大台に乗ったカランダッシュ ~100周年記念商品のご案内~

大台に乗ったカランダッシュ ~100周年記念商品のご案内~
大台に乗ったカランダッシュ ~100周年記念商品のご案内~

カランダッシュはとても実用的で所有欲をくすぐるボールペン、エクリドールの存在などから、私にとってとても馴染のある筆記具メーカーでした。

しかし、ある時多くの物作りメーカーがそのトレンドに乗ったように、ブランド化というイメージ転換をして、何となく距離を感じるようになっていました。
しかし2月にカランダッシュの勉強会に参加したことで、物作りへの情熱は変わっておらず、良い筆記具を作ろうとしているメーカーであり続けていることを知り、改めて親近感のようなものを得て帰ってきました。

筆記具メーカーの勉強会というのは以前はよく開催されていましたが、最近では珍しく、定休日である水曜日と重なったこともあり、カランダッシュの意気込みに共感して参加しました。
カランダッシュは今年100周年を迎え、それを記念する限定品をいくつか発売しています。

真鍮ボディに銀張りを施し、パラジュームコートで仕上げたボディのエクリドールに、定番のシェブロン柄をアレンジして彫刻したものがあります。
エクリドールはカランダッシュの代表的なボールペンであり、全てのボールペンの中でも、定番中の定番と言えるもので、カランダッシュと言えば、鉛筆と同じ六角形のこのボールペンを思い浮かべる人は多いと思います。
細身の六角形のボディは自然に扱いやすいものだと多くの方から評価されています。

最近インクの粘度が低い、書き味が滑らかなイージーフロー芯が多く使われるようになりましたが、カランダッシュのボールペン芯は、この芯だと滑りすぎるという人たちに熱烈に支持されています。カランダッシュのボールペン芯であるゴリアット芯が非常に滑らかなのは、筆記具の業界にいる私たちにとっては常識ともなっています。

インク充填容量多く、A4の用紙で600枚、距離で8kmも書くことができ、これは他社の1.5倍にも相当します。
849コレクションの100周年モデルも、同じゴリアット芯を使っていて、カランダッシュの色鉛筆のデザインをアルミのボディにアレンジしてあしらった、とてもかわいらしいデザインだと思っています。
エクリドールよりも軽めのボディは、女性の方でも持ちやすいものであると思います。

定規あるいは目盛好きの私が100周年コレクションの中で最も気に入っているのは、2mm芯ホルダーのフィックスペンシルです。

目盛のどこが良いのか上手く説明できないけれど、整然と並んでいて、これ以上美しい模様はないと思っています。
ボディは意外なほど軽く、プレスリリースではボディ素材にアルミが使われているということになっています。
いずれにしても大変凝った玄人好みな商品だと思います。

フィックスペンシルは、太芯のペンシルにとって最もオーソドックスな機構であるドロップ式になっていますが、これはカランダッシュが世界で最初に作ったものでした。
微妙に芯の出す長さを調整することができるし、故障の心配も少ない優れた機構だと思います。
ドロップ式の芯ホルダーの定番機能、ノックバーの中に芯研器も仕込まれています。フィックスペンシルには、黒芯の他に水溶性のカラー芯も付属していて、水彩色鉛筆としても使うことができます。

100周年を記念する限定品の中に万年筆がなかったのは残念でしたが、カランダッシュらしいこだわったものが出来上がったと思います。

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ペン先調整について~ペン先を細く削る

ペン先調整について~ペン先を細く削る
ペン先調整について~ペン先を細く削る

当店では既に使われている万年筆のペン先調整も承っていて、その需要の多さに当初戸惑うほどでした。

お持込のペン先調整は来店していただき対面での調整のみ、と現在もホームページにもご案内していますが、あまりの問い合わせの多さに、現在はお送りいただいても承るようになりました。

実際に書かれているところを見てその方の書き方にジャストフィットさせなくても、標準的な調整を施したものなら大抵問題は解決されるようです。
よりピッタリ合わせたいと思っておられる方には、筆記中の写真をお送りいただいたりしています。

私は、ずっと書き込んでその手にピッタリと合った書き癖がついて、そのために線が太くなってしまった万年筆のペン先はとても貴重で、尊いものだと思ってきました。
太くなってしまったペン先は、なるべくそのまま使って、細く書く必要があれば細く書くことができる万年筆を買うべきだと言い続けてきました。
しかし、それは少し偏った見解で、好みは人それぞれ違うようです。
大きく筆記面が出来たペン先のヌルヌルした書き味を好きな人は多いけれど、そうでない人もいる。
そうでない人にとって、使用によってできた筆記面は消耗以外の何ものでもなく、ペン先を研ぎ直して欲しいという要望を持って当然でした。

細かい文字を書く手帳用の万年筆は、国産の細字くらいが最も適していると思っています。でも手帳にも国産以外の様々なものを使いたい。
特に、細くて軽いボディのペリカンM400や、適度な太さと重みのあるボディで硬めのペン先のペリカンM800などは、ペン先が太く、インク出が多いこと以外は手帳への筆記に向いた万年筆だと思いますので、それらも使いたいと思う。

私はシステム手帳のペンホルダーにピッタリ収まるファーバーカステルクラシックを手帳に使いますが、不満だったのは手帳に書くには、太くて、インク出が多いということでした。
長年の使用で書き味も良くなっていたので、長い間躊躇していましたが、ある時思い切って細く削ってみました。
手帳の細かな枠内に収まるし、時間をかけてお客様の万年筆を調整するようにしましたので、それほど書き味が劣化したというほどではない、むしろ細く削ったファーバーカステルで手帳に書くことが楽しくて仕方がない。
今までとくらべものにならないくらい、手帳にきっちりとたくさんの文字を書くようになりました。

万年筆も道具なので、やはり用途に合っていなければ意味がない。
まず用途に合っていることが大事で、ヌルヌルとした書き味を持つ筆記面があるかどうかというのは、二の次のことでした。
今まで自分の偏った考えをお客様方に押し付けていたような気がして、申し訳なく思いました。
ペン先を細く研ぎ直して欲しい方がおられましたら、「ペン先字幅変更料金」になりますが、喜んでお引き受けいたします。

活発なアウロラとペリカン~入荷してきた限定品・これから発売される限定品~

活発なアウロラとペリカン~入荷してきた限定品・これから発売される限定品~
活発なアウロラとペリカン~入荷してきた限定品・これから発売される限定品~

アウロラの地球の四大要素エレメンツを表現したミニペンのシリーズの第3弾「テッラ」が入荷しました。

イタリアの海をテーマにしたマーレシリーズのマーレティレニアと同じ鮮やかなエメラルドグリーンレジンで、アウロラはこの緑を大地の色としました。
男性の場合、冬にはあまりミニペンには考えが及ばないかもしれませんが、暖かい季節になってきて、上着を着なくなると、ミニペンをベストの胸ポケットに差したいと思うようになります。
すぐ手に取れる胸ポケットにペンがあるのはやはり便利です。
シャツに胸ポケットがあればそこに差してもいいと思いますが、真夏以外はいくら暑くてもせめてベストくらいはシャツの上に来ていたいので、ベストを彩るアクセサリーのような役目もしてくれると思います。

すでにマーレティレニアをお持ちの方はマーレティレニアをペンケースに入れて持ち運び、夏はこのテッラを胸ポケットにさしておくというのもいいのではないでしょうか・・と男性の方に、無責任にご提案します。

どちらかというとマニアックな通好みな限定品作りをするペリカンに対して、アウロラの限定品にはおしゃれでスマートな印象を持っています。
エレメンツの限定品シリーズ第1弾「フォーコ」は当店が創業した年に発売されましたが、当店に女性のお客様が来られるきっかけになったものだと断定できるほど、フォーコを購入された女性が多かった。

エレメントシリーズではないけれど、これもミニペンの「ルナ」など、女性をターゲットとしてかなり意識しています。
6月頃発売予定のマーレシリーズ最終品マーレアドリアは、透明感のある水色で、これも女性の方に人気が出そうです。

入荷したばかりの限定品シーザー(ガイウス・ユリウス・カエサル)もご紹介します。
入荷本数が少なく、ご紹介するべきか迷いましたが、ボディ素材のレジンの色、細部の装飾など、作り込まれた感じのする逸品で、ぜひご覧いただきたいと思いました。
ベースは、85周年レッドやマーレシリーズのアウロラが自信を持っているボディで、デザインのまとまりと実用性を高い次元で両立した、とても優れた限定品だと思っています。
アウロラとペリカンが今年は活発で、アウロラは前述の2つの限定品の他に、すでに大陸シリーズオセアニアを発売中ですし、ペリカンにもいくつかお知らせしたいものがあります。
少量しか入荷せず、ご予約で完売してしまったM200カフェクリーム、定番品だけどまだまだ供給が安定しておらず、当店でもバックオーダーを抱えている状態のM805ブラックストライプなどはすでに知られているところです。

今後も6月にM805デモンストレーターの刻印なし、12月にはM805デモンストレーターの刻印ありモデルが発売される予定です。
刻印というのは、ボディ内部が透けて見えることを利用して、内部機構のパーツ名をボディに記したもので、標本的な面白さを表現しています。
アウロラテッラ、アウロラシーザー、アウロラオセアニア、ペリカンM805ブラックストライプなどすでに発売されているもので販売終了していないものは、もちろんお買い求めいただくことができますし、ペリカンM805デモンストレーター刻印なし、刻印ありなどの今後発売のものもご予約を承っております。

メール(penandmessage@goo.jp)にてお問い合わせ下さい。


手帳の風景としてのインク

手帳の風景としてのインク
手帳の風景としてのインク

きっとカメラやレンズもそうですが、万年筆選びに正解と終わりがないように、インクもなかなか自分の色を決められずにいる人は多いのではないでしょうか。
自分はこの色でいこうと決めたはずなのに人が使っている色を見て、それが気になってしまう。
あの色を使ったら自分の文字はどう変わるのだろう、手帳やノートの風景はどのようになるだろうと思うと、ぜひ試してみたいと思ってしまいます。
私の場合、インクの色が気になるのは手帳やノートの風景が変わるということと、もっと自分の頭がクリエイティブになるかもしれないという自分への作用への期待からです。

昨年末から冬の間中、南米パタゴニア地方の南端ティエラ・デル・フエゴをイメージしたエルバンのインクを使いました。
少し赤みがかった茶色で、今まで自分のインクの色として考えたことのなかった色だったけれど、憧れている土地の名前のインクということで、無条件に使ってみたいと思いました。
インクは万年筆を滑らかに書かせるための潤滑油くらいにしか見ていなくて、その色について全く興味を持たなかった私を血の色が緑と揶揄する人もいましたが、ティエラ・デル・フエゴは心動かされたインクでした。

そして、最近は季節によって使い分けてみようかなどとも思い始めていて、それは当店のオリジナルインクが意識していたものでした。冬枯れは冬を、朱漆は春を、朔は夏の夜を、山野草は秋をイメージしています。
その他のWRITING LAB.オリジナルインクも、クアドリフォリオは春、オールドバーガンディは冬の色だと私は思っています。
季節と関係がないけれど、Cigarのインクは、少し退廃的なオールドスタイルな男性っぽさを表現したインクです。
最近、書いたばかりの時は緑色で、乾くと黄色っぽく枯れたような色になるCigarのインクが海外でも話題になって、異常なくらいよく売れています。

話を元に戻すと、これからの季節らしいインクの色を何か使ってみたいと思い始めて、夏らしい、自分らしい色についていろいろ考えています。
あまりアウトドアでの活動をしない生活ですが、外の世界の季節感をインクの色に取り入れたい、昔の人が自然の事象に趣きを感じて、風流にそれらを取り入れたように、わずかに感じる季節感をインクの色で遊びたいといろいろしているうちに、山野草を手帳に使いたいとほぼ決まりました。
今年は特に長く感じた寒い季節がやっと終わり、気持ちも服装も、靴も変わる温かい季節に、インクも変えてみてはいかがでしょうか。

⇒Pen and message. オリジナルインク山野草
⇒インクTOPへcbid=2552140⇒インクTOPへcsid=0″ target=”_blank”>⇒インクTOPへ

文集雑記から2「一番愛用している万年筆」

文集雑記から2「一番愛用している万年筆」
文集雑記から2「一番愛用している万年筆」

雰囲気のあるステーショナリーを使いたいと思っています。
それはステーショナリーに限らず、自分が使うモノ全てに対して思っていることですが、そういうモノを持つことで、自分自身も雰囲気の良い大人になりたいと思うからです。

少し前になりますが、お客様からの愛用している万年筆に関する文章をご寄稿いただいた、「文集雑記から2~一番愛用している万年筆」を発売していますが、そこに書いたいつも使っているペリカンM450は、私にとってそういうモノのひとつです。
それが証拠に、私がM450を使うのは電車の中やカフェなどの人目があると思うところで、誰も自分を、自分のペンなど見ていないと思いながらも、良い雰囲気に見られたいという邪心が表れていたりする。
文集の中では、その太字のペン先による書き味の良さを褒め称えているけれど、そのペンが自分を実際よりも良く見せてくれるような錯覚を起こさせてくれる雰囲気を持っているところも気に入っています。

今ではそういった邪心もありますが、もともとはただ書くことが好きで、それは万年筆を知る前からでした。
ボールペンしか使っていなかった時でも書くことは私にはとても楽しい作業で、万年筆の味を知って、書くことがさらに濃厚な楽しみのある遊びになっていきました。
その辺りのことを他の人はどうだったのだろうと知りたくて募集していたのが、文集雑記から第1号「はじめての万年筆」でした。
後から読み返して、もっと上手く書けたのにとか、もっと面白い話ができたのにと思っても活字になったものは修正が利かない。
後から修正できるデジタルなものとは違う緊張感がそれにはあって、それもこういったものの良いところだと思いました。

第2号の「一番愛用している万年筆」は、持っているもの全て愛用していること、どれか1本に決めることが難しいことは、自分がそうなので充分に承知していましたが、それでも1本を決めて、1本の万年筆についてその想いを書いて欲しいと思いました。
それはきっととても楽しい事だと思ったので、皆様と一緒にしたかった。
それぞれの方の文章を何度も読み返して、ここに語られている全ての万年筆に私も愛着を感じましたし、その文章にも愛着を持っています。

これは皆様の力をお借りした、当店のオリジナル商品だと思っています。
ちなみにこの文集の順番は、万年筆順になっていて、イタリア製、ドイツ製、日本製と進みながら、同じ万年筆・同じメーカーがあればそれらをかためていて、それぞれを比べながら読み進める楽しさもあると思います。

〇ご注意〇
*文集は印刷代の一部を実費でいただいております。そのためクレジットカード・代引き配送などはお使いいただけませんのでご了承ください。
他の商品と同時にご注文の場合のみ、お使いいただけます。

*文集はヤマト運輸DM便でも発送させていただきます。お手数ですがメールでご連絡下さい。

⇒文集「雑記から」1・2(Pen and message.オリジナル商品トップへgid=2136280″ target=”_blank”>⇒文集「雑記から」1・2(Pen and message.オリジナル商品トップへ

パーフェクトなペンシルエクステンダー楔

パーフェクトなペンシルエクステンダー楔
パーフェクトなペンシルエクステンダー楔

金具を作ってくれていた職人さんが高齢のため引退され、作れなくなっていた工房楔のペンシルエクステンダーが新たな職人さんを見つけたことで久々に出来上がり、先日のイベントに姿を見せました。

工房楔のペンシルエクステンダーは、パイロットカスタムヘリテイジ912、カスタム742の首軸から先のペン先を収めることができる当店オリジナル万年筆銘木軸こしらえとともに、楔の商品の中でもオリジナリティがあり、デザイン・機能性を兼ね備えたものだと思っていましたので、それが作れなくなったと聞いた時はあまりにも惜しいと思っていました。

エクステンダーには、スタンダードなフォルムの「エクステンダー楔」と、「トゥラフォーロ」の2種類があります。
スタンダードな「エクステンダー楔」は短くなった鉛筆を使うための鉛筆補助軸ですが、「トゥラフォーロ」は長い鉛筆もそのまま収めることができます。
どちらも軽くて細い鉛筆を万年筆のように楽に持って、軸の重みで書くことができる、違う意味での鉛筆補助軸だと言える。
金具はどちらも真鍮の特製金具を使っていて、鉛筆を固定するグリップ部の滑らかな動きは真鍮の金具ならではです。
黒柿、ハカランダ、島桑、ハワイアンコアなど希少と言われる素材を、工房楔の永田さんは今回も多く使用していますが、その中でも特に良いものを選ぶ眼は素晴らしいと思っています。
希少な良い素材ほど1本1本にあった加工の仕方があって、そういうものは大量生産ではとても扱いきれないものなのだと改めて思いました。

手触りのザラザラしたものは、その感触を残して仕上げ、硬い木はスベスベした木肌の特長を生かして仕上げてあります。
それはとても洗練された感覚による仕事の仕方だと思っていて、永田氏の意外(?)な一面だといつも思います。
工房楔のエクステンダーは真鍮金具の重みや、木軸の太さから、鉛筆を豪快に使う役に立っていて、私などはあまり鉛筆を使うことはありませんが、鉛筆も見直したいと思う、このエクステンダーを使いたいがために、鉛筆を使おうと思ってしまいます。

ファーバーカステルのパーフェクトペンシルは、書く、消す、削る全てを備えた鉛筆で、パーフェクトの名に恥じないものになっていますが、工房楔のペンシルエクステンダーもまた、銘木の素材感、鉛筆を補助してくれる使用感、作り込まれたオリジナリティ溢れるオンリーワンのものを持つ所有感などを満たしてくれるパーフェクトなものだと、鉛筆を愛用されている方にお勧めすることができるし、これをきっかけに鉛筆も使ってみていただきたいと思わせてくれるものです。

*画像のトゥラフォーロは島桑です

⇒工房楔 ペンシル・エクステンダーTOP

華やかな筆記を支える存在・吸取紙

華やかな筆記を支える存在・吸取紙
華やかな筆記を支える存在・吸取紙

万年筆で書いた後、インクが乾くまで待ってから手帳を閉じる余裕があればいいけれど、そういう時ばかりではなく、反対のページにインクが付いてしまうことはよくあります。
私は最近1日1ページのシステム手帳のリフィルを使うようになって、その日のこと、お客様とのやり取りや電話のメモまで何でもそこに書いています。
インクが付く事は今まで気にしていなかったけれど、サッと書いてすぐ手帳を閉じることが殆どなので、吸取紙を挟むようになりました。
B6サイズの「WRITING LAB.吸取紙」は手帳に挟むのにちょうどいいサイズで、手帳に合わせてちょっとカットすればいい。
こうすると劇的にページがきれいになったので、他の手帳にも挟んでいます。

吸取紙は手紙でも重宝していて、私は縦書きの便箋に書くことが多く、どうしても乾きの遅いインクと紙の組み合わせだと書いたばかりの文字を右手がこすってしまう。
試しに使ってみると吸取紙の効果は絶大で、とても便利です。
大きめのノートには大和出版印刷が発売したばかりのA5サイズの「SUITOブロッティングペーパー」があります。

アウロラのリザーブタンク付きピストン吸入機構は、筆記中にインクタンク内のインクが切れても、ピストンを一度降ろすとA4サイズ数枚書くことができるインクが補充されるというものです。
これは筆記中の思考がインク吸入により中断されることを防ぐ、使う人の立場に立った機構だと思いますが、インク吸入はそれほど注意が必要な作業であることを物語っています。

尻軸を回してインクを入れるまではいいとして、ペン先をティシュペーパーで拭き取ると、そのティシュを通して、手がインクで汚れてしまうことは結構あります。
こんな時のために、大和出版印刷がインクを吸入した後のペン先拭うための紙「SUITOクリーニングペーパー」を開発しました。
SUITOは吸取紙で出来ていて、そのすごいところは、その巨力な吸水性により吸い取ったインクを他所につけず、手が汚れにくいところにあります。
この「SUITOクリーニングペーパー」を手帳に挟んでおくと書いたばかりのページも安心して閉じることができるし、いざ吸入となったときにもティッシュペーパーを探さなくても済み、そして何よりスマートにインクを吸入することができます。

吸取紙を使うものとして、工房楔もを製作しています。
大きな銘木の塊はとても存在感があるし、握りの部分が大きめに作られているのがいい。吸い取る用事がなくても握っていたくなります。
吸取紙というと万年筆という筆記において最も華やかな存在の影に隠れた裏方のように思えますが、なくてはならないものだと思っています。

信じられるブランド~AURORA

信じられるブランド~AURORA
信じられるブランド~AURORA

先日参加したカランダッシュのセミナーで、首都圏での筆記具ブランド売れ行きランキングというのを聞きました。
上位を占めるのはモンブラン、パーカー、ウォーターマン、ペリカン、カランダッシュなどで、それは10年、あるいはそれ以上前から変わっていないと思いました。
私は店に来られる業界の関係者の方に売れ筋を聞かれた時には、いつもペリカンとアウロラと言っています。
関西と首都圏のお店とはかなり様相が違っているし、当店がボールペンではなく万年筆を中心に品揃えしていることも大きく影響していますし、私自身の好みもあると思います。
その中で、ペリカンが売れるということには多くの方が納得されるけれど、アウロラが売れていると言うと不思議そうな顔をする人が結構おられて、それも10年ほど前と変わっていません。
お客様方にペリカンM400、M800などの超定番の万年筆を勧める時に「この万年筆はよく売れています」という言葉はあまり使いません。
なぜかというと、私は「売れている」と言われると引いてしまうのです。それは私が天邪鬼だからなのかもしれないけれど。

世界では売れ筋ランキングに入っていないけれど、自分だけの正解のようなものに出会えると、とても得したような嬉しい気分になります。
それが私にとってはアウロラだったというと、アウロラの関係者の方々に売れていないみたいだと怒られるだろうか。

万年筆をある程度持っている、特に男性からアウロラのペン先は硬いと敬遠されることがありますが、良いペン先は、使い始めるとその筆記によって劇的に書きやすく変化するものだと思っています。
スタートは同じでも、2年後の劇的な変化はアウロラの特徴とも言える。
アウロラの魅力はペン先に偏っているわけではなく、ボディのデザインにも言えます。
アウロラの美学を最も体現している代表作オプティマはもちろん、私が今も最も好きな万年筆だと思っている88クラシックにもその美学が宿っています。

美学というのは派手で大袈裟に喧伝するものではなく、静かに表現するものだと思うので、それに気付くとその魅力により一層魅せられる。
全く変わっていないように見えて、この15年ほどで万年筆は大きく変わったと思っています。
どのメーカーも時代の流れに乗ったり、惑わされたりして、それぞれの会社の有り方だけでなく、仕様やデザインも大きく変わりましたが、アウロラだけは大して変わることなく今に至っています。
私がアウロラを好むのはそういう時代に流されないということもあるのかもしれません。
たくさんの本があるのに、書店でいつも買ってしまい、一言一言に影響を受ける作家の本に似ていて、私はアウロラを信じているのだと思います。
信じているから売上ランキングに入っていなくてもお客様に勧めることができるし、自分でもいつも使っていたいと思っている。
でもこの信じられるということが、たくさんの情報が飛び交い、たくさんのモノが溢れている世界の中で自分が肩入れするものを見極める基準のひとつにしてもいいのではないかと思います。

長原宣義先生の訃報

長原宣義先生の訃報
長原宣義先生の訃報

セーラー万年筆の黄金時代の主役だった万年筆の神様長原宣義先生が亡くなったというニュースを旅先の香川県で聞きました。

長原先生は私がこの仕事をするきっかけになった人で、衝撃を受けるとともに、それだけの歳月が流れていて、自分たちの世代が万年筆の業界を背負っていかなければならなくなっていたのだと改めて思いました。
長原先生の万年筆クリニックでの姿を見て、人生の宝物を見つけたのは20年前でした。
お客様が持参された万年筆を受け取り、「これは書きにくかったでしょう」と優しく声を掛け、調整を始める。
少しグラインダーでペン先を研磨して、万年筆を「書いてみんしゃい」と返すと、どのお客様も別物のように書きやすくなったご自分の万年筆に驚かれ、とても感謝されて帰って行かれました。
ペン先調整の腕が良いのはもちろん、お客様とのやり取りは思いやりに溢れていて、その時の長原先生を見ることができたから、私は今こうして万年筆の仕事をしている。
竹軸の万年筆を作ってもらうために、呉の工場内にある先生の工房によくお邪魔していました。
まだ紐で束ねてある長いままの煤竹の中から、万年筆にしてもらうものを選ばせてもらい、この素材はこのペン先で作って下さいとひとつひとつ指定させてもらっていました。
「あんたが黒い竹、黒い竹と言うから、皆が黒い竹と言うようになってしまった」と笑いながら言われたことを覚えています。

当時、黒くて艶やかな煤竹が一番良いと思っていて、そればかりを使うように先生にお願いしていましたが、我ながら生意気だったと恥ずかしく思います。
私のような青二才の言うことに付き合ってくれて、間違っていることは正してくれて、多くのことを教わりました。

万年筆クリニックやお客様との交流から、常に新しい万年筆を生み出す姿勢を目の当たりにして、仕事のヒントはいつもお客様から与えられるとをいつも言っておられ、お客様の言われること、言われなくても思っておられることにアンテナを張っておくことが大切だと知りました。
それは先生から教わったことの中でも一番大切な、今も持ち続けている教えのひとつです。

ペン先調整は長原先生から直接レクチャーされたわけではありませんでしたが、かなりの時間を横にいて先生のしなやかに動く手元を見つめることが出来たことが今になって生きているし、当時言われていたことが、最近になって理解できたりしています。
グラインダーにペン先を当てながら、長原先生ならどうやるだろうといつも思っているし、書くために必要のない部分も美しく仕上げることが美学だと言われていたことを私も実践していきたいと思っています。

あまりに偉大な先輩、長原宣義先生のご冥福をお祈りいたします。

どこに持って行っても恥ずかしくないもの~3月28日(土)29日(日)工房楔イベントのご案内~

どこに持って行っても恥ずかしくないもの~3月28日(土)29日(日)工房楔イベントのご案内~
どこに持って行っても恥ずかしくないもの~3月28日(土)29日(日)工房楔イベントのご案内~

ペン先調整をする時、持ち主の人が書きやすいようにすることが一番の目標ですが、それと同時にその方がどこに持って行っても恥ずかしくないものにしたいということをいつも考えています。
例えばその万年筆を誰かほかの人に書いてもらった時、こんなに書きやすい万年筆は初めてだと思ってもらえたら、持ち主の方は気分が良いと思います。
またその万年筆をペン先調整ができる人がルーペで見た時に、これは美しい形のペンポイントだと思ってもらえることもいつも意識していて、それが私が調整した万年筆をその人がどこに持って行っても恥ずかしくないということで、そういうことも重要だと思っています。

それと同じようなことが、銘木の製品にも言えると思っています。
銘木のもの、例えば黒柿だとしたら、同じ黒柿と言って様々なグレードのものがあります。
きれいに孔雀杢が出たような文句のつけようがないものもあれば、これを黒柿と言っていいのかと思えるものもあって、それは銘木の造詣の深い人なら一目で分かります。
工房楔の銘木作品はまさにどこに持って行っても恥ずかしくないものだと思っています。
実は私も工房楔の永田さんの作品を扱い出したばかりの頃は、その辺りの目が全く肥えていませんでした。
黒柿は黒柿、花梨は花梨で、その名がついていれば同じだと思っていました。
でもお客様方に工房楔の素材や加工のクオリティの高さを教えられ、自分でもその違いを感じられるようになりました。

木について言葉で伝えるのは本当に難しいけれど、良いもの、グレード高いものは、艶やかで、生命力が感じられる。
工房楔で扱う材はどれも永田氏が厳選した、どこに持って行っても恥ずかしくものが使われています。
永田さんはいつも素材で妥協したら工房楔ではないと言っていて、それがお客様方に周知されている。
年2回を恒例としています工房楔のイベントを3月28日(土)29日(日)に開催いたします。

今回は伊勢神宮杉、島桑などの目玉もありますし、しばらく作ることができなかったペンシルエクステンダーで長い鉛筆のまま使うことができるトゥラフォーロも真鍮金具で製作されています。
パイロットカスタム742、カスタムヘリテイジ912などの首軸を装着できる万年筆用ボディ「こしらえ」もまとめて出来上がります。

ある程度楔作品をお持ちの方はこれだと思うものを逃さず手に入れてもらいたいと思いますが、初めて何か手に入れたいと思っている方は、まず模様がそれぞれ個性的で見所が多い花梨が、永田さんの代表的な材だと思いますので花梨で、ご自分の用途に合うものを選ばれたらいいと思います。
銘木を嗜むという、当店と工房楔の遊びにぜひ参加していただきたいと思っています。