ペリカンM205DUO

ペリカンM205DUO
ペリカンM205DUO

すでに完売してしまった万年筆についてですが・・・。

万年筆のデザインを愛でたり、仕組みを面白がるのはイタリア式の万年筆の楽しみ方かなと、先日のヨーロッパ旅行から帰ってきて思うようになりました。

長いバケーションや太陽が高いうち続く昼休みを習慣としているイタリア人にとって、時間はたくさんあり、万年筆との付き合い方も悠長なものになる、と想像しています。

それに対して、ドイツ式は全てに実用的な価値や理由を見出すのかもしれないと、希望的に思っています。

万年筆に実用的な価値を見出せれば、その万年筆を使う理由があるということで、万年筆を何本も持っていたとしても気に入ったその万年筆を購入できるかもしれません。
そういう理由からか、ドイツ人でなくても万年筆に実用的な理由を見出そうとする人は当店でも多くおられます。

ペリカンがワンタイムエディションとして発売したM205 DUOは、皆さまが思い浮かべる実用的な理由をメーカーが提案している、数少ないもののひとつだと言えます。

万年筆をラインマーカー代わりに線を引くのに使われている方は、私の知る限りでも10人はおられますが(中にはペン先に定規を当てて、金ペンの地金が片減りするのも気にしないツワモノもおられます)、多くは読書をする時や資料を読み込む時に使われているのではないでしょうか。

万年筆をラインマーカーとして使うには、その字幅が太くあって欲しいということで、M205 DUOは今までのM200番台のデモンストレーターモデルになかったBBのペン先になっています。
しかし、この万年筆において重要な要素占めるのは付属されているインクの存在です。

今までも、オレンジやイエローのラインマーカーのように使えそうなインクはいくつか発売されていましたが、染料系の万年筆のインクにおいてその発色はどうしても弱く、淡くて書いた文字が判読不能になっていました。

しかし、M205DUOのインクはかなり発色が強く、線を引いたところも何か書き込みをしても分かりやすく、よく使われている蛍光ラインマーカーと遜色ありません。

確かにハイライターインクだけあればドキュメントマーカーとして使うことができるのではないかと考えられて当然かもしれません。

しかし説明書に他の万年筆にこのインクを入れないよう注意書きがされていることや、発色が良く、耐水性もあることから顔料系のインクだと思われるこのインクの性質から考えて、他の万年筆にこのインクを入れるのはやはり覚悟が必要な気がします。

M205DUOのボディカラーがインクと同じ色なのは、中に入れるインクと合わせているという単純な理由だけでなく、実用的で合理的な理由があると思っています。

わざわざ万年筆をラインマーカーにしなくても、専用のラインマーカーが安い値段で発売されているではないかというご指摘も受けそうですが、日本の万年筆の使い手には、万年筆でラインを引くということに面白みを見出す、イタリア人的なところもあると思っています。

リスシオワン・ルーズリーフA5発売

リスシオワン・ルーズリーフA5発売
リスシオワン・ルーズリーフA5発売

先日リスシオワンの紙でA4無地のルーズリーフを発売したところ、少し高めの価格ですがなかなか好評です。
しかし、書類としてA4サイズが使われることが多くても、携帯するバインダーでA4サイズを使っている人は少数派のようで、A5サイズのご要望がたくさんありました。
たしかにA4サイズのバインダーを開くととても大きなスペースが必要で、会議などの場合、隣人の領域まで侵してしまいそうになりますし、出先でちょっと開いて見たり書いたりする時に、A4サイズはあまりにも大きいかもしれません。そんな皆さまの声にお応えしてA5サイズを発売しました。

今回のルーズリーフも無地だけの発売になっています。
なぜ無地だけかというと、A5やA4サイズの大きさは家庭用のプリンターで簡単に印刷できるので、自分のオリジナルフォーマットで使っていただきたいと思ったからです。

オリジナルのフォーマットを作るというのは、ノートを趣味として考える感覚があって楽しいものです。
私はこの自分仕様のフォーマット作りに結構のめり込んでしまって、時間を忘れていろいろなオリジナル罫線を作って遊んでいました。

そんな風に作った自分仕様フォーマットは、お恥ずかしながら「趣味の文具箱vol.17」で少し紹介されています。
そのフォーマットこれらは自分の仕事の中で、こうあれば自分が使いやすいと思う、完全に自分の都合に合わせて作ったものです。例えばこれを他の人が使うと不便な点もでてくると思います。

こんな風に皆様にもリスシオワンという書き味の非常に良い紙で、オリジナルのルーズリーフ作りを楽しんでいただけたらと思いました。

今後、ルーズリーフの展開にも力を入れて行きたいと思っていて、大和出版印刷のリスシオワンルーズリーフだけでなく、ル・ボナー製本革バインダーA4サイズ、A5サイズも製作中です。

初めはバラの紙だけでスタートしましたが、A5サイズ、正方形ノートと少しずつアイテムを増やして、少しでも多くのお客様にリスシオワンの紙を使った製品を使っていただきたいと考えています。
まだ、リスシオワンの紙を試されたことがない方は、ぜひ一度お試し下さい。
先日発売しました、限定生産の無地A5ノートは、リスシオワンにしては価格が安くなっておりますので、この紙をお試しいただくのにちょうど良いかもしれません。


旅の装備 ル・ボナーのペンケース

旅の装備 ル・ボナーのペンケース
旅の装備 ル・ボナーのペンケース

そろそろ夏休みということで、旅行の準備をされている方もおられると思います。
旅というのは、日常とは違う生活を送ることになりますので、その旅のためだけに何かを用意するとその後使わなくなってしまい、もったいないような気になります。
旅をきっかけに買い揃えて、その後も使えるような冷静なお買い物をお勧めします。

旅で役立って、その後の日常生活でも役に立つペンケースのご紹介です。

6月のヨーロッパ旅行では、万年筆3本とカッター、テープ糊、定規、ゲルインクボールペン、蛍光ペン、カートリッジインク、トラベルインクポットなどの文房具を持っていきました。
用意していた文庫本4冊はページを開くこともありませんでしたが、文房具は非常によく使いました。

主な用途は、旅ノートとして用意していたライフ本麻ノートに書くことでした。
たくさんの文房具を安心して持ち運びながら活用することができたのは、2つのペンケースの存在があったからで、それらのペンケースの使いやすさを旅先で再確認しました。

ル・ボナーの3本差しペンケースは、無骨なデザインで、ペン3本を収納するというよりも、守るという言い方の方が合っています。
頑丈なシェル構造で、中身にフィットせず、細身のペンでしたら中でカタカタ動きますが、強く押されても潰れることはありません。
旅の間中、ル・ボナーのパパスというショルダーバックにこの3本差しペンケースを入れて、いつも持ち歩いていました。

旅という極限(?)の状況では、その物の良さが非常によく分かりますが、ル・ボナー3本差しペンケースは旅で真価を発揮した旅の装備のひとつでした。

細々した文房具を収納するのにデブペンケースほどの収納力を持ったペンケースを他に知りません。

様々な文房具をまとめて入れておき、夜宿に帰った時にその日のレシートやチケットなどを旅ノートに整理するのに役立ちました。
(私が使っているのは、廃番になってしまったファスナー式の革の大きなペンケースですが、その便利さからル・ボナーのデブペンケースを見直すきっかけになりました。)

旅先の夜の過ごし方として、文字を書いたり、本を読んだりしてゆったりと過ごしたいと思っている人にとって、旅に持っていく文房具はとても深刻な問題ですが、いつも扱っている2つのペンケースを、自分自身の旅でさらに自信を持ってお勧めできる経験をしました。

ヘミングウェイにも勧めたい 楔ペンシルホルダートゥラフォーロ

ヘミングウェイにも勧めたい 楔ペンシルホルダートゥラフォーロ
ヘミングウェイにも勧めたい 楔ペンシルホルダートゥラフォーロ

ヨーロッパで読もうと思い、4冊ほどヨーロッパや旅に関連した文庫本を用意していましたが、結局1行も読まずに帰って来ました。
帰ってからの時差ぼけは、昼間異常に眠くなるという困った事態も引き起こしますが、夜12時過ぎから目と頭が冴えてきますので、何か書いたり、読書をしたりする時間と集中力をくれました。
そこで、ヨーロッパで読めなかった本を今頃読み始めています。

それらの本は旅から帰ってきた余韻に浸るにはとても良く、楽しい読書の時間を過ごしています。
その中に、ヘミングウェイが晩年に修行時代を回想して書いた「移動祝祭日」(新潮文庫)がありました。

⇒工房楔「トゥラフォーロ」cbid=2557546⇒工房楔「トゥラフォーロ」csid=7″ target=”_blank”>⇒工房楔「トゥラフォーロ」

当時、芸術家の街として黄金期を迎えていたパリに住んでいたヘミングウェイは、多くの作家、画家、評論家と親交を温め、援助を受けたりしていました。
スコット・フィッジラルドを思い出して書いた章は壮絶で、特に面白いと思いましたが、まだ代表作と言える長編を持たず、それを書かなければいけないことは分かっていても、その長編の書き方もよく分からないヘミングウェイの焦りも書かれています。
パリ時代のヘミングウェイは、自宅の書斎ではなくいつもカフェで仕事をしていました。
作家と名乗る者は皆、自分のカフェがあり、その店をとても大切にしていましたし、そこをある種の縄張りのように思っていたところがあります。
1日中カフェのテーブルに向かい、コーヒーや酒を飲みながら一心不乱に執筆に集中し、時には通りを行く人たちを見ながら思索をすることが、ヘミングウェイの作家としての仕事の仕方でした。

カフェでのヘミングウェイの仕事道具は、草稿を書き記すノートと鉛筆、小さな鉛筆削りでした。
万年筆を使っていて欲しいと思いましたが、この本のどこにも万年筆は出てきませんでしたし、屋外や長期の旅での使用を考えると鉛筆にノートというのが道具の選択としては妥当なのかもしれません。
細い鉛筆で丸1日原稿を書いていると恐らく手も疲れただろうと思い、そんなヘミングウェイにあれば喜んだだろうと思うのが、工房楔のペンシルホルダートゥラフォーロでした。

短くなった鉛筆を使いやすくする道具がエクステンダーで、トゥラフォーロは長い鉛筆をそのまま使うことができるため微妙に目的が違うかもしれませんが、筆記時のバランスがとても優れています。

おそらくボディ先端部だけでなく後端部にも金具があるため、バランスが取れているのだと思われますが、適度に鉛筆を寝かせて書くことができ、これがとても楽なのです。
高い技術で加工された表面部は滑らかで、スベスベしていて気持ちよく、オリジナルで作られている真鍮の金具はアルミ製のキシキシした使用感ではなく柔らかく、でもしっかりと鉛筆をホールドします。

万年筆を使い慣れた人が鉛筆の持ち替えた時の軽さや角度の違和感を無くし、しかも楽しく使うことができる道具が、ペンシルホルダートゥラフォーロなのだと思います。

⇒工房楔 トゥラフォーロcbid=2557546⇒工房楔 トゥラフォーロcsid=7″ target=”_blank”>⇒工房楔 トゥラフォーロ

オマス本社訪問

オマス本社訪問
オマス本社訪問

先日のヨーロッパ旅行では、重要なアポイントを持って出発しました。
日本のオマスの輸入代理店である、インターコンチネンタル商事さんが取り持って下さった、念願のオマス本社訪問です。
この訪問で、私たちは韓国人のエグゼクティブデレクター、ブライアン・リー氏をはじめとする皆さまの、とても温かい歓迎を受けました。

最後にお土産でいただいた、アルテイタリアーナミロード万年筆の使い心地が我々の評価を甘くしているわけではなく、工場内の全ての写真撮影を許可してくださった寛容さなど、とても良い印象を受けました。

オマス社が撮影を許可してくれたのは、ただ寛容で人が良いというわけではないと思います。
ブランド品をはじめとして、万年筆などの製品はイメージやロマンで使うものなので、本国で作られているということは非常に重要な要素です。

多くの会社が利益を確保するために工賃の安い国で主要な部分を作って、本国で組み立てるということをしてきましたが、消費者はその儲かるからくりに気付いて、嫌だと思いながらも付き合うのに嫌気がさしてきているのかもしれません。

ブランド側もそれに気付いていますが、今から本国を生産の拠点に戻すことはすでに難しいのではないかと、想像しています。
オマスはその製品を本国で作っていること、きちんとした生産体制が本国にあることを全て公開してアピールする方が、生産に関する情報が漏れることを防ぐよりも大切だと割り切っているのかもしれません。

また工場を見学してもらって、全てを見せることによって、今回訪れた我々のようなささやかな情報発信者たちにオマスのペンに親近感を抱いてもらえれば、その狙いは成功なのだと思います。

市内へ向かうタクシーが来るのを待つ間、エグゼクティブディレクターのブライアン・リー氏とタバコを吸いながらの談笑がありました。

社外から出向してきている彼は、コツコツと手間をかけながら少しずつ作られる、オマスのペンの生産工程にビジネスマンとしてはとてもじれったい思いをしながら、でも一個人としてはその悠長さに愛着を感じているようでした。

オマスのペンは、これからもイタリアで悠長に、のんびりと1本1本作られていくのだと実感しました。

カンダミサコ デスクマット完成

カンダミサコ デスクマット完成
カンダミサコ デスクマット完成

万年筆の試し書きをしていただく時、快適に、上質なフィーリングを感じて試していただきたいと思う一方で、いつもと同じ環境で試していただくことで、一番ご自分に合うペンを選んでいただきたいとも思っています。

当店のその気持ちを表しているのが、試し書き用紙です。
筆記具メーカーから支給される試し書きの用紙は、万年筆を売るために必要以上の加工をしている場合が多く、ペン先の滑りを良く感じさせます。
しかし、それではその万年筆の本当の書き味は分かりませんので、当店ではあまり高価ではない、コピー用紙よりも少し良いくらいの紙を試筆紙として使っています。
その試筆紙とともにテーブルに置かれたお客様用の1枚仕立ての厚い革のデスクマットがあります。

紙と机の間に、上質な革のマットがあることで、少しだけ良い気分で試し書きしていただけたらと思い置いていますが、試し書きをされたお客様で、革を切り放しただけの愛想のない、そのデスクマットに気付いた人も多いと思います。
何の装飾もない、デザイン的に凝ったところが一切ない、とてもシンプルで男臭いそのデスクマットが、イタリア親父のル・ボナーの松本さんからの開店祝いに作って下さったものだとは信じにくいかもしれません。

サイズはA4サイズよりもひと回り大きいサイズで、机の上でも邪魔にならず、何か他の用事をする時に横に除けておくことができるところも、良いところかもしれません。
お客様からこのデスクマットは好評で、こんなサイズのデスクマットが欲しいという声をたくさんいただきました。

私も大変気に入っていますので、ぜひ商品化したいと思っていて、革作家のカンダミサコさんに作っていただくことができ、理想的なものが出来上がりました。

今まで革のデスクマットと言うと、黒か茶で重厚な社長のデスクに合う、エグゼクティブなものがほとんどでした。それが似合う筆記環境を持っている人の方が少数派だと思いますし、デザイン的にも時流ではないと思っていました。
カンダさんなら、既に発売されているペンシースやペーパーウェイトでも分かるように、文房具の定番的な革製品を若い女性の感性で軽やかに、でもしっかりとした職人技で、完成度の高いものを作って下さると思っていました。

机周りの文房具の中でも、デスクマットを既製品で作るのは、とても難しいことのひとつだと思っています。
個性を出そうと、趣向を凝らした複雑なものを作ってしまうと、使いにくいものになってしまいます。
アイデアを色々込めたいところを我慢して、シンプルなものを潔く作るべきなのだと思いました。
そして、机の上で滑りにくく、長年の使用でも反らないという実用的なことに気を配らなければいけません。

カンダさんのデスクマットは、表面に滑らかな銀面のブッテーロを間に硬いブッテーロの床革、一番下に滑り止めのフェルトの3層構造になっています。
大きさについては、デスクマットの既成を難しくしている一番要因です。
A4サイズを余裕を持って置くことができる必要があり、でも大きすぎず、スペースのない机の上でも使うことができ、使わないときは仕舞っておくことができるもの。
このデスクマットの大きさはそんなサイズなのです。
ペンシース、ペーパーウェイトに続いて、当店扱いのカンダミサコ作品第3弾はシンプルで、実用性の高いブッテーロのデスクマットです。

今後も、軽やかで重厚にならず、でもしっかりとした品質も兼ね備えているカンダミサコさん製作の机上用品を企画していきたいと思っています。

⇒カンダミサコ デスクマット

万年筆をめぐる旅 1・ベルリン

万年筆をめぐる旅 1・ベルリン
万年筆をめぐる旅 1・ベルリン

文房具・万年筆の本場、ヨーロッパを旅して今後の当店のあり方について考えるのがこの旅の最大の目的ですが、行った先々の街にある店で、日本で手に入れることができないものを手に入れることも目的のひとつでした。

それに関しては、お店を回れば回っただけ収穫があって、何かしら見つけることができたのはとても幸運だったと思います。
そんな幸運な出会いと、その場所となったお店などについてのご報告を何回かに分けて、こちらのコーナーではさせていただきたいと思います。

ベルリンは、一番多くのペンと出会うことができた街でした。
そのリストは
アンティークのルーペ、銀の爪楊枝2本、アンティークペンシル2種、ペリカン旧800、ペリカン旧M250,エバーシャープペンシル、モンテグラッパエレガンザ、ペリカンM105、ペリカン60金張り、アウロラ75周年、ペリカン15周年、ヤードレット旧型ペンシル、ペリカン1931ゴールド、パイロット旧バニシングポイント、モンブラン75周年149、ペリカン旧800 14金ペン先、ラミーラティオ(既に販売済みのものもありますので、ご了承ください)など多岐にわたり、この街の大きさを物語っています。

中古品に関しては、蚤の市で入手しましたが、それはすごく幸運なことだとすぐに分かりました。
その後4ヶ所の蚤の市を回り、何も手に入れることができず、蚤の市はごみの市だと知りました。
そのごみの中からお宝を発掘するのが醍醐味なのですね。

多くのペンを入手することができた蚤の市の出品者は、ペンを専門にされている方で本当にたくさんのものを出されていました。
その中には、ピストンが動かないものなどもありましたが、状態相応の値段の付け方で、フェアだと思いましたが、なぜかモンブランだけは高めの値段がついていました。

たくさんのペンを前に私たちは喜びを必死でこらえながら、冷静を装い、必要なものを選び、値段交渉をするのでした。
一通り選んで、お金を払った後、実はまだあるが見てみるかとトランクが出てきました。
これがこの人たちの王道のパターンなのかどうか分かりませんが、後から考えるとそのように思われました。
そのトランクの中には、アウロラ75周年、ペリカン1931ゴールドなど比較的最近の限定品が中心に入っていました。

本当にきりがなく、欲しいと思いましたが資金に限界がありますので、何とか自制心で持ち堪えることができました。
ペンショップも旧西ベルリン側のウーラント通りという表参道のような通りに、「Papeterie Heinrich Kunnenman Nachfahren」というものすごく雰囲気のある店がありました。

そのお店は現行品を手堅く売っているお店でしたが、マイスターシュック75周年149やペリカン旧型800 14金ペン先などがさりげなくガラスケース内に並んでいました。
ファーバーカステル、カルティエ、デュポン、カランダッシュなどを中心に、エルカスコなど高級机上用品、本革ノート、革製品などを揃えたお店でした。
最初にこのショップを見たので、ヨーロッパ中にこんなペンショップがあるのだと思いましたが、その後良い店だと思ったのはあとイタリアのモデナで入ったお店1軒だけだったのは残念でした。

*画像は蚤の市の様子

リスシオ・ワンルーズリーフ新発売

リスシオ・ワンルーズリーフ新発売
リスシオ・ワンルーズリーフ新発売

A4サイズのルーズリーフを仕事で使い始めました。
毎日のことはダイアリーに時系列で記録していきますが、いくつかの長期企画が同時に進行すると、ダイアリーだけでは収拾がつかなくなってしまいます。
思いついたり、やろうと決めた時に書いて、それをまとめておくものの必要性に迫られました。
ノートを1冊別に作るという方法もありますが、荷物が増えて仕方ありませんでしたので、ルーズリーフを使うことにしました。

私にとってルーズリーフの良いところは、資料なども穴を空けて収容することができることと、パソコンで無地のルーズリーフに独自のフォーマットを印刷して使うことができるということでした。
まだパソコンが身近にない時、方眼のシステム手帳のリフィールに線を引いてオリジナルフォーマットとして使っていて、その作業が楽しかったのを思い出します。
自分の頭の中を整理するためのフォーマットをイメージして、エクセルで作っておけばとても便利で、これは趣味になり得ると思っています。
また書くスペースがA4サイズになったため、1枚で見渡せる範囲が広くなり、それも良い効果を生んでいます。

書き込むのも細字の万年筆でなくてもよくなり、中字や太字を使うこともできるようになりました。
鞄を大きくしたり、机を占有する面積を大きくする勇気が出せれば、紙は大きい方が良いと思います。
ルーズリーフは学生以来使ったことがなく、社会人になってからは便利だと分かっていながら、黙殺してきましたが、それはルーズリーフは学用品で、社会人はシステム手帳などを使うのがカッコ良いと思っていたのかもしれません。
学生時代に使っていたルーズリーフですが、少しは物が分かるようになった今使うと、いくつかの不満点がありました。

まずバインダーです。
メーカーもルーズリーフは学生のものと考えているのか、私がこれを使いたいと思えるバインダーがなかなか見つかりません。
せめて本革のものを使いたいと思っていましたが、プラスチックのものばかりで、あってもビニールのような合成皮革のものが関の山でした。

もうひとつは紙質です。
今最も多く使われている筆記具であるゲルインクの性質に合わせてあるのか、万年筆で書くと文字が異常に太くなったり、書き味が重かったりと気持ち良く書くことができません。
いくつか買って試してみましたが、一番いいと思えるものでも気持ちよく書けるではなく「不満なく書ける」という程度でした。
書きやすい紙のルーズリーフが欲しいと、大和出版印刷の多田さんに働きかけてみると、多田さんもルーズリーフについては考えておられたようで、すぐに商品化してくださることになりました。

A4サイズ30穴の万年筆でとても書きやすい紙、リスシオ・ワンを使ったルーズリーフが発売になりました。
A5サイズ20穴も今後発売予定です。

オリジナル万年筆 セレネ初回ロット完成

オリジナル万年筆 セレネ初回ロット完成
オリジナル万年筆 セレネ初回ロット完成

先日、当店オリジナル万年筆セレネの第1回目のロットが完成しました。

2007年の当店のオープン当初からオリジナル万年筆のご要望はいただいており、課題としてずっと持ち続けていました。
私としても早くオリジナル万年筆を作りたいという想いもあり、焦る気持ちもあって色々なものを考えました。実際にいくつかの作り手の方と話をしたこともありますが、なかなか実現しませんでした。

しかし、昨夏イタリアマーレン社からのオリジナル万年筆制作の打診を受けて、やっと実現へ向けて始動したのでした。
今までいくつかのオリジナル企画を担当してきて、こういったもののデザインは芸術的な感覚の鋭い人がするべきだと感じていましたので、当店のスタッフKにデザインを任せました。
万年筆の仕事に長く居座っている私ではなく、万年筆を何よりも好きな女性がデザインを担当したことで、セレネの企画はマーレンの個性と相まって、月の女神の名に相応しい少しだけ控えめな美しさを持ったものになりました。
モノトーンの色合いの万年筆ですが、アイボリーカラーの部分からは月の光を感じることができますし、キャップとボディの中心に配されたシルバーのリングは繊細になりすぎてしまいそうなこの万年筆を少しだけ強い存在にしています。

ペン先は女性的な印象のセレネのイメージからすると大きすぎるように感じられるかもしれませんが、この大きな18金ペン先によって柔らかいと感じることのできる書き味を持っています。

セレネで当店が思い描いたのは、毎日の仕事や家事で疲れた時にも元気になれたり、癒してくれたりする、味方のような存在でした。

万年筆は書くための道具ですが、書くためだけならもっとシンプルで安価なものがありますし、100円のボールペンでも字を書くことができます。
万年筆を使うということに、書くだけでなくそれ以上のものを感じていただきたいと常々思っていました。

セレネにはシリアルナンバーが刻印されていて、私たちはそのシリアルナンバーを記録することで、皆様とそれぞれのセレネの出会いを残していきたいと思っています。

ペンをただ買っていただくだけでなく、そのペンを使う人とそのペンとの出会いの場面も演出したいというのが、Pen and message.という当店の名前の由来のひとつですが、シリアルナンバーの刻印もこういった気持ちの表れです。

また、今回のセレネ完成に合わせて、カンダミサコさんがセレネ専用ペンケースを作ってくれました。
内側の窓にクリップをはめ込んで固定して巻く独特の構造で、外側を硬めの丈夫な黒革、内側はとても柔らかい白い革で、セレネ同様モノトーンに仕上げてくださいました。

巻き上げた姿は昔の文にも似て、優美さを感じさせてくれます。

セレネは限定品ではなく、定番として今後も作って行きたいと思っています。イタリアとのやりとりなので納期がなかなか決まらない場合がありますが、決まり次第ご連絡させていただきたいと思います。

現在は次回ロットの納期を確認中です。ご予約いただいておりますお客様には確認でき次第ご連絡させていただきます。
インターネットからご予約いただけますので詳細は下記よりご覧下さい。


机上のヌシ

机上のヌシ
机上のヌシ

ずっと原稿用紙を使いこなしたいと思っていました。

作家の原稿用紙を見たことがあります。相当なスピードで書いたはずですが、そこには堂々とした腰の据わった文字が書かれていて、時々挿入や朱色で訂正がされてたりして、とても格好良く見えました。

私は文章を仕上げる時、まずノートに万年筆で下書きをして、それを見ながらパソコンで打ち込みます。そのため原稿用紙を使うことがなく、たまに使ってみてもなかなかサマになりません。
今回はそんな原稿用紙に使いたくなるような、超実用と言える万年筆のご紹介です。

万年筆を使っていくうちに、デスク用のフルサイズの万年筆(ペリカンM800やモンブラン146などのように、筆記に対する長さやバランスが良いとされるサイズ)を使ってみたくなる方が多いようです。

それらはボディが大きくて、持ち歩きには不便ですが、手にした時に感じる重量感、存在感、頼もしさはこのサイズならではの醍醐味です。
移動の多い仕事中や、外では使いにくいかもしれませんが、書斎の机のヌシとなりうる万年筆のご紹介です。

万年筆にとっての黄金バランスは重さ30g、直径13mmと言われています。
軽すぎると紙にペンを押し付けようとして、力が入ってしまいますし、重すぎると手が疲れてしまいます。細すぎると握りにくく、太すぎると握るどころではなくなります。
このサイズの万年筆は種類も多く、ペリカンM800という代表的なものもありますが、机のヌシと言えるようなもののひとつが、パイロットカスタム845です。
派手さや斬新さのない、とてもシンプルでありふれたデザインでありながら、その設えはとても凝っています。

両切り型(ボディエンドを平らにしたスタイルのもの。モンブランのようなエンドが円錐になったものはバランス型と言ったりします)で、非常にオーソドックスなシルエットを持つ万年筆ですが、ボディ素材にエボナイトを採用しています。
エボナイトは削り出しの技術が必要で、大量生産に向かない素材ですが、質量が軽く、プラスチックと同じ大きさでも軽くできますし、熱の伝わりが緩やかですので、長時間握っていても内部が暖められてインクの出が多くなるようなことがありません。

万年筆のボディとして理想的な素材と思えるエボナイトですが欠点もあって、そのままでは湿気や紫外線で茶褐色に変色してしまうのです。そこで表面に漆を塗ることによって変色を防いでいます。

漆を塗るということは、エボナイトの変色を防ぐ以外にも、独特の深みのある光沢と感触の良いしっとりとした手触りをもたらしました。
一見すると他の万年筆と同様にプラスチックに見えますが、実は漆塗りという最高級の仕上げの技術が使われているというところに日本的な美学をこの万年筆から感じます。

パイロットはエボナイトに漆を塗って変色を防ぐ技術を80年以上前に確立していて、プラスチック製の量産万年筆がほとんどのこの時代に定番モデルとしています。

細かいことですが、カスタム845のキャップの内側には薄いフエルトが貼られています。
これはキャップを尻軸に差した時にボディに傷をつけないということと、キャップを安定させるための配慮です。

カスタム845のように、派手さはないですが、上質な実用性を持たせるために作り込まれた名作万年筆を机上のヌシとして、楔のペントレイにのせて、原稿用紙に向かうのもなかなか楽しい一人の夜の過ごし方だと思っています。
何を書くかは決まってなくてもいい、カスタム845と原稿用紙があれば夜の机上で何かが起こる、そう思わせてくれる万年筆だと思っています。

⇒カスタム845