イタリア人は古くからあるものを生かしながら、そこに新しいものを融合させ価値のあるものにすることが得意な人たちなのだと、ペンだけでなく様々なものを見ていて思います。
伝統に新しい技術やデザインを盛り込んで生まれたものに共通する思想のようなものは、どこにでもあるものではない、それぞれのメーカーらしさを持った独自のものになっています。
イタリアには大きくなり過ぎることを戒める掟のようなものがあるのではないかと思えるほど、どのメーカーも自分の領分をわきまえているように私には思えて、大きくなって陳腐化することを避けているように見えます。
それが仕事を長く続けることに繋がると私も思うし、アメリカ式に仕事をどんどん拡大していくことが楽しことだと思えない。
イタリアは今リーマンショック以降の不景気から立ち直れずにいて、企業の倒産などあまり良い話は聞きませんが、自分たちのするべきことを守っている工房は、苦しいかもしれないけれど粘り強く残ってくれるはずだと思っています。
アウロラは工業都市トリノにある世界的な万年筆メーカーですが、外資や大資本の傘下に入らず、マイペースを守り、スローなペン作りをいまだに行っている会社だと言えます。
スローなペン作りとは、手間のかかる工程を守っているということになります。
アウロラがこだわるエボナイト製のペン芯は、1本ずつ削り出さなければ作れませんし、ペン先は多くのメーカーがしているように専門の業者に外注すれば手間が省けます。
それでも今も自社生産にこだわっていて、独特の書き味の秘密にもなっています。
「アウロラ88」は1952年には100万本売り上げたという大ヒットしたモデルの復刻です。
数字の8をモチーフにしたというボディデザインはそのままで、内部機構など書くための部分に現代の技術を取り入れ、実用性を向上させています。
1950年代のペンの復刻で、90年代の限定万年筆隆盛期の雰囲気を色濃く残している希少なモデルで、この88をベースにした限定モデルをアウロラは昨年末から続けて発売しています。
シガロは金キャップの88クラシックの世界観をさらに追究したような、90年代を古き良き時代としてリスペクトしたようなペンで、90年代に万年筆の世界に足を踏み入れた私には特別な存在の万年筆です。
88ソーレは、88をまた違った印象に味付けしたペンで、もしかしたら多くの人はこのソーレにイタリアらしさを見るのかもしれません。
大胆なオレンジ色のボディはソーレ(太陽)のイメージで、イタリアの陽光を表現しています。
4月には、88をベースにした限定モデルの「88NEBULOSA・ネブローザ」が発売になります。
星雲と名付けられた紫色マーブルのその万年筆は、まさに宇宙の色が表現されている、大変美しい万年筆に仕上げられています。
ネブローザはEF、F、M、Bとあり、ご予約承ります。(pen@p-n-m.net)
アウロラには100年近い歴史がありますが、その歴史的な財産を生かしながら現代風にアレンジしたペンを自分たちのペースを守りながら作り続けています。
⇒限定品 88 SIGARO(シガロ)
⇒限定品 88 Sole(88ソーレ)
カンダミサコ2本差しペンシース~シンプル、軽やかなペンケース~
久々にカンダさんが2本差しペンシースを作りました。
最近当店の革製品におけるカンダさんへの依存度が高く、本当に忙しい思いをさせてしまって申し訳なく思っていますが、それをカンダさんはどう思っているだろう。
私の持論として、2本差しは1本差しや3本差しに比べて売れにくい傾向があると思っていますが、カンダさんの2本差しペンシースは例外です。
万年筆用のケースは、構えた感じのものや重厚なイメージのものが多いけれど、カンダさんの2本差しはそんな万年筆らしいところが全くない。
軽やかに、あっさりとしているところが良いところだと思っています。特にこれからの季節、重厚なものよりも軽やかなものの方を使いたいと思う。人の好みは夏と冬とでは全く変わってしまうものだと思います。
とてもシンプルな作りですが、わずかなカーブや色の組み合わせなどでカンダミサコらしさもちゃんと表現されています。
この2本差しペンシースは、1本差しのペンシースなどの他のものと同じようにカンダさんしか作ることができないものだと思っています。
今までのシステム手帳とは違うものを作りたいということで、カンダさんが製作してくれているバイブルサイズシステム手帳と共通する趣きのようなものがあって、揃いで持ちたいと思わせてくれます。
私はこのカンダミサコ2本差しペンシースに、手帳用万年筆と手帳にしか使っていないペンテルマルチ8を入れて使っています。
標準的な太さのペンなら適度にホールドしてくれて使いやすい。
それは素材であるシュランケンカーフの、中身に応じて伸縮し、しっかりした張りを残しながらその形状を維持してくれる特性もあって、素材と形がピッタリとハマったものだと思っています。
2本のペンをスマートに収納してくれて、スマートに使うことができる2本差しペンシース。
夏ペンケースと言う言葉がピッタリな、温かくなる季節の好みの変化に応えてくれるペンケースです。
書類の分類~筆文葉Vファイル発売~
若い頃、2回目のご来店でお客様のお顔と名前を完璧に覚えていました。
誰よりも、お客様のことを覚えている自信がありました。
でも40歳を過ぎた頃から、その記憶力も怪しくなってきたと認めざるを得なくなりました。
お会いしたことがあるのに、名前が出てこない。万年筆を買っていただいた時に顧客カードを作っても、そこに履歴を書けない事が続いた時でした。
どうすればいいか考えたところ、そのお客様のお住まいかはなぜかいつも覚えているので、顧客カードを50音順ではなく、東日本、近畿、神戸市1、神戸市2、兵庫県、西日本の6冊に分け、それぞれの県のインデックスをふってみました。
それでお名前を思い出せなくても、どちらにお住まいかはいつも思い出せているので、目的のカードに高い確率でたどり着けるようになりました。
絶対的な記憶力は30代には劣るけれど、何かキーワードがあれば記憶を呼び起こせるコツがあることが分かり、自分の記憶力の低下を補ってくれる分類法で、今の自分の実情に合ったものだと思っています。
当店のオリジナルシステム手帳リフィルのブランド筆文葉からVファイルを発売しました。
Vファイルというのは、インデックスの山がついた2つ折りの厚紙によるもので、ファイルボックスと組み合わせて使う、書類を分類するためのものです。
いちいちリングに留めないで、放り込むだけで収納できるし、作業などするときにそのファイルだけを持ち出すこともできます。
携帯する必要がなくなったシステム手帳リフィルを収納する場所としてVファイルを作りました。
筆文葉のブログ(fudemoyou.wordpress.com) で金治智子さんが大きさの違う紙片なども収納できると提案していますが、サイズにとらわれない、特に小さな紙の収納にも威力を発揮する書類収納用品です。
しっかりした質感のある紙を使用していて、コレクトのB6サイズ情報カード用ボックス(https://www.p-n-m.net/contents/products/OG0239.html)との併用を提案しています。
このボックスには、Vファイルとともに、システム手帳本体も収納することができます。
システム手帳を活用するにあたり、ページの分類の仕方は、その使い勝手を左右する、使い手のセンスが現れるところですし、考えていてとても楽しいところだと思います。
大切な情報を書き込んだリフィルを保管しながら、活用するための分類にぜひお使いいただきたいものだと思っています。
⇒筆文葉リフィル「Vファイル」
⇒筆文葉リフィル(Pen and message.オリジナル商品TOP)
ラジオ局にて
昼間のラジオ局はたくさんの人が出入りして活気に溢れていました。
でも深夜とか早朝の放送では、もしかしたらアナウンサー1人、ディレクター1人で静かに放送されているのかもしれない。
そんな雰囲気もいいなあと、港を一望できる眺めのいいスタジオのコントロール室で、心に余裕のない中余計なことを考えながら、スタジオの中に招き入れられるのを待っていました。
そんな時、オリジナルシステム手帳リフィル筆文葉の水玉リフィルに書いた自分の文字が、できることはしたと、お守りのように緊張を紛らわせてくれました。
ラジオ番組の15分という短い時間だったけれど、自分の出番の進行表には質問される事が色々書いてありました。
それをひとつずつ水玉リフィルの一番上の段に書いて、目立つように周りを緑色の色鉛筆で縁取りしておき、下の水玉罫に答える内容を書く。
細かく箇条書きにしてもきっとそれを読み上げる余裕などないし、そのまま読み上げるてもおかしな感じになことは予想できました。
水玉罫ひとつずつに簡潔に書いておいた方が、素人なりにもその場の雰囲気に合わせて言い換えられると思いました。
質問されることは分かっていてもその場の空気感は分からないし、話の流れのようなものもあって、やはり用意した言葉をそのまま言うのはおかしかったと思います。
その場で微妙な言い回しを変えて答えるには、水玉リフィルは大いに役に立って、これがひとつの使い方なのだと思いました。
(ラジオに出る予定の方には水玉リフィルをぜひお勧めします。)
万年筆の魅力について聞かれた時に、あまり上手く言えなかったけれど、書き味が良いので、書くことが楽しくなるということを一番に挙げました。
そんな時に思い描いている万年筆は、万年筆を使い始めたばかりの時によく使っていた国産の万年筆で、安定供給がされていないのでホームページになかなか載せることができないけれど、セーラーのプロフィット21のようなベーシックでありながら、実用的に完璧な万年筆です。
あまり書くことをしていなかった20代の残念な私でも当時手帳は書いていて、プロフィット21で書くと手帳書きが楽しかった。
手帳書きが楽しいので、仕事にも前向きになれて、大げさに言うと毎日が明るくなりました。
もっと書きたいと思って言葉探しに本を読むようになったし、物事をよく考えるようになり、色々なことに興味を持つようになった。
当店のホームページに掲げている「万年筆は人の生き方を変える力がある」という言葉は私自身の経験から得たものでした。
プロフィット21は何の変哲もないプラスチックのボディで、他の国産万年筆と同じようなデザインの万年筆ですが、書き味がこのペンならではのものがありました。
万年筆を使い始めたばかりの人を悩ませるのは、この万年筆に存在するツボです。
プロフィット21は筆記角度50度から60度の間、ペン先の向きを紙に正対させて書かないと気持ちよく書けません。
そのように書くと気持ちよくヌルヌルと書けるけれど、そこから外れるとガリガリしたり、インクが出にくかったりします。
それはペンポイントの仕上げ方によるもので、平面を強めにした、五角形にペンポイントが研がれているからです。
使う人を正しい書き方に誘導してくれるようなところがこの万年筆にはあって、私はこれはセーラーからのメッセージだと思っています。
色々な書き方の人に対応できるようにペンを作ることもメーカーの技術力だと思うし、万年筆を使う人を増やすことにつながるのかもしれないけれど、正しい書き方を伝えることもまたとても大切なことだと思います。
ラジオの放送で、万年筆の魅力について考えて、自分が万年筆を使い始めたばかりのことを思い出し、セーラープロフィット21のメッセージを思い出しました。
万年筆の文化を伝える~モンテグラッパの万年筆~
万年筆は書くことを楽しくしてくれて、暮しの中で書くことが重要な位置を占めるという人を増やしてくれる役に立つものだと思って、万年筆店をしています。
実用一辺倒の国産万年筆から、ペリカン、アウロラなどのデザインにも主張のある万年筆、自身の美意識を表すファーバーカステルの筆記具へとステップアップして万年筆を楽しんでほしい。
価格は高くなるかもしれないけれど、その楽しみを理解する人も増えて欲しい、と思ってきました。
万年筆の文化とは書く楽しみもありながら、その書き味、ボディの設えからそれぞれのメーカーの哲学や芸術的な表現を感じて、それを自身のアイデンティティに取り込むことだと思っています。
言い換えると、自分の生き方を表現するものとしての万年筆を選ぶ。
書く道具である万年筆を自分の美意識を表現するものとしてまで昇華させて選ぶことが、万年筆の行き着くひとつの頂点だと思っています。
その頂点にある万年筆のひとつとして、当店はモンテグラッパを提案したいと思います。
このコーナー「店主のペン語り」は、当店が2年目を迎えた8年前に始めて、最初に取り上げた万年筆がモンテグラッパネロウーノでした。
他のメーカーにない特別感がモンテグラッパにはあって、それが当店が目指すものに近いと思って無視できない存在でした。
エキストラ1930はセルロイドの自然で滑らかな色合いのボディ、ボディサイズと不釣り合いなほど大きなペン先を持つ万年筆です。
書くために重要なパーツであるペン先を大きくしているところからも、このエキストラ1930は実用万年筆寄り、だと思っています。
セルロイドは万年筆のボディとして使用できるまでに、数年間寝かせて気化物を飛ばさなければ縮んでしまうし、作る時も1本ずつ削り出さなくてはなりません。
大量生産に向かない素材ですが、きらびやかな中にも落ち着きのある、セルロイドでしか表現できない質感があると思っています。
エキストラ1930には金属パーツが全て18金無垢というものがあって、シンプルに素材のみを金無垢にしたというところに粋を感じます。
さすがにここまで来ると実用品と言うのに無理があるかもしれませんが、金無垢のパワーを持ったエキストラ1930を日常使用に使いたいと思う人もいるかもしれません。
モンテグラッパは八角形にこだわっていて、今までも様々なものが八角形で作られてきました。
エキスオラオットーもモンテグラッパのラッキーナンバーである8をテーマにした万年筆です。専用のセルロイドを使用していて、八角形のボディになっています。
木目のような模様でありながらキラキラしたセルロイドは、断面のあるボディだからこそ良さが出る。
いつまで見ていても飽きない、数少ない万年筆だと思います。
これらのモンテグラッパの万年筆に私はただ書くだけでない芸術性も感じていて、見ているだけでも楽しめる。
筆記具と呼ぶにはあまりにも大きな存在であるこれらの万年筆は、万年筆の販売において一番難しいものだと思っています。
実用において何か理由があって値段の高いもの。例えばペリカンM800はプラチナセンチュリーと比較すれば高い理由・良さは一目瞭然だけど、モンテグラッパのこれらの万年筆は実用一辺倒に万年筆と比較するべきものではないと思っています。
他のどの万年筆とも比べようのない、筆記具と呼ぶにはあまりにも大きな存在の自身の美意識を表現するものだと思っています。
⇒モンテグラッパ セルロイドコレクション エキストラ1930 バンブーブラック
革質で選ぶペンケース
久し振りにル・ボナーのデブペンケースが入荷しました。
今回入荷したのは、発色の良さと、傷がつきにくく丈夫なシュランケンカーフのものです。この革は扱いやすくて、本当に良い革だと思っています。
使い込んだ時のエージングはほとんどないけれど、いつまでもきれいな状態で使うことができる。
デブペンケースの代表的な素材の、エージングが美しいブッテーロ革と対極にある革で、この辺りは好みの分かれるところかもしれませんが、傷を気にせずに使うことができることは大きなメリットだと思います。
柔らかいカーフの皮を薬品で縮れさせると80%くらいに縮み、使える面積は小さくなりますが、それだけ密度の高い丈夫な革になります。
厚みを感じるのにしなやかさがあるのは、そんな製法からきているのかもしれませんが、型押しでシボを作っている革との違いは歴然で、手触りが違う。
発色も自然で、美しい。色数も増えています。
手に入れることがなかなか難しい革で、誰もが使うことができる革ではありませんが、ル・ボナーさんはその革をかなりの量買い付け、鞄や今回のペンケースなど小物にも使っています。
デブペンケースは、容量が大きいのでペン以外にも様々な小物を入れることができ、その中に万年筆を1本だけ同居させるときに、保護のためにもカンダミサコさんの1本用のペンシースが役立ちます。
カンダミサコペンシースも、シュランケンカーフを使用していますので、外側のデブペンケースと同色にしたり、コーディネートしたりする楽しみがあります。
ペンシースは革を円筒形にクルンと丸めて縫っただけのとてもシンプルな作りですが、素材としているシュランケンカーフの発色と、ステッチの色合わせ、革の丸みなどから、とてもかわいらしいものになっています。
ペリカンM800くらいが収まり、レギュラーサイズのペンなら多少の窮屈さがあったとしても収めることができます。
革の楽しみは、使い込んだり、手入れしたりして、艶が出たり、色が変化していくことに尽きると私は長い間思っていました。
しかし、そういった革には多少取り扱いに注意が必要で、手入れもしないといけません。それも革の楽しみではあるけれど、まず道具として使うことができて、いつまでもきれいな発色を保ってくれるシュランケンカーフも楽しい革だと思い始めています。
シュランケンカーフ、某ブランドも最高級品に使用している革だけのことはあって、モノに使われないスマートな使いこなしができる革だと思います。
手紙を書く道具
有り難いことに手紙を書く機会が多い。
最近ではライフの来富という便箋をよく使っています。
来富はバンクペーパーというかなりしっかりした上質な便箋に向いた紙を使用していて、にじみがほとんどないのと、ペン先を置いた時に感じる「サクッ」という感触がとても好きで、なかなか他のものに替える気になれなくなっています。
ある時から、インクのにじまない紙に惹かれるようになりました。以前は自分の悪筆を誤魔化してくれるような紙ばかりを好んで使っていたけれど、それはもしかしたら私にとって悪筆を助長させる行為だったのかもしれません。
バンクペーパーはにじみは少ないけれどインクが伸びないわけではなく、書き味も良く、気持ちよく手紙を書かせてくれます。
私の固い頭ではタテ書きの手紙は黒インクというイメージが強くて、ほとんどの場合黒インクを使っています。今ほとんどの万年筆には当店のオリジナルインク冬枯れが入っている。
黒インクでも赤が目立つものや、緑や青がベースにあるようなものが結構ありますが、冬枯れは黒とグレーの中間くらいのあまり濃い黒ではないけれど、他の色が混じっていない、黒だけでできているところが気に入っています。
乾くと紙にスッと沈むような、少し薄めの黒なので、濃淡が出やすく、拙い文字に何となく勢いというか、魂を込めてくれる。
ページ全体が黒々とならないので、冬枯れは手帳にも使っているけれど、手紙もあまり黒すぎると目にうるさく感じられてしまうかも知れない。特にペリカンなどインク出が多いペンには冬枯れくらいがちょうどいいと、引っ込み思案な私はいつも思っています。
いつからか手紙に使う万年筆というものが決まってきました。
それまでどの万年筆でも気にせずに使っていたけれど、軽い万年筆ではタテ書きの便箋に上手く書けなくなってしまった。
ヨコ書きやノートでは気にならないのに不思議ですが、ある程度重量があって、太い万年筆の方が大きめの文字を書くタテ書きの便箋には合っているのかもしれません。
ペリカンM800、M1000、アウロラ88、パイロットカスタム743、カスタム823、パイロットシルバーン、プラチナブライヤーなど書くことにのみ存在価値があると言うと語弊があるけれど、書くことで真価を発揮する万年筆はやはり手紙を書くことにも向いていると、頭の固い私は思っています。
いざ書こうと、大きめの万年筆を構えて、ペン先を紙に「サクッ」と置く感じが私は好きです。
万年筆を使う用途が手紙だという人はそれほど多くないかもしれないけれど、ライフの便箋来富と冬枯れのインク、そして細字から中字の大きな万年筆は手紙を書くための最高の組み合わせだとお勧めしたいし、一人でも多くの人に、この道具たちで手紙を書きたいと思っています。
辛口の紙に極細のペン
ホームページをリニューアルしました。
デザインは変わっていないけれど、構造が変わって今までと違うことができるようになりました。
私たちがまだ使いこなせていないこともあり、さすがに値段は間違っていないけれど、不具合や整合性のとれていない場所もあり、順番に整理して熟成していきたいと思っています。
しばらくの間、お見苦しいところもあるかもしれませんがご容赦下さい。
ホームページリニューアルとともにメールアドレスを変更しました。
新しいメールアドレスは pen@p-n-m.net です。今後はこちらへご連絡下さい。
リニューアルに伴い、ペン先調整料金も改訂しています。
詳しくはこちらをご覧ください。 ⇒Pen and message.ホームページ ペン先調整についてmode=f4″ target=”_blank”>⇒Pen and message.ホームページ ペン先調整について
当店と金治智子さんとの共同企画のシステム手帳リフィルのブランド筆文葉のブログ「筆文葉のある生活」は、かなりユニークな罫線の筆文葉リフィルの使いこなしを説明していて、記事数も増やしています。リフィルの使いこなしだけでなく、読み物としても面白いものだと思いますので、システム手帳をお使いでない方もぜひご覧いただきたいと思います。
筆文葉リフィルは罫線も凝っていますが、その紙質もこだわって選んだものを使用しています。
手帳などの紙は、普通薄くて表面のツルツルした紙を選ぶことが多いようですが、筆文葉の紙は質感のある手応えのある書き味を狙いました。
無機質な書き味ではなく、自然な書き味で、私はこういう書き味の紙を辛口の紙と呼んでいます。
滑らかさを追求した引っ掛かりの全くない紙は甘口の紙で、私の感覚と独断によるものだけど、その表現で何となく伝わるのではないかと思っています。
色々なものを使ううちに、そういう辛口のものが良いと思えるようになってきました。
辛口の筆文葉の紙は、紙の質感を楽しむことができるし、インクの吸収が早く、にじまず素早くインクが乾きます。
厚みがあって、丈夫なしっかりした紙なので、繰り返しめくったりするシステム手帳には向いていて、保存性も高い。
筆文葉のリフィルを使うようになって、3mmの罫線に文字を収めるということをするようになりました。
1ぺージにできるだけたくさんの情報を書きたいと思って始めたことだけど、見開きでその月の全てを見ることができるメリットは大きく、何かを忘れることが少なくなりました。
今私が持っている万年筆の中で、3mm罫線にも書けるのは国産の細字が2本しかないけれど、手帳は万年筆でしか書かないので、細く書くことができる万年筆への興味が強くなっています。
3mm罫には国産細字でも書けなくはないけれど、画数の多い字でもなるべくクッキリと書きたいので極細に注目しています。
国産の極細について調べてみると、安定供給されているものは、定番のパイロットカスタム、セーラープロフィット、プラチナセンチュリーなどに絞られることが分かりました。
それではと、自分用にペリカンM400<EF>を極細研ぎ出しにして3mm罫に文字を収めるように書いています。
9mm横罫(3mm補助罫)リフィルに、自分でグレーのボールペンで罫線を引いたオリジナルダイアリーを作って今は使っています。今までで一番使いやすいものだと喜んで使っています。
カンダミサコ文庫サイズノートカバー
今年から日記をつけるようになりました。
今まで書いたものを仕事の記録以外で置いておくことは避けていました。
きっと振り返って読むことはないと思っていたし、そういうものに価値を感じなかったから。
でも自分が思ったこと、考えたことをブログに書いたこと以外にも残してみたいと今年は思うようになって、1日1ページの日記帳につらつらと書くようになりました。
日記を書こうと思った時に選んだのは文庫サイズの1日1ページの日記帳でした。
持ち歩くものではないけれど、A5やB5のものは自分には大きすぎる。文庫サイズくらいが丁度いいと思いました。
それはやはり正解で、1日を振り返ったり、その日自分の頭の中を占めていた考えを1日の終わりにタターッと書くのにピッタリの分量だと思っています。
カンダミサコさんが静かに作り続けている革製品に文庫サイズノートカバーがあります。
文庫サイズのノートを収めることができて、かなり太軸のペン(直径16ミリ程度)まで収められるペンホルダーがついています。
このペンホルダーは左右両方についていて、カバーを閉じて左右両方のペンホルダーにペンを通すとカンヌキのようにノートが開かないようになります。
かなり厚めの1日1ページのダイアリーも収めることができて、当店にもある枻出版社の文庫サイズの1日1ページのダイアリー(厚さ19ミリ)も収めることができました。
ただかなり厚めのこのダイアリーを収めてペンホルダーのカンヌキ構造を生かすには細めのペンをいれないといけません。
オーバーサイズのペンを収納してペンホルダーのカンヌキ構造を利かせるには、ライフのホワイトビンテージくらいの厚めのノート(厚さ11ミリ)が合うようでした。
カンヌキ構造を気にしなければペンホルダーのサイズに余裕がありますので、どんなペンも収めることができます。
使用している革はカンダミサコが最も得意とするシュランケンカーフです。
シュランケンカーフは、傷にも水にも強く大変扱いやすい革で、質感を感じる手触りも兼ね備えています。
使い込むとシボが少し平らになって、さらに手触りが滑らかになるというこの革ならではのエージングをして、愛着も増してきます。
コンパクトに、個人的なことを書くのに文庫サイズの日記帳はちょうど良く、毎日のその作業に少し、楽しみをもたらしてくれるものが、カンダミサコ文庫ノートカバーだと思っています。
アウロラシガロ~大人の男性の書斎に~
まだBのペン先のものしか入ってきていませんが、アウロラの限定品シガロが入荷しました。
鮮やかな色のアクリルレジンとスターリグシルバーの組み合わせが近年のアウロラの限定品の特長になっていますが、このシガロは葉巻をイメージさせる枯れた感じのブラウンのボディにゴールドの金具で、最近では珍しい男性的なものになっています。
本や趣味のものに囲まれた男性の書斎でのひと時を演出する万年筆をテーマに作られたシガロの最大の特長は真鍮ボディにラッカー塗装をしていることで、アウロラとしては珍しい構造です。
真鍮ボディなので重量が重めの44g、アウロラの代表的な万年筆オプティマの倍の重量になっていて、18金ペン先の弾力がより感じやすくなっています。
私はこういう万年筆の登場を待っていました。
カラフルで明るい色使いのおしゃれなものもいいけれど、こういう男性的なもの。それはゴールドキャップにブラックボディのアウロラ88クラシックに惹かれるのと同じようにただの好みでしかないけれど。
最近の万年筆はファッションの影響からか、明るい色で女性を意識したものが多く、男性的なものは時代遅れになってしまったことを実感していました。
それは万年筆が男性の趣味のものという存在からか、女性のユーザーも意識したものに変化したという時代の流れを反映していて、万年筆により多様性を求められていることを意味しているのかもしれません。
そんな時代遅れな存在とも言えるアウロラシガロを、アウロラがなぜ今発売したのか。その理由は分からないけれど、良き時代だった90年代初め頃の万年筆の雰囲気を再現したいという意図があったのかもしれないと私は解釈しています。
このアウロラシガロをより大切に、自分の宝物として使っていただけるものとして、シガロ専用のペンケースSOLOが1月末に出来上がってきます。
外装はマローネという焦げ茶色で、クリップが通る切り込みをシガロのサイズにピッタリと合わせています。
シガロを初めて見た時、葉巻入れをルーツとするこのSOLOのペンケースがピッタリ合うと思いました。
アウロラシガロは480本の限定生産で、渋いものがお好きな方にぜひ手に入れていただきたいとものだと思っています。