ボローニヤの思い出

ボローニヤの思い出
ボローニヤの思い出

ル・ボナーの松本さん、分度器ドットコムの谷本さんとドイツ、チェコ、イタリアを巡る旅をしたのは今も鮮明に覚えているけれど、もうずっと昔のように思えます。
その懐かしい旅行を思い出すことができる物のひとつが、オマスアルテイタリアーナミロードハイテクの万年筆です。
イタリアボローニヤの万年筆メーカーオマスを訪れた時に記念でいただいたもので、3人が同じものを持っています。
その旅で訪れた街々の中でもボローニヤは特別に楽しかった街のひとつでしたし、オマスでも温かい歓迎を受けましたので、ボローニヤにはとても良い印象を持っています。

改めて聞いたりはしないけれど、二人はこのミロード万年筆を使っているのだろうか。
日本のメーカーを訪れたことは過去にあったけれど、海外の万年筆メーカーの本社を訪れることなどそうそう経験できることではないので、オマスは私たちにとって特別な存在であり続けています。
なるべくならオマスの万年筆を使いたいと思うし、オマスの万年筆を使った感想を、良いところも欠点も他の人と共有したいと思っています。

いただいたミロードはいつも手紙用に使っていて、他のメーカーとは違う独特の使用感を味わっています。
ボディの装飾は皆無、唯一外見上の特徴はボディが12角形になっているというだけですが、それが充分個性になっていて、この抑えたデザインの良さがゆっくりと分かってきました。

書き味と書ける文字にも特徴があって、オマスの味を持っている。
使い始めた時、その良さにピンとこなくても時間が経つほどに好きになっていくものというのは私は多くて、ミロードもそんな万年筆でした。
持っていることを自慢できるような希少な万年筆よりも、自分が使ってみてその感想を多くの人と共有できる定番品の万年筆をいつも使いたいと思うのは、万年筆店の店主としても当然のことなのかもしれません。

2013年の記念として、そして新たな万年筆人生、物書き人としての人生の新たな局面を願ってアルテイタリアーナパラゴン万年筆を使い始めました。
大きな万年筆を手帳から手紙まで全てに使いたいと思いましたので、EFのペン先にし、色はやはり黒ボディに金金具。
オマスはマザーオブパールマルーンという革と相性の良さそうな色もありますが、自分の万年筆の定番の色を選んでしまいました。

キャップをつけるとそこそこの重量があって書き味も良くなり、寝かせて書く手紙のような用途にはいいですが、ダイアリーに書く時はそれほど寝かせて書かず、キャップをつけずに書いています。
ミロードとは違い、首軸が金張りの金属になっていて、大きなボディとバランスをとるために重量を先の方で稼いでいるようです。

金張りの首軸は、指にピッタリと添って滑りにくい。
そして何よりもその存在感がいい。極太軸を手に乗せて書く感じは文豪になった気分を味わえます。
手に届くまでは、EFを選んだので細すぎて手紙や原稿用紙には辛いのではないかと心配していました。
でもペリカンロイヤルブルーで使っていますが、エボナイトのペン芯の恩恵もあって、インク出が豊かで全く問題ありません。
最初に少しペン先の寄りなどを修正して、イリジュウムの形を整えた程度で使い始めましたが、大変快適に使っています。

最初の目論見通り、手帳から手紙まで使っていて、他の万年筆をここ数日使ってあげられていないことが気掛かりです。


~仕事にも使える遊び道具~ペリカンM101Nリザード

~仕事にも使える遊び道具~ペリカンM101Nリザード
~仕事にも使える遊び道具~ペリカンM101Nリザード

小学校低学年の頃だったと思うけれど、スーパーカー消しゴムをボールペンで弾いてレースをするという遊びが大流行しました。
多分全国的なものだったと思うので、私と同年代の方は覚えておられると思います。
それは消しゴムとボールペンという、学校に持って行っても何ら不自然ではない文房具だったのがポイントで、小学生にとって親や先生から苦言を呈されることないもので遊べたのが魅力でした。

万年筆も似たところがないだろうかと、35年前の車の消しゴムをボクシーのボールペンで弾いていた時の自分の気持ちを思い出してみて気付きました。
仕事にも使うことができる遊び道具。
以前、万年筆を覚えたての頃は書き味が良ければ、あるいはペン先が柔らかければ、自分にとって良い万年筆でした。
しかし、それはあまりにも狭い了見でしか万年筆を見ていなくて、万年筆を書き味だけで語るのは片手落ちというか、この筆記具の楽しいところを充分に味わえていないのだと、中年と言われても文句の言えない年齢になってから気付きました。

ペン先が硬くても、柔らかくても気持ち良く書くことができるのは当たり前だけど、いかに遊べるかという条件が万年筆の優劣を判断する基準に加わるようになりました。
遊べるかというのには、そのペンに対していかに話ができるかということも含まれていて、その万年筆を肴にして盛り上がることができれば、それは遊べるペンだということになります。

ペリカンが自社の往年の名品を復刻させたシリーズの今年のペンがM101Nリザードで、この現代の万年筆にない個性の強さは、充分に遊べる万年筆の資格を持っています。
まずリザード革模様のボディが強烈です。
オリジナルはなぜこの模様を万年筆にしようと思ったのだろうか。
ペリカンは175周年の記念すべき年である今年を記念する万年筆、ジュビリーペンにもこのデザインを採用していて、思い入れの強さを感じてしまいます。

175周年をお買い上げいただいたお客様で、101Nと同素材、同色であるグレイ色のペンケースSOLOとインクケースCADDYをオーダーして下さり、お作りしたことがあります。
これも、同素材、同色で揃えることも万年筆の遊びのひとつで、何て粋な遊びだろうと思いました。

万年筆単体だけでなく関連する品も揃えて楽しむ。
個性が強いだけに、より他の素材や違うものでも揃えを楽しむことができる。
ペリカンM101Nリザードには、そんな遊び心を持った人が使うのに見合ったところがあると思っています。

~アクセサリーのようなペン~アウロラアクア

~アクセサリーのようなペン~アウロラアクア
~アクセサリーのようなペン~アウロラアクア

現代の世の中の仕組みを考えると、もしかしたら仕方ないことなのかもしれませんが、メーカーが違っても同じパーツが使われていることに気付くことがあります。
特にペン先、ペン芯などの重要なパーツが共通なことが多く、それに気付くと少し寂しく思います。
各メーカーは、パーツメーカーが供給するそのパーツを使うことによって、開発コストをかけずに他のところに力を集中して万年筆を作ることができるので、その部品メーカーの業界への貢献は非常に大きいけれど、それはまた別の話になります。
ペン先、ペン芯が同じであることは、時計のムーブメントがメーカーを超えて共通して使われていることと似ていて、それが今の物作りの仕組みということになるのかもしれません。
でも世界の仕組みから外れて物作りをしているメーカーが中にはあって、そのようなメーカーと同じように、仕組みから外れて心細く感じる自分の弱気と戦いながら自由にやっている当店との共通点を見て、親近感を覚えています。

アウロラは世界の経済の仕組みからも、物作りの仕組みからも外れている、孤高の存在であり続けている業界でも珍しいペンメーカーです。
ペン先、ペン芯などのパーツも自社で製作していて、デザインにおいても独特のものを持っています。
他のメーカーのように次々と新製品や限定品を発売することがなく、その活動はとてもゆっくりでマイペースだけれど、アウロラが何か新しく発売するといつも気になります。

アウロラの新作アクアは美しいブルーで、2010年に発売されたマーレリグリア、2000年に発売されたマーレと、同色の素材が使われていますが、このブルーはアウロラ独特の色合いで、他のメーカーで同様のものを見ることはありません。
ミニペンにカテゴリーされるアクアですが、小型万年筆の定番のひとつペリカンM400と1cmほどしか違わないことからも、充分実用的に使うことができるサイズになっていますし、小さいながらもこれもアウロラ独自の仕様であるリザーブタンク内蔵の吸入機構も備えていて、何となくこういうところにも実用性と同時に遊び心も感じてしまいます。

ボールペンはコンパクトで手帳のペンホルダーにも収まりやすいサイズです。
替芯はとてもポピュラーな、細いステンレス製の短い芯で、これは国産のものでも入ります。
国産で言うと、ゼブラ、三菱、パイロットなどから同サイズの替芯が発売されていて、様々なものの中から選ぶことができます。
書きやすい万年筆は、もっと価格の安いものでもあるけれど、そういうものにない魅力をアクアは持っています。
ただ書きやすいだけでなく、見ているだけで楽しい、持っているだけで嬉しいアクセサリーのようなペンです。


〇画像は左からアクアボールペン・アクア万年筆・マーレリグリア(参考商品)・ルナ(参考商品)

“縁日の水鉄砲” ペリカンM205DUOシャイニーグリーン

“縁日の水鉄砲” ペリカンM205DUOシャイニーグリーン
“縁日の水鉄砲” ペリカンM205DUOシャイニーグリーン

この万年筆を買われたお客様との会話。
「なんだかおもちゃみたいな色ですね」
「昭和のプラスチックの色・・・かな?」
「なるほど!」
そんなやり取りがあって、この万年筆の色にやっと思い当たりました。
縁日で買ってもらった記憶がある水鉄砲の色でした。
いきなり今回ご紹介する万年筆に失礼な書き始めですが、私は親しみと懐かしさを込めてこの万年筆を縁日の水鉄砲だと決めつけています。

まさかドイツ人が昭和の子供のおもちゃである緑色の透明の水鉄砲をイメージしたわけでは絶対にないけれど、日本の男の子はそれを必ず思い出すと思います。
子供の頃のおもちゃ的な色の万年筆ですが、ラインマーカー代わりに使うというところも遊び心に溢れていて、オフィスのおもちゃだとも言えます。

万年筆をラインマーカーに使いたいという万年筆を使う人誰もが思うことを形にした、一昨年に発売されたイエローデモンストレーターに続く第2弾がこの蛍光グリーンのインクが付属したシャイニーグリーンです。
本を読む時に、資料を読み解く時にラインマーカーを愛用する人は多く、几帳面な人は定規を当てて真っ直ぐな線を引くけれど、万年筆に定規はペン先が削れてしまうので、あまり相性は良くありません。
でもこの万年筆は金ペン先ではないステンレスのペン先なので、定規を当てて線を引いても擦り減らないと思われます。

このステンレスのペン先、他のペンのステンレスペン先に比べると出来がかなり良くて、とても良い書き味、柔らかささえ感じられ、以前から評価の高かったペリカンのステンレスペン先の評判と違わぬ出来を見せています。
ラインマーカーというと100円くらいのものなのに、それに敢えて万年筆を使う。
しかもボトルインクからインクを吸入させて使うことが私には何とも粋で、この懐かしい色あいの万年筆を取り出して作業する様は、ずっと以前に発売されていましたモンブランマイスターシュテュックの146サイズの蛍光マーカーとはまた違う感じでカッコよく思えてしまいます。

ラインマーカー専用ということで、ペン先は太い線にも対応できるBBのステンレスのペン先がついていて、これが前述通り思いの外書き味が良い。
そんなギャップも楽しめてしまう、遊び心のある万年筆、それがペリカンM205DUOシャイニーグリーンです。