万年筆を真・行・草で考える

万年筆を真・行・草で考える
万年筆を真・行・草で考える

モノや設えの格式を表す「真・行・草」の中で、最も簡素で素材感のままの「草」に一番惹かれます。
真は格調高く、作り込まれた最も正式なモノの姿。行は真よりも少し用に向かって崩した格式と寛ぎのバランスの取れた姿。草は全てが自然のままに、手を加えていないように見えるモノの姿、しかしそのように見せるために最大の努力が払われている。

真・行・草に外出の服装を当てはめてみると、真は最も正式なトラディショナルなスーツスタイル。
行はブレザーにネクタイ。
草はノーネクタイにノーアイロンのシャツということになるのかもしれません。
服装に関しても、似合うかどうかは別として私は草に惹かれるけれど、万年筆を真・行・草に当てはめて考えるのも面白いと思いました。

それとそうすることで皆様の万年筆選びが少しはやりやすくなれば幸いです。
万年筆選びに正解などはなく、ご自分がどれを好きかということだけだと思っていますが、どれを好きになったらいいか分からないという声も聞かれ、たしかにそうだと思いました。

最も格調高く公の場で使っても気後れしないようなものが真の万年筆です。
これはボディが黒の樹脂で、金具が金色あるいは銀色のもので、モンブランが代表的なものですが、どのメーカーにも黒ボディ金金具のものはあって、公の場で使うものとしてある程度意識しているのかもしれません。
漆塗りの万年筆は、真の万年筆の究極で、パイロットカスタム845が最も真の万年筆だと思います。
⇒パイロットカスタム845
行はもう少しカジュアルなもの。ペリカンの縞模様などは程よく遊び心があって、行の代表的なもの。イタリアの万年筆メーカーのカラーレジンを使ってもののほとんどを行に入れたいと思います。

草の万年筆の条件として素材感が最も重要です。天然素材の質感、2本と同じもののない不揃い感などを備えていれば完全に草の万年筆だと私が胸を張って承認したいと思います。
木のボディで天然の素材を生かしたものは間違いなく草の万年筆で、これに金無垢やスターリングシルバーも仲間に加えたい。
真・行・草どれに惹かれるかは非常に感覚的で、好み、センスが分かれるところで、私はどうしても草の万年筆に惹かれてしまう。

ずっと素材感のあるものが好きで、飾り気がなく、手を入れていないように見せるために最大の努力が払われているものに肩入れしてしまいます。
工房楔と当店とのオリジナル企画のこしらえなどは、草の万年筆の最たるものだと誇らしく思っています。(⇒Pen and message.オリジナル銘木万年筆軸こしらえcbid=2557546⇒Pen and message.オリジナル銘木万年筆軸こしらえcsid=1″ target=”_blank”>⇒Pen and message.オリジナル銘木万年筆軸こしらえ)

〇関連記事
⇒2012.12.14 寒さに強い万年筆(カスタム845)コラム
⇒2013.4.12 万年筆銘木軸こしらえ

オマス シグネチャーエディション 「ルドヴィコ・エイナウディ」

オマス シグネチャーエディション 「ルドヴィコ・エイナウディ」
オマス シグネチャーエディション 「ルドヴィコ・エイナウディ」

オマスの代表的なペン、アルテイタリアーナシリーズは12角形のボディが特長的ですが、装飾の少ない骨太な印象のとてもシンプルなデザインだと思っています。
シンプルであるためにそこに面白みを見出しにくく、90年という長い歴史のノスタルジーも現行のオマスのペンからは感じにくいと思います。
でもそれを手に取って使ってみると、ミロードには味わい深いしっとりとした書き味と、自然に手が動くような書くためのバランスがあり、パラゴンにはハードに使っても安心感のある剛性感と弾力があって、手応えのある書き味が最大の特長になっています。
それぞれ長く使いたいと思わせてくれる、万年筆として優れたものであることは間違いありません。

万年筆によっては冬にインクの出が良くなる傾向があるため、少し出が渋くなるインクを使う工夫をしたり、多少の使いこなしを要求されるけれど、それもある程度万年筆を使ってきた人のための万年筆であるということだと思います。

オマスは今年創立90周年を迎えていて活発に限定品を発売しています。
シグネチャーエディションも同様の90周年の企画で、音楽家などのアーティストの作品のイメージをオマスのペンで表現したものになっていて、アルテイタリアーナの名に相応しいものになっています。
シグネチャーエディション第1弾はイタリアの音楽家ルドヴィコ・エイナウディです。

ルドヴィコ・エイナウディのシンプルなのにセンチメンタルな旋律もある音楽とオマスの万年筆のデザインとの共通性が感じられ、元々共感し合えていた上での今回のシグネチャーエディション化だったのではと推測したりします。

実は、私はルドヴィコ・エイナウディの音楽は聞いたことがなく、オマスからのシグネチャーエディションのインフォメーションを見ても、名前も聞いたことがない人だと思っていました。

それからしばらくして、お客様が「このお店に合いそうだと思って」とCDを持ってきて下さいました。どこかで見たことのある字面だと思ってよく見ると、ルドヴィコ・エイナウディのものでした。
驚いて万年筆をご紹介するとその方も偶然に驚かれ、少し前からオマスパラゴンに興味を持たれていましたので、迷うことなくシグネチャーエディションパラゴンを買って帰られました。

音数が少なく、静かな印象の曲調が多く、ジャズなどに慣れた耳には大人しすぎるのかとはじめは思っていましたが、聞くほどに心のすごく深いところ、郷愁の部分に届いてくるような音だと思うようになりました。
シグネチャーエディション「ルドヴィコ・エイナウディ」はその音楽性が反映されていて、マットブラックのボディと、艶消しされた金属パーツの輝きを抑えた組み合わせで、静謐ささえ感じます。

アルテイタリアーナのペンをベースにしながら全く違う印象のものに仕立てている。オマス90周年記念、シグネチャーエディションは限定品らしい限定品だと思います。

サファリ2015年限定色ネオンライム

サファリ2015年限定色ネオンライム
サファリ2015年限定色ネオンライム

テレビ番組で、ボールペンの特集があり、その中でマツコデラックスさんがサファリの毎年発売される年度限定モデルを買っていたことを話していて、この人はこちら側の人だと見直しました。

モンブランの万年筆を使っていると言われても心は動かない。サファリというのがポイントで、毎年限定色が発売されていることを知っているところもポイントでした。
それだけで以前から何となく思っていた、この人は感じの良い人だという認識が確信になりました。
万年筆はそれを使わない人から見るとやや理解不可能なものになっています。
例えばある万年筆の値段を、万年筆を使わない人に聞いたとしても、せいぜい20分の1くらいの値段を言われてしまうのが現実で、それが良いことなのかどうなのか分からない。
でもそれだけ底の深い、マニアックなものになっています。
サファリは万年筆を使わない人と、私たちのような人をつなぐ、架け橋のような存在だと思っています。

サファリは他のどの万年筆でも担うことができない役割を持っています。
はじめて万年筆を使うと言う人にカクノを勧めて買ってもらうことは販売員としてとても簡単で、きっと皆喜んで買ってくれると思います。
しかし私はそういう人にもサファリを使ってもらいたいと思っていて、サファリを使っていることの誇らしさのようなものを感じてもらいたい。
サファリという個性的な万年筆を持つ喜びは、万年筆を持つ喜びの第一歩のような気がします。

また、サファリは万年筆をある程度使っている人でも使う価値と理由のある、このペンならではの魅力を持っています。
4000円という万年筆としては安い値段で販売しなければなりませんので、コストのかかる素材を使うことができませんが、安い素材を使いながらも、万年筆に備わっていて欲しい機能を全て備えていて、デザインはサファリ以外にはない、とてもオリジナリティのあるものだと思います。

サファリを使って万年筆の書き味とその魅力を知った人は、きっともっと良い万年筆を使いたくなると思っています。
ラミーサファリの2015年の限定色ネオンライムが発売になりました。
以前にも同じ傾向の色があったと思ったとしても、それはきっと気のせいで、確かに違う色です。
万年筆の所有欲を教えてくれる第一歩の万年筆として、この年度限定色は話題作り、万年筆を使うきっかけ作りにおいてとても重要で、なるべく続けてもらいたいと思いますし、ラミーにも意地でも続けていくという気迫のようなものを感じます。

マツコデラックスさんは、もっと良いペン、例えばラミー2000などを使いたくなっただろうか?

◎関連記事
⇒2009.2.13 ラミーサファリの価値観
⇒2010.3.12 オンリーワンの存在感・ラミーサファリ

手帳のある風景・写真集完成

手帳のある風景・写真集完成
手帳のある風景・写真集完成

総勢27名の手帳と万年筆のある風景を収めた写真集が出来上がりました。
それぞれのご自宅の書斎や机上の写真をお送りいただいたり、お持ちいただいて当店で撮影した写真を収録しています。

私が万年筆を使うきっかけになったのは、手帳を書くことがより楽しくなったからで、手帳と万年筆との組み合わせにはこだわりがあります。
そのため皆様がどんな手帳を使い、それにどんな万年筆で書かれているかにとても興味がありました。
メーカーやお店のカタログ、WEBページでも手帳と万年筆を組み合わせて撮られた写真はありますが、それらは使われていないもので、実際に使われているものの前では迫力に欠ける。
実際に使われているものでカタログのようなものを作りたいと思っていますが、それに近いものになっていると思っています。

写真集の中には当店で扱っていないものもありますが、有難いことに当店にあるものも多く、例えば正方形のオリジナルダイアリーを使って下さっている方が多かったことに、素直に喜びました。
万年筆で書くということを中心に考えた時、この正方形ダイアリーほどそれに合ったものはないと思っています。
書き味が良く、インクの収まりの良い紙の製作、書きやすい平らに開く製本をしてくれた大和出版印刷さんも、細字の万年筆に合う罫線レイアウトを企画した私たちも万年筆での使用を念頭に入れて作り続けているもので、もっと多くの方にお使いいただきたと思っています。

ダイアリーは少し季節外れになりましたが、フリーデイリーダイアリーや横罫、方眼ノート、薄型の方眼ノートrect(レクト)もこの正方形サイズにはあり、革カバーもまだありますので、使われていない方も今の季節から問題なくお使いいただけますので、ぜひお試しいただきたいと思います。

実は日付入りのウィークリーダイアリー、マンスリーダイアリーと、フリーデイリーダイアリー、横罫、方眼ノートとは使用している紙が違っていて、Liscio-1(リスシオ・ワン)という紙が使われています。
現在、グラフィーロを万年筆用紙として売り出している大和出版印刷さんの前のモデルの紙で、独特の柔らかい書き味のリスシオ紙を好んで使われている人も多くおられます。
ですがこの紙を使ったノートは、大和出版印刷さんの在庫がなくなり次第終了ということになります。

ご自宅の書斎、机上の風景を写真に収めて下さった方の中には、万年筆をたくさん保管することができるコレクターズボックスも写して下さっている方もおられ、私たちの期待通りのものを見せてくれています。
当店でもコレクターズボックスは、工房楔の永田さんが作ったものを扱っていて、現在在庫はありませんが、9月の完成を目指して製作に入っていますので、ご予約を承ります。
手帳の周辺や机上のスペースのためのものを当店ではなるべく集めたいと思っていて、こういった写真集の写真に写っているもの全てが当店で扱っているものばかりになれば、本当のカタログになると思っています。

⇒手帳の風景写真集
⇒工房楔・デスクトレイ予約ページ(工房楔・机上用品)cbid=2557546⇒工房楔・デスクトレイ予約ページ(工房楔・机上用品)csid=5⇒工房楔・デスクトレイ予約ページ(工房楔・机上用品)page=2″ target=”_blank”>⇒工房楔・デスクトレイ予約ページ(工房楔・机上用品)

実用品とコレクション~ペリカンM805デモンストレーター刻印なしモデル発売~

実用品とコレクション~ペリカンM805デモンストレーター刻印なしモデル発売~
実用品とコレクション~ペリカンM805デモンストレーター刻印なしモデル発売~

ペリカンM805デモンストレーター刻印なしモデルが限定発売されました。
万年筆の定番中の定番ペリカンM800の限定品ということで注目されていて、完売は時間の問題だと思っています。

何度も言っていることですが、ペリカンM800はペンの重さを利用して、力を抜いて書くという万年筆の扱いに慣れた人にとって、これ以上書きやすい万年筆はないのではないかと思われるほど完璧なバランスを持った万年筆だと言われています。
重さも、サイズも、力を抜いて書くのにちょうどいいですが、万年筆を使い慣れていないと、そのボディは大きすぎ、重量は重過ぎるように思われ、尻軸にキャップをつけて書くことが難しく感じられます。
この万年筆をキャップをつけて書くことができるようになった時、万年筆の重さを利用して書くことができるようになったと思っていいいのではないかという、水準器のような万年筆だと言えます。

ペン先はとてもハードで頑丈にできていますが、滑らかに書くことができるので硬さを感じさせません。書いていて安心感のようなものがあります。
ペリカンのモデルナンバーは末尾に5がつくとシルバー金具モデルで、M805デモンストレーターはシルバー金具のM800ということになります。
今まで5が付くモデルも、つかないモデルも、バイカラーの共通のペン先を使っていましたが、今年から5末尾モデルにはオールロジウム仕上げの銀色のペン先になりました。
ガラスのような透明のアクリル製ボディとシルバーの金具のM805デモンストレーターは実験用具か、医療器具のように見えます。

透明のボディによってインク残量が確認しやすく、それはさらなる実用性の向上につながっています。
M800は定番品に緑縞、青島、黒軸、M805に青縞、黒軸、発売日が浅く安定供給できていない黒縞などのカラーバリエーションがあり、これらを字幅違いや、入れるインクの色違いで揃えると壮観だろうなと思います。
同じ形のものをいくつも欲しくなって、揃えたくなるのは男性に多い集め方だと私は思っていて、私も同じものがいくつも欲しい方です。
M800の年代違いの書き味の違うものを揃えている方がおられて、その揃え方に大変共感しました。

今回発売されたペリカンM805デモンストレーター刻印なしモデルに対して、刻印ありモデルというものも12月に発売を予定しています。

内部機構が見える透明ボディの表面に、内部パーツ名を刻印したもので、こちらはデモンストレーターの名前通り、吸入メカニズムを説明するための仕様で、標本的な趣きを持ったものになります。
刻印ありはコレクション向き、刻印なしは実用品と言うと、そのつもりではない人に申し訳ないですが、ほぼ同じ万年筆の刻印あるなしで、性格がガラリと変わることが面白いと思っています。

どちらも世界限定900本です。

旅に携える万年筆

旅に携える万年筆
旅に携える万年筆

旅というほどではないけれど、プラチナ萬年筆の工場見学のために東京に1泊2日で出掛けます。(注:これを書いたのは5月11日です)

その時にカメラにどのレンズをつけていくかも大事なことですが、もっと大事なのはどの万年筆を持っていくか、ということに気付きました。
プラチナ萬年筆の工場に行くので、プラチナのペンということになり、ブライヤーとプラチナプラチナを持って行きます。
以前ある国産万年筆メーカーに行った時に、国が違うからいいだろうと思って、アウロラオプティマを胸に差して行ったことがありましたが、「吉宗さんはアウロラを愛用されているのですね。ウチのペンもぜひ愛用して下さい」ととてもソフトに言われたことがあって、「しまった」と思ったことがありました。

それは当然のことで、日本の万年筆メーカーも今や海外のものをお手本にして万年筆を作っているわけではなく、日本の万年筆の良さを前面に押し出して互角に勝負しているわけなので、誇りを持ってやっている人なら気になるところだろうと、反省しました。
この辺りのことは、お客様方の方が気が回って私のような失敗をすることはないのかもしれません。

以前旅行者用の万年筆として、モンブランやオマスなどの吸入式を中心に作っているメーカーがカートリッジ式の万年筆を出したことがあります。
いずれも旅行用のような扱いで、やはり旅にはボトルインクを持ち歩く心配の要らないカートリッジ式が便利だと言えます。
カートリッジで万年筆を使うことは、インクにこだわる人ほど少なく、コンバーターでボトルインクを吸入させて使う人が多いと思いますが、私は国産の万年筆は余程のことがない限りカートリッジインクで使っています。
ただインク交換が面倒臭いというわけではなく、日本の万年筆はメーカー純正インクで使う方が上手くいくと信じているからです。

コンバーターで他社のインクを入れて使うより、カートリッジの純正インクを使う方が快適に書くことができるということを今まで何度か経験してきました。
性能が良く、個体によるバラつきが少ないと言われている日本のメーカーなのに不思議な気がしますが、日本の万年筆メーカー各社がそれだけギリギリの線を狙った、攻めの万年筆作りをしているからだと私は思っています。
万年筆の理想は、インク出は少なめに、でも途切れず書き味良く書くことができることだと思っていますが、これを高い次元でバランスを取ろうとすると、インクが違う性質のものになると崩れてしまいます。
この点、海外のメーカーは余裕を持たせているのか、他社のインクでもストレスなく使うことができたりしますので、純正のものに限らず自由に使うことができると思っています。

でも日本メーカーのカートリッジはだいたい1cc以上は入っていますので、色を選ぶ自由度が少ないということ以外問題はないので、旅に携える万年筆としての資質は十分だと思います。旅に携える万年筆のひとつとして、国産の万年筆も考えてみたいと思います。

以前、ヨーロッパ旅行に行った時、ずっとプラチナブライヤーを使っていました。
プラチナのカートリッジのブルーブラックの、どんな紙でもにじみが少なく、同じように書けるところもが大変便利に思いましたし、飛行機の中でインクが漏れることもありませんでした。
パチンと閉めることができる勘合式のキャップも使いやすい。
そして何よりも、予備のカートリッジが数本あればいいという手軽さは大変有り難く感じました。

コンバーターでのインク棚釣りによるインク途切れなどの相談を受けるのは、国産の万年筆に関してが多いので、少しつまらなく感じるかもしれませんが、純正のカートリッジインクを入れた国産の万年筆を旅に携える万年筆の候補として、お考えいただけたらと思います。

⇒プラチナ萬年筆 ブライヤー
⇒カンダミサコ 小長持ち(カートリッジケース)

大台に乗ったカランダッシュ ~100周年記念商品のご案内~

大台に乗ったカランダッシュ ~100周年記念商品のご案内~
大台に乗ったカランダッシュ ~100周年記念商品のご案内~

カランダッシュはとても実用的で所有欲をくすぐるボールペン、エクリドールの存在などから、私にとってとても馴染のある筆記具メーカーでした。

しかし、ある時多くの物作りメーカーがそのトレンドに乗ったように、ブランド化というイメージ転換をして、何となく距離を感じるようになっていました。
しかし2月にカランダッシュの勉強会に参加したことで、物作りへの情熱は変わっておらず、良い筆記具を作ろうとしているメーカーであり続けていることを知り、改めて親近感のようなものを得て帰ってきました。

筆記具メーカーの勉強会というのは以前はよく開催されていましたが、最近では珍しく、定休日である水曜日と重なったこともあり、カランダッシュの意気込みに共感して参加しました。
カランダッシュは今年100周年を迎え、それを記念する限定品をいくつか発売しています。

真鍮ボディに銀張りを施し、パラジュームコートで仕上げたボディのエクリドールに、定番のシェブロン柄をアレンジして彫刻したものがあります。
エクリドールはカランダッシュの代表的なボールペンであり、全てのボールペンの中でも、定番中の定番と言えるもので、カランダッシュと言えば、鉛筆と同じ六角形のこのボールペンを思い浮かべる人は多いと思います。
細身の六角形のボディは自然に扱いやすいものだと多くの方から評価されています。

最近インクの粘度が低い、書き味が滑らかなイージーフロー芯が多く使われるようになりましたが、カランダッシュのボールペン芯は、この芯だと滑りすぎるという人たちに熱烈に支持されています。カランダッシュのボールペン芯であるゴリアット芯が非常に滑らかなのは、筆記具の業界にいる私たちにとっては常識ともなっています。

インク充填容量多く、A4の用紙で600枚、距離で8kmも書くことができ、これは他社の1.5倍にも相当します。
849コレクションの100周年モデルも、同じゴリアット芯を使っていて、カランダッシュの色鉛筆のデザインをアルミのボディにアレンジしてあしらった、とてもかわいらしいデザインだと思っています。
エクリドールよりも軽めのボディは、女性の方でも持ちやすいものであると思います。

定規あるいは目盛好きの私が100周年コレクションの中で最も気に入っているのは、2mm芯ホルダーのフィックスペンシルです。

目盛のどこが良いのか上手く説明できないけれど、整然と並んでいて、これ以上美しい模様はないと思っています。
ボディは意外なほど軽く、プレスリリースではボディ素材にアルミが使われているということになっています。
いずれにしても大変凝った玄人好みな商品だと思います。

フィックスペンシルは、太芯のペンシルにとって最もオーソドックスな機構であるドロップ式になっていますが、これはカランダッシュが世界で最初に作ったものでした。
微妙に芯の出す長さを調整することができるし、故障の心配も少ない優れた機構だと思います。
ドロップ式の芯ホルダーの定番機能、ノックバーの中に芯研器も仕込まれています。フィックスペンシルには、黒芯の他に水溶性のカラー芯も付属していて、水彩色鉛筆としても使うことができます。

100周年を記念する限定品の中に万年筆がなかったのは残念でしたが、カランダッシュらしいこだわったものが出来上がったと思います。

⇒カランダッシュTOPへcbid=2557105⇒カランダッシュTOPへcsid=5″ target=”_blank”>⇒カランダッシュTOPへ

ペン先調整について~ペン先を細く削る

ペン先調整について~ペン先を細く削る
ペン先調整について~ペン先を細く削る

当店では既に使われている万年筆のペン先調整も承っていて、その需要の多さに当初戸惑うほどでした。

お持込のペン先調整は来店していただき対面での調整のみ、と現在もホームページにもご案内していますが、あまりの問い合わせの多さに、現在はお送りいただいても承るようになりました。

実際に書かれているところを見てその方の書き方にジャストフィットさせなくても、標準的な調整を施したものなら大抵問題は解決されるようです。
よりピッタリ合わせたいと思っておられる方には、筆記中の写真をお送りいただいたりしています。

私は、ずっと書き込んでその手にピッタリと合った書き癖がついて、そのために線が太くなってしまった万年筆のペン先はとても貴重で、尊いものだと思ってきました。
太くなってしまったペン先は、なるべくそのまま使って、細く書く必要があれば細く書くことができる万年筆を買うべきだと言い続けてきました。
しかし、それは少し偏った見解で、好みは人それぞれ違うようです。
大きく筆記面が出来たペン先のヌルヌルした書き味を好きな人は多いけれど、そうでない人もいる。
そうでない人にとって、使用によってできた筆記面は消耗以外の何ものでもなく、ペン先を研ぎ直して欲しいという要望を持って当然でした。

細かい文字を書く手帳用の万年筆は、国産の細字くらいが最も適していると思っています。でも手帳にも国産以外の様々なものを使いたい。
特に、細くて軽いボディのペリカンM400や、適度な太さと重みのあるボディで硬めのペン先のペリカンM800などは、ペン先が太く、インク出が多いこと以外は手帳への筆記に向いた万年筆だと思いますので、それらも使いたいと思う。

私はシステム手帳のペンホルダーにピッタリ収まるファーバーカステルクラシックを手帳に使いますが、不満だったのは手帳に書くには、太くて、インク出が多いということでした。
長年の使用で書き味も良くなっていたので、長い間躊躇していましたが、ある時思い切って細く削ってみました。
手帳の細かな枠内に収まるし、時間をかけてお客様の万年筆を調整するようにしましたので、それほど書き味が劣化したというほどではない、むしろ細く削ったファーバーカステルで手帳に書くことが楽しくて仕方がない。
今までとくらべものにならないくらい、手帳にきっちりとたくさんの文字を書くようになりました。

万年筆も道具なので、やはり用途に合っていなければ意味がない。
まず用途に合っていることが大事で、ヌルヌルとした書き味を持つ筆記面があるかどうかというのは、二の次のことでした。
今まで自分の偏った考えをお客様方に押し付けていたような気がして、申し訳なく思いました。
ペン先を細く研ぎ直して欲しい方がおられましたら、「ペン先字幅変更料金」になりますが、喜んでお引き受けいたします。

活発なアウロラとペリカン~入荷してきた限定品・これから発売される限定品~

活発なアウロラとペリカン~入荷してきた限定品・これから発売される限定品~
活発なアウロラとペリカン~入荷してきた限定品・これから発売される限定品~

アウロラの地球の四大要素エレメンツを表現したミニペンのシリーズの第3弾「テッラ」が入荷しました。

イタリアの海をテーマにしたマーレシリーズのマーレティレニアと同じ鮮やかなエメラルドグリーンレジンで、アウロラはこの緑を大地の色としました。
男性の場合、冬にはあまりミニペンには考えが及ばないかもしれませんが、暖かい季節になってきて、上着を着なくなると、ミニペンをベストの胸ポケットに差したいと思うようになります。
すぐ手に取れる胸ポケットにペンがあるのはやはり便利です。
シャツに胸ポケットがあればそこに差してもいいと思いますが、真夏以外はいくら暑くてもせめてベストくらいはシャツの上に来ていたいので、ベストを彩るアクセサリーのような役目もしてくれると思います。

すでにマーレティレニアをお持ちの方はマーレティレニアをペンケースに入れて持ち運び、夏はこのテッラを胸ポケットにさしておくというのもいいのではないでしょうか・・と男性の方に、無責任にご提案します。

どちらかというとマニアックな通好みな限定品作りをするペリカンに対して、アウロラの限定品にはおしゃれでスマートな印象を持っています。
エレメンツの限定品シリーズ第1弾「フォーコ」は当店が創業した年に発売されましたが、当店に女性のお客様が来られるきっかけになったものだと断定できるほど、フォーコを購入された女性が多かった。

エレメントシリーズではないけれど、これもミニペンの「ルナ」など、女性をターゲットとしてかなり意識しています。
6月頃発売予定のマーレシリーズ最終品マーレアドリアは、透明感のある水色で、これも女性の方に人気が出そうです。

入荷したばかりの限定品シーザー(ガイウス・ユリウス・カエサル)もご紹介します。
入荷本数が少なく、ご紹介するべきか迷いましたが、ボディ素材のレジンの色、細部の装飾など、作り込まれた感じのする逸品で、ぜひご覧いただきたいと思いました。
ベースは、85周年レッドやマーレシリーズのアウロラが自信を持っているボディで、デザインのまとまりと実用性を高い次元で両立した、とても優れた限定品だと思っています。
アウロラとペリカンが今年は活発で、アウロラは前述の2つの限定品の他に、すでに大陸シリーズオセアニアを発売中ですし、ペリカンにもいくつかお知らせしたいものがあります。
少量しか入荷せず、ご予約で完売してしまったM200カフェクリーム、定番品だけどまだまだ供給が安定しておらず、当店でもバックオーダーを抱えている状態のM805ブラックストライプなどはすでに知られているところです。

今後も6月にM805デモンストレーターの刻印なし、12月にはM805デモンストレーターの刻印ありモデルが発売される予定です。
刻印というのは、ボディ内部が透けて見えることを利用して、内部機構のパーツ名をボディに記したもので、標本的な面白さを表現しています。
アウロラテッラ、アウロラシーザー、アウロラオセアニア、ペリカンM805ブラックストライプなどすでに発売されているもので販売終了していないものは、もちろんお買い求めいただくことができますし、ペリカンM805デモンストレーター刻印なし、刻印ありなどの今後発売のものもご予約を承っております。

メール(penandmessage@goo.jp)にてお問い合わせ下さい。


手帳の風景としてのインク

手帳の風景としてのインク
手帳の風景としてのインク

きっとカメラやレンズもそうですが、万年筆選びに正解と終わりがないように、インクもなかなか自分の色を決められずにいる人は多いのではないでしょうか。
自分はこの色でいこうと決めたはずなのに人が使っている色を見て、それが気になってしまう。
あの色を使ったら自分の文字はどう変わるのだろう、手帳やノートの風景はどのようになるだろうと思うと、ぜひ試してみたいと思ってしまいます。
私の場合、インクの色が気になるのは手帳やノートの風景が変わるということと、もっと自分の頭がクリエイティブになるかもしれないという自分への作用への期待からです。

昨年末から冬の間中、南米パタゴニア地方の南端ティエラ・デル・フエゴをイメージしたエルバンのインクを使いました。
少し赤みがかった茶色で、今まで自分のインクの色として考えたことのなかった色だったけれど、憧れている土地の名前のインクということで、無条件に使ってみたいと思いました。
インクは万年筆を滑らかに書かせるための潤滑油くらいにしか見ていなくて、その色について全く興味を持たなかった私を血の色が緑と揶揄する人もいましたが、ティエラ・デル・フエゴは心動かされたインクでした。

そして、最近は季節によって使い分けてみようかなどとも思い始めていて、それは当店のオリジナルインクが意識していたものでした。冬枯れは冬を、朱漆は春を、朔は夏の夜を、山野草は秋をイメージしています。
その他のWRITING LAB.オリジナルインクも、クアドリフォリオは春、オールドバーガンディは冬の色だと私は思っています。
季節と関係がないけれど、Cigarのインクは、少し退廃的なオールドスタイルな男性っぽさを表現したインクです。
最近、書いたばかりの時は緑色で、乾くと黄色っぽく枯れたような色になるCigarのインクが海外でも話題になって、異常なくらいよく売れています。

話を元に戻すと、これからの季節らしいインクの色を何か使ってみたいと思い始めて、夏らしい、自分らしい色についていろいろ考えています。
あまりアウトドアでの活動をしない生活ですが、外の世界の季節感をインクの色に取り入れたい、昔の人が自然の事象に趣きを感じて、風流にそれらを取り入れたように、わずかに感じる季節感をインクの色で遊びたいといろいろしているうちに、山野草を手帳に使いたいとほぼ決まりました。
今年は特に長く感じた寒い季節がやっと終わり、気持ちも服装も、靴も変わる温かい季節に、インクも変えてみてはいかがでしょうか。

⇒Pen and message. オリジナルインク山野草
⇒インクTOPへcbid=2552140⇒インクTOPへcsid=0″ target=”_blank”>⇒インクTOPへ