当店のペン先調整について

当店のペン先調整について
当店のペン先調整について

当店はペン先調整をする万年筆店で、書きやすいと思える万年筆を販売しています。
一口にペン先調整と言っても、色々なやり方、考え方があると思いますが、当店の場合は、なるべく手を入れないようにしたいという考え方を基本としています。
使用中の万年筆が書きにくいということで、調整してほしいというご依頼(持込調整)は有り難いことにとても多く、お送りいただいて調整する場合1週間ほどお待ちいただくことになってしまっています。
持込調整の場合、ご不満な点がはっきりしていますので、そのご不満点を解消できるようにしますが、「何か書きにくい」という曖昧な、感覚的なご不満にも対応したいと思っていて、感覚的な言葉でのやり取りでの調整は、ペン先を通してお客様と感覚の擦り合わせをするようで、なかなか楽しい作業です。

持込調整で、ご来店もしくはお送りいただく場合は、インクを入れたままにしていただきたいと思います。
その方がインク出のチェックもできるし、そのインクに合った、より精度の高いセッティングに近付けることができると思っています。

新品のものに関しては、入荷してきた万年筆がはじめから書きやすければ何も手を加えず、ルーペでチェックしたら、そのまま店に並べています。
チェック項目は、左右のペン先の食い違い、寄り、ペン先ペン芯の離れです。
何でもかんでも調整しているわけではなく、調整は使われる方の考え方や要望に合わせてすることだと思っているので、新品のもののペン先を削って並べておくことはなく、お客様が決まってからその方のご意向に添ったものに仕上げています。

ペン先調整において、ペンポイントを削る量はなるべく少ない方がいいと思っていますので、最小限の削りで、使っていくうちに最大の効果が出るように調整することがペン先調整をする者の腕だと思っています。
何も希望を言われずに調整する場合は、少し筆記面に当たりをつけてお渡ししていますが、それで充分快適に使うことができる万年筆になります。

それで充分だと思う人もおられるし、もっとやってもらって結構という方もおられて本当にそれぞれで、ご要望があれば何研ぎにでも仕上げるようにしています。でも基本的には削り過ぎないように心掛けています。

ペン先調整をしている万年筆店という言葉は、宣伝文句にもなるけれど、一方では何か先入観を持たれる言葉なのではないかと思うことがあります。
「ペン先調整=削りまくる」と思われるのは心外で、無闇矢鱈に何でも削り取ってしまう人間だと思われたくない。
ペン先調整以外でも言えることだけど、そこにあるものをなるべく大切に生かす人間でありたいといつも思っている。
どこまで調整したら気持ちよく書きことができるか、その万年筆が適切な状態になるかを察知して、やり過ぎないことはペン先調整をする者の必須のスキルであると思います。
特に資格がないこの業界では、今までそれが充分でなかったから先入観を持たれることになってしまったと、私たちペン先調整をする人間は反省して、理性的な仕事をしなければいけないと思っています。

ル・ボナー製オリジナルダイアリーカバー完成しました

ル・ボナー製オリジナルダイアリーカバー完成しました
ル・ボナー製オリジナルダイアリーカバー完成しました

オリジナルダイアリーはそれだけでどこに出しても恥ずかしくないものだと思っているけれど、ル・ボナーさんの作るシンプルな革カバーと組み合わせることで完成すると思っています。
ル・ボナーの松本さんは私達の革の伝道者で、毎年発売するこのオリジナルダイアリーカバーを作る際には色々な革を教えてくれます。

今年は4種類の革で製作してくれました。
フランスアノネイ社のソフトカーフは、キメの細かいとても柔らかい革。初めは
マットな質感ですが、使い込むと艶が出てくれます。最近いろんな革をカーフと言うようになって、カーフと聞いてもイメージがしにくくなっていますが、この革こそが正真正銘のカーフだと極上の手触りから思います。
ソフトカーフではシングルとダブルを製作しています。

ネイビーの1色のみ、シングルのみの発売ですが、デンマーク産カーフを日本で鞣した革は滑らかな手触りが特長です。キラキラした銀面が美しい革です。
松本さんはこの新しい革をル・ボナーが理想とする革に近く、これから使っていきたいと言われ、勧めてくれました。
ブッテーロパープルは使い込むと艶が出てくる革で、定番的な存在になってきていますが、美しいエージングが約束された信頼の革です。
パープルは色気さえ感じる色合いだと思います。使い込んだり、手入れするうちに更に美しく変わってくれると思います。

女性目線での万年筆の使いこなしを提案する当店オリジナルブランドDRAPE(ドレープ)のカバーはベルトとペンホルダーがついたフル装備。
傷や汚れがつきにくい、扱いやすくスマートな印象のノブレッサーカーフの黒と赤で製作していただきました。
DRAPEのカバーも内側はブッテーロのチョコ。シャキッとしていて、仕事の相棒といった趣きです。
今年久し振りの製作になったダブルは、マンスリーとウィークリーというように、薄いものと厚いものを組み合わせると最大で4冊のノートを挟むことができます。
ダイアリーが2冊にまたがる今頃の季節や、フリーデイリーノートの切り替わり時などに、シングルからダブルのカバーに入れ替えて使うと、とても便利です。

普段は、システム手帳と正方形ダイアリーを併用しています。
荷物が多くなるのでどちらかひとつにまとめたいと何度も思いましたが、それぞれの良さがあって役割を分けた併用がしっくりくるようです。
正方形ダイアリーとシステム手帳どちらにも同じことを書いていることが多いけれど、一番大切なことは書き込んだ情報が引っ張り出せて、仕事や家事に活用できることだと思いますので、項目別分類のシステム手帳と時系列のダイアリー両方に情報があると安心します。

同じことを書いていると言ったけれど、役割はそれぞれあって、正方形ダイアリーではマンスリーとデイリーを使ってスケジュールとToDo、メモという、実務的な使用で、私にはとても合っている仕様だと思っています。
世の中には本当にたくさんのダイアリーがあるけれど、オリジナル正方形ダイアリーとカバーの組み合わせは機能、趣き、質感の要素が揃ったものだと使いながら思います。
カバーでは40年以上の経験を持つ尊敬するル・ボナーの松本さん、中身のダイアリーでは万年筆との相性、クオリティを追究する大和出版印刷さんの協力を得ているので、良いものができないはずはない。

オリジナルダイアリーの中身もカバーも世界中の人に使っていただきたい優れたものだとお勧めします。

ラミー2000の50年

ラミー2000の50年
ラミー2000の50年

大好きな話なので何度も書いていますが、ラミー2000は1966年に2000年まで通用するデザインの万年筆を作りたいとラミー社が社運を賭けて発売したペンです。
それは2000年をはるかに超えた現代でさえ全く古さを感じさせず、いまだに斬新ささえ感じさせてくれるロングセラーのペンになっています。
当時パーカーの代理店からペンのメーカーに転向して数年経っていたラミーは、大手メーカーの影響を受けたペン作りに限界を感じていたのではないかと思います。
大手メーカーを真似るまでいかなくても、トレンドのようなものがあって、どうしてもそれに流されてしまう。
何か変わらないものを手に入れたい。
世の中は、時代はすごいスピードで進んで行くけれど、その中でも変わらないものがあるはずだと思い、たどり着いたものがバウハウスの流れを汲むデザインだったのではないかと私は思っています。

ただの姿形だけのデザインなら、すぐに廃れて古くなってしまうけれど、機能がデザインを作るというバウハウスのデザインにはドイツ人の誇り、美意識が込められている。
そういった精神的なものは時代が流れても変わらないのではないか、ラミーはきっとそう思ったに違いない。
ラミーと肩を並べるつもりはないけれど、その心情は私にも理解できると思っています。
当店も時代が変わっていくことを認めながらも、変わらないものをずっと探している。
それは必ずあるはずで、ラミーはそれを見つけることができたし、それを見つけることができた会社が続いていくことができるのだと思います。

ラミー2000を開発した話は万年筆界の宝物だと思っています。
ラミー2000が今年50周年を迎えて、5000本限定モデルを発売しています。
量産されているラミー2000が展示会などのショーモデルとして作られたらこうなるのではないかと思うほど、定番品のラミー2000と似て非なるものになっている。
独特の温かみのある色合いに仕上げられたステンレスを削り出して、マット加工を施した、かなり重量感のあるものになっていて、ペン自体の重みで書くことができるようになっています。
私たちはラミー2000の素晴らしい話を聞いて、自分の仕事もそうありたいと思う。

ラミー2000を手に入れることは、それを自分の仕事のお守りにして、自分の仕事において変わらないものを見つけることなのではないかと思っています。

コンチネンタルデスクマット新発売~野趣溢れる革の艶~

コンチネンタルデスクマット新発売~野趣溢れる革の艶~
コンチネンタルデスクマット新発売~野趣溢れる革の艶~

万年筆やカメラなど、大切にしているものはなるべく直接机の上に置きたくない。人のモノなら尚更ですが、自分のものでも革や布を敷いてその上に置きたいと思います。
革のデスクマットは、その上に紙1枚だけ置いて万年筆で書くと、柔らかくとても気持ち良く書くことができるけれど、書くためだけのものではなく、その上で大切なものを扱う時の敷物の役割もしています。
コンチネンタルのシリーズで新たにデスクマットをカンダミサコさんに作ってもらいました。
元々カンダミサコブランドでブッテーロのデスクマットがありますが、それと全く同じサイズです。
ブッテーロのデスクマットとコンチネンタルデスクマットの違いは、ステッチにあります。
ブッテーロデスクマットは銀面、床、フェルトをボンドで貼り付けていますが、コンチネンタルデスクマットは銀面と床をステッチで縫い合わせています。
コンチネンタルに使用している革の特性の問題で縫い合わせていますが、細かく丁寧に施されたステッチはとても良いアクセントになっていて、味わい深いものができたと思っています。

コンチネンタルのシリーズには、ダグラスという牛のショルダー革を独特の技法でなめしたものを使用しています。
新品の時、あまり艶のない、細かな筋などがそのまま残った野趣溢れる革で、この革の表情から感覚的にコンチネンタルという名前を勝手につけたけれど、なかなか言い表したネーミングだと自画自賛している。

ダグラスの革は新品の時あまり艶がありませんが、革用ブラシで磨いてあげると、驚くほど艶が出て妖しいほどの光沢を持ちます。
私自身この革のそういう所を気に入っていて、男性を中心に賛同して下さる方が多い。
気に入った革があると同じ革でいろいろなものを揃えたいと思うし、統一した方が服装やインテリアのアクセントになる。
ベラゴさんが大変な手間をかけて作ってくれていたシステム手帳(現在は廃番)から始まり、3本差しのペンレスト兼用万年筆ケース、A7メモカバーと、コンチネンタルのシリーズは少しずつアイテムを増やしてきました。

きれいと汚いの間と言うと、言葉が悪いのかも知れないけれど、色々考えても他に言い様がない。敢えて言い換えると野趣溢れるということになるのだと思いますが、工房楔さんの木製品に例えるとチークこぶ杢などは同じような味わいを持っていると思っています。

個人的にこういう素材がとても好きで、今後もいろんなものを作っていきたいと思っています。

手を加えることを拒むモノ~SkyWind exhibition vol.2と神戸派計画新プロジェクトKoNCREAT

手を加えることを拒むモノ~SkyWind exhibition vol.2と神戸派計画新プロジェクトKoNCREAT
手を加えることを拒むモノ~SkyWind exhibition vol.2と神戸派計画新プロジェクトKoNCREAT

SkyWindさんのイベントが昨日から始まり、11月10日(木)まで開催しています。
普段SkyWindさんの作品として、写真のポストカードやコラージュのミツロウ引きブックカバーを販売していますが、イベントでは額装した大判の写真作品とコラージュ作品の販売もしています。

心を動かされた風景を他の人にも見てもらいたい、自分が美しいと思ったこの色を気付いてもらいたいと思ってSkyWindさんが撮った写真作品をポストカードなどの用途のある製品として販売していますが、それらはSkyWindさんのそれぞれの被写体への想いが込められている「作品」だと思っています。
それらはそれで完成されていて、私たちが後から手を加えることを許さない威厳を持ち合わせている。
私たちはSkyWindさんの世界観に共感して、彼女がファインダー越しに見た風景を手に入れたいと思う。

大和出版印刷さんのステーショナリーブランド神戸派計画の新しい試み、神戸にゆかりのあるクリエーターをデザイナーに採用したKoNCREAT(コンクリート)も手を加えることを許さない作品をステーショナリーに仕立てています。
第1弾は文庫サイズノートで、表表紙、裏表紙全体に描かれている作品が不動の威厳をもって存在している、力強さを感じるノートになっています。
中身は全て5mm方眼罫になっていて、万年筆でも書き味の良い紙をさりげなく使用しているシンプルな仕様です。
それぞれの作品は特徴的で、各クリエーターの持ち味、世界観を発揮したものになっています。

八木保氏は色や視覚だけのデザインではなく、モノに触れて得た感覚を大切にしてきた世界で活躍するアートディレクターです。このノートでもそんな八木氏のリアリティを大切にする方針が表れていて、そこに存在するかのような高精細な写真を使用したものになっています。
青木亨氏のメッセージは力強く、このノートをただのノートとは思わせないものにしています。プライドが言った「無理、不可能」、経験が言った「リスクが高すぎる」、理性が言った「やっても意味がない」、心が小さく囁いた「やってみよう」。
チャレンジする背中を押してくれるメッセージが大きく書かれた、心の支えとなるノートになっています。
写真家丸山貴央氏は、透明な空気の中に力強く存在する花を真正面から捉え、独特な彩色を施した作品になっている、ファッショナブルで、インテリアの一部として机上を彩ることを意識したようなノートに仕上げています。
サトウヒロシ氏は、万年筆インクの柔らかな発色を活かした心癒される花の作品を描いています。
私たちは万年筆で、こんなにも美しい色を使っていたのだと気付かせてくれる、万年筆愛用者としては無視することのできないノートです。

菅原仁氏は、神戸派計画のデザイナーでもありますが、神戸派計画のシンプルで冷静さを追究した製品とは違い、自然から得たインスピレーションをエネルギーに情熱をほとばしらせたものになっています。個人的な内面を表現したものとして、このノートが一番絵画に近いのかもしれません。

どの作品も力のあるメッセージを持ったものになっていて、各クリエーターが力を注いで1冊のノートをデザインしたことが分かります。
手を加えることを拒んでいる完成されたもの。

SkyWindさんの作品とKoNCREATのプロダクツ、どちらもそんな言葉が浮かんできて、一緒に紹介したいと思いました。

⇒SkyWind ポストカード
⇒SkyWind ミツロウブックカバー

ル・ボナー残心シリーズ ~職人を越えた松本氏のモノ作り~

ル・ボナー残心シリーズ ~職人を越えた松本氏のモノ作り~
ル・ボナー残心シリーズ ~職人を越えた松本氏のモノ作り~

久々にル・ボナーの残心シリーズの長財布とカードケースが入荷しました。
前の入荷から5年ほど経過していますが、継続して製作されたことが嬉しく思えましたし、新たな試みとして情熱的に持って取り組まれていたので、ぜひ成功して欲しいと思っていました。
それはすでに、多くのお客様が愛用されているのを日々目ニしていますので明らかだと思います。

革小物のひとつの在り方として強烈な個性を放つ残心は、ル・ボナーの松本さんという人が革職人としてユニークな存在だということを表していると思っています。
松本さんは若い頃からのたたき上げの鞄職人で、キャリアも実績もある人で、その作品は凝った作りの、テクニックを駆使したものになりそうですが、残心はそうはなりませんでした。
量産ということを念頭に置いて、最小限の加工で、いかに高い次元で用途を満たし、そして革の良さを表現できるかを考え抜かれたものになっています。
それは職人というよりも、デザイナーとパタンナーが一緒になったような立場で考えられたものになっていると思います。

革の持つ張りとしなやかさを活かして、最小限にして充分な縫製が施されていることは、今回入荷した札入れとカードケースを見るとよく分かります。
とてもシンプルで、余分なものをここまで削ぎ落した札入れはあまりないと思いますが、これで充分で、こういうものを望んでいた人も多いのではないでしょうか。

一部の鞄を除いて、松本さんはずっと職人集団フラソリティーのバックアップを得て製品を作り続けてきました。
作業を請け負ってくれる職人さんたちがいないと、松本さんと奥様のハミさんの二人ではそれほどの量を作ることはできません。
名作のデブペンケースやパパスショルダーの量産も、フラソリティーの存在なしでは実現しなかった。

久々に残心を作って元気なところを見せてくれている松本さんだけど、本当はなるべく忙しい想いをせず、好きな仕事だけしていて欲しいと思っています。
と思いながらも、正方形のオリジナルダイアリーカバーもお願いしてしまっているけれど。

来年には苦心の末復活させることができた絞りのペンケースも出来上がる予定で、万年筆店の当店としては待望しています。
カンダミサコさんもそうだけど、ル・ボナーさんが作る革製品にはまず無条件に良い革が使われていて、これが手触りを良くしているし、使い込めるという安心感になっています。革の違いで、使っていくうちにかなり違いが出ることは様々な革製品を見てきたので分かってきました。

素材に良い革を使うことができるのはきっと一部の職人さんだけだと思うけれど、それは出来上がったモノのどうしようもない差になってしまいます。
まず良い素材があってそれをいかに生かすかという松本さんが40年以上の職人人生で得たモノ作りの肝がこの残心に込められているような気がしています。

こしらえ~用途で考える素材選び~

こしらえ~用途で考える素材選び~
こしらえ~用途で考える素材選び~

イベント後の入荷で、工房楔製作の当店オリジナル企画であるこしらえがたくさん入荷してきました。
こしらえはパイロットカスタム742、カスタムヘリテイジ912の首軸から先のペン先ユニットを使うことができる銘木製の万年筆ボディで、ネジ、キャップリングなどのパーツがエボナイト、ステンレス、真鍮の3種類のものを用意しています。

木もそれぞれの材で質量の差があるため、重量が違ってきます。
これを材による重量の違いを楽しむことも木を楽しむことだと、ありきたりのことを言ってはつまらない、それぞれのものに使う意義を見出すようにできるのではないかと思っています。
その重量感によって用途を振り分けることができるのかもしれないと思い始めました。
例えば、手紙などある程度太い字幅でゆったり書くような用途には重めのペンで、その重量を活かしながら力を抜いて書くのが合っていると思います。
ペン習字などは軽めのペンで、指先でコントロールして繊細に書き分ける。
手帳などに細かい文字を書くのも軽めのものの方が合っている。

ペン先の柔らかさもボディ重量によって合うものがあるのかもしれません。
ボディが重めの方がペン先の柔らかさが感じられるけれど、柔らかいペン先には軽めのボディの方がコントロールしやすいのではないかと思います。
以上のことを念頭に置いて、現在ラインナップしているこしらえについて考えてみました。
こしらえは、総重量(ペン先、コンバーターを含めた)が40グラム代(重め)、30グラム代(標準)、20グラム代(軽め)の3つのチームに分けることができます。今ホームページにご紹介しているこしらえをグループ分けしてみました。

・重めのグループ(40グラム代)
真鍮金具ブラックウッド(44~47g)、ステンレス金具ブラックウッド(44.5g)、ステンレス金具ローズこぶ杢(42.6g)、ステンレス金具楢(40.9g)、ステンレス金具花梨(40.9g)

・標準のグループ(30グラム代)
真鍮金具チーク(39.8g)、ステンレス金具チーク(39.5g)、真鍮金具キューバマホガニー(37.8g)、真鍮金具ハワイアンコア根杢(36g)、ステンレス金具ハワイアンコア(35.1g)

・軽量のグループ(20グラム代)
エボナイトパーツ花梨紅白(26~28g)、エボナイトパーツホンジュラスローズウッド(28g)、エボナイトパーツキューバマホガニー(27g)、エボナイトパーツハワイアンコア(24g)

パーツの素材によるところも大きいですが、木の素材によってかなり重量は違ってきます。

フォルカン(FA)や、細軟(SF)、中軟(SM)など、かなり柔らかめのペン先は、軽量か、標準のグループで使うと扱いにくさが軽減されて、コントロールしやすくなりますし、中、太、極太、コースなどは重めのグループのものを使うと、より力を抜いてゆったりと書くことができるということになります。
ポスティング(PO)というかなり細くて硬いペン先がありますが、これは例外で、細かい文字を書くという用途を考えると軽量か標準グループのボディが使いやすいと思います。

以上は重量ごとに割り振ったもので、その割り振り方は私の独断と思い込みによるものなので、自由に組み合わせを選んでいただけたらと思いますが、何かの参考になればと思い、考えてみました。

⇒万年筆銘木軸こしらえTopへ

秋の始まりを告げる~工房楔パトリオットボールペン~

秋の始まりを告げる~工房楔パトリオットボールペン~
秋の始まりを告げる~工房楔パトリオットボールペン~

工房楔のイベントが当店の遅い秋の始まりを告げ、夏の空気と入れ替わるような気がしています。
秋の訪れを喜ぶのは当店の創業日が9月23日で、その日が当店にとって元旦のようなもので、フレッシュな気分に切り替わるからです。
それに木と革の商品が多い当店には、秋や冬が似合う気がします。
たくさんの人が来てくださったイベントの後に仕入れた商品をホームページに少しずつアップし始めていて、正方形オリジナルダイアリーの来年度版も出来上がりました。

今年は、筆文葉というシステム手帳リフィルやカンダミサコのバイブルサイズのシステム手帳もあって、ネタは豊富ですが、まずは工房楔のイベントで仕入れた商品をご紹介したいと思います。
コンプロット1(ウーノ)、こしらえなどはこれからホームページに掲載していきますので、申し訳ありませんがもう少しお待ち下さい。新作の0.5㎜ペンシルももうすぐ入荷する予定です。

他のものは既にホームページに掲載しており、定番のパトリオットボールペンも掲載できています。
パトリオットボールペンの中で目を引くのは今年永田氏が仕入れた中でも最も大物だと私が勝手に思っているのは白バラです。
超希少材であるローズウッドこぶ杢の赤味が少ない白いローズウッド。
ローズウッドこぶ杢が超希少材なら、白ばらの希少さはお分かりいただけると思います。
渦を巻くような木目の模様は、エボナイトやセルロイドにも似たような模様があって、ローズウッドこぶ杢がお手本となっているのではないかと思っています。
自然界にある美しい模様を人工物で再現しようとしたのが、セルロイドやエボナイトでした。
最近よく使われるアクリルレジンはセルロイドに代わるものだと考えると、ペンの素材はどんどん自然から離れていくと思うと寂しい気がします。
全ての人工物は自然素材の代用品で、自然のものに勝るものはないと私は思う。
白バラでないローズウッドこぶ杢、ハワイアンコア、ブラジリアンローズウッド(ハカランダ)などの高級素材が他にもありますし、これから工房楔の銘木の世界に入って行こうと思っておられる方は一万円以下の定番の銘木から揃える始めてもいいのかと思います。

パトリオットボールペンはたくさんある独創的な作品の中でも工房楔のことを知るための入り口であり、木のペンをコレクションするのにちょうどいいものだと言えます。
形が同じボールペンなのに、その素材によってこれほどまでに様々な味わいが違うものかと、工房楔にパトリオットボールペンで感じることができます。

人生に疲れているわけではないけれど、自然に想いを馳せてその土地について考えることは癒しになっている。特に秋はそんなことをよく思います。これらの銘木のペンはそんな作用もあると思っています。

⇒工房楔 パトリオットボールペンTOPcbid=2557546⇒工房楔 パトリオットボールペンTOPcsid=2″ target=”_blank”>⇒工房楔 パトリオットボールペンTOP

カンダミサコバイブルサイズシステム手帳

カンダミサコバイブルサイズシステム手帳
カンダミサコバイブルサイズシステム手帳

当店の新しいシステム手帳リフィルのブランド筆文葉(ふでもよう)に賛同してくれたカンダミサコさんが、新たにシステム手帳を作りました。

書きもの愛好家金治智子さんとリフィルを作るので、システム手帳を作りませんかとカンダさんに伝え、金治さんからの平らに開くものを、という言葉を受けて、試行錯誤して下さったものが今回のシステム手帳です。

しばらく考えさせて欲しい、アイデアが浮かんだら作りますと言った数週間後には、ほぼ完璧な試作品が出来上がりました。
初めてこの手帳を手にとった時、まず美しいと思いました。
縦横比が手帳の黄金比(が存在すると私は思っている)になっていて、背表紙は緩やかにカーブしている。ペンホルダーや装飾は付けず、むしろ使う人にカスタマイズを楽しんでもらえる自由度の高いシステム手帳です。

そして一番の特徴は、今までのシステム手帳とは全く違った構造にあります。
平らに開き、表紙を折り返しても使うことができる。それができるのは、リングの取り付け方を工夫しているからです。
左側の後ろ表紙でのみリングを固定しているため表紙が180度以上開きますが、その構造により左側にポケットができました。
このポケットも活用できそうです。背表紙の丸みもこの構造のために生まれています。
11㎜リングというシステム手帳用の金具としては細めのもので、それにより手帳を薄くできて、携帯性も高くなっています。

しかし、細めのリングは携帯性が高い代わりにリフィルがたくさん入りません。逆にリングが太くなるとリフィルは入るけれど、重く、大きくなって携帯に不向きになります。
システム手帳のリングにおいてこんなジレンマがありますが、携帯性に優れた細めのリングを持つカンダミサコシステム手帳を使いこなすには、手帳を薄く保つことがコツなのかもしれません。

・ダイアリーはウィークリーではなく、マンスリーを使う。
・収納するリフィルの枚数はなるべく少なくする。
・書いたものは別のバインダーに保存する。

以上のようなメンテナンスを心掛けると、薄型のシステム手帳でも十分お仕事でお使いいただけると思います。
筆文葉のリフィルは、最近の流行に逆行する少し厚手の紙で、書いた時紙の感触が手に伝わり、インクの風合いも紙に表れます。
でも色々なものを使ってきた人こそ、こういう紙を使いたいのではないかと思っています。

カンダミサコシステム手帳もまた、以前システム手帳を使っていて、綴じ手帳に移行した人がまたシステム手帳に戻るきっかけになるものだと、自信を持ってお勧めします。

⇒カンダミサコシステム手帳(Pen and message.仕様)
⇒システム手帳リフィル筆文葉

筆文葉(ふでもよう)プロジェクト始めます

筆文葉(ふでもよう)プロジェクト始めます
筆文葉(ふでもよう)プロジェクト始めます

当店は新たにシステム手帳リフィルをメインとしたブランド「筆文葉(ふでもよう)」を始めます。
筆文葉では、手帳を楽しくそして実用的に使うために、関連する商品や使い方などを提案していきたいと思っています。

筆文葉は書きもの愛好家かなじともこさんと当店の共同企画ブランドです。
書きもの愛好家というささやかな肩書がついていますが、金治さんはかなりの才女だと見込んでいます。
筆文葉の企画のために打ち合わせを重ねるようになって、彼女にできないことはないのではないかと思うようになってきました。

それはささやかな歓談から始まりました。
お客様として来店されていたかなじさんから、ノートや手帳をどんな風に使っているかを見せていただいているうちに、この人は商品化できるアイデアをたくさん持っているのではないかと思いました。
手帳への思いや理想などを話し合ううちに、自然発生的にシステム手帳のリフィルを作ることになりました。

万年筆を使う用途で一番多いのは手帳に書くことだという人は多いと思います。
当店も万年筆で書くことによって書く楽しさを多くの人に知ってもらいたいという想いで9年前に始まりましたが、その原点は「手帳を書くことを楽しむ」ことでした。
どんな手帳でも書く楽しみはもたらしてくれるけれど、一番楽しく、趣味的にも使えるのはシステム手帳だと思っていました。今ではマイナーな存在になっていますが、システム手帳を以前のように多くの人に使って欲しいと思っていましたので、その想いと金治さんの才能が巡り合って始まったものが筆文葉です。

手帳用のツルツルして薄い紙質のものはたくさんあって、それらは厚みを抑えて、にじみや裏抜けしてほしくない手帳にとって適切なものかもしれないけれど、違うものを作りたい。
紙1枚1枚はしっかりしていて、丈夫で、書いた内容とともに大切にできるもの、そして紙に質感が感じられて、インク映えが自然なもの。
たくさんの手帳を使ってきた人はきっとこんな手帳に行き着くのではないかと思っていますが、金治さんはそれに相応しいリフィルのアイデアを用意してくれました。
どれも自分が書き込んだものを大切にできる、美しく書くことができる罫線のレイアウトを目指して作りました。
どれも他所にはない特徴のあるものだと思っています。

筆文葉ではバイブルサイズのリフィルを作りましたが、カンダミサコさんも筆文葉に賛同してくれて、システム手帳本体を新たに作ってくれました。
これに関しては次回のペン語り(9月30日)でご紹介させていただきます。

・かなじともこプロフィール・
1978年高知県生まれ。大手印刷会社に勤務後、絵を描く生活を諦めきれず退職。
縁あってPen and message.の商品企画に参加することになり、紙製品や手帳アクセサリーの考案、制作に携わっている。
書くこと、書くもの、書かれたものに肩入れする、自称書きもの愛好家。

⇒筆文葉バイブルサイズシステム手帳リフィル