揃いを嗜む

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その分野では必ずその店を利用するという馴染の店を持つ人は幸せだと思います。
個人的には当店が万年筆を使う人みんなにとってそうなれたらと思いますが。
馴染みの店と同じように、この物なら必ずこの銘柄のこの商品と決まっている人も幸せだと思います。
それだけ自分の好みや持って生まれた体型などにピッタリ合うものに出会えたのですから。

私にもこの店で買うこの商品と決めているものがいくつかあって、そのひとつがシャツです。
一通りさ迷って落ち着いたのが、ブルックスブラザーズのオックスフォードシャツでした。インクが飛んでも目立たないジーンブルー色、そしてとても丈夫な生地が気に入っています。
別に西宮のその店で買う必要はなく、世界中で同じものを買うことができるのだけど、できた縁を大切にしたいと思うので行けば知ってくれているスタッフの人が必ずいるその店に行きます。

私にとってはピッタリ合ったシャツと同じくらいそれは大切に思えることなのです。
1週間毎日着ることができるように7枚は常備したいと思っています。
まだ1足しか持ってなく、揃えていないけれど、靴ではパラブーツのウイリアムがピッタリと足に合いとても気持ちいい履き心地。
天候を気にせずに履くことができるのも、自分相応なところです。
ウイリアムはこげ茶があるので、茶と黒があれば完璧だと思います。

ですがこうやって自分に合っていると思ったら同じものばかり欲しくなる気持ちは男性特有のものなのか、妻には理解されません。
シャツが毎日同じなら、「ずっと同じ服着ていると思われるやん」とのこと。

万年筆にもそういうことがあると思います。
私もそうですが、ペリカンM800が手に合うという人は多いかもしれません。
M800をインクの色に合わせて色違いで4色揃える。
手帳用にはブルーブラックのインクを入れて青縞のEF。ノート書き用はグリーンのインクで緑縞のF。手紙用は黒インクで黒軸のM。デモンストレーターやブルーオブルー、茶縞などの限定品がたまに発売されますので、そういうものに遊び用のカラーインクを入れてBにするなど。

気に入った同じ万年筆ばかり4本も持っているのはとても幸せな気分になると思います。
他の揃いの提案としては、アウロラ4部作ということも可能です。
オプティマのカラーバリエーションブラックパール、ブルー、グリーン、バーガンディと揃えることも可能ですし、次回オレンジが発売されるということになっているマーレリグリア、ティレニアと続いたイタリアの海シリーズ4部作を揃えることも楽しい。

今後発売していく当店オリジナル企画「こしらえ」も字幅違い、ボディの素材違いで揃えてもらえます。
これが万年筆を使う以上の嗜むということなのかな?と思っています。
揃いの万年筆を嗜むのに、工房楔のコンプロット4ミニ以上に相応しいものを他の知りません。
蓋を開けると4本の万年筆の姿全部を見ることができる。
外装の銘木も使い込み、磨き込むと艶などの味が出てくるものばかりです。

コンプロット4ミニにペリカンM800を4本入れて持ち歩く。日頃は隠しているけれど、分かってくれそうな人が現れるとおもむろに取り出して、フタを開ける。
これが大人の遊び心なのではないかと思っています。

*画像は当店スタッフの私物です(コンプロット4楓・M450・M600ピアッツアナボーナ・M600グランプラス・M800)

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技術継承されたパイロットのペン先バリエーション

技術継承されたパイロットのペン先バリエーション
技術継承されたパイロットのペン先バリエーション

パイロットのカスタムヘリテイジ912、カスタム742、カスタム743には他社にはない非常に多くのバリエーションが存在し、自分に合ったもの、好みに合うものを選ぶことができます。
私はこのパイロットのペン先バリエーションの多さにパイロットの技術を伝承する力を見ています。

万年筆が筆記具の中心的な役割をはたし、多くの人が使っていた時代には様々な需要が存在し、それに応えて様々な仕様のものが作られていました。
パイロットのペン先のバリエーションも昭和の時代の前半、戦前には確立されていたと言うと驚かれる方も多いと思います。
セーラーの長刀研ぎペン先もセーラー独自のものではなく、万年筆のペン先の研ぎ方としてユーザーや職人の間では知られたもので、万年筆興隆期にあった研ぎ方を現代に復刻させたものでした。
昔を知る長原宣義という名人を介して現代によみがえらせた、これもひとつの技術伝承の形だと思います。

パイロットは会社に保管されている貴重な資料の存在により、豊富なペン先バリエーションの復活がかなったのではないかと想像しています。
ボールペンが主流になって万年筆が廃れた後、また万年筆が見直された時にこういった資料が役に立って、誰も受け継いでいなかったはずの技術を再現できたのではないでしょうか。
しかしほとんどの人にとっては、バリエーションが多すぎて選ぶのが難しいのではないかと思いますので、ご案内させていただきたいと思います。
*通常の字幅EFからBBまでは、ここで説明すると長くなってしまいますので割愛させていただきます。

BBより太いペン先C(コース)というものがあります。
これは大きなイリジュウムの球をつけて、球の中心に筆記面をつける研ぎ方、ペン先の形です。縦横同じ太さの極太線を書くことができるのと、調整によってさらに太い線を書けるようにしたものです。
イリジュウムが最も大きいので万年筆の寿命が長いことも特長で、大切に使うと何世代も受け継ぐこともできるかもしれません。

MS(ミュージック)は縦線が太く、横線が細く書くことができるので、とても面白い文字を書くことができる、書いていて楽しいペン先です。
幅の広いペン先なので、イリジュウムの隅までインクが行き渡るように、切り割りが2本切ってある外観的な特長です。
ミュージックがどれくらい使いやすいかで、そのメーカーの技術力が分かるのではないかと思います。パイロットのものは滑らかに、違和感なく使うことができる優れたミュージックペン先だと言えます。
楽譜を書く人は右利きの場合、ペン先を90度親指側にひねって縦線を細く、横線を太く書くように使います。

PO(ポスティング)は万年筆全盛期、帳簿を書くために作られたペン先です。
極細のペン先を下にお辞儀させることで、ペン先が開きにくくして、インクの出が筆圧の影響を受けて増減しないように、安定して細い線を書くことができるようになっています。
帳簿はもちろん、手帳に細かい文字を書き込むのにとても適したペン先だと思います。

WA(ウェーバリー)はポスティングの逆で、ペン先を上に反らせることで、ペン先が開きやすく、柔らかい書き味にしています。SMなどソフトペン先は柔らか過ぎて、気持ち良く書くには扱いが難しいですが、WAはペン先の厚みなどは変わらないので安心感のある柔らかさが特長です。
パイロットの中字のペン先は柔らかく、書き味が良いですが、さらに気持ち良く書くことができる快感の書き味を持っています。

SU(スタブ)はミュージックの少しマイルドなものだと思っていただくといいと思います。
ミュージックほど太くないので、普通のノート書きにも使うことができます。
横線が細いので、意外と小さな文字を書くことができます。

以上、簡単でしたが、パイロットカスタムヘリテイジ912、パイロットカスタム742、743の難解なペン先バリエーションを読み解く参考にしていただければと思います。

⇒Pen and message.オリジナル銘木軸「こしらえ」cbid=2557546⇒Pen and message.オリジナル銘木軸「こしらえ」csid=1″ target=”_blank”>⇒Pen and message.オリジナル銘木軸「こしらえ」
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万年筆銘木軸「こしらえ」

万年筆銘木軸「こしらえ」
万年筆銘木軸「こしらえ」

もし本当にそうだったとしたら私は何度も斬られているかもしれないけれど・・・万年筆は私たちにとって、刀であって欲しいと真剣に思っています。
少なくとも私にとっては自分の精神を象徴するものであり、生活していくためのものであり、長く携えるものだと思っています。

万年筆を刀だと考えると、ペン先は一番大事な刀身で、それが貧弱なものだと長く使うのに値しないかもしれない。
とても書きやすいと思えて、自分の想いを気持ち良く紙に伝えてくれるペン先に出会うことができればそんな幸せなことはないし、それを持っていればそれは宝物だと思います。

パイロットの2万円クラスの万年筆のペン先は実用において完璧で宝物になり得るものだと思っています。
実用範囲内を逸脱することのない柔軟性と良い書き味を永続的に保つ硬いペンポイント。
充分なインク出を保つ、精密な設計と耐久性を持つペン芯。
そんなペン先=刀身は、それに見合った気持ちにさせるボディ=拵(こしらえ)に収めたいと思います。
パイロットカスタムヘリテイジ912やカスタム742の純正のボディは、バランスや握りやすさも考慮されていて実用には充分足りるものですが、そのペン先の性能から考えると若干味わいに欠け、アンバランスに感じてしまいます。
そういった当店の意向から工房楔の永田氏がそのペン先に見合った拵=ボディを当店オリジナルとして作ってくれました。

使われる素材はその時々にある最高のコンディションのものを使っていきたいと思っていますのでどんどん変わっていきますが、初回としてブラックウッド、ケンポナシ、チューリップウッド、マースルバーチで作ってみました。
ケンポナシは工房楔も初めて筆記具に使う材ですが、伝統工芸の指物では古くから使われる素材で、使い込むと飴色に変化するエージングを楽しむことができます。日本の木ということも拵の演出に合っている。

日本の木はあまり派手な木目を持たないので、工房楔の永田さんは余程のものでない限り使いませんが、ケンポナシのこの個体は杢が出ていて、かなりの良材だということで今回採用することになりました。
チューリップウッドも油分を多く含むのか、使い込むとピカピカの艶を持つようになりますし、滑らかな木肌が美しく、手触りが気持ちいいブラックウッドも同様です。
マースルバーチもエージングが期待できる明るい色目の木で、複雑な模様が個性的で見ているだけで飽きません。

個人的にはアウロラオプティマと88のペン先が同じなので、好みが変わったり、気分によって付け替えて楽しんでいました。
それと同じようにパイロットのペン先を使い込んでボディだけを変えていくことができればいいと思いました。
皆様も大切な刀身に見合った拵に付け替えてみてはいかがでしょうか。

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~使いたいと思わせる存在~ ファーバーカステルクラシックコレクション

~使いたいと思わせる存在~ ファーバーカステルクラシックコレクション
~使いたいと思わせる存在~ ファーバーカステルクラシックコレクション

私には何人かの先生と言える人がいて、その方々のおかげで自分の仕事を良くしてくることができたし、本道から反れずにいられたと思っています。
いい歳と言える歳なので少しは若い人の人生や仕事が良くなるような助言を語れるような人間になりたいと思いますが、先生たちの前に私の人生哲学など出る幕はなく、いまだに教えを受けるばかりの立場にいるのは、もしかしたら幸せなことなのかもしれません。

電話での先生の言葉によって私の中にかすかにあったものに裏付けが加えられることもありました。
でもまだ課題として積んだままにしていることもあって、まだまだ教えを受ける立場であることを自覚しています。
息子と写真を撮った時に特に感じることだけど、自分が老けたことを認めざるを得ない。
齢相応と言えばそうなのかもしれないけれど、その自分を見てこれは誰だろうと思うことがあります。
それだけ自分は若いつもりでいても外見からはそれなりに見えている。自覚と姿とのギャップは齢とともに開いていきます。
いつまでも若いつもりでいてはだめで、自分の外見に合った中身になっていたいと思います。

話を戻すと万年筆には様々なタイプのものがあって、その価値はペン先の柔らかさだけではないというのは、自分の中でくすぶっていたものでした。
やはり姿形が美しいもの、存在感のあるものを最上に考えたいと思えるようになったのは、万年筆だけでなく、様々なものに興味が飛ぶ性質の結果のなのかもしれませんし、様々な美しいものの形を教えてもらえたからなのかもしれません。

ファーバーカステルクラシックコレクションは私にとって間違いなく、美を体現している万年筆で、多くの人が同じように思っておられると想像できます。
扱いが難しくてもいいから持っていたいものと言うと語弊があるけれど、バランスが難しくてどのように持ったらいいのか分からない、キャップをつけるべきなのかどうか、などと戸惑うことが多いですが、デザインがとても良いと思うので何としてでも使いたいと思える。

私もクラシックコレクションエボニーを万年筆とボールペンのセットで使っています。
筆記具というせいぜい長さ150㎜、直径15㎜以内の小さな限られたスペースで、他とは似ていない特長を出しながら、美しいと思わせるということは本当に難しいことだと思いますが、そういったことにとても興味があります。
ファーバーカステルクラシックコレクションの造形は筆記具という枠の中でオリジナリティと美しさが高い次元で実現されています。
細身のボディとキャップの特長的な形によるシルエットの美しさ、スプリングを仕込んで布地を傷めないように配慮した無垢材によるクリップと無駄な装飾のなさ。
そして自然の素材によるボディの艶と色合い、触感の良さなど。

このデザインで、ファーバーカステルクラシックコレクションは筆記具の代表的な逸品と言えるのだと思っています。
自分が良いと思えるものは、他の人にも使ってもらいたい。
そしてこの万年筆のデザインの良さと使いこなしについて語り合いたいと思います。

⇒ファーバーカステルTOPcbid=2557105⇒ファーバーカステルTOPcsid=7″ target=”_blank”>⇒ファーバーカステルTOPcbid=2557105⇒ファーバーカステルTOPcbid=2557105⇒ファーバーカステルTOPcsid=7″ target=”_blank”>⇒ファーバーカステルTOPcsid=7″ target=”_blank”>⇒ファーバーカステルTOP

工房楔製作・WRITING LAB.企画の「借景のペンレスト」

工房楔製作・WRITING LAB.企画の「借景のペンレスト」
工房楔製作・WRITING LAB.企画の「借景のペンレスト」

パリッとしすぎない、ザックリした質感のものが私の好みのようで、様々なものにそういう要素を求めます。
木で言うとウォールナットが特にお気に入りで、質感、木目などがとても好きです。
工房楔(せつ)の永田さんが使う素材の中では比較的おとなしめで、こげ茶色の色目のためにより静かな印象を受けます。
でも例えば日々水拭きなどの手入れをしてやると木肌は艶を持ち続けるし、木目も際立ってくる。
木質は硬く丈夫なので、様々なものに使うことができますが、特に家具に使われることが多いのは以上の理由が多いのと、個体差が少ないからなのだと思います。
当店にも京都のリバーメールにも展示している工房楔とライティングラボとの共同企画のデスクはウォールナットですし、当店のお客様用のテーブルも私が一日中座っている丸椅子もウォールナットです。そして私が使っているコンプロット10もそうです。

個人的な好みに依るところが大きいのですが、机上用品にもウォールナットを提案したいといつも思っています。
万年筆専門誌「趣味の文具箱」にも取り上げられたことがある、人気のペンスタンドパラーレもウォールナットをメインに使っているし、地味だけど実はこういうものが一番使いやすいと思っている箱型の銘木デスクトレーもウォールナットの無垢材の良さで際立っています。

机上用品はペンと違っていつも手に触れるものではないけれど、使い方、手入れの仕方で素材の良さが表れてくるのには相違ない。
繊細な素材ではないので、簡単な掃除の延長のような手入れで済むところがウォールナットの良さで、まさに机上用品にピッタリの素材だと思っています。

お客様のOさんから、良い木を使った写真立てがあれば嬉しいと以前にご提案いただいたことがあって、それが頭の中にずっとありました。
フレーム型の写真立てならたくさんのものが木で作られて販売されているので、何か私たちらしいものがあればとWRITING LAB.で企画したのが、ポストカードや写真を立てることができて、ペンも置くことができる「借景のペンレスト」です。

前に置くペンに合わせて、背景となるポストカードを選んだりして、机上の風景に彩を与え、仕事中の癒しになったり、朝出かける時にこのペンレストからペンを取り上げる時に気持ちに爽やかな空気が入ればと思いました。

私が好きなウォールナットを中心に、他の素材も揃えてもらいました。
栃は色変化が大きい素材で、日々変わっていく様子を楽しめますし、黒檀は木目から想像できる通り、硬く重い木なのでしまった印象を受けます。チューリップウッドは柔らかく明るい印象で、使い込むとピカピカの光沢を帯びてきます。こういうものにチューリップウッドを使うことは珍しく、大きな素材を見てなかなか貴重なものだと思いました。

工房楔のイベントを4月6日(土)に開催します。

新作中心のイベントで、この借景のペンレストや万年筆など新たに企画、製作したものをお披露目するために、岐阜から永田篤史さんが当店に来られます。
ご来店いただけましたら楽しい時間を過ごしていただけると思います。

⇒「借景のペンレスト」WRITING LAB.オリジナル商品よりご覧下さい

真面目に見える変わり者~パイロットジャスタス発売

真面目に見える変わり者~パイロットジャスタス発売
真面目に見える変わり者~パイロットジャスタス発売

パイロットは、姿形は普通でも素人(?)が手を出すと火傷するような過激な性能の万年筆を発売していて、エラボー、フォルカンペン先の万年筆などがそれにあたります。
それは昨年末You Tubeでエラボーを自在に操る動画が紹介された事に端を発します。あの動画は業界に大きな混乱を引き起こしました。

もちろんそれはパイロットのせいではありませんし、万年筆を使っている人の多くは、あのように書くことはできないと思われたのではないでしょうか。
でもあれで多くの人、万年筆を使っていない人が万年筆に対して抱いている幻影のようなものがどんな姿なのか初めて分かりました。

それは「柔らかいペン先への憧れ」です。

万年筆を使ったことがない人は、柔らかいペン先の万年筆がどれだけ実用的に使いにくいか分りませんので、憧れを持っています。
パイロットがそれに少し応えながらも、失望することなく万年筆を使い続けてもらいたいと思ったのかどうかは分かりませんが、今回発売されたジャスタスにひとつの提案があるように思っています。

それがペン先の硬さの調整ができる万年筆パイロットジャスタスの復刻発売です。
20年以上前に作られていたオリジナルのジャスタスは試作的雰囲気のある、変わり種万年筆でしたが、復刻されたものは本格万年筆とも言える、完成度の高いものになっています。
その姿からペン先の硬さを調節することができるマニアックな機能を備えている万年筆にはとても見えないと思います。

キャップトップと尻軸を平らにしたベスト型のボディは堂々とした大型で、ペリカンM800やパーカーデュオフォールドセンテニアルのサイズに近いものになっています。
ボディに刻まれた模様が2種類あって、パイロットがここぞという時にいつも施す網目模様であるネットブラックと前回のオリジナルジャスタスをイメージさせるストライプ模様のストライプブラックがあって、好みが分かれるところです。
ペン先の硬さを変えることができる機能について、様々な使い分けの可能性があります。

万年筆を何本も持っていると自然とそれぞれに役割ができてきて、用途が決まってきます。
手帳用は締まった文字が書ける硬めのペン先のもの、手紙などはゆったりとした流れのある文字が書ける柔らかめのペン先のもの。
ペン先が柔らかくなるとインクの濃淡も出ますので情緒的でもあります。
ペン習字などでもこの機能は有効で、字幅を変えるほどのことではないけれど、少しインク出量を増やしたいという時にダイヤルを回してペン先を柔らかくするとインク出量が多くなります。

ペン先の硬さを変えることができるという機能は、書き味の好みに合わせるだけでなく、書ける文字も変わってきますので、書き手の好みのための機能というだけでもないと思われます。

エラボーがまた発売されるという話だけ聞いていましたので、まさかこんなに精度の高い万年筆が発売されると思いませんでした。
これはペン先の硬さを変えることができなくても十分存在価値のある万年筆です。

でも真面目な姿をしていながら、変わった機能を備えているあたり、エラボーやフォルカンを作っているパイロットらしい万年筆だと思っています。

⇒パイロットJUSTUS(ジャスタス)

WRITING LAB.オリジナルインク2013“ビンテージデニム”

WRITING LAB.オリジナルインク2013“ビンテージデニム”
WRITING LAB.オリジナルインク2013“ビンテージデニム”

万年筆のインクの色はその人の美学というか、標榜する世界観のようなものが表れるものだと思っています。

そこまで大袈裟でなくても、選択できる範囲の中で自分が良いと思うものを選んでいるわけなので、やはりそういうことなのだと思います。
インクの色には本当に人それぞれ好みがあって、こればかりが売れるというものは非常に少なく、ペリカンロイヤルブルー、モンブランロイヤルブルーなどの超定番のものくらいです。

それだけそれぞれの人がご自分の個性を反映した色を選ばれているということの裏付けになっています。
インクの色はお店にとっても、自分たちの世界観を表現するにもとても都合の良いもので、多くのお店から本当にたくさんのオリジナルインクが発売されています。
何が都合が良いのかというと、インクの色、名前、ラベルに自分たちのセンスのようなものを込めることができるからで、それぞれのお店のコンセプトに賛同して下さるお客様がそのインクを使われる。
他のお店のオリジナルインクや万年筆メーカーのオリジナルインクではなく、当店のオリジナルインクを使っていると言われると、無条件に嬉しくなります。

昨年からWRITING LAB.でもオリジナルインクを企画しました。
昨年の色“クアドリフォリオ”は革小物、オーダー靴工房IL Quadrifoglio(イル・クアドリフォリオ)の久内さんたちとWRITING LAB.の出会いを記念したような四つ葉のクローバー色のインクでした。

結果的に明るすぎず暗すぎない緑色で、そういう色を探されていたお客様が多く、多くの方の賛同を得られました。
2012年の色としたにも関わらず、いまだに製作リピートを繰り返すことができています。
今年は、ビンテージのリーバイスとオールデンの靴をメインのワードローブにするRIVER MAILの駒村氏の提案でビンテージリーバイスの色をインクで表現したものを作りました。

デニムと万年筆のインクというあまり組み合わされることのないものですが、万年筆をカジュアルにスマートに使いたいと願うWRITING LAB.らしさが表現できていると思っています。
ビンテージデニムのように濃い藍色でありながら、ムラ感もある。
そんなことがインクで表現できるのかと、製作依頼をしながらも思っていましたが、インクブレンダーの石丸治さんは、濃い藍色なのに濃淡が出るものを本当に作ってくれました。まさにデニムの感じをインクの色で表現されています。
デニムと万年筆とは違う世界のもののように思われますが、万年筆をさりげなくかっこよく使うことを提案したいと思っているWRITING LAB.の目指すものを分りやすく表していると思っています。

ビンテージデニムと例えばオールデンのコードバンの靴がとても良い相性で、行き着く所まで行ったかっこよさなのと同じように、万年筆とデニムの組み合わせにこだわらないこだわりのかっこよさを感じます。

⇒WRITING LAB.オリジナルインク「ビンテージ・デニム」

印刷会社のこだわりCIRO薄型ノート

印刷会社のこだわりCIRO薄型ノート
印刷会社のこだわりCIRO薄型ノート

当店の試し書き用紙がとても書きやすいと言っていただくことが多く、そのたびに言い訳がましく本当に大した紙ではなく、コピー用紙よりも少し良いくらいの紙だと説明しています。
万年筆の書き味を、できる限り誠実に再現してくれる紙というのが基準で、特別に良い紙を使って万年筆の書き味を過大に良くみせようとしている意図はありません。

でも試筆紙を作る時に、大和出版印刷さんから大量の試筆紙候補のサンプルを提供していただき、たくさんの紙の中からコストと照らし合わせながらこの紙を選ぶことができたことは大変恵まれていたと思います。

筆記用紙で良いとされているものは意外と少なく、例えばノートでも結構同じ系統の紙が使われていることが多いのですが、大和出版印刷さんの場合、多くの種類がある印刷用の紙にも知識があります。
印刷に適している紙の中でも、万年筆の筆記に合った紙はいくらでもあるのだと試筆紙選びで思いました。

試筆紙は販売もしていて、少し大判のメモ用紙のような使い方をされている方が多いようです。
確かにアイデアをまとめる時、このような無地の白い紙が一番使いやすい。
加えて言うと、B5サイズはある程度太い万年筆で書くことにおいて最も適したサイズなのではないか、大学ノートがこのサイズなのも当然意味があるのだと再認識しています。
試筆紙がB5サイズなのも万年筆店のこだわりだと思っていただけたら幸いです。

大和出版印刷さん企画の紙製品にB判のものが今までありませんでしたが、このたびB5サイズの薄型ノートを含む新製品 CIRO+が発売になりました。

中紙は大和出版印刷が万年筆用の紙として開発したリスシオ1紙を使用し、白罫線を施しています。
白罫線は非常にユニークな存在で、デザイン性や話題性が先行していますが、書こうと思った時に光の反射で罫線を認識できてガイドとなり、書いたものを読むとき罫線が見えないので、紙面が美しいという実用的な面も持っています。
特に色インクを使った万年筆の文字を美しくしてくれるのではないかと思います。
今回罫線の白にもこだわって、純粋に白い色のインクを探し求めて垂水区のインク会社のものを初めて採用しています。

表紙にも大和出版印刷ならではのこだわりが発揮されていて、屈曲強度のある商品パッケージによく使われる気包紙を未塗装で使っています。
紙の生の質感を感じていただきたいという狙いもあり、手触りに味わいのある表紙のノートになっています。
さらに糸綴じの製本にもこだわっています。
綴じ糸を見せているノートが多く発売されるようになっていますが、どれもステッチが斜めになっています。
これは紙製品を綴じるミシンの構造、製法上仕方ないのですが、CIRO真直ぐ揃ったステッチを実現するため、大和出版印刷が古くから付き合いのある製本所の工夫で裁縫用のミシンでステッチを通しました。

印刷会社の総力を結集して、マニアックだと思えるほどにこだわって作られたノートが、発売されました。

⇒神戸派計画(大和出版印刷)CIRO+(シロ・プラス)

関連するものもこだわりたい渋い正解 ペリカンM800茶縞限定発売

関連するものもこだわりたい渋い正解 ペリカンM800茶縞限定発売
関連するものもこだわりたい渋い正解 ペリカンM800茶縞限定発売

ペリカンの存在はいつも応援したくなるような同性の友達のように感じられます。
ものすごくキレがあって、洗練されているカッコいい存在ではないけれど、一生懸命生きているのはよく分かるので、なるべく付き合っていきたいと思わせる。
そして私たちが万年筆のいつも期待しているクラシックさ、渋さをいつも忘れずにいるところが、ペリカンから目が離せない理由なのでしょう。

ペリカンが満を持してM800茶縞を限定発売しました。
以前500や400の定番品として存在していて、その後M400として限定復刻されたりしていました。
茶縞がペリカンの理想の縞模様だと言われることがあって、その理由は抑制の効いた渋さのようなものだと考えると、茶縞にペリカンらしさを見る人も多いかもしれません。
M800は、もう何度も書いてきたし、多くの人が言っていることだけど、最も理想的なプロポーションを持った万年筆で、太くもなく細くもない、重くもなく軽くもない。
ある程度万年筆を使ってきて、M800を愛用している人ならその良さはよくご存知だと思います。

当店は初めて万年筆を使おうと思う人もよく来店されます。

予算などが許せば必ずお勧めするのがペリカンM800で、他のペンと書き比べてもその違いは、初めて万年筆を書いた人でもよく分かるようで、M800に決着することが非常に多いし、正しい選択だと思います。
万年筆で文字を書いていきたいと思った時に、最も理想的なバランスを持った万年筆だと言われているM800から使い始めてみるのがいいと、自分自身の経験からも思います。
ペリカンは縞模様を中心としてカラーバリエーションが豊富で、色の好み、中に入れるインクの色でボディカラーを選択するのだと思うけれど、この茶縞に合う当店で用意できるものを考えてみました。
M800茶縞に入れるインクとして、茶色を選択してももちろんいいけれど、ボディ同様に少し枯れた感じの出るものとして、当店オリジナルインクCigarをおすすめしたいと思います。

Cigarはタバコに葉の色をイメージしたもので、書いたばかりの時は緑色で、乾くと枯れていくように茶色になります。
しぶい茶縞のイメージに合うのではないかと思っています。
M800は胸ポケットに差して携帯するのではなく、ペンケースに入れて持ち運び、机に向かって使うタイプの万年筆なので、机の上で使うものとの組み合わせを考えたい。
工房楔のペントレイなどの机上用品も合うと思いますし、カンダミサコのデスクマットもM800を机上で使うのに、役に立ってくれるのではないかと思いました。

当店だけでなく万年筆の業界を元気にしてくれそうなペリカンの限定万年筆M800茶縞が発売になりました。

カンダミサコブッテーロデスクマット

カンダミサコブッテーロデスクマット
カンダミサコブッテーロデスクマット

当店のお客様が万年筆を試し書きされる席には、カンダミサコさんのデスクマットを置いています。
もう2年半以上経っているので、大した手入れもしていないのに、艶が出て色も変化しています。
デスクマットの素材であるブッテーロの特長がまさにそうで、使えば使うほど艶が出て、色が変化してくれる。
ル・ボナーさんもカンダミサコさんもこのブッテーロ革をよく使われます。

成牛の革を植物タンニンでなめしたブッテーロ革は使い込んだ時のエージングが美しい革で、手を入れれば入れるほどそれに応えてくれる。
革用の布やブラシで磨くと光沢が出て色が濃くなり、水で濡らして固く絞った布で水拭きするとネットリとした表情を見せます。
私はブッテーロをブラシ掛けするのが好きで、キラキラしたツブが立ったような銀面を見せてくれます。
この革独特の香りは革の中で一番良いと思っていますが、これは好みが分かれるところでしょうか。
そんなところに惹かれて革職人さんたちはブッテーロ革を多用するのかもしれません。

不定期ですが、年何回かはカンダミサコさんにデスクマットを製作してもらっています。
一番表面の部分の銀面、中間の床、滑り止めのフェルトの3層構造になっていて、端が反り上がってくることの対策としていたり、A4用紙より一回り大きいサイズで大きすぎず、私たちの机環境に合ったものだと思っています。

発売後3年近く経っていて、売れ筋の色が絞られてきましたので、今年は限定色としてパープルを作ってみました。
ウォールナットなどの濃い色の机にとても合うのではないかと思っています。

シュランケンカーフの豊富なカラーバリエーションをフルに使ったペンシースで3年少し前に始まったカンダミサコさんとの仕事。

カンダさんは今まで会ったことがある革職人さんとのイメージとはあまりにも違っていて、小柄で物静かな雰囲気を持った女性だと思っていました。
でも一緒に仕事をするうちに、芯の強い、とても頑固な職人らしいところのある人だということに気付き、それが丁寧で美しい仕事に表れていることが分かりました。

カンダさんが神戸の鞄工房バゲラさんから独立して4年近くになります。
カンダミサコという名前は急速に浸透して、全国でも知られる存在になっているし、大丸百貨店からは年3回もイベントへの参加を依頼されています。
丁寧な仕事を心掛け、ご自分のスタイルに合ったものだけを少しずつ増やしていき、今の地位を短い期間で獲得した。
それは自分のことのように嬉しいし、そんなカンダさんの歩みを比較的近くで見ていられることができたことも誇らしく思っています。

カンダミサコさんだけでなく、当店にはル・ボナー松本さん、工房楔の永田さん、イル・クアドリフォリオの久内さんたち職人さんが夢を持ち込んでくれる。
そしてこちらの夢もその技術やアイデアで実現してくれます。

カンダミサコさんのデスクマットもそんなもののひとつです。
シンプルなものだけど、奥深い仕様へのこだわりがあって、それはブッテーロの革のように時間が経つごとに、使い込むごとに喜びをもたらしてくれる。
良いものの条件だと思います。

カンダミサコ デスクマット