ネタ帳~神戸派計画styleノート~

ネタ帳~神戸派計画styleノート~
ネタ帳~神戸派計画styleノート~

文具店で働いていた若い頃、いつもネタ帳を持って歩いていて、休憩時間に一人になれる場所を探しては何か書いていました。
ショッピングセンターのたばこが煙る休憩室やベンチなどで、紙コップのコーヒーを飲みながら万年筆を走らせていました。

書いていたものはホームページのコラムの原稿がほとんどでしたが、今のように書くための時間が確保できる恵まれた環境でなかったにも関わらず、5年以上それに穴を空けずに済んだのは、暇さえあれば何か書きとめていたネタ帳の存在があったからでした。
今のように頭で考えてから机に向かって書くのではなく、何も決まっていなくても無駄にダラダラと書いていたのでロスも多かったけれど、書くことが楽しかったので続けられたと思います。

当時持ち歩いていたのは、モレスキンのラージサイズのノートで、当時はモールスキンと呼んでいました。
今のように選択肢が多くなかったので、私の使い方をするにはモールスキンしかありませんでした。
当時も紙質はあまり上質とは言えず、愛用していたペリカンM800とパイロットブルーブラックのインクの組み合わせでは、盛大に裏抜けしていましたが、気にせずに使っていました。
当時、神戸派計画(大和出版印刷)のstyleノートがあれば、ネタ帳の候補になっていたと思います。

表紙は硬くて不安定な場所でも書くことができるし、製本はこだわって作られていて、丈夫な上に全ページ平らに開きます。
そして何よりも紙が上質で、にじみや裏抜けが少なく、書き味が気持ちいい。
rect style(方眼罫)は当店が試筆紙に使っている紙と同じものを使用していて、インク映えも書き味も自然な紙です。
万年筆の滑りがよくて、細字のかなりカリカリした書き味のペンでも滑らかに書くことができるグラフィーロ紙を使用したgraphilo styleは、にじみも裏抜けも殆どなく、気分よく書くことができます。
ノートと自分との相性が良くて、使い続けそうだと思うと、革のカバーをかけたいと思うのが人情だと思います。
それで性能は変わらないけれど、気分が良いし、このノートをずっと使い続けるという決意表明でもあります
Styleノートにも、ル・ボナーの松本さんが製作に関わった、ノブレッサーカーフを使用した専用の革カバーも最近発売されていて、常に何か書き留めておきたいと思う私のような人のネタ帳に、ぜひセットでお使いいただきたいと思っています。

大人になったら選びたくなるペン~アウロラ88クラシック~

大人になったら選びたくなるペン~アウロラ88クラシック~
大人になったら選びたくなるペン~アウロラ88クラシック~

88クラシックというのは日本でのカタログ名称で、イタリアでは801オッタントットと呼びます。
でもずっとアウロラ88クラシックと呼んできましたので、ここでは88と言うことにします。

先日発売の趣味の文具箱vol.38で88クラシックについて書きました。
店を始めてしばらく経ってから、自分でも、商品としても大切にしてきたペンでしたので、何か万年筆について1本選んで書くということになると、88を選ぶことが多いかもしれません。

88クラシックは黒ボディに金キャップという、今では唯一と言えるようなオールドスタイルなデザインで、そういうところを私は特に気に入っています。
しかし、本当は好みがとても分かれる癖の強いデザインなのかもしれません。
私は40歳すぎまでアウロラと言えば、マーブル模様が大変きれいな上品な華やかさを持ったオプティマがイメージで気に入っていました。

金色の金具はおじさん臭いと偏見に凝り固まっていて、金への抵抗があり、重厚な88クラシックを選ぶという選択肢を全く持っていませんでした。
それは多くの男性が直面する、自分はおじさんにはならないぞという若さへの固執が、金を遠ざけていたのかもしれないと思います。
しかし、歳をとってきて、自分がおじさんということを認めざるを得ないようになると、黒いボディに金キャップのペンが、昔ながらのスタイルのとても堂々としたペンだと思うようになり、金キャップのペンをなるべくなら選びたいと思うようになりました。

本当に好みは加齢とともに変わるものだと思いますが、私もやっと大人になれて、大人に相応しい万年筆である88クラシックを選ぶことができたのだと思います。
最近、男女差で話しを進めることが何となく時代遅れのようになっていて言いにくいですが女性の方の方が年齢に関係なく、きれいなペンとして88クラシックを抵抗なく選ばれる傾向にあるようです。

88クラシックを使ってみて知ったのは、太軸(最大径14mm)で軽め(23g)のボディがとても使いやすいということで、長時間書いていても疲れにくいということでした。
弾力が強めのペン先も安心して筆圧をかけることができますのでそれも疲れにくさに貢献しています。
金キャップばかり気にしてきましたが、88の特長はそのひっかかりのない滑らかなフォルムで、それが数字の8をモチーフにデザインされた88という名前の由来で、モンテグラッパエキストラオットーも8をモチーフにデザインされていますが、それは八角形のボディで、その違いが面白いと思っています。

8月(予定)に88の限定品が発売されます
20数年前に発売されたソーレは、3年ごとに発売されるオプティマベースの限定万年筆で、当時鮮やかなオレンジ色の万年筆というのはあまり目にすることがありませんでしたので、鮮烈な印象を持ちました。
今ではオレンジ色の万年筆も少し増えてきましたが、88の色付きのモデルは珍しいと思います。
ペン先は定番品の14金と差別化されて18金でEF、F、M、Bとあります。限定888本、105,840円(税込)です。ご予約、承ります。

アウロラ360モンヴィゾ

アウロラ360モンヴィゾ
アウロラ360モンヴィゾ

アウロラから突然オプティマをベースにした限定万年筆が発売されました。
世界限定360本、日本入荷数100本という少量の限定品です。

これはアメリカのアウロラの販売店が企画したもののようで、アウロラのホームページにも載っていませんでした。
アウロラのある街トリノの風景をイメージし、トリノの風景に自然の厳しさを与えているモンヴィゾ山の名を冠した万年筆で、360°山々に囲まれて、それらが夏は黒々と、冬は白く見える遠景をこの万年筆は表現しているのかもしれません。
そんなふうに高い山に囲まれた街はどんな感じなのだろうと想像します。
当店のある神戸は、目の前は海、その向こうには対岸の大阪などが見え、背面には裏山と言っていいくらいの六甲山系でトリノの風景とはあまりにも違っています。
雄大な景色を持つトリノは、自動車メーカーフィアットがあることでも知られる工業都市でもあります。
アウロラが興り、発展したのも、トリノが工業都市として栄えたことが背景にあるのだと思われます。
アウロラの代表的で、最も特徴的な万年筆オプティマは1990年代はじめに1930年代のアウロラの万年筆を現代風にアレンジして復刻されたもので、万年筆らしいクラシカルさとイタリアらしい華やかさ、アウロラらしい洗練されたインテリジェンスがミックスされた万年筆デザインの名作のひとつだと言えます。
現代のオプティマ以前にオプティマに似た万年筆はなかったけれど、オプティマ以後オプティマをリスペクトした万年筆を多く目にするようになったのは私の勘違いではないと思います。

1990年代のオプティマのデザインと今のオプティマでも若干の違いはあって、使用しているレジンの色柄とキャップリングの意匠が変わっています。
1990年代のオプティマは3本リングがキャップエンドにあしらわれていて、今のオプティマではそれがよりスッキリとした現代的な1本のリングになっています。
それがデザイン上の一番大きな違いですが、3本リングの方がよりクラシカルな印象を受け、360モンヴィゾは3本リングが採用されています。
定番品のオプティマはペン先が14金で、新品時かなり硬めに感じて、使い込むうちにしなやかなものに変化していきますが、モンヴィゾに使われている18金ペン先ははじめからしなやかな書き味を持っています。

14金と18金のペン先は、実用的に差はないとお伝えすることが多いけれど、最初からしなやかな書き味を持っているのが18金、使い込んでしなやかにしていくものが14金と言えなくもなく、手にしたその時から気持ち良く書くことができる仕様になっていて、専用のレジンを使用した特別なオプティマが360モンヴィゾです。

モンヴィゾは、アウロラオプティマを愛する人が、こうあってほしいと願って、それを実現した万年筆だと思っています。

インクについて

インクについて
インクについて

インクが流行っているという。
私の感覚では万年筆ありきで、インクの方に人気が出ているということが理解できませんでしたが、多くの若い人を中心に広がっていることなので、理解できなくてもそれが今世の中で起こっていることとして捉えています。

数年前から若い女性がインクの色見本を見ながらインクを選ぶ光景が当店でも見られるようになり、万年筆の業界としてもとても良いことだと思っていたけれど、台湾、中国、韓国からまで若い女性がインクを買いに来るようになって、本当にブームだと思いました。
ブームで終わらずに定着するだろうかと思っていたけれど、ある中国人の女性がこれはカルチャーなのだと言っていて、もしかしたら定着して、少しずつ形を変えていくものになるかもしれない、と思えるようになりました。

転売するためでなく、自分で使うためとか、コレクションするためのインクを探しに来る人は大歓迎で、色々お話を聞きたいと思っています。
たいていそれぞれインクの色見本帳を作っていて、それを見せてもらうと本当にカルチャーになっているのだと思う。

季節が変わるとインクの色を変えたくなります。
冬は空気膨張の影響で、インクとペンとの相性によってはボタ落ちが起こったり、インク出が多くなることがありますが、夏は気にせずにインクを選べると思います。
自由に好きな色を使ってほしいですが、インクによって多少性質が違うため、用途も考慮した方が快適に使えると思います。
インクは万年筆ほどお国柄がはっきりと出るというものではないけれど、いくつかの種類に分けることができます。
日本のインクはどの万年筆に入れても出が良くて、伸びが良いので書き味が良くなるものが多いようです。紙との相性を気を付けないとにじんだり、裏抜けしたします。
手紙や原稿用紙など裏のないものや、良い紙への筆記に向いています。
日本の紙は良いものが多いのでインクの性質もそれを見越したものになっているのだと思います。

最近新たに発売され始めたインクを私はニューエイジのインクと呼んでいます。
ペリカンエーデルシュタイン、カランダッシュクロマチックインク、ファーバーカステルなどです。
どれも今までの万年筆用インクとは比べ物にならない発色の良さを持っていて、にじみもそれほど多くはありません。流れも伸びも良いので、書き味も良いという、さすがニューエイジのインクです。瓶がとても美しく値段も高いのも特長です。
新しいインクがたくさん発売されてくる中で、私がいつも手に取ってしまうのは、ペリカン・モンブラン・エルバンなどヨーロッパの古くからあるインクであることが多いです。

乾くと紙に沈みますので発色はそれほど強くないのですが、インクと紙が馴染むような自然なインクらしい色合いを持っています。
どの万年筆に入れてもインク出が増えるようなこともなく、どちらかと言うと渋くなる傾向にありますので、手帳書きやインク出の良い万年筆に向いています。
特にブルー系のインクはロングセラーのものがあるのがこのタイプです。

用途によって、使う紙の性質によって、インクを変えると快適に万年筆を使うことができると思います。
ただ純正インク以外を使うことは、自己責任でということになります。
でも私はインクをいろいろ変えて使うことができるのが万年筆の良いところだと思いますし、インクが変わると気分が変わり、その万年筆をまた使いたくなることを経験的に知っていますので、書くことをより楽しむためにたまにはインクを変えることをお勧めしています。

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ラミーサファリ2016年限定色ライラック~大人が持つに相応しいカジュアルペン~

ラミーサファリ2016年限定色ライラック~大人が持つに相応しいカジュアルペン~
ラミーサファリ2016年限定色ライラック~大人が持つに相応しいカジュアルペン~

サファリの2016年限定色ライラックが発売されました。
今年の色、仕様は多くの万年筆を愛用している人の心をつかむものなのではないかと、近年発売されてきた限定カラーとは毛色の違うものなのではないかと思っています。
かなり暗めの、濃い紫色のボディは艶消し仕上げになっていて、質感のあるものになっていますので、それだけでも今回の限定色は個性的だと思えますし、クリップ、ペン先などがブラック塗装されているというところも違っています。
そこには大人が持ってもおかしくない落ち着きと華やかさがあるような気がします。

1980年にサファリが新発売された時のテラコッタ、モスグリーンのサファリも艶消し仕上げにブラックパーツになっていましたので、原点回帰的な狙いもあるのかもしれません。
サファリが発売された時、当時発売されていた他の万年筆とあまりにも違っていました。
価格帯や表面的なデザインはもちろん違っていましたが、何かが根本的に違っていた。
その違いは今も変わっておらず、それはモノの有り方としか表現しようがありません。
万年筆は書き味や質感など、高級感、上質さを追究されてきました。それらがより高い次元で実現できているものは良い万年筆、それらが伴っていないものはそれなりと分類される。

その基準で言うとサファリはステンレスのペン先で、ボディも軽いプラスチックなので、上質な書き味や質感を持ち合わせていないということになりますが、だからサファリがダメだと言うのは、名作のプライウッドチェアが銘木でないからダメだと言うようなもので、サファリはそんな万年筆の古くからある価値観の中にはないのだと思います。
個体、点の魅力である万年筆に対して、サファリのそれは面の魅力だと言っても伝わりにくいだろうか。

発売後36年も経ちますが、今も斬新だと思えるデザインの中には万年筆にとって必要な機能が盛り込まれています。
インクを残量が確認できる窓、転がり防止のボディの平面、丈夫なクリップ、正しい持ち方に誘導する三角形のグリップなど、それらは学童用として開発された出自だから備わっている機能なのかもしれないけれど、実際に使うということを考いているからこそ備わっている機能です。

それらの機能を大量生産のための素材プラスチックを使用し、工程が複雑にならないように工夫されて、考え抜かれて設えられている。万年筆というカテゴリーに収まらない工業製品の名作だと言えます。
サファリは万年筆的なアプローチで作られた製品でないからこそ、多くの人に万年筆を使ってもらうことに役立っている志の感じられる万年筆だと言えますし、大人が持つに相応しいカジュアルな万年筆だと思っています。

低価格の万年筆はたくさんあるけれど、サファリほど奥の深いコンセプトや思想を持った万年筆はないのではないかと思っています。

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細字研ぎ出し万年筆

細字研ぎ出し万年筆
細字研ぎ出し万年筆

万年筆の用途について手帳に使うことが多いと言う方が多いと思います。
多くの仕事はパソコンでの入力で済むことがほとんどになっていて、手書きで書類を書くということは限られた仕事でのみ行われるものになっています。
それを寂しく思ったり、皆手書きをしようと声高に叫んでも時代の流れを止めることはできない。
その時代の流れに合った万年筆の在り方があって、それが数少ない手書きの機会である手帳への筆記だと思います。

私は太字で原稿を書いたり縦書きの便箋に手紙を書いたりすることがよくあるけれど、手帳に書いていることが時間的には一番長いし、頻度も高い。
そうした背景があって、ペリカンM400の極細を国産細字くらいまで細く書けるようにした細字研ぎ出しの万年筆の販売を始めました。

ペリカンの万年筆は極細と言ってもインク出が多くて太い。私の経験ではドイツのペンは世界で一番太いと思っていて、イタリアがそれより細く、日本はさらに細い。
ペリカンなどドイツのペンは極細でも手帳に使うことはできません。(ラミーは使えるかもしれないけれど)
ペン先を細く研ぎ出した場合、ノーマルの極細よりも先端(ペンポイント)が尖りますので、抵抗が増します。
しかし細く研ぎ出した小さな点が紙に当たるペンポイントだからこそ、太いペン先のものよりも当たりが出やすく、使われる方の書き方に馴染むのも早いので、すぐに柔らかい書き味になってくれると思います。
そして当たりが出て柔らかい書き味になってくれるとその書き味は永続してくれます。

最初から手帳に国産細字の万年筆を使えばいいのではないかという言い方もあるけれど、手帳に書くということが趣味だと言う人もいて、私もその一人だけど、だからこそデザインも気に入った万年筆で好きな手帳を書くことを楽しみたい。
そのために当店では太くて手帳に使いにくいペリカンなどの万年筆の細字研ぎ出しを用意しているし、他のペンでも相談して下されば承っています。

持ち込みの万年筆にも細字研ぎ出し加工をさせていただいています。
私が万年筆を使い出した頃よりも細字を希望されるお客様が増えたと体感しているのに、あの頃よりもEFは太くなっていると思っているのは私だけだろうか?
万年筆をお客様方の需要に近付ける、軌道修正のような役割も店は担っていると思っています。

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ローラーアンドクライナー ライニガー~万年筆洗浄液~

ローラーアンドクライナー ライニガー~万年筆洗浄液~
ローラーアンドクライナー ライニガー~万年筆洗浄液~

万年筆の故障で最も多いのはインク詰まりなので、インクの出が渋くなった時やインクの色を変える時は、水洗いしてからインクを入れ直して下さい、と万年筆を初めて使うというお客様に申し上げています。

万年筆の洗浄は万年筆を快適に使う上でとても大切なことで、ペン先周辺を洗い過ぎて悪いことは何もないと思っています。
そう言いながらも私はとてもいい加減で、例えばインクをブルーからブラックに変えたいと思った時、水を2,3回吸排水して、中に薄くブルーが残っていてもお構いなしに黒を入れてしまいます。
それで今までトラブルは起こったことがなかったので問題はないのだろうと思っています。
ずっと茶系のインクが好きで、冬枯れの合間を縫って断続的に数々の茶系のインクを使ってきました。
1回使い始めるとそのインクを使い切るまで同じインクをほとんどの万年筆に入れて使います。
手紙などはその日の気分によって色を選ぶのもいいと思いますが、手帳の中はなるべく同じ色で統一していたい。
結局その時使っている細字のペン全てに同じ色のインクを入れることになります。

いい加減な洗浄をして、インクの色を変え続けてきたけれど、今回使いたいと思ったローラーアンドクライナーのセピアは、他の色と混ざると固まる危険性が高いと言われているインク。
普段いい加減な洗浄をしていましたが、さすがに固まるのは嫌だと慎重になっていたところに、ローラーアンドクライナーの万年筆洗浄液「ライニガー」が発売されました。
今までこの手のものは使い方が面倒に思えましたので、使ったことがありませんでしたが、ライニガーの良いところは使い方がとても簡単なところです。
ある程度万年筆内を水を吸排水して洗っておいてから、このライニガーを吸入します。
ボトル内にペン先サイズのポケットがあり、そこに液体が溜まるようになっていますので、吸入もストレスなく行えますし、液体が少なくなって、吸えなくなることはありません。
ライニガーを吸入したら入れたままで5分ほど紙に書きます。
書くことで、インク分が紙に出てきます。
5分ほど書いたら、ライニガーを排出して、水を吸排水して内部をすすいだらできあがり。
タンク内、ペン芯などに残っていたインク分を洗い流してくれます。
インクの固着が激しく、まだインク成分が残留してそうでしたら、これをもう一度繰り返します。
私はこのライニガーが来てから、万年筆を洗浄するときには必ず使うようになり、これがをしないと気持ち悪くなりました。
何度も言いますが、この製品良いところは簡単な使用方法にあります。それを利用して、なるべくマメに使うことをお勧めします。

万年筆内の洗浄はライニガーでできますが、インクが服や手に付いた時に役に立つものがあります。
クリーンシュシュです。
これも優れもので、私は調整などでインクが服に飛ぶことがありますが(それ以上に顔には無数に飛んできます)、クリーンシュシュでほぼ目立たなくなります。
クリーンシュシュは、食べ物のシミにも有効で、ラーメンの汁が飛んでできたシミなどもすぐに消すことができます。
日常的に持ち歩くのにも、クリーンシュシュはお勧めです。

書くことと関係のない、どちらも裏方的なものですが、万年筆を快適に使く上であった方が良いもののご紹介で、万年筆をスマートに使いこなすことにつながるものだと思います。

⇒ローラー&クライナー 万年筆洗浄液ライニガー(reiniger)
⇒クリーンシュ!シュ!ボトルタイプ

文字の形を気にして書く時に使う、柔らかいペン先

文字の形を気にして書く時に使う、柔らかいペン先
文字の形を気にして書く時に使う、柔らかいペン先

大阪市立美術館で開催されている「王羲之から空海へ~日中の名筆漢字とかなの競演~」を観に行ってきました。
電車の吊り広告や駅のポスターなどで大々的に宣伝されていますが、関西の書道界はおそらくこの展示の話題で持ちきりだと思います。

書を観に行くと言っても、まだ習い始めて1年も経っておらず書家のこともほとんど知らないレベルだったので、勉強も兼ねて真剣に観ることができました。
まだ仮名の草書などはまだまだ難解ですが、漢字の書には心に残ったものがいくつもありました。
揃った小さな文字で書かれたものなど観ていると、万年筆で文字を書きたくなりました。
万年筆でこういう文字を書こうと思った時、柔らかいペン先の万年筆でないと書くことができません。
それほど太い文字ではないけれど、筆圧で強弱が出せて、トメ、ハネ、ハライがきれいに出るようなものが必要になります。
パイロットの一番変わり種のペン先「フォルカン」は、これができるペン先の代表ですが、万年筆に慣れていない人が使うとタテ方向(ペン先が開く方向)に書いた時にペン先が開いてしまい、インクが切れて書けないことが多発します。
タテ方向は特に筆圧のコントロールが必要なのと、ペン先を少し親指側にひねってペン先の開きを抑制するなど、書く工夫が要るようです。

フォルカン以外にも日本の文字をゆっくり時間をかけて美しく書く役に立つ万年筆は他にもあって、それらもパイロットになってしまいますが、「SF(ソフト細字」や「SM(ソフト中字)」という軟ペン先があります。

通っている書道教室の窪田先生がカスタム743のペン先を評して、「割れるのが良い」と言われていましたが、実際にペン先が開いてしまうほど力を入れるわけではなく、筆圧の加減で線を強くすることができる柔軟性のようなものを指しているようです。
カスタム743くらいになるとペン先の粘りもあって、軟ペン先でなくてもペン先は十分に柔軟性があるようです。

私が惹かれた書の多くは、魅せるための作品として書かれたものではなく、公文書のようなものが多くありました。
当時から、文字の美しさが役人の立派な能力のひとつとして認められていたのだろうと想像しています。
コンピューターのキーを叩いて打ち出した文書に対して、それらの書にかけられた膨大な時間を想いました。
その書からは根気と集中、気迫のようなものが感じられて、きれいに整った楷書をいつまでも観ていたいと思いました。

私たちはパソコンで打つ出した文字に慣れてしまって、手書きのものを下書きのように見てしまう所があります。自分の心情の綴るブログのようなものでも、活字としてインターネット上に存在しています。
私たちはせっかく万年筆を使っている。
清書もなるべく手書きでありたいと思い、それに見合った文字を書きたいと強く思いました。

パイロットカスタム743

クレオ・スクリベントの万年筆 ~流行に流されないモノ作り~

クレオ・スクリベントの万年筆 ~流行に流されないモノ作り~
クレオ・スクリベントの万年筆 ~流行に流されないモノ作り~

多くの万年筆メーカーの製品が最近似てきているのではないかと思っています。
製造コストやパーツの価格などのコストを抑えて効率良くモノを作ろうとしたり、デザインの流行などを考えると、その時代に作られるものが似てくることは必然なのかもしれません。

でもお客の立場から見るとそれは少し寂しいし、それが業界自体をつまらなく、小さくしていることにつながっているのかもしれないと思っています。
主流と言われる流れは確かにあるかもしれないし、そこに大多数の好みと需要があるのかもしれないけれど、それが全てではない。
少数派かもしれないけれど、そんな人たちのためのモノ作りがあってほしいと思います。
そして万年筆メーカーは、流行に流されることなく、それぞれの信念を貫いたモノ作りをして欲しい。

今年になってから取り扱い始め、当店のラインナップに加わった「クレオ・スクリベント」は、自分たちのポリシーを貫いたモノ作りをしていると思っています。
それはもしかしたら、流行に無頓着なだけなのかもしれないけれど、それでもいい。流行から距離を置いた所に居続けるメーカーもあってほしい。

クレオ・スクリベントはベルリンの北西100kmほどの田舎町バートビルスナックにあるメーカーです。
1945年に創業し、直後に終戦を迎えてドイツが分裂したために東ドイツの国営工場になりました。
万年筆も作っていましたが、主に製図ペンを作り続けていました。
東西ドイツが統一された時に、OEMメーカーとして大メーカーの下請けをしていましたが、2000年からクレオ・スクリベントの名前でもペンを作りはじめました。
クレオ・スクリベントの最高級ラインが「ナチュラシリーズ」で、ボディ素材に銘木を使っています。
アンボイナバール(花梨こぶ杢)は、複雑で変化のある複雑な模様の部分を使用しています。
かなり入念に磨かれていますので、古木のような趣が感じられます。
ただキレイだけでない、レベルの高いモノの美しさを表現しようとしていることが分かります。

艶が出た花梨こぶ杢とピンクゴールト仕上げのパーツが対照的ですが、不思議と合っていたりします。
エボナイトモデルは、十一角形という独特な断面を持っていることを気付かせないような、自然な使用感の万年筆です。
大型14金ペン先はしっかりしていて、大変実用的な万年筆に仕上がっている。

スクリベントゴールドは、ブラックボディにゴールドパーツのオーソドックスなペンに見えますが、かなり独特な万年筆です。
キャップの尻軸への入りが深く、真鍮の重量感のあるボディがリアヘビーにならないようになっています。
私は1960年代の日本で流行していたエリートなどのポケットタイプの万年筆を思い出しました。
ボディ素材、特長などを挙げましたが、クレオ・スクリベントの持ち味は書き味の良さだと思っています。
モノによってはとても小さなペン先がついているけれど、それがとても柔らかくて上質な書き味に感じられます。

アーチを組み合わせたような、適度なテンションの複雑な形状のクリップもクレオ・スクリベントの魅力で、私はこのクリップの形がとても気に入っています。

クレオ・スクリベントもインクメーカーのローラーアンドクライナーもそうだけど、ドイツの田舎町には何かがあると思います。
どちらも流行が遅れてやってくるような田舎に存在し続けて今に至って、魅力を失わずにいる。
むしろ人の流れから離れた所にあるから、そうあり続けることができるのか。
中央から距離を置いて個性を放っている企業を見ると、私は痛快な気分になり、自分たちもそう有りたいといつも思います。

⇒クレオ・スクリベントTOP

偉大なチープレトロ~特別生産品ペリカンM120グリーンブラック~

偉大なチープレトロ~特別生産品ペリカンM120グリーンブラック~
偉大なチープレトロ~特別生産品ペリカンM120グリーンブラック~

もう6年前になりますが、仲間たちとベルリンを旅した時に、旧西ドイツ側と旧東ドイツ側では何となく雰囲気が違うことを歩きながら感じていました。
壁が壊されて20年経って人の行き来は自由なのに、そんなことはあるのかと思いましたが、帰ってから本を読んだりして旧体制の西と東ではいまだに生活格差があることを知りました。

それは週末の開催されているノミの市にも表れていて、旧西ドイツ地域でのノミの市には万年筆や趣味のものがたくさんありましたし、状態はキレイとまではいかなくても中古品として許せる範囲のものばかりでした。
それに対して旧東ドイツ側のノミの市は本当にガラクタ市で、たくさんあるゴミの中からお宝を見つけ出すような感じでした。
その中には旧東ドイツの工業製品らしいチープレトロなものがたくさんありました。
それらはきっと時代が移っても変わらず、良くも悪くもならずに東ドイツの国民の生活の中に有り続けたのだろうと思いました。
でも旧西ドイツ側のものも分裂直後は、旧東ドイツの工業製品とそれほど違わなかったのではないかと想像しています。

東西分裂直後のドイツ製品の雰囲気を感じることができる万年筆が入荷しました。
特別生産品ペリカンM120グリーンブラックです。

1953年に入門用万年筆として発売されたものの限定復刻モデルで、吸入式ではあるけれど、当時はほとんどの万年筆が吸入式でしたので珍しくも何ともなく、ペン先はスチール、ボディはプラスチックで装飾もない。
近年の万年筆の持つゴージャスさ上質さとは無縁の存在の、実用一辺倒の万年筆です。
チープレトロと言うと、中身のともなっていない安物というイメージがあるかもしれないけれど、私は安く仕上げるために最大限の努力をして作られたもので、その時代の流行とか、時世を反映したものだと思っています。
きっとこのM120グリーンブラックは、大人の高級品ではなく、スチューデントモデルという位置づけで、若い人や学生の人でも買えるものを目指して作られたのだと思います。

より多くの人に買ってもらうために作られた、偉大なる大量生産品。
現代で言うと、ラミーサファリがまさにそういう存在のペンで、安い素材を使い安く仕上げているけれど、万年筆としての機能は高い次元にある。
ドイツ製品は変わってしまった。
もちろん変わらなくては続いていけなかったのだと思うけれど、ドイツ製品の多くのものが洗練されて、作り込まれて、豪華になっていくに従って値段も高くなりました。

モノ作りは素朴だったけれど、そこに崇高な自分たちが生業とするモノに対する精神が感じられるもの。
チープレトロな古き良きドイツの工業製品に思いを馳せることができるものが、今回限定復刻されたぺリカンM120グリーンブラックです。

PelikanM120 グリーンブラック