工房楔秋のイベントを終えて

工房楔秋のイベントを終えて
工房楔秋のイベントを終えて

あまり記念日とか何周年だからとかを気にしない方ですが、当店が10周年を迎えた9月23日に工房楔の永田さんがイベントをして下さり、大いに盛り上げてくれました。
今回のイベントは象牙、黒柿など目玉となる素材や新製品のノック式ボールペンルーチェもあり、開店前に10数人のお客様が店先に並ばれたので、近所の方が驚くほどでした。

象牙はイベントでほぼ完売、ノック式ボールペンはオリジナルで製作した金具の都合で充分な数がなく、イベント後に仕入れることが叶いませんでした。ルーチェはまた後日、仕入れさせていただくことになっています。
それでもイベントのために永田さんがたくさん持ち込んでくれたものの中から、当店のお客様から好まれそうなものを選んで置いていってもらい、ホームページで紹介しています。

最近の工房楔は、ペンシル系に意欲を燃やしていて、オリジナル金具の0.5mmペンシル、2.0mmペンシル、ドロップ式の2.0mm芯ホルダー、ペンシルエクステンダートゥラフォーロなど、とても充実しています。
ボールペンは仕事で使わなければいけないもの。ペンシルは好きで使えるものという印象を私は持っていて、ペンシル系の方が趣味的な要素が入り込む余地があるのかもしれません。
ボールペンでは、今回新たに製作したノック式ボールペンルーチェの他に、三菱ユニボールR:E(アール・イー)用グリップがあります。
消せるボールペンの三菱ユニボールR:Eは、パイロットのフリクションに隠れてマイナーな存在ですが、通常のノック式「ゲルインクボールペンシグノ」「ジェットストリーム」の芯が共通して使うことができる汎用性の高さがあって、永田さんはこの辺りに目をつけたようです。
グリップを装着する本体としてユニボールREは使用しますが、中身は消せるボールペンだけでなく、ゲルインクボールペン、油性ボールペンを選ぶことができる。形の違うジェットストリームの替芯も使えるのは驚きました。

R:Eで銘木グリップを使用する場合、本体に付いているバネを使うのですが、バネが簡単なでっぱりで固定されています。何か引っ掛けるもので引っ張って外す必要がありますので、この点だけご注意下さい。永田さんは耳かきやかぎ針などで簡単に外すことができると言っていました。当店でも外すことができますので、お持込みください。

楔の木製品は常に進化しています。ステーショナリー、それもペンを作る木工家は多い。
ボールペンやシャープペンシルのメカニズムなどのパーツを販売している会社が海外にあって、ほとんどの人がそのパーツを使用してペンを作りますので、木工家の作るペンの姿はどれも同じようなものになります。
永田さんも今までそういったパーツを使っていましたが、素材の良さと仕上げの腕の良さで差別化してきました。
しかし、彼はさらに差別化を目指し、オリジナルで0.5ミリペンシル、2.0ミリペンシル、2.0ミリドロップ式芯ホルダー、いずれ当店にも入荷するノック式ボールペンルーチェなど、オリジナルのパーツを使って製作しています。
オリジナルのパーツを製作するのは、ロットもありコストがかかります。そして何よりも理想をしっかり形にして細部まで企画する力が必要になります。
オリジナルの形を手に入れて、楔の製品はさらに魅力を増しています。

最近、永田さんが尊敬する木工家で人間国宝になった黒田辰秋氏の展示が京都であり、行ってきました。
永田さんのイメージもあり、木工家というともっと頑なに木の良さを前面に出した作品をイメージしていましたが、作品から見る黒田辰秋氏は素材や方法に捉われずに、自由に美しい形を追究し、表現するアーティストでした。
漆塗りや螺鈿細工、小さな香合から大きな家具まで作品は幅広く、そこに存在するのはオリジナルの美でした。

永田さんもオリジナルのパーツを作ってまでこだわっているのは、他とは違う姿、そして理想の形で、追い求めているものは伝説の木工家と同じものなのではないかと思い、オリジナルのパーツを得たことで、工房楔の製品がより愛おしく思えるようになりました。

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