美学を表現するペンケース

美学を表現するペンケース
美学を表現するペンケース

昨年末からオマスパラゴンの万年筆を使っていて、大変気に入っています。
4年前にオマス本社を訪ねた時、CEOのブライアン・リー氏がパラゴンは、モンブラン149をライバルとしていると言っていました。
その言葉から、オマスのモンブランへの強いライバル心を感じ、それを私は好意的に聞いていました。
世界を二分しているグループLVMH傘下の万年筆メーカーとして、リシュモングループの一員であるモンブランに対抗意識を持っているというつまらない理由ではなく、伝説的な万年筆149を唯一のライバルとする世界に誇ることができるものだという自信をその言葉から感じ取ったからです。

パラゴンを私の全ての用途、手帳から手紙、日常でも旅先でもぜひ使いたいと思いました。
元々大きなものが好きで、私にとって大きいというだけで敬意を持つべき存在に思えます。万年筆も大きなものの方が外観も、実用的にも気に入ることが多く、小さな万年筆に勝手な不満を感じている。
特に手紙を書く時など、小さな万年筆だとその重量などに不満を持つことが多く、大型の万年筆が自分の用途には合っていると思っています。
大きく、堂々とした万年筆は、大太刀をイメージさせ、大太刀は複数本入るペンケースでなく、それ1本だけを収めるペンケースに入れて持ち歩きたいと思っています。
オマスパラゴンも、モンブラン149も、ペリカンM1000もオーバーサイズと言える大型の万年筆なので、入らないペンケースもたくさんありますが、ル・ボナーの1本差しのペンケースには入れることができます。
大型の大切な万年筆を収納するものは、張りのあるブッテーロ革2枚重ね構造の強固なこのペンケース以外にないのではないかと思うようになりました。
強度やサイズだけでなく、その素材であるブッテーロ革のパリッとし過ぎない適度な素材感も好きだし、エージングも美しい素材だと思っています。
正確にはエージングとは少し違っていて、美しく仕上げることができるという感覚に近いものなのかもしれません。

新品の状態では光を吸収するようなマットな表面ですが、柔らかいブラシで丹念に磨くと表面がキラキラしてきます。
以前、ル・ボナーの松本さんがブログで、ブッテーロの鞄を磨いて、とても美しいものにしたお客様の話をされていました。
その方はハンカチで優しくさするように手入れするのを習慣にされていて、輝くようなものにその鞄を仕上げておられました。
革を磨くのに力は必要ないというような、革の手入れを覚えるのにもこのペンケースは適しています。

ル・ボナーの松本さんが、ブログでも明かしていますが、張りのあるブッテーロ革の絞り加工を担当している職人さんが高齢ということもあって、引退することが決まっているそうです。
松本さんはもちろん代わりにやってくれる人を探していますが、今のところまだ見つかっていないようです。

このペンケースは当店の創業と同じ頃に世に出て、とても思い入れがあります。
良いものに有りがちな触るのも恐いような繊細さのない、素材もデザインも骨太な感じがするこのペンケース。
ル・ボナーの松本さんの美学によって作られたものだけど、私にモノの美学を教えてくれたものでもあります。
存在して当然の、当店でも定番中の定番のペンケース、いつまでも存続してほしいと思っています。

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WRITING LAB. A4ファイルケース“Bond”とテクスチャーシリーズB6ノートカバー

WRITING LAB. A4ファイルケース“Bond”とテクスチャーシリーズB6ノートカバー
WRITING LAB. A4ファイルケース“Bond”とテクスチャーシリーズB6ノートカバー

B5サイズの革封筒を発売した時、何でA4がないの?と多くの人に言われました。
その時は当店オリジナル試筆紙や原稿用紙を入れて、恰好良く持ち歩くためのものが欲しいと自分たちが思ったので、あえてB5サイズでフタのないものを作りました。
それは私も愛用しているけれど、フタのないデメリットよりもフタのないことのメリットの方がより感じられ、とても使いやすいと思っていますし、何よりもあのザックリとした飾り気のなさがとても好きで気に入っています。

同じ印象でA4の封筒ができるのも時間の問題のような気がしていましたが、やはり作りました。
A4サイズのファイルや書類を収納することができて、ビジネスで使いやすいもの、でもビジネスライクにならない、自分たちが気に入っているナッパCB革の素材そのままの風合いが感じられるものを作りたいと思いました。
そういったイメージからこのファイルケースを企画した意図のようなものを“Bond(ボンド)”という名前で表現しました。

サマーオイルメモノートでもそうですが、WRITING LAB.のものは作り込み過ぎない、そのモノだけでなく、人がそれを使っている姿で完全になるようなものを心掛けていて、それはもしかしたらアパレル的な考え方であり、WRITING LAB.のメンバーの一人駒村氏の影響が強いのかもしれません。
駒村氏は雑貨などをセレクトショップに卸す会社の社長としてアパレル業界に10年もいるので、その辺りの感覚が鋭い。
文具業界に長くいる私たちでは実現しなかったようなものも、WRITING LAB.では形にしています。

WRITING LAB.の毎週土曜日の会議で生まれたもの、簡単なイラストや曖昧な言葉を受けて、ひとつのしっかり使えるものにしてくれているベラゴの牛尾氏のセンスと丁寧な仕事に今回も助けられています。
革をそのまま使うというイメージしか持っていなかったけれど、それだけでは美しい姿にはならない。
パリッとし過ぎず、でもしっかりとした質感を出すために底から前側は革を二重になっています。
細かく狂いの見られないステッチは、下手をするとだらしなくなってしまうこの手のものに緊張感を与えて、美しく仕上がっています。
鞄の中をスッキリと整理するバッグインバッグとして、これだけで持つクラッチバッグとして便利にお使いいただけます。
私たちの依頼を受けて、何も聞かずに(確かロゴを刻印する場所だけ聞かれた)これだけのものを形にしたことに、牛尾氏の職人としての包容力の高さのようなものを感じましたし、その仕事の姿勢に共感しました。

“Bond”と同じく牛尾氏の手によるB6ノートカバーテクスチャーシリーズの新色も完成しました。

持っている姿が一番カッコいいサイズはB6なのではないかというWRITING LAB.なりの考えで始まったB6ノートカバーの企画は、ひとつの色で、革質のみのバリエーションを作り、革質の違いで選んでもらうという趣向にしています。

前回のブラックに続き、今回はダークブラウンで2種類の革で製作しました。
自然なシボ感とオイル分を多く含んだ質感のナッパCBは、ル・ボナーさんやカンダミサコさんもよく使うミネルヴァボックス革で有名なイタリアのバタラッシィ社の革で、その質感やにおいが、私もとても気に入っています。
表面のロウが使い込むうちに革に浸透して艶を出すブライドルレザーはとても有名な革で、イギリス発祥で、馬具などにも使われた丈夫なハリのある革です。
今回から、ノートカバーも付属のジョッターもサイズを少し大きくして、より使いやすいものにしています。
B6ノートカバーはライフのノーブルノートのような厚手のものに対応しています。
ジョッターはA7サイズの紙に対応していて、WRITING LAB.のサマーオイルメモの紙を半分にして入れることができます。

BondもB6ノートカバーも、私自身完成を心待ちにしていた。この2つの商品を皆様にご覧いただけるのが、嬉しくて仕方ありません。
上記2つの商品は、京都山科のリバーメール(http://www.river-mail.com/)でも扱っています。

カンダミサコA5サイズノートカバー

カンダミサコA5サイズノートカバー
カンダミサコA5サイズノートカバー

雑誌「趣味の文具箱」に文章を載せていただくようになって、丸6年が経ちます。
ご来店されるお客様が趣味の文具箱の記事を読んで来ました、と言われることも多く、その影響力の強さをいつも感じて有難いことだと思っています。

次号の趣味の文具箱vol.29は3月3日の発売。万年筆とその関連品のことで、29号も続けてきたことに、編集部の方々の努力に頭が下がりますし、自分たちの好きなものをもっと掘り下げたいという情熱にいつも影響を受けています。
次号も参加させていただいていて、誰もが知っている「あの人」について書かせていただいています。

普段は小型の手帳やメモ帳を中心に使っていますが、趣味の文具箱の記事を書く時は、大和出版印刷のリスシオ紙を使った薄型A5ノートを1冊、毎回新しく用意しています。
そのノートは一話完結のような使い方をしていて、後ろのページが余ってもそのままにしておくのですが、最近はそれでも足りなくなってきました。
ノートに書く段階ではそれは下書きで、とりあえず思ったままひたすらに書いて、その中から文章を拾っていくようなやり方をしています。
それでも同じような内容が何度も出てきたりするので、書いたものの多くはそのノートに埋もれてしまうけれど。

本当は原稿用紙を使ったらいいと思うし、実際に使ってみたこともありますが何かしっくりこない。
A5サイズのノートに万年筆で書き殴るようなやり方が、私には今のところ一番合っていると思っています。
A5サイズは書く面の大きさと持ち歩きやすさのバランスがちょうどいい。
ブリーフケースのようなビジネスバッグに問題なく入れることができる最大の大きさだと思っていて、「ノートはA5」と思い込んでいます。

厚手のライフのノーブルノートのようなものが一番ピッタリと合いますが、カンダミサコさんのA5ノートカバーは、本気で書く時の気分の盛り上げてくれる素材の良さと工夫が込められたものだと思っています。
シュランケンカーフは、傷や汚れに強い素材ですが、使い込むと艶やかさを増すというエイジングも見せてくれます。
ノート差し込む部分の素材は張りのあるブッテーロ革で、背ギリギリまでの最大の大きさにしているので下敷きの役割もしてくれる。筆記面を平らに保ってくれます。

このA5ノートカバーは、カンダミサコ製品の中でも高級ラインに位置するもので、使っていくうちに他に一般的な革のノートカバーとの違いを実感できるものになっています。
カンダミサコさんは、もちろん高級ラインという言葉は使わないけれど、オーソドックスな形のものに素材を贅沢に使い、妥協のないキッチリとした仕事で仕上げることで、カンダミサコ流の高級感を表現している。

それがこのカンダミサコA5ノートカバーなのだと思っています。

ペンのシンプルなデザインについて考える

ペンのシンプルなデザインについて考える
ペンのシンプルなデザインについて考える

十数年前にある先輩ショップオーナーを訪ねたことがありました。
情熱に溢れた語れることの多い人で、5時間近くご自分の仕事や夢について語ってくれて、大変勉強になり、その言葉の中には私に影響を与えたものもあります。
規模はかなり違うし、雲の上の人だという距離は縮まっていないけれど、自分も同じような立場になって、よくその人のことを思い出します。
その人が言っていた、「万年筆も靴や服、鞄のようにデザインで選ばれてもいいのではないか、なぜ何十本も試し書きして選ぶ必要があるのか」という言葉がとても印象に残っていて、私もそういうふうに万年筆がなればいいと思っていました。
でも万年筆がデザインでなく、試し書きによって選ばれるのには実は理由があって、ペン先の状態が不安定だからに他ならない。
どの万年筆もインクを入れたら気持ち良く引っ掛かりなく書くことができることを約束してくれたら、書けるかどうか心配せずに安心してデザインで選ぶことができるのに。
私が万年筆の販売においてペン先調整は必要なスキルだと思ったのはその辺が理由で、その先輩の言葉がずっと自分の中に残っていたからだと思います。
気持ち良く書けるかどうかは店に並んでいる時点でクリアしているので、当店では好きなデザインのものを選んで欲しいと思っています。
実際はお客様のデザイン的な志向をお聞きして、それに沿うものを私がご提案することが多いかもしれません。

でもデザインの認識にズレがあることもあって面白く思います。
例えばシンプルなデザインのものが好みですとおっしゃられた時に、まず私たちはラミー2000のような何の飾りのないものをイメージして、お勧めするものがラミー一辺倒になったりします。
でもシンプルなデザインの意味は実はそうではなくて、デザインに凝っていない万年筆らしいデザインのものもそこに含まれることもあるようです。
ラミーももちろんシンプルだけど、それはシンプルなデザインに凝っていてある意味シンプルな存在ではない。
それよりも国産のパイロットカスタムヘリテイジのような万年筆がシンプルなのだと聞いて、私も納得できました。

私たちはそのクリップを見ただけで、もしかしたらボディエンドのラインを見ただけでどのメーカーのどの万年筆か言い当てることができるけれど、普通はパイロットカスタムヘリテイジを見ても、それがパイロットであることなど分からないと思います。
ラミーはもちろん、ペリカンやアウロラなどデザインに特徴があって一目でそれと分かるけれど、パイロットなど国産の万年筆のそれとは分からないところが、デザイン的にシンプルで、デザインとしてそれを選ぶ心が大人の選択ひとつだと考えると、国産の万年筆のデザインがとても魅力的に感じます。

国産の万年筆は書き味を重視した時に選択するものだと思い込んでいたけれど、このように考えるとデザインとして選ばれてもいいのだと思い、国産の万年筆を見直すようになりました。
その書き味や道具としての機能は一流である国産の万年筆のデザインも何か誇らしく思えるようになってきました。

⇒パイロット カスタムヘリテイジ912

包み込む ~残心A7メモカバー~

包み込む ~残心A7メモカバー~
包み込む ~残心A7メモカバー~

久し振りに六甲アイランドにル・ボナーさんを訪ねました。
用件はあるにはありましたが、それは別に会わなくても済むようなことでしたが、私としては理由をつけて松本さんの顔を見ておきたかった。
それほど長く会っていないわけではないけれど、年が変わったからそう思うのかと、自分で分析しています。

店が終ってからだったので、六甲アイランドに着いたのは8時になっていて、真っ暗で人通りも少ない。でもル・ボナーさんの灯りが見えて、何かホッとさせるような、そこに向かってしまうような気分になります。
いつも訪れる間隔が空いてしまうので、店内のレイアウトがいつもどこか変わっていて、いつも新鮮な感覚があります。
初めて訪れた時は今の半分の広さでしたが、今では隣の店も吸収してそのまた隣も倉庫として使っている。
寂れていく六甲アイランドセンター周辺の中でル・ボナーさんが周りのお店を吸収するほど元気なのは、松本さんがその仕事を楽しんで、様々なものを世に送り出しているからだと思います。
私もそれはお手本にしたいと思っていて、自分の仕事を目一杯楽しむということが、今年のテーマになっています。

昨年末から、一昨年に発売していた残心シリーズが復活しています。
残心シリーズはデザイン、作りともに今までの革小物の常識にとらわれていないものになっています。
シンプルで最小限の加工のそのシリーズは、松本さんが頭を切り換えて革製品のデザイナーとして考えたから生まれたのかもしれません。

全ての製品を自作するのではなく、協力してくれる工房に製作を依頼するやり方に切り変えることができたのは、松本さんの中にデザイナーとしての部分と、職人としての部分がバランス良く存在していたからではないかと思っています。
薄くした革はかえって柔らかさが出て、包み込むような製品の風合いに貢献している。
残心シリーズのA7メモカバーは当店も扱わなくてはならないものだと思っていましたので、ル・ボナーさんを訪ねた時に譲っていただきました。

発売してすぐ売り切れてしまいましたが、クリスペルカーフは光沢のあるとても滑らかな手触りの革で、スーツなどフォーマルな服装に特に合います。
黒桟革は柔らかい黒毛和牛に漆の粒を蒔いて傷に強くした丈夫な革。
シュランケンカーフは柔らかい手触りですが、傷に強く発色の美しい革で、それぞれ質感の好みや服装に合わせて選べるようになっています。

要があって使う大きなノートやダイアリーもいいけれど、思いついたこと、覚えておきたいことなどを一言書いておく。
なくても困らない小さなメモ帳は漫然と流されてしまう時間の過ごし方を変えてくれる。
大きめのフラップにピッタリ合う万年筆を選んで持ち歩きたいと思わせる、何とかつかいこなしたいと思わせるメモカバーです。

当店で扱っているA7サイズのノート・メモは問題なく入りますが、私は厚手のものを入れたいと思い、ダイゴー社のダイアリーE1008を余分なところを切って入れています。
4月始まりダイアリーも発売されていて、E1101というものもあります。
最近分った情報では、タナベ経営のブルーダイアリージュニアは表紙を外すとこのカバーにきれいに収まるようです。

⇒ル・ボナー革製品トップへgid=2125743″ target=”_blank”>⇒ル・ボナー革製品トップへ
⇒ライフ ノーブルノートA7
⇒コクヨ A7ノート(ミシン目入り)
⇒ル・ボナーの一日(ル・ボナー松本氏のA7手帳カバー紹介ブログ)

~万年筆の遊び~ 2つのペン収納具

~万年筆の遊び~ 2つのペン収納具
~万年筆の遊び~ 2つのペン収納具

万年筆で手帳にきれいに書けたり、手紙を書きながらその書き味にうっとりしたりするのも楽しくて、それも万年筆の良いところですが、それだけではもったいない。
そのデザインや存在を、そして複数の万年筆が集まった時の組み合わせも楽しみたい。
それぞれに何か共通点を持たせてより強い空気感を作ることが、揃えを楽しむことです。
それは万年筆を書き味以外に楽しむ、遊びのようなものかもしれません。
万年筆は、大した遊びらしい遊びを知らない私にとって、大切な仕事道具でもあるし、遊び道具でもあります。

万年筆の遊びをさらに演出してくれるものに出会いました。
WRITING LAB.にペンケースSOLOなどの革小物を提供してくれていて、オーダー靴の製作もしているイル・クアドリフォリオさんの工房の階段の手すりなどが、意匠が凝らしてあって、とても面白いと思っていました。
イル・クアドリフォリオの久内さんの友人の家具職人加藤亘さんが製作したとのことで、加藤さんは、オーダー靴には欠かせない木型も作っているとのこと。

加藤さんが作った試験管立てをイメージしたペンケースSOLOの展示台もあって、それらに遊び心のようなものを感じていましたので、ペンケースSOLOの展示台をベースとしたペンスタンドを作ってもらいました。

WRITING LAB.のメンバーと加藤さんとで昨年末から打ち合わせを重ねて、2つのペンスタンドが出来上がりました。
ペンカウンターはその名の通り、バーのカウンターの様に横一列に3本のペンが並ぶもの。
ペンテーブルはサークル状に5本のペンを立てることができるようになっています。
このペンスタンドにそれぞれのペンを並べる時に、色を合わせたり、冬は温かみのある木軸にしたり、夏は鮮やかな色のものにしたりして、季節感なども取り入れたりしたら、机上の装飾としても面白い存在になると思います。

かなりこだわって、ペン通しのサイズ、高さ、細部の磨きなどの仕上げなど注文をつけましたが、加藤さんもそれに充分応えてくれて出来上がりました。
素材はウォールナットを使用していて、仕上げに軽くオイルを馴染ませています。

手作業で丁寧に仕上げられているため、受注生産で納期が3週間ほどかかりますが、ぜひ私たちのペンの遊びにお付き合いいただきたいと思います。

同じタイミングで、長く品切れしていました工房楔のウォールナットのトレイも完成しました。
こちらは既に多くのお客様にお使いいただいているもので、永田氏の安定感のある仕事振りが感じられるしっかりしたものです。
オーソドックスなスタッキング可能なトレイで、それぞれの層をチーム分けして収納したい。
意匠に凝っているわけではないけれど、とてもサマになっている。
たくさんあるコレクションを、楔のトレイに収納しておいてもいいし、飾る場合はアクリルの窓のついたフタを使うとペンを見せることもできます。

家具職人のアイデアが生きるペンスタンドと、実力派木工家のしっかりとしたペン収納具。どちらも万年筆の遊びを演出してくれる、あると楽しいものだと思います。

⇒ペンスタンド「ペンテーブル」
⇒ペンスタンド「ペンカウンター」
⇒工房楔・机上用品TOPcbid=2557546⇒工房楔・机上用品TOPcsid=5″ target=”_blank”>⇒工房楔・机上用品TOP

「手帳の風景展」作品の募集

「手帳の風景展」作品の募集
「手帳の風景展」作品の募集

年が変わったので、リスシオダイアリーのカバーをシングルに代えて使っています。
年をまたぐ直前、12月の初め頃からは2013年と2014年の両方とものダイアリー持ち歩く必要がありますので、ダブルのカバーに2年分のマンスリーダイアリーとウィークリーダイアリー入れていました。
翌年の予定が入ることもあるし、新たな年が始まるまでに方針やスケジュールなどについて考えておきたいと思っていましたので、とにかく2年分のダイアリーは持ち歩きたかった。

2014年のダイアリーを持ち歩いたおかげかどうか分からないけれど、今年は今まで以上にスケジュールについて考えることができたと思っています。
ダブルのダイアリーカバーは3年前に作ってもらったクリスペルカーフのもの。
サラッとした手触りと、作り込まれた感のある厳かな革の質感にダブルという厚さも加わり、良いもののオーラを放っています。

今年から使い始めたシングルのカバーはシュランケンカーフのブラックに茶色のステッチで内側ブッテーロのチョコ色のものにしました。
若さはないけれど、男っぽい感じがする色の組み合わせだと思っていて、とても気に入っています。
クリスペルカーフの質感も好きだけど、シュランケンカーフの柔らかな手触りは心地良く、そのくせ傷がつきにくく、扱いやすいすごい革だと思っています。

使い込むとこのフワフワ感は薄れ、光沢が出てきます。
中身のウィークリーダイアリーとマンスリーダイアリーの組み合わせは一昨年から固定されて、何不自由なく使っている。
たまに他のものを使いたい衝動にかられるけれど、これに代わるものはないと分かっているので、他のものに代えることはなくなりました。

私のリスシオワンダイアリーの使い方は、スケジュール用のマンスリー、ToDo用のウィークリーというように決まっているけれど、きっと他の人はまた違う使い方をしているはず、いろんな使い方があるはずだと思っています。
皆がリスシオワンダイアリーを使っていれば、それはそれは素晴らしいことだけど、他のダイアリーを使っている人も、それをどのように使っているか見てみたい。
ダイアリーでなくても、ノート、手帳をどのように使われているか見てみたいと思っていました。
そこで、私の楽しみにかなり偏っているけれど「手帳の風景展」を開催したいと思います。

使われている手帳の中身やそれを書いているペンを撮った写真を写真展形式で、当店にて展示します。
展示終了後には、作品をまとめて冊子にできたらと考えています。

展示期間は、5月10日(土)~6月8日(日)、作品募集の締切りは4月29日(火)です。
手帳とペンなどの道具をお持ちいただきましたら、その場で撮影してすぐお返しさせていただきます(日曜日は除く)。
ご来店は難しいけれどご参加いただける方は、当店宛にメールの添付で写真をお送りください。

不明な点は、電話078-360-1933あるいはメール penandmessage@goo.jpにてお問い合わせください。
多数のご参加お待ちしております。

小さなノートと小さな万年筆のプレゼント

小さなノートと小さな万年筆のプレゼント
小さなノートと小さな万年筆のプレゼント

靴をプレゼントするとその相手がその靴を履いて逃げるという迷信を私は信じていて、靴をプレゼントすることはないし、もらったこともありません。
若い頃、彼女からワークブーツを贈ってもらった後にすぐに別れたことが迷信を本気で信じる経験になっているけれど、靴をプレゼントするというのは、サイズ、足の形、好みなど様々な要素があるものを贈るのはそれだけ難しいということなのかもしれません。

でもペンは個人に合わせたサイズなど存在しないので贈りやすい。
ペンというのは何本あっても邪魔になるものではなく、絶対に使わないということはないのではないかと思います。
万年筆店をしているから思うのかもしれませんが、何かの時にペンを贈るというのは特別な意味のようなものがあって、良い贈り物です。
ペンを贈る心には親愛の情のようなものが込められていて、ペンを贈られた人は、そのペンを使うたびに贈ってくれた人のことを思い出すだろう。
それは男性同士の友情の証にもなって、例えば別れのときにお互い大切にしていたペンを交換し合う。
余程の仲でないとそんなことはできないけれど。

バレンタインデーが近づいているので、こんなことを書くのですが、万年筆を使っていて詳しい人にあえてペンを贈ることに臆しないで欲しいと思います。
そこにこうやって使って欲しいというメッセージのようなものが込められていれば素晴らしい。
私は休みの日専用の小さな手帳を持ち歩いていて、そこに行動記録をその都度書いています。
何時から何時、どこにいて、何をしていたかを箇条書きに、客観的事実だけを淡々と書いていくのだけど、もっと早くからやっておいたらよかったと思いました。
それが記録として何かの役に立つような気がしませんが、休みの日一日の意識が今までと全く違います。

場所を移動したり、何か違うことをするたびに時計を見て書き入れるだけ。歩きながらでも書くことができます。
今まで、もう一日が終ってしまったと漫然と休みの日を過ごしていましたが、時間の経過にいちいち意識あって、何か時間に流されていないような、時間を自分の意思で泳いでいるような感覚になりました。
こういう自分の経験から、奥様から旦那さんへのバレンタインデーのプレゼントとして提案したいのは、休みの日も仕事の時と同じように気を入れて過ごしてもらうための、小さなノートと小さな万年筆です。

小さなノート(A7サイズ)にはカンダミサコさんの革のカバーをつけることができて、それならより愛着を持つことができる仕様になります。
そんなノートに似合うのは、やはり小振りな万年筆。
パイロットレグノ89Sなどはキャップがパッチンと閉める勘合式で、さっと外して、ちょっと書き込んで、パチンと仕舞うことができる。
14金のペン先は書き味が良く、柔らかく気持ちは小さな万年筆といって侮れないものがあります。
木のボディは使っていくうちに艶が出てくるので、これもまた愛着が湧く仕様です。

普段の何でもない休日をより輝きのあるものにするのは、本当は大したことではなくて、小さなノートと万年筆で充分でした。
きっと旦那さんに感謝されて、ホワイトデーには何倍にもなって返ってくるかもしれませんが、それは保証できません。

⇒パイロット レグノ89S

純銀製羽根ペンクリップ再製作完成

純銀製羽根ペンクリップ再製作完成
純銀製羽根ペンクリップ再製作完成

20代前半の頃、スズキのジムニーという軽自動車の四輪駆動車に乗っていました。
たまには林道などの未舗装の道を走ったりして、それはとても楽しかったけれど、ほとんど街中の道を走っていました。
極限の悪路をその車で踏破することなどなかったけれど、メーカー以外からも売られている様々な装備をお金を貯めては自分で付けていました。

実用と関係なくてもいい、自分のオリジナリティの仕様に車がグレードアップしていくのがとても楽しくて、バイト代は車のローンとガソリン代とパーツ代に消えていました。
今もお金があれば自分の好きなものを買ってしまって、貯金する習慣は今もついていないけれど、今それは関係ありません。

私は若い頃に乗っていたジムニーが最も楽しい車だと思っているけれど、それは様々な装備によって、自分仕様に仕立てることができたからだと思っていて、万年筆にもそんな楽しみがあっていいと思いました。

書く機能に何の関係もなくてもいい、自分が愛用する万年筆が自分仕様になってくれればと、思う人は多いのではないでしょうか?
万年筆は書く道具であるけれど、私にとっては同時に遊び道具でもあるので、ジムニーのような楽しみがあっていいと思います。
万年筆の装備と言っても、それほど手を加えることができる部分は多くなく、ネジパーツで外すことができるペリカンのクリップは遊べるパーツのひとつだと、目をつけていました。

ペリカンM800、M600いつけることができる、当店のマークでもある羽根ペンをモチーフにしたクリップを作りました。
前述したように機能的には、何ら変わりはありませんが、ペリカンがデルタのようなインパクトのある外観に変わりますので、そのカスタマイズを楽しんでいただけると思います。

羽根ペンクリップは、スターリングシルバーで、光沢仕上げといぶし仕上げがの2種類があります。

ボローニヤの思い出

ボローニヤの思い出
ボローニヤの思い出

ル・ボナーの松本さん、分度器ドットコムの谷本さんとドイツ、チェコ、イタリアを巡る旅をしたのは今も鮮明に覚えているけれど、もうずっと昔のように思えます。
その懐かしい旅行を思い出すことができる物のひとつが、オマスアルテイタリアーナミロードハイテクの万年筆です。
イタリアボローニヤの万年筆メーカーオマスを訪れた時に記念でいただいたもので、3人が同じものを持っています。
その旅で訪れた街々の中でもボローニヤは特別に楽しかった街のひとつでしたし、オマスでも温かい歓迎を受けましたので、ボローニヤにはとても良い印象を持っています。

改めて聞いたりはしないけれど、二人はこのミロード万年筆を使っているのだろうか。
日本のメーカーを訪れたことは過去にあったけれど、海外の万年筆メーカーの本社を訪れることなどそうそう経験できることではないので、オマスは私たちにとって特別な存在であり続けています。
なるべくならオマスの万年筆を使いたいと思うし、オマスの万年筆を使った感想を、良いところも欠点も他の人と共有したいと思っています。

いただいたミロードはいつも手紙用に使っていて、他のメーカーとは違う独特の使用感を味わっています。
ボディの装飾は皆無、唯一外見上の特徴はボディが12角形になっているというだけですが、それが充分個性になっていて、この抑えたデザインの良さがゆっくりと分かってきました。

書き味と書ける文字にも特徴があって、オマスの味を持っている。
使い始めた時、その良さにピンとこなくても時間が経つほどに好きになっていくものというのは私は多くて、ミロードもそんな万年筆でした。
持っていることを自慢できるような希少な万年筆よりも、自分が使ってみてその感想を多くの人と共有できる定番品の万年筆をいつも使いたいと思うのは、万年筆店の店主としても当然のことなのかもしれません。

2013年の記念として、そして新たな万年筆人生、物書き人としての人生の新たな局面を願ってアルテイタリアーナパラゴン万年筆を使い始めました。
大きな万年筆を手帳から手紙まで全てに使いたいと思いましたので、EFのペン先にし、色はやはり黒ボディに金金具。
オマスはマザーオブパールマルーンという革と相性の良さそうな色もありますが、自分の万年筆の定番の色を選んでしまいました。

キャップをつけるとそこそこの重量があって書き味も良くなり、寝かせて書く手紙のような用途にはいいですが、ダイアリーに書く時はそれほど寝かせて書かず、キャップをつけずに書いています。
ミロードとは違い、首軸が金張りの金属になっていて、大きなボディとバランスをとるために重量を先の方で稼いでいるようです。

金張りの首軸は、指にピッタリと添って滑りにくい。
そして何よりもその存在感がいい。極太軸を手に乗せて書く感じは文豪になった気分を味わえます。
手に届くまでは、EFを選んだので細すぎて手紙や原稿用紙には辛いのではないかと心配していました。
でもペリカンロイヤルブルーで使っていますが、エボナイトのペン芯の恩恵もあって、インク出が豊かで全く問題ありません。
最初に少しペン先の寄りなどを修正して、イリジュウムの形を整えた程度で使い始めましたが、大変快適に使っています。

最初の目論見通り、手帳から手紙まで使っていて、他の万年筆をここ数日使ってあげられていないことが気掛かりです。