気持ちを伝える葉書

高校生の頃、夏休みの間中長野の母の実家で農業のアルバイトをしていました。
農業は肉体的にはきつく、忍耐力も必要でしたが、自分に合っているように思えました。しかし、高校生なら誰もが楽しい思い出を作るはずの夏休みに彼女と離れ離れになって、一緒にいることができなかったことだけが辛かったのを今でも覚えています。
24,5年前になりますので、携帯電話もEメールもありませんでしたし、仕事が終わった夜に彼女の家に電話することも気が引けました。
そんな私たちが連絡を取り合うには郵便しかありませんでした。
手紙をやり取りするようになって、手紙を出した後、返事が来るのがとても楽しみになりました。
その手紙のやり取りによって大いに励まされて、無事に夏休みのアルバイトを終えることができました。
そんな経験はもしかしたら、今の仕事を始めることに関係しているのかもしれません。
そうたくさん書くわけではありませんが、手紙よりも葉書を書くことが多くなりました。
以前はただ長い手紙を書くことが気持ちを伝えるのに重要だと考えていた所があり、たいへんな労力が必要でした。
最近はそうではなく、便箋何枚にも綴る長い手紙を書かなくても数行の言葉の中に相手を思う気持ちが表れていればいいのではないかと思うようになりました。
もともと私自身、饒舌に話をする方ではないということもありますが、より自分らしくありたいと思った形が葉書へのシフトでした。
しかし、私が葉書を再認識した一番の理由は、店を始めた時から届き出したあるお客様からのスケッチが描かれた葉書でした。
そのいつまでも大切に取っておいて、コレクションとしてファイリングしておきたいと思うほどの葉書を受け取って、それに対して返事を葉書で書くということが2年近く続いていて、こういうコミュニケーションのあり方は素敵だと思いました。
実際、手紙よりも葉書の方が書くのに時間もかからないので、筆不精になりにくいという利点もあります。
葉書を出すと当然様々な葉書を試してみるようになりました。
特に手紙に近い、葉書としては長い文章を書く時には無地の葉書を使うことになりますので、官製はがきや他の店で売られている葉書など色々書いてみましたが、結局は自分の店で販売しているライフのもので定着しました。
ライフの葉書箋は白い紙と黄色い紙のものがあり、白い紙はインクの伸びが良くて私にとってとても好きなタイプの紙でした。
それに対して、黄色い紙はにじみが少なく、正確な線を書かせてくれます。
かなり性格の違う紙なので、どちらの紙を選ぶかはかなり好みが分かれるところです。
無地の葉書箋の他に裏に絵や写真の印刷されたポストカードは、それを買うところから楽しむことができます。
値段が安いこともあって、最近ではポストカードを買うことが楽しい趣味になっています。
お土産屋さんには必ず絵葉書が売られていて、絵葉書は何か文化のように定着している感じがします。
また、葉書に貼る切手も柄に凝ったものを使いたくなると思います。
相手の好みや住んでいる場所などをイメージして、それに合う切手を使いたくなると思いますが、ほとんどの切手が期間限定の販売なので気に入ったものをすぐに買った方がいいかもしれません。
Eメールならほぼ無料なのに対して、葉書は50円かかりますし、ポストに投函しなければ届きませんし、届くのに数日かかってしまいます。
でも葉書にはポストに自分宛の葉書が入っていた時の嬉しい気持ちと、肉筆が伝える相手を思いやる気持ちも届けてくれます。
気軽に、こういうツールを使えるようになるのも、自分らしさかもしれません。
旅の備え

子供の頃の家族旅行は、タフな父を持ったせいで目的地を次々に巡る無茶な計画のために、宿に着いたら疲れて寝るだけというものが多かったように記憶しています。
それは今でも変わってなく、父と行動すると徹夜で車を走らせて目的地を目指すという日程が珍しくありません。
その影響で旅というのは時間の限り、たくさんの場所を回るものだと思い込んでいたところがありました。
しかし、歳をとったせいか、体力のない妻からの10数年の訴えのせいか、少し時間にゆとりを持たせて、日程をゆったり取って、早めに宿に着くようにして夕方や夜にのんびりできる時間を作るのも良いかもしれないと最近は思うようになりました。
ゆっくりすると決めた旅支度に入れたいのが、本とノート、そして万年筆でした。
バタバタと温泉に入って、会席の料理をお腹いっぱい食べて、ひかれた布団の上でいつもと同じテレビを見るよりも、いつもと違う環境で本を読んだり、旅の紀行文を書いたりするのは何て心豊かな時間なのだろうと思います。
本はあまり重くてかさ張る本は不向きかもしれませんし、長時間の集中が必要なものもあまり向いているとは言えません。
短い文章がいくつもある短編小説や細切れのエッセイのようなものが向いていますし、写真集のようなものも良いかもしれません。
本と同様に万年筆も全ては持ち出せないので、持っているものの中から厳選することになります。
落としたり紛失したりという心配もありますので、こういう時一番大切にしている万年筆はもしかしたら持って行かないかもしれません。
でもせっかくの旅先で気持ちよく書きたいので、書き味の良い、お気に入りのものを持っていきたいと思うのも人情です。
一番大切な万年筆を持って行くのかどうかは皆様それぞれのご判断ですが、荷物の中で押されて破損しないように頑丈に万年筆を守ってくれるペンケースに入れて行く必要があります。
ル・ボナーのペンケースは、全てのペンケースの中で、最も頑丈で中身を守ることができるもので、旅に持ち出すことによってその本領を発揮するのではないかと思っていました。
全ての部分において2枚重ねに張り合わされた厚いブッテーロの革を使用していて、柔らかく使い慣らすのにかなりの時間がかかると言われるほどハードな仕様はさすが鞄職人と思わせるものです。
旅にはカートリッジ式の万年筆が携帯性に優れているかもしれませんが、吸入式の万年筆を旅に持ち出すためのトラベルインクポットというそのままの名前のものがビスコンティの製品にあります。
日本人の短い休暇ではペンケースにちょうど入る万年筆と同じ大きさのインクポットというその発想はなかなか出にくいですが、休暇の長いイタリアならそのようなものも必要なのかもしれないと思います。話が旅から反れてしまいますが、トラベルインクポットはもちろん旅以外でもとても便利な存在です。
仕事場にボトルインクを常備しておく必要がありませんし、出先でインクが切れるかも知れないという不安から開放されて、気が楽になります。
旅行はなるべく荷物を少なくするべきだと思いますが、いろいろ持って行きたいものを置いて、本とノートそして万年筆をしのばせることは、忙しくて行ったという事実と記念写真しか残らない旅行よりも、ゆったりとした時間を過ごす、自分のイマジネーションを刺激する旅の始まりなのかもしれませんね。
ヨーロッパ伝統工芸品の佇まい カランダッシュ エクリドール

デュポン・ディフィのボールペンの書き味が今までのボールペンとは違う、とても滑らかなものだということは、以前のこのコーナーでお伝えしました。
ディフィの登場によって、これでやっとカランダッシュ以外の選択肢ができたと思った方も多いと思います。
ディフィ登場以前の高級ボールペンにおいて最も書き味が滑らかなのはカランダッシュだということが業界の定説でした。
カランダッシュのボールペンに採用されている芯「ゴリアット」はカランダッシュもかなり自信を持っていて、筆記具の仕事に携わる私たちもそれを認めざるを得ない、他を凌駕するものでした。
しかし、ディフィのように他社と互換性のあるパーカータイプではないゴリアット芯はカランダッシュでのみ使うことができるもので、そのことからカランダッシュのボールペンの優位性を保ちながらも、その書き味の広がりを知らしめることを阻んできたのかもしれません。
カランダッシュのボールペンの中で一番人気のあるものがエクリドールのシリーズです。
比較的短めで、シンプルな六角形のボディはシャツのポケットにも入れやすく、使い減らした鉛筆のように握ることができます。
1953年発売(原型は1947年に完成)という歴史のあるモデルのため、デザイン的にも機能的にも他のボールペンとかなり違ってきています。
今では高級ボールペンはほとんどボディをひねって回転させることで芯を出すツイスト式になっていますが、エクリドールはノックボタンを押して芯を出すノック式になっています。
会議の席や静かな図書館などでガシャガシャとノック音を響かせることが下品だということで、静かに芯を出すことができるツイスト式が主流になっていったと聞いたことがありますが、カランダッシュのノック式は音がしない静かな作動により芯を出すことができます。
ボールペンにおいても、シャープペンシルにおいても、回転式よりもノック式のボタンを押す動作の方が私たちの感覚には自然に感じられますので、スピーディに、でも静かに芯を出したい時、エクリドールの機構はやはりアドバンテージが高いと思われます。
エクリドールの機能面について、ひとつひとつ挙げ連ねていくと、高級ボールペンの実用的な要件を全て満たしていて、このボールペンがいかに欠点のないものかということが分かってきます。
売れ筋として、ロングセラーを続けているものには何か理由があるということをエクリドールはちゃんと教えてくれるのです。
でも私がこのエクリドールの最も素晴らしいと思うところは、その佇まいにあると思っています。
銀張りの(スターリングシルバーモデルもありますが)ボディに彫刻された模様は時代によって変化していて、新しいデザインも意識していますが、ヨーロッパの伝統工芸品らしい上品な設えで、これで仕事をしたいと思わせる雰囲気があり、それがエクリドールの最も他から秀でたところなのではないでしょうか。
字幅の話
バラ紙と綴じたメモとコラボメモカバー新作

私はメモ帳が好きで、使ったことのないものを見つけたり、何かの本で作者がそれを使っていることを知ったりするとつい買ってしまい、家に少しだけ使ったメモ帳がたくさんたまっています。
でもそんな方は結構おられるのだと思います。
使うものは何であれ、私にとってメモは仕事の基本で、手元にメモ帳がないと何も始めることができません。
ノートでも代わりになりそうなものですが、いい加減に思いついたことを書き留めることができ、立ったままでも使うことができるメモ帳がやはり使いやすいように思います。
メモ帳の汎用性を考えるとバラ紙の方が使いやすく、その役割もメモ以外に広がっていきます。
サブジェクトだけ書いておいて、ホルダーに入れたり、手帳にはさんだりしておけば何か思いついた時に書き加えることができるプロジェクトシートのように使うことも可能です。
大和出版印刷がリスシオ1の第1弾で発売したバラ紙のシリーズの中で5×3サイズ(ジョッターサイズ)の紙を見た時から何か用途を見出して使いたいと思いました。
バラ紙の欠点は余程強い意思を持って管理しないと情報が散逸してしまうことに尽きます。情報カードボックスなどを用意する必要がありますが、情報をそういったもので管理するよりもパソコンで入力してデータにしたり、ダイアリーに記入し直したりするためのメモの一形態と考える方が良いと思いました。
5×3サイズの紙をメモに使うのに最も便利なものは、情報カードが情報管理ツールとして主流だった頃から使われていて、文具の好きな人なら誰でも知っているカードホルダー(ジョッター)です。
紙を数枚入れることができ、紙の四隅を留める筆記面を持っているカードホルダーは5×3サイズの紙をメモ帳にしてくれます。
せっかく書き込んだ情報が散逸せずに、ひとつのまとまった状態で持ち歩くことができるのは手帳タイプです。
書いて何かにインプットし終わったものは切り離して捨てることのできるものはどんどん薄くなって、仕事を処理して減っていくことが実感できる楽しさもあります。
この日常的に使うメモ帳を外国製の手帳のように、良い革の表紙で使いたいと思いル・ボナーの松本さんと相談して作ったのがコラボメモカバーで、安価でどこでも手に入れることのできるA7サイズの小さなノートを感じよくして、使い込む楽しさも味わわせてくれるものです。
カジュアルな風合いのブッテーロ革で作っていただいていましたが、スーツでお仕事されている方に合う素材、クロコとクリスペルカーフも作りました。
クロコの方はペンホルダーを付けずにシンプルなカバーに徹した仕様になっており、ポケットからの出し入れにひっかかることがないようにしています。
私たちは本当にたくさんのメモを試し、試行錯誤しています。
一番大切なのは長く続けることができる自分のスタイル(私もできていませんが)を確立することであり、そのお手伝いができればと思っています。
文具業界の最も華やかな日“ISOT”
リスシオ・ワン製品第1弾発売~理想の紙を作ってしまった印刷会社の社長の情熱~

大和出版印刷の武部健也社長が理想の万年筆用紙をコストや効率を一切無視して作り上げた紙、Liscio-1(リスシオ・ワン)の製品が発売されました。
第1弾ラインナップは使用頻度の高い4サイズをカットしてパッケージしただけのとてもシンプルな仕様ですが、とても人気があるようでル・ボナーさん、分度器ドットコムさんでもよく売れています。
私たち文具業界の人間にとって、良い紙質とは書き味などのフィーリングで感じるものということが当然だと思っていましたが、印刷業界において良い紙というのは印刷を美しく再現するものだと思われていて、その認識にギャップがありました。
リスシオ・ワン紙の開発において、この認識の違いから埋めていかなければいけませんでしたが、武部社長はリーダーシップと人を巻き込む才能でそれを形にしていきました。
このリスシオ・ワンが生まれた背景は武部社長とル・ボナーの松本さんの8年前の出会いに遡ります。
当時武部社長(まだ社長ではありませんでしたが)は使っていた財布に不満を持っていて、究極の財布を求めて日本中を探していました。
あるインターネットの情報から腕の良い職人が同じ六甲アイランドにいることを知り、試しに行ってみることにしました。
ル・ボナーを訪れた武部社長はそこにある財布に大変感激しましたが、松本さんの革への愛情とマニアックな知識に気圧されながらも、その職人魂に強烈に惹かれました。
それから武部社長はル・ボナーの顧客になり、革製品は全てル・ボナーで誂え、その良さを知人に広めたりしながら親交を暖めてきました。
松本さんが友人である古山画伯の影響で万年筆に入り込んでいったのは今から3年程前で、初めての万年筆を買いに私のところを訪ねてくれたのがこの頃でした。
万年筆の書き味などが紙によって大きく変わることを知った松本さんは、大和出版印刷に万年筆と相性の良い紙を探してノートを作ることを持ちかけました。
武部社長に万年筆の良さを知ってもらうために、万年筆を使ってみることを勧めました。
最初あまり興味を示さなかった武部社長も、店の開店準備のためブラブラしていた私を会社に呼び寄せて万年筆を用意させてくれるようになり、今では松本さんを凌ぐほどのコレクションを持っています。
万年筆の気持ち良い書き味を理解し、相性の良い紙の必要性を感じ、膨大な紙のサンプルの中から見つけ出したのが、サトウキビを原料とするバガス紙で、長年信頼関係を保ってきた須川製本さんの協力によって、最高の製本技術が施されたノート、上製本ノートが完成したのが一昨年でした。
柔らかいペン当たりと、気持ち良いインクの伸びを持った最高の書き味を持ったノートは5,000円という価格もあって話題になりましたが、バガス紙自体がすでに作られていない限られたものだったため、ノートも作ることができなくなりました。
バガス紙に代わる紙を探し始めた武部社長は、バガス紙ほどの書き味を持った紙がないことから、紙を独自に漉くことを決断しました。
よほどの大企業でなければ独自に紙を作るということは難しいとされている中、一印刷会社がそれを企画したということに業界は驚き、無謀だと思われたと思います。しかし、武部社長は業界内の目を気にせず、理想の紙を作るためにリスシオ・ワンプロジェクトを始動させました。
前述しました良い紙の認識の違いを、協力してくれた製紙会社の担当者の方と共通にし、辛抱強く試作を重ね、書き味と柔らかさ、にじみの少なさ、裏抜けしないなどの筆記用紙に求められる性能を高い次元で兼ね備えた、奇跡のバランスを持った紙を作り上げました。
大和出版印刷はお客様からの注文を受けて、印刷加工をして完成品をお渡しする受注産業で生きてきた会社なので、商品を企画してお客様に買っていただくことに慣れておらず、リスシオ1の企画が前に進むスピードは遅いですが、私たちのような文具の人間の頭で企画するものとは一味違うものを発売し、楽しませてくれると思います。
それが第1弾のバラ紙のシリーズです。
◎
<リスシオ・ワン関連ブログ>
◎
◎
◎
モンテグラッパエキストラ1930

もっと早くにこのコーナーでモンテグラッパエキストラを紹介すればよかったと後悔しています。
リシュモングループがモンテグラッパを売却するという話は、当店にとって衝撃でした。
本国のホームページにも当店の名前が取扱店として記されていましたし、当店でモンテグラッパを扱っていることもお客様の間で定着してきた矢先の事でした。
しかし、それよりも何年も前から扱うブランドが変わってもいつも気に掛けてくれて、お世話になったモンテグラッパのブランドコーディネーターリシュモンジャパンの井本さんがこれからどうされるかということが気に掛かりました。
モンテグラッパを扱うことになったのは、井本さんが私と当店をネットで探して来てくれたからでしたし、その縁で大和出版印刷の金賞受賞ポスターをエンブレマで撮影することができました。
当店の新しいショップカードと名刺にはエンブレマの写真を使っています。
あまりにもイメージが高く、実際の価格も高かったモンテグラッパは限られた方のペンだったようで、あまりたくさんは売れていなかったようでした。
その中でネロウーノ、エキストラ1930が当店の売れ筋だったことは、当店に来られるお客様の志向とモンテグラッパというブランドが打ち出すものが合致したからです。
モンテグラッパはペリカン、アウロラなど多くの定番メーカーの万年筆とは一味違ったイメージの良さと、デザインの美しさで他の万年筆から抜きん出ています。
モンテグラッパを使いたいと思う人は、万年筆に妥協のない最高の美しさを求め、そのためには価格の高さに妥協してもいいと思う特別な感覚を持っている人が多いように思います。
売却先はまだ公表されていませんが、美しく、使う人を満足させてくれて、ファンの多いモンテグラッパを扱いたくない会社はないと思います。
力があり、モンテグラッパのイメージを壊さずに大切に売ってくれる会社が新たに扱ってくれるのを願うばかりです。
全ての万年筆の中でお勧めはなんですか、と聞かれることがありますが、そんな時値段に関係なくということでしたら、私の個人的な好みも大きく働いていますが、モンテグラッパのエキストラ1930を勧めるようにしています。
ペン先サイズがオーバーサイズの大きなペン先であるにも関わらず、ボディはそれほど大きくないミディアムサイズで、ペン先とボディの大きさのバランスがとても良いと思っていること、1930年代のセルロイドを復刻させたというオリジナルのセルロイドが渋い色合いを出していて、格調高い美しさを出しているということ、それと使っておられる何人もの方々の満足の声から、この万年筆を当店の定番品の頂点としていました。
エキストラ1930は何本もの万年筆を使って、行くところまで行った人が最後に使うような、万年筆だと思っていますので、これからも手に入る限りお勧めしていきたいと思っています。
デュポン 「ディフィ」ボールペンリフィル

ファーバーカステルギロシェのボールペンをずっと愛用しています。
デザインがシンプルでありながら美しいと思っていますし、バランスもよく書きやすいところが気に入っています。
スプリングが内蔵されたクリップが使いやすく、最近では「分度器ドットコムオリジナルCUAエンベループ」のスペシャルポケットに入れて、すぐ使えるようにしています。
とても愛用しているギロシェボールペンですが、不満がないわけではありません。
三菱のジェットストリームの書き味を知ってから、ファーバーカステル純正の芯の書き味が重いことに気付き、筆圧をかけなくても気持ちよく書くことができるものを使いたいと思うようになりました。
パーカージェルリフィルというものが水性顔料インクで筆圧をかけずに書くことができ、ギロシェに入れることができますが、複写用紙を書くときにジェル芯ではインクが出過ぎることがあり、あまり適していない気がします。
やはり油性ボールペンの芯で滑らかなもの、そして海外ブランドのボールペンに切るなどの加工をせずに装着することのできるものが欲しいと思っていました。
以前、何かの用事で加藤製作所を訪れた時に、加藤さんがパーツメーカーからこんなものが送られてきたと言って見せてくれたボールペン芯がありました。
形は世界標準というべきパーカータイプですが、書き味がとても滑らかでした。
性質は水性でもゲルインクでもない油性なのにとても滑らかで気持ちよく書くことができます。
加藤さんはツルツル滑りすぎると言って、あまり興味がなさそうでしたが、私はすぐに採用するべきだと進言したことを覚えています。
それから数年経ち、その芯と再会しました。
デュポンの新シリーズデフィを書かせていただく機会があり、その書き味はすぐにピンときました。
中の芯を確認するとデュポンのロゴが入っていますが、加藤製作所で見た芯そのものでした。
ボールペンはその芯を良いものに交換するだけで、全く別物になったと感じられるほど変わります。
万年筆のインクの色を変えると何か新しいペンが増えたようで嬉しくなるものですが、ボールペンでも同じことが言えると思います。
日本にはジェットストリームなどのとても滑らかに書くことのできるボールペンがありますが、他社の芯との互換がありません。
多くのメーカーが採用しているパーカーサイズで滑らかに書くことができるものをきっと多くの人が望んでいることは、いくら万年筆を使う機会を多くしても、毎日の仕事生活の中でボールペンを使う機会が少なくないことからも想像がつきます
書き味を我慢してボールペンを使われている方のご不満を解消する、ひとつの答えがこのデュポンディフィボールペンリフィルだとお勧めします。
しかし、他社の芯を入れて使うことはメーカーは推奨しておらず、自己責任での使用になるということをご注意ください。