新しい世代の万年筆観

万年筆は金ペンであってほしいというこだわりを捨てることができなかったために、TWSBI(ツイスビー)を真剣に扱うのが遅れてしまった。

仕入先の株式会社酒井さんにご協力いただき、神戸ペンショーでは毎回ツイスビーを販売していたけれど、店舗ではあまり扱えていませんでした。

でも最近来店される若いお客様方に教えてもらったり、今年の神戸ペンショーでのお客様の反応を見ていて、真剣に扱うべきだと思いました。

若い人や、インクの好きな女性のお客様が、同じくらいの値段なら金ペンの黒金国産万年筆よりも、デザインが楽しそうなツイスビーを選ばれています。若い人は金ペンにこだわっているわけではないので、私が金ペンにこだわっても、時代から取り残されていくだけなのかもしれない。

それが今起こっている現実で、せっかく今の時代に万年筆店をやっているのだから、時代を反映して今のモノも扱うべきだと思います。

それはラメの入ったシマーリングインクや、強烈に光るシーンインクに対しても同じことが言えます。

頑固な店主のこだわりを貫くのも店のあり方としていいのかもしれないけれど、私は当店を平成の遺物にしたくないと思っています。

そう思ったきっかけは昨年10月台南ペンショーの視察のために訪れた台北で文具店を何軒も見て回ったことが大きく影響しています。

どの店も新しい感覚でステーショナリーを扱っていて、12年間私が自分の店の中で奮闘している間に時代は確実に変わっていることを実感しました。

時代から遅れたくないと思いましたし、それを取り入れることで店もリフレッシュされて、長く続くことができる気がしました。

ツイスビーはECOとダイヤモンド580を扱っています。

どちらも軸内でインクがチャプチャプするくらい大量のインク(2ml)を吸入することができるピストン吸入式の万年筆です。

特にダイヤモンド580は、ヨーロッパで古くから作られている万年筆の良いところを参考にしていて、バランスの良い万年筆に仕上がっています。

ECOは今までの万年筆の価値観とは違い、分解用の赤いスパナが付属するなど遊び心に溢れていて、万年筆を気どりのない日常的なものにしてくれます。

万年筆がファッションであるヨーロッパとは違い、万年筆で字を書くことを楽しむ土壌が台湾にはあって、その感覚は日本においての万年筆のあり方に近いような気がします。

万年筆の新しい流れが、アジアを中心に起こっていることの象徴がツイスビーの万年筆なのです。

ペリカンのカジュアルな万年筆も1つご紹介いたします。

ペリカンM205ストーングレー。毎年発売されるインクオブザイヤーと色を合わせて発売される、比較的手に入れやすい価格の限定品で、このシリーズのステンレスペン先の書き味は素晴らしい。

ステンレスなのに柔らかく、ちゃんとペリカンの書き味が感じられます。万年筆ならではの柔らかい書き味がステンレスペン先で味わえるお勧めのカジュアルな万年筆です。

時代は変わっています。

いつまでも古い価値観にしがみついて、自分が良いと思うものだけを世に問い続けることにこだわっても、忘れられていくだけなのかもしれない。

それよりも今の感覚のモノと自分ができることをミックスして世に問う方が楽しく、前向きな生き方のような気がします。

⇒ダイヤモンド580スモークローズゴールドⅡ

⇒ECOホワイトローズゴールド

⇒M205ムーンストーン

万年筆雑感~太字へのお誘い

おじさんになると、年代や性別でその好みを決めつけてしまうことがありますが、大抵それは正しくないことが多いので、改めなければと思います。やはり思い込みは一番良くなくて、いつもニュートラルな状態でいないといけない。

例えば、もう革も金具もなくなって作れなくなってしまいましたが、コンチネンタルM5手帳は、自分と同じくらいの年代の男性に、素材感のある革を厚く使った、「書かなくても持っているだけで楽しい手帳」として作りましたが、販売してみると女性のお客様が多く購入されていました。

そして売れ筋の万年筆の字幅は、私たちが若い頃20年以上前では、売筋はM、女性はFかEFでした。

でも最近は男女ともにFやEFを好まれるように変わってきたように思っていましたが、男女で分けるところも時代遅れだし、海外のM以上の字幅、国産でいうと太字以上を使いたいと思われる人も多く、いろいろな自分の中のデータも時代に合わなくなっていて、修正しなくてはいけないと思います。

太めの字幅を使う醍醐味は、湧きだすように潤沢なインク出でヌルヌルと書けるところだと思います。そしてそんなインク出では小さな文字や細部まで表現された美しい文字を書くのは難しいけれど、自分が太字で書きたいと思う文字は、そういう文字ではない。

自分の書きたい文字を書くための万年筆なので、用途によって字幅を変える必要はないのかもしれません。文字がつぶれてもいいからM5手帳にも太字で書くのもありだと思います。

そういう使い方をするなら、ドイツの万年筆のB以上の字幅がいい。

国産やイタリアのペンもよく書けるけれど、ドイツのペンのBの豪快なインク出には及ばないし、縦線が太く、横線が細目のドイツらしい線の形もそういう文字に合っています。ペリカンやモンブランのB以上になると期待通りの文字が書けると思っていますし、ペリカンのBBなら尚いいかと思います。

手帳にきれいな文字を書くことばかりに気をとられて、細字ばかりを見ていたけれど、万年筆の書き味は太くなればなるほど快感と思えるほど良くなっていく。

たまにはまた太字の万年筆でヌルヌルとした書き味を味わいながら、インクを大量に消費するのもいいのではないでしょうか。

日本の万年筆には微妙な書き味の違いがあって、それを感じ分けることは繊細な感覚を持った私たち日本人らしい万年筆のあり方で、それは世界に誇れるものだと思います。

私は日本の万年筆の書き味の良さを知っているから、ペン先調整でどの万年筆も日本の万年筆のような良い書き味に整えたいと思うし、そういう気持ちはブレずに持ち続けていたい。

新型コロナの影響でそれは滞っているけれど、人の行き来もモノのやり取りも境界線がなくなった現代において、モノ作りのお国柄は失われつつあっても、万年筆にはまだちゃんとあります。いくら国をまたいで行き来しても、その人のアイデンティティは変わらない。

万年筆のお国柄が失われないのは、万年筆がその人のアイデンティティを表現する道具だからなのかもしれません。

⇒Pelikan M800

⇒モンブラン 149

自信のレイアウト・オリジナルダイアリー

手帳が好きなので、なるべく多くの冊数を同時進行して使いたいと思っています。

今までは色々使いたいという思いに蓋をして、1冊にまとめようとしていました。でも何冊もの手帳を鞄いっぱいに入れて、それぞれに役割を与えて楽しみながら使いこなしている古くからのお客様であるOさんの姿を見て、自分も使いたいものを自由に使おうと思いました。

手帳は1冊にまとめるよりも、複数の冊数をそれぞれに役割を割り振った方が上手く行くということは何となく思っていたけれど、Oさんの姿がそれの後押しになった。

いくつもの手帳に役割を与えて使うシステムについて考えるといくらでも考えていられるけれど、そろそろ来年の手帳の組み合わせについて決めてもいい時期になっています。

日付入りの手帳の理想は、見開きでたくさんの日数を見渡すことができるものだと思っていますが、たくさんの日数を見渡せるようになるほど、1日ごとの書けるスペースが小さくなるというジレンマがあり、このバランスを取らなくてはいけません。

紙を大きくしていくとこの問題を解決できるけれど、持ち運びの邪魔になったり、限られた机のスペースで使いにくくなります。

オリジナルのダイアリーはA5サイズの縦を少しだけ短くした正方形で、持ち運びやすさと書き込めるスペースのバランスがちょうどいいと思っています。

特にマンスリーは、スケジュールを確認するのにかなり使いやすい。

来年は正方形ダイアリーのマンスリーを全ての手帳のターミナルのような存在で使い、いかに1ページにたくさんの情報を書き込めるかということに挑戦しながら、使いたいと思っています。

正方形のマンスリーダイアリーは、予定も書き込めながら他のことも書き込む余地のある自信のレイアウトで、このレイアウトを生み出した10年前の自分たちを褒めたいと言うとあまりにも手前味噌過ぎるかもしれないけれど、他にない、使いやすいレイアウトです。

全てのスケジュールをマンスリーダイアリーで管理して、M5手帳をそら文葉のフレックスダイアリーや当店オリジナルのLiscio-1紙方眼リフィルを1日1ページとして使って、毎日の細々としたToDoを管理したい。

そしてその日一日のまとめを正方形のウィークリーダイアリーに記録して、数年後に2021年について調べた時に分かりやすくしておきたい。

オリジナルダイアリー用にカンダミサコさんに作っていただいたミラージュ革の正方形カバーは、ダグラスとの革質の違いか、ウィークリーダイアリーを入れると少しきつめになっています。

ダイアリーを入れていると革が伸びてピッタリとフィットするけれど、内側にペンホルダーを備えた意図はゆったりラフに使えるというものだったので、薄いマンスリーダイアリーをミラージュカバーに入れた時のくったりした感じの方が当初のイメージでした。

ミラージュ革で今後も色々作るかを考えていますが、もともとの艶や張りがありながら、使い込むと馴染んだ艶が出るエージングもする、しっかりとしたいい革だと思います。

万年筆という、歴史あるメーカーの作る魅力的なプロダクツがあって、これにどんな革を組み合わせるかということが店の個性だと思っています。

マンスリーダイアリーにミラージュカバーを付けて、ファーバーカステルクラシックコレクションなどをペンホルダーに挟んで使えたら、中身を書かなくてもそれで満足してしまいそうです。

*2021年正方形ダイアリー・マンスリー 

*2021年正方形ダイアリー・ウイークリー

*正方形ダイアリー用カバーミラージュ革

AURORAカレイドスコーピオルーチェブルー

アウロラの限定品、カレイドスコーピオルーチェブルーが860本限定で発売されました。

アウロラの限定品は、ペン先に18金を装備して、ジャンルで言うと下記のシリーズに分かれます。

1)オプティマをべースにして、旧タイプのキャップリングを使用した往年のアウロラをイメージした365シリーズ

2)バランス型の88をベースにした太陽系の惑星をテーマにしたシリーズ

3)金属パーツにスターリングシルバーを驕り、首軸にもスターリングシルバーを採用したオチェアーノのシリーズ

今回のカレイドスコーピオは、1のオプティマ型ですが、首軸にもボディと同素材のアウロロイドを使用し、特別感の強い華やかな仕上がりになっていて、新たな限定品のシリーズになっています。

カレイドスコーピオ(万華鏡)の名の通り、幻想的なアウロロイドの模様は、流行の薄めのインクにも相性の良い色合いだと思っています。

アウロラの書き味はカリカリした、鉛筆のような書き味と言われることもありますが、私は良いバランスに調整されたアウロラの書き味は柔らかい肉にナイフを入れるような、滑らかで、柔らかさを感じるものだと思っています。

今回の限定品は同じ色のボールペンも320本限定で製作されています。

アウロラのボールペンは、汎用性の高いパーカータイプの芯を使いますので、お好みの書き味の芯を入れることができます。

パーカータイプと呼ばれる芯の規格は、パーカーが最初に採用して、今も使われていることから業界内でそう呼ばれています。

モンブラン、ウォーターマン、カランダッシュ、シェーファーと国産各社は独自規格の芯を使っているのに対し、パーカータイプは選択肢の多さで競争力の高さを持っています。

三菱はジェットストリームという、インクの粘度の低い軽い書き味のボールペンで世界を席巻しましたが、ジェットストリームにもパーカータイプのものが存在します。

筆圧の高い方は、粘度が高い従来のボールペン芯の方が使いやすいと言われる方も多いので、ペリカンやアウロラの芯を使われるといいのではないでしょうか。

アウロラは、このカレイドスコーピオのシリーズをしばらく継続するそうで、次のモデルはピンク色を基調にしたものになります。

他の分野と同じようにペンの業界も今年は動きが止まってしまいました。

それは働いている人の安全を確保するという、已むに已まれぬ理由があるためで、特に欧米は深刻な状態になっている。

日本でも疫病を恐れないわけではないですが、このままとどまってじっとしていていいのかという、焦りのようなものも多くの人が感じ始めているように思います。

そろそろ経済を動かさなくてはならない。アウロラは比較的早い段階から、コロナウイルスに負けずに、工場を操業させているというメッセージを発信していました。

そして多くの万年筆メーカーが沈黙を守っている中、予定よりも遅れたとはいえ、アウロラは新しい限定品のシリーズを発売してきました。

そんなアウロラの不屈の精神の表れが、このカレイドスコーピオだと思っています。

⇒AURORA カレイドスコーピオ万年筆

⇒AURORA カレイドスコーピオボールペン

大人のシャープペンシル ペリカンD400

若い頃、この仕事に携わる前の万年筆を使い始めたばかりの頃は、書くものは何でも万年筆で書いていました。

万年筆を使うようになって書くことがより楽しくなったので、無理やりにでも万年筆を使いたかった。

その時はいつも万年筆のことを考えていたので、ペン先が付いていて、万年筆の形をしているものなら何でも欲しかったし、万年筆というキーワードの入った本なら何でも買っていました。

その時に一気に入り込んだ世界に今もしがみついているけれど、その時の頑なさが自分の未来を作ったのかもしれないと思うことがあります。

今は少し引いて考えられるようになって、自分は書くこと自体が好きだったのだと思い返すことができたし、筆記具も用途に応じて使うと、より書くことを楽しめると思うようになりました。

それでも万年筆は自分にとって、単なる筆記具以上の存在ではあるけれど。

自分の仕事の内容を考えるとペンシルの方が合うと思うものが結構あることに気付いて、シャープペンシルもよく使うようになりました。

国産のシャープペンシルは安価ですが面白いものが多く、片っ端から使ってみていましたが、最近はペリカンD400というシャープペンシルが一芸に秀でた国産シャープペンシルと対極をなす、バランスがとれた大人のシャープペンシルだと使い始めて思いました。

オーソドックスでありながら、くちばしのクリップや天冠の小さなロゴなどのアイデンティティは示されていて、分かる人にはペリカンだと分かるこのさりげなさも良いと思います。

海外のものは芯の繰り出しが回転式のものが多いですが、D400はノック式で、子供の頃から使っているものと同じで馴染みがあり、これがシャープペンシルでは一番使いやすい機構だと思っています。

もうひとつ芯の太さの問題があります。

海外のものは0.7ミリの芯を使うものが標準ですが、私のように手帳に小さな文字で下書きを書く場合には太すぎて、やはり0.5ミリの方が使いやすい。

当店でも、ペリカンのシャープペンシルは、0.5ミリと0.7ミリを選ぶことができます。

芯は国産のものが圧倒的に、滑らかに柔らかく、気持ち良く書くことができると思っています。

私は三菱鉛筆のハイユニの2Bと4Bを使っていて、シャープペンシルを使う人には必ず勧めていますが、既に使われている方も多いと思います。

ダイアリーやバイブルサイズの手帳など、記録するものは万年筆で書いて、後からでも読みやすいように書くのですが、自分が最も楽しんでいる休みの日や昼間に考えたことを原稿ノートに書く下書きはシャープペンシルで書きます。

原稿は、頭の中で考えて一気にノートに書いて、パソコンで清書したら終わりという書き方をしていましたが、バインダー式の手帳のページに、タイトルや大まかな内容だけを書いておいて、そこへ書き足していくというやり方をするようになりました。そうやって時間だけでもかけた方が、自分として少しはマシなものが書けるのではないかと思っています。

私にとって、万年筆は表現、清書の道具。シャープペンシルは考える道具で、地味な存在だけど、そんな陰の仕事を支えてくれる良いものと出会えたと思っています。

⇒Pelikan D400ペンシル(0.5mm/0.7mm)

いつかは149

「いつかはクラウン」という言葉が、古いトヨタのコピーにありました。

単純にいつかクラウンを買ってやる、というものではなく、30代40代は分相応なカローラに乗って、社会的に乗ってもいいと認められる地位や年齢になってきたら世間的にやっとクラウンに乗ることを許される。そういう古い日本人的な慎み深さや分相応をわきまえた、シンプルだけど奥行きのある言葉だと思います。

当時の人はいくらクラウンが買えるお金があったとしても、自分がクラウンに相応しいかどうかを気にしていた。それが堅実な生き方というものなのかもしれません。

世の中をそういう風潮にした、自動車メーカーとしては勇気のいるメッセージで、これが文化を作るということだと思う。今ではどんな車でもローンや他の方法で乗ることもできるし、車でその人の格を推し量る時代ではなくなりました。

万年筆においてクラウンにあたるものは、モンブラン149だと思ってきました。

149は特別な機能を備えた万年筆ではない普通の万年筆ですが、格のようなものを感じさせます。

多くの作家がそのタフな仕様を信頼して、自分の仕事を書き記すために愛用したというエピソードもたくさんあって、いつかは149に見合った仕事をしたいと思わせてくれる。古い考え方かもしれないけれど、そういう万年筆ではないかと思います。

10年くらい前に、同年代の古くからのお客様Nさんと自分がどんな立場になったら149を買うかという話をしたことがあり、Nさんは校長になったら149を手に入れたいと言っていました。

肝心な自分が何と言ったかを忘れてしまったけれど、50歳になったら、あるいは店を10年続けることができたら、のどちらかだったと思う。

その時は40代になったばかりで、まだまだ先の話だと思っていたけれど、気がついたらどちらの基準もクリアしていました。

でも今の自分が、当時思った149を手に入れるに相応しい人間なのかは分からない。そうなるように努力はしてきたけれど、変化のない平坦な道を歩いてきて、劇的に何かが変わったというものもありません。私たちの仕事は、自分で自分を評価したり、自分で自分の仕事を作るので、何かをやり遂げたと自分で思った時がタイミングなのではないかと思う。

モノを手にするのにわきまえるという考えなどなくなった今では、若い人が149を手に入れることに対してまだ早すぎるとは思いません。とっくにそういう時代ではなくなっています。

ただ、私とNさんの間において、149はそういうものだったというだけの話です。

Nさんとそういう話をした当時、当店は149、モンブランを扱っていませんでした。でもNさんとの約束を守るためにも149だけは扱えるようになりたいと思っていました。

当店は万年筆ではモンブランも他の万年筆と同じようにペン先調整して販売しています。

長年使い込んで良い書き味に馴らしていくのがメーカーの意図なのだと思いますが、少し調整をして、最初から滑らかに書けるようにしてから使い込んでいくのが、今の時代の万年筆の馴らし方なのかもしれません。

自分のために149を調整する日はいつになるのか分からないし、わきまえるのもいい加減にしないと、使い込む時間がなくなってしまいそうです。

⇒モンブラン149

2021年オリジナルダイアリー

一年に数回、店を始めた頃から現在までのダイアリーを見返さなくてはいけないことがあります。探している事柄を見つける度に良かったと思い、何でもきちんと書いておかなくてはいけないと思う。

システム手帳でも、綴じの手帳でもいい。しっかり書いておかないと記録としてのダイアリーは後で役に立たない。

時系列で調べることを考えると、綴じの手帳の方が散逸しにくく、探し易いのかもしれません。今回は綴じの手帳としてオリジナルダイアリーをお勧めしたいと思います。

もう11年作り続けている定番商品です。

手帳というよりもA5サイズの長辺を少し短くした158ミリ×158ミリの正方形サイズで、記録として書いておくためのスペースを確保しつつ携帯性も考慮した大きさです。あまり大きくなると机の上で広げにくくなりますし、色々な事情を忖度した使いやすいサイズだと思っています。

今回の2021年のダイアリーは大きくリニューアルしましたので、ご紹介させていただきます。

まず表紙のデザインを変更しました。

11年間同じ表紙を愛着を持って使っていましたが、改めて今の感覚でデザインし、紙もシックで質感のあるものを使用しました。

中紙は万年筆の書き味や、にじみ、裏抜けしにくさにこだわって選んだ、ダンデレード紙に変更しました。にじみのない正確なインク乗りと柔らかい書き味を楽しんでいただけます。

罫線のレイアウトは変更していませんが、フォントをタイプライター文字にして、少しクラシックな印象にしました。やや骨太で温かみのある書体は存在感もあり、遊び心も感じられる紙面になったと思います。

私は正方形ダイアリーのウイークリーをM5システム手帳とバイブルサイズのシステム手帳と併用しています。使い方としては、1日1ページで使っているM5手帳の情報を清書して、数年後に見返しても分かるようにすることと、スケジュール、ToDoの管理です。

ウィークリーページの右側土日下のフリーの記入欄は4分割とチェックボックス付きの欄があって、その週にする自分の仕事を項目別に書いています。項目はORDER、WORK、WRITE、MEMO、THINKで、それぞれゴム印を作って押しています。

シックで、少しマニアックな感じの表紙をそのままでお使いいただいてもいいですが、今年も革のカバーを作りました。

革は、残り少なくなったダグラス革を裏張りなしで、薄めに使って仕上げています。

カバーの内側にペンホルダーを装備していて、手帳用には太めのペリカンM800くらいまでのサイズにも対応できるようにしています。

オリジナルダイアリー同様、革カバーも自分たちならこう使うという主張を込めた、少しラフに仕事の道具として使っていただける仕様にしています。

オリジナルダイアリーも、作り始めて11年たって、当時と今とでは世の中は大きく変わりました。オリジナルダイアリーもそのままで良いわけはなく、今の感覚に合わせて、使ってみたいと思ってもらえるようにする必要がありました。モデルチェンジさせて新しいスタートをきりたかった。

今使って下さっている方に迷惑は掛けられないけれど、変えられるところは全て変えたいと思い、出来上がったものが来年版のダイアリーです。

少し遅くなったけれど、システム手帳とともに使い分けてお使いいただきたいと思っています。

*オリジナル正方形ダイアリー(正方形ダイアリー/ノートTOPへ)

*コンチネンタル正方形ダイアリーカバー

A5システムバインダーの受注製作

私にとってシステム手帳やダイアリーは清書するもので、後からちゃんと読めるように自分なりにキチンと書くものなので、それらに走り書きをすることはありません。

原稿の下書きや打ち合わせのメモ書きなどにはA5サイズのルーズリーフを使っていて、これはノート代わりの使い方なのかもしれません。

文字の形を気にせず、太めの万年筆や4BのペンシルでA5サイズのルーズリーフに書くと、伸び伸び書けて気持ちがいい。穴の数の違いはありますが、6穴のA5システム手帳とルーズリーフの役割はそれほど変わらないので、ノート的に使うこともできます。

私と同じようにバイブルサイズとA5サイズを使い分けている人は多くて、M5やバイブルがあるのだから、A5サイズのシステム手帳も作ってほしいという声はありました。

そんなとき、カンダミサコさんからA5サイズのシステムバインダーを受注製作で受け付けませんかという提案があり、期間限定で始めて見ることにしました。10月末まで受け付けをして、12月中にお渡しすることにしました。

表革は丈夫なシュランケンカーフ、内革は艶の出るブッテーロです。

リング径は携帯性と使い勝手のバランスが良い16mm径で、色はシルバーかゴールドをお選びいただけます。ただしゴールド金具のご注文が多い場合は、メッキ加工の都合でゴールド金具のみ1月にズレ込む可能性があります。

同じものをまとめてたくさん作る量産ではなく、ご注文のものをひとつずつ製作するパターンオーダーという形になり、いくつものパターンの中からお好きな色を選んでいただいてお作りすることができます。

バイブルサイズ、M5サイズの金具を独特な方法で固定する平らに開く仕様はA5サイズでも採用しており、紙を綴じたままでの書きやすさはさすがです。

A5サイズのメリットは、紙が大きく伸び伸び書けることに加えて、A4サイズの書類を2つ折りにしてそのまま綴じられる、ファイル的な使い方ができることもあります。このあたり変形サイズであるバイブルサイズにはない使い勝手の良さだと思います。

A5サイズも、システムバインダー、システム手帳の範疇に入るものなのかもしれませんが、バイブルサイズなどの手帳らしいサイズのものとは違う用途があると思っています。

*受注生産 カンダミサコ A5システムバインダー(期間限定:2020.10.31受付まで)

手帳のコーディネート

ステーショナリーも上質なものになるほど、実用の要素は薄れ、趣味、ファッションに寄っていくものだと思います。だから高価な万年筆に値段分のスペックだけを求めるのは野暮だと思う。

それくらいの万年筆になると、用途ではなく、自分の心に作用するものだと思います。その万年筆がただ鞄の中に、ペンケースの中にあると思えるだけで嬉しくて元気になれるような、心に作用するもの。必要な用途があって持っているのではなく、心に作用して何故か持っていたいと思えるものを扱っていたいと思います。

ただそのモノに直感的に惹かれて思い切って手に入れてみたら、ものすごく書き味が良かったというものが、私が目指す当店の万年筆のあり方ですし、万年筆以外のものでも同じようにしたい。

値段の高いものが書きにくいということは許されない。

書き味などフィーリングの良さへの要求は、趣味の方が実用で使うものよりも高いものが求められている気がします。人は自分が好きなものだからこそより良いものを求めるのかも知れない。趣味も満足させるクオリティを私たちは提供しなければいけない。

先日発売した、オリジナルのM5手帳、アルランゴートのローズゴールド革は、硬そうに見えるかもしれませんが、実はしなやかで手触りが気持ち良い。手に触れることが多い手帳にも合った、質感の良い革です。

この革をカンダミサコさんに見せていただいた時、これで何か作りたいと思いました。

女性に向けてということはもちろん意識していたけれど、素敵な男性が選ばれることもあって、この革の選択は間違っていなかったと思っています。

この手帳とアシュフォードの小口ローズゴールドのリフィルの組み合わせは、キマり過ぎなくらい完璧なコーディネートですが、もうひとつ組み合わせて持ちたい筆記具が限定発売されました。

カランダッシュエクリドールXSローズゴールドボールペンです。

M5手帳のペンホルダーに収めるためにあるような、かなり短めのボールペンです。このモデルは定番でしたが、数年前に廃番になり、姿を消していました。そのモデルがローズゴールド張りで再販されたというのは、やはり今のM5手帳の盛り上がりが理由なのかもしれません。

このローズゴールドのエクリドールXSボールペン、偶然とはいえこのアルランローズゴールドのM5手帳にためにあるようなものだと思いました。

小口ローズゴールドのリフィルを入れたこの手帳のペンホルダーに、ローズゴールドのエクリドールが差さっている。これ以上のコーディネートはなく、完璧に仕上がっていると思います。

手帳の中身をきれいに工夫しながら書くのも楽しく、趣味にもなることだと思いますが、ここまでくると中に何も書かず、ただ持ち歩くだけでも楽しい気分になる。

もちろん書いても楽しいですが、形を完璧に整えて持っているだけで嬉しいものも当店は提案したい。

当店は書き味の良い万年筆を追究しているから、こだわって調整した万年筆を販売しているけれど、こういう使わなくても嬉しい気分になる、遊びの、趣味のものもどんどん扱いたいと思っています。

⇒カランダッシュエクリドールXSローズゴールドボールペン

M5手帳、アルランゴートのローズゴールド革

オリジナリティのあるものを勧めたい

この仕事に携わって30年近くになりますが、何が世の中にウケるのか自分の狭い了見だけで判断してはいけないと思っています。自分が受け入れられないと思っても人気が出た商品もあるし、経験というのは意外とアテにならない。

だからスタッフや職人さんの言うことはいつも尊重するようにしています。

でもどんなに良いものであっても、それが何かを真似たものなら魅力を感じません。職人さんがそういうものを作ることはないけれど、メーカーの作ったものはそうやって見極めています。

当店が扱う商品に求められているのは実用性だけではないと感じるし、私もそうありたいと思いますので、扱うモノにはオリジナリティがあって欲しい。

そういうものを選んで提案するのが私たちの仕事で、そういうフィルターもなく、何の選別もしないのでは、差別化ができないと思っている。

それは個人の独断と偏見だと言われるかもしれないけれど、私が良いと思っているものを買っていただけるようにしたい。

いつも店にあるようにしたいと思っているものにファーバーカステルクラシックコレクションがあります。

最近日本では品薄で確保することが難しい状況が続いていますが、2016年限定のスネークウッド使用のボールペンとペンシルが入荷しました。

スネークウッドは幻の木と言われるもののひとつで、入手が難しいことでも有名です。

水に沈むほど目の詰まった質量の高い木で、非常に硬い。匹敵するのは硬い木として有名なリグナムバイタくらいかもしれません。蛇のウロコのような独特の模様や褐色の色目が男心をくすぐる素材だと思います。

ファーバーカステルクラシックコレクションは、デザインが特長的で美しいので、揃いの木で一緒に持ちたくなるペンだと思います。

ペンが映えるピッタリのペンケースを探すのもペンの楽しみの一つですが、こういう素材感のあるペンは、残り少なくなったダグラス革を使用したコンチネンタルペンレスト兼用万年筆ケースがよく似合います。

自分の美意識を反映させてコーディネートできたペンとペンケースを、仕事をしている傍に置いておくことができたら、なかなか楽しいのではないかと思います。

9/26(土)・27(日)、工房楔の木工家永田篤史さんが来店されイベントを開催します。工房楔の木製品はまさにオリジナリティに溢れた、素材も作りも上質なものです。

*今回のイベントは予約制になっていますので、参加ご希望の方は当店のホームページからご予約をお願いします(トップページに予約ボタンがあります)

*スネークウッドボールペン

*スネークウッドペンシル

*コンチネンタルペンレスト兼用万年筆ケース