万年筆は金ペンであってほしいというこだわりを捨てることができなかったために、TWSBI(ツイスビー)を真剣に扱うのが遅れてしまった。
仕入先の株式会社酒井さんにご協力いただき、神戸ペンショーでは毎回ツイスビーを販売していたけれど、店舗ではあまり扱えていませんでした。
でも最近来店される若いお客様方に教えてもらったり、今年の神戸ペンショーでのお客様の反応を見ていて、真剣に扱うべきだと思いました。
若い人や、インクの好きな女性のお客様が、同じくらいの値段なら金ペンの黒金国産万年筆よりも、デザインが楽しそうなツイスビーを選ばれています。若い人は金ペンにこだわっているわけではないので、私が金ペンにこだわっても、時代から取り残されていくだけなのかもしれない。
それが今起こっている現実で、せっかく今の時代に万年筆店をやっているのだから、時代を反映して今のモノも扱うべきだと思います。
それはラメの入ったシマーリングインクや、強烈に光るシーンインクに対しても同じことが言えます。
頑固な店主のこだわりを貫くのも店のあり方としていいのかもしれないけれど、私は当店を平成の遺物にしたくないと思っています。
そう思ったきっかけは昨年10月台南ペンショーの視察のために訪れた台北で文具店を何軒も見て回ったことが大きく影響しています。
どの店も新しい感覚でステーショナリーを扱っていて、12年間私が自分の店の中で奮闘している間に時代は確実に変わっていることを実感しました。
時代から遅れたくないと思いましたし、それを取り入れることで店もリフレッシュされて、長く続くことができる気がしました。
ツイスビーはECOとダイヤモンド580を扱っています。
どちらも軸内でインクがチャプチャプするくらい大量のインク(2ml)を吸入することができるピストン吸入式の万年筆です。
特にダイヤモンド580は、ヨーロッパで古くから作られている万年筆の良いところを参考にしていて、バランスの良い万年筆に仕上がっています。
ECOは今までの万年筆の価値観とは違い、分解用の赤いスパナが付属するなど遊び心に溢れていて、万年筆を気どりのない日常的なものにしてくれます。
万年筆がファッションであるヨーロッパとは違い、万年筆で字を書くことを楽しむ土壌が台湾にはあって、その感覚は日本においての万年筆のあり方に近いような気がします。
万年筆の新しい流れが、アジアを中心に起こっていることの象徴がツイスビーの万年筆なのです。
ペリカンのカジュアルな万年筆も1つご紹介いたします。
ペリカンM205ストーングレー。毎年発売されるインクオブザイヤーと色を合わせて発売される、比較的手に入れやすい価格の限定品で、このシリーズのステンレスペン先の書き味は素晴らしい。
ステンレスなのに柔らかく、ちゃんとペリカンの書き味が感じられます。万年筆ならではの柔らかい書き味がステンレスペン先で味わえるお勧めのカジュアルな万年筆です。
時代は変わっています。
いつまでも古い価値観にしがみついて、自分が良いと思うものだけを世に問い続けることにこだわっても、忘れられていくだけなのかもしれない。
それよりも今の感覚のモノと自分ができることをミックスして世に問う方が楽しく、前向きな生き方のような気がします。