店を始めてから年末年始は京都か奈良で泊って、宿で除夜の鐘を聞いて過ごしています。部屋で食事をするタイプの宿は嫌なので、食事に部屋から出るし、部屋でじっとしてゆっくりしていられない性質なので、一人、もしくは嫌がる家族を連れだして何度も外に出ます。
そんな時に、あまり見すぼらしい恰好で出たくないので、財布やスマホなどをまとめて持って出ることのできるポーチピッコロのようなものはとてもいいと思っています。
大きさもそういう用途にはちょうどいいし、何よりも見栄えが良いので、気に入って使っています。
当店のお客様にたくさんおられる、仕事で頻繁に出張に出る方たちほどではないけれど、出張販売を他所の街でするようになって、私も仕事で外に出る機会ができました。
仕事が終わって、夕食後ホテルの部屋に帰っても、そのままじっと部屋に居るわけではなく、2度、3度は外に出たくなるので、ポーチピッコロに必要なものを入れて出かけます。飛行機や新幹線でも同様にポーチピッコロは重宝しています。
短い車内での時間でできることは限られているけれど、文庫本や手帳を手元に置いて、読みたい時に読んで書きたい時に書くためには、それらは大きな鞄の中ではなく、ポーチピッコロのようなものの中に入って、手元にあってほしい。
ル・ボナーの松本さんは、このポーチピッコロをこのような用途で使うために、考案したのだろうと思います。
この小さな鞄の中に何を入れて行こうと考えるのもとても楽しいので、荷物が少しだけ重くなってしまうけれど、ポーチピッコロを旅の荷物の中に必ず入れておきたいと思います。
他の色々なものがこのポーチピッコロの代わりになるのだろうと思いますが、良い革でできた、見栄えのするものと思うと、なかなかないと思います。
筆記具や手帳もそうかもしれないけれど、それらの私の持ち物を見て、きっと誰も何も思わない。
ましてやそれを持っている私を見て、どこかの知らない女性に素敵だなんて思ってもらうためでもないけれど、それらを使っている自分は精一杯カッコよくしているつもりなのだ。
そんなふうに考えるかどうかは別として、ポーチピッコロは旅を必ず楽しくしてくれるものだと思います。
ポーチピッコロには、最もオーソドックスなシュランケンカーフ仕様のもの、キメが細かくとても手触りの良いデンマークカーフのもの、個性が強く、革自体も強靭なエレファントがあり、素材を選べるのはル・ボナーさんらしいと思います。
正方形ダイアリー&ノート用透明カバー
以前「コラージュでノートを彩る」という、コラージュを楽しむワークショップをしていました。
スタンプやマスキングテープ、折り紙やシールなど様々な素材を提供してくださった奥谷菜摘子さんと、その時々で参加された方々でわいわい話をしながら、切り抜きを貼ったりして、自分のイメージを表現する時間はとても楽しかった。
今は奥谷さんの体調が難しくコラージュの集まりは中止しているけれど、このワークショップのおかげで、ノートの表紙をアレンジして自分仕様にする楽しさを知りました。
当店オリジナル正方形ダイアリーや、大和出版印刷(神戸派計画)の正方形ノート用の「透明カバー」を作りました。
透明カバーを作りたいと思ったのは、当店が扱っているイタリア人のグラフィックデザイナーグイード・リスポーリ氏のグリーティングカードと正方形ダイアリーを組み合わせて使えるのではないかと思ったからです。
イタリアの紙を使って、イタリアで作ることにこだわったグイード・リスポーリ氏のグリーティングカードは、メッセージを書いて人に渡すのが惜しくなるほど、美しく、上質なカードです。
額に入れてインテリアにすることもできるものだと思っていて、透明のカバーを作ることで、このグリーティングカードをダイアリーの表紙として使えると思いました。
厚手のウィークリーダイアリーやフリーデイリーノート、Liscio-1の方眼や横罫ノート、薄手のマンスリーダイアリーや正方形方眼ノートrectなど、どちらの厚みにも対応できるように、フリータイプにしています。
ル・ボナーさんが作る革カバーは上質な革を使用していて、使っていて喜びを感じるもので、万年筆を使う人の好みに合っていると思いますが、オリジナルダイアリーをアレンジして使うような使い方も提案したいと思いました。
「コラージュでノートを彩る」ワークショップは今していないけれど、奥谷さんが教えてくれた楽しみはしっかり覚えていて、こんなところに生かされています。
近日中にホームページでご紹介したいと思います。
趣味の道具か、実用か2・ペリカンM805オーシャンスワール
当店は実用で万年筆を使う人の店であり、万年筆を趣味のモノだとする人たちの店ではないと思ってきました。
趣味のモノというと、休日にそれを触ることを楽しんだり、ただ眺めて楽しむ喜びを提供してくれるような言葉の響きがあって、当店の顧客像と隔たりがあるように思えたからでした。
お客様方が当店に求めに来られるのは、楽しむための万年筆ではなく戦いの道具としての万年筆で、それを求める心と、趣味というオフタイムを連想させる言葉とは違っています。
しかし、戦いの道具というのなら、ものすごくよく書けたらそれでその目的に適っているような気がするけれど、でもそれだけでもない。
当店に来られるお客様方の中には、書く道具に対する不満から万年筆を手にしたけれど、それにも不満を抱いて、もっと書きやすい万年筆を手に入れたいと思っている方も多く、実用的に十分書くことができて、そこに楽しみもあるものを皆様は求めている。
それは広い意味で趣味の道具ということになるのかもしれないと思うようになりました。
私もただよく書ける万年筆だけをお勧めしたいわけではなく、自分の美意識や生き方を表現してくれるものを手に入れてもらいたいと漠然と思っていたけれど、この店が始まって10年経った今、確信しました。
書くものに対しての不満も解消してくれる、実用性も備えていて、楽しめる要素があって、自分の美意識や生き方を表現してくれるもの。
最後の項目は人それぞれ違うものだと思うけれど、そんな万年筆を買ってもらいたいと思うと、扱えるものがかなり限られてしまうかもしれませんが、当店はそれを貫いていきたいと思っています。
当店の限られた品揃えの中心にペリカンM800はあって、これは不動の、当店の定番中の定番だと思っています。
ペリカンM800は理想的なバランスを持つ万年筆の中の万年筆で、最もスタンダードな、万年筆の基準となるものだと思っています。
この万年筆よりも大きければオーバーサイズ、小さければコンパクトな万年筆と判断できる目安のような存在です。
万年筆で書くことの醍醐味である「ペンの重みに任せて力を抜いて書く」書き方は、M800で覚えることができるので、初めて万年筆を使う人にでも、予算が合えばM800をお勧めしています。
それは万年筆を使い慣れたとしてもM800を使わなくなることはない、生涯使い続けることができる万年筆でもあるからです。
このM800でも楽しめる要素は十分あるものだけど、さらに見て楽しむ要素を持ち合わせた限定万年筆M805オーシャンスワールが発売になりました。
M805オーシャンスワールは、海の渦を表現した青みの強い深緑に無数の細かい粒が光線の具合でキラキラと輝く、大変美しく奥行きのあるボディです。
私にはこれは花梨など自然の木のこぶ杢をイメージします。
このオーシャンスワールのボディの中に、どんな景色を見るかは人それぞれかもしれませんが、実用に不満なく使うことができて、見て楽しいめるもの。
当店がお勧めしたい要件を完璧に備えた万年筆のひとつだと思います。
筆文葉3つ折りカレンダー2018
当店オリジナルシステム手帳リフィル「筆文葉(ふでもよう)」の3つ折りカレンダーの次期間(2018年7月~2019年6月)が完成しました。
スケジュールなどの計画を練るなど様々な用途に使って欲しいと思い、同じものが3枚セットになっています。
3つ折りカレンダーは普通のカレンダーと比べると、始まりと終わりの月が違っています。
見開きで左ページに1~6月、右ページに7~12月が来て、1年を見開きで見渡せるようになっています。そのため1枚は表面が7~12月、裏面が次の年の1~6月というレイアウトになっています。
今回の発売分で、再来年の6月までのスケジュールを書き込めるということになります。
筆文葉のリフィル全てがそうですが、このカレンダーも自分で線を引いたり色を塗ったりカスタマイズする余地のあるものになっています。
私は個人的にノートや手帳に罫線を追加して使うことがありますが、そんな時はいつもグレーのゲルインクボールペンを使います。
黒だったら強すぎる罫線もグレーで線を引くとさりげなくて、紙面に自然に馴染んでくれます。私は罫線用として、ゼブラサラサを愛用しています。
3つ折りカレンダーも月と月の境目をグレーでなぞって自分の基準で分かりやすくして、休日や祝日にスタンプを押しています。
1ページ1ページ手を加えてカスタマイズすることで、より深くスケジュールと向き合うことができます。
システム手帳リフィルも以前は様々なフォーマットのものが売られていましたが、それらの多くは横罫や方眼で代用できるものでした。
でもそれらのフォーマットを見て、使いこなしをイメージするのは楽しい。
ほとんどのシステム手帳メーカーが、余分なリフィルを作っていたと自覚したのか、今ではそういった用途を限定したものは殆どなくなってしまいました。
それなら多くの人が自分で線を引くようになるような気がするけれど、グレーのゲルインクボールペンもあまり店頭では見かけない。
でも筆文葉リフィルや、ほかのノートやダイアリーにグレーのボールペンで線を引くことを話したくて、この機会を待っていました。
普段何に使うか分からないグレーのペンにも、立派な用途がある。
万年筆は自分の精神性を表すものだけど、こういった文房具を集めたり、使ったりすることは私にとって趣味のようなもので、こういう話を始めると止まらなくなります。