

各素材をそれぞれの用途に適した特性のあるものにして、自然な使用感のメモ帳を目指したのが革表紙のメモです。

いろんなものを使ううちに、こういった自然な使用感を持つものが良いものだと思うようになりました。

 新しいものでなくても、長く扱っているもの、作り続けているものには無理のない自然体の使いやすさがあって、当店の定番と言える存在になっています。

⇒Pen and message. 革表紙のメモ

新しい時代の象徴~ツイスビーECOインディゴブルーブロンズ、Kai~

コロナ禍前年の秋、台湾を訪れることができたことは幸運でした。

台南ペンショーを視察するという目的で、2泊3日で台北の文具店を見て回れるだけ見て回り、高鐵で台南に行ってペンショーを見て台北に帰って来ました。

一人旅だったけれど、台湾のお店も風景も思う存分見ることができて、充実した旅でした。

あれから4年も経ったとは信じられません。コロナ禍は時間をあっという間に進めてしまったような気がします。

コロナ禍の数年はほとんど家と店の往復で、体は楽だったけれど、このままではいけないという危機感ばかり募らせていました。それは、台湾に行って時代が変わってしまっていることを実感したからでした。

コロナ禍が明けたと思えた今年、私たちの仕事は外に出て行ってこそ活気づくものだったと、動き回りながら思いました。日本が様子を見ている間に、世界はとっくに動き始めていたのだと思います。私たちは遅れた3年を取り返さなくてはいけないのかもしれません。

新しい時代の中心のひとつはツイスビーだと思っています。時代遅れにならないためにも押えておきたいブランドで、万年筆の新作が出ると仕入れています。

ECOの新色は1年に何回も発売されますが、今回発売されたインディゴブルーローズゴールドは今までのものとは少し趣が違う、大人の万年筆の雰囲気があるような気がします。

ECOの魅力は透明軸の中の大きなインクタンクで、インクの存在を感じながら書くことができます。そこに喜びを感じる人が多いということを、お客様方の話から知りました。

ECOは昨年からmade in Chinaになっていますが、インディゴブルーはキャップリングにTAIWANと印刷されていて、台湾製であることが表記されています。

もうひとつの新製品Kaiは従来のモデルと少し違っていて、ヨーロッパ万年筆のような雰囲気があります。

アクリル削り出しの、少し太軸で上質な質感を持つツイスビーの高級バージョンと言えるものです。

ECOインディゴブルーローズゴールド、Kai、どちらも限定商品となっています。

ツイスビーの万年筆は、金ペンのしなやかさはないけれど、サインペンのような、何も気にせずに書けるダイナミックさがあります。

現在、多くの万年筆は金の高騰と為替の影響で、高額化に苦しんでいます。金を使わずに、低価格で魅力的な万年筆を作り続けているツイスビーのペン作りの在り方が、そしてそういう万年筆を支持するお客様方が、新しい時代を築いているのだと思います。

⇒ツイスビー Kai 万年筆

⇒ツイスビー ECOインディゴブルー