気に入ったボールペンは仕事を楽しくしてくれます。
いつも万年筆をご紹介していますが、書くことを楽しくしてくれるものなら区別せずにご紹介したいと考えています。今回は、ユニットを付け替えると、1本で万年筆にもボールペンにもなる筆記具のご紹介です。
ネットゥーノの「1911コレクション」がその万年筆にもボールペンにもなる筆記具です。
万年筆はスチールペン先で、しっかりした書き味で使いやすいのですが、私はこのペンを敢えてボールペンとしてご紹介します。
このペンは凝った構造のボールペンユニットをつけると、キャップ式の油性ボールペンになります。ちゃんとリフィルを筒に通してセットする仕様で、この一体感や完成度の高さは、もしかしたら不必要なことなのかもしれないけれど、遊び心を感じさせてくれます。
キャップ式の水性ボールペンなら乾燥を防ぐという目的があるので珍しくはありませんが、キャップ式の油性ボールペンということ自体が遊び心があると思います。
回転式やノック式の方がスピーディーに芯を出して使うことができますが、万年筆のようにキャップを回して外し、書き始める方が優雅な感じがしますし、油性ボールペンなのでキャップを開けっ放しにしていても、ペン先が乾かないので小まめにキャップを閉めなくてもいい。
適度な太軸で、このペンなら長時間の筆記も快適に書けそうです。華やかなデザインですが、実用的なものでもあります。
ネットゥーノという名前は、万年筆の歴史の中で、何度も出たり消えたりしてきました。
イタリア、ボローニャにある老舗の万年筆/ステーショナリーの店「ヴェッキエッティ」がオリジナルの万年筆をネットゥーノというブランド名で発売して、それは古く1911年のことだそうです。
ヴェッキエッティのすぐ近くの噴水広場に海王神ネプチューン(イタリア語ではネットゥーノ)像があり、それがネットゥーノの名前の由来になっています。クリップにあしらわれた三又の槍はネプチューン像が掲げている槍がモチーフになっています。
ボディのシルバーのリングには、ボローニャの象徴であるポルティコ(柱廊の歩道)があしらわれています。
もう10年前になりますが、ル・ボナーの松本さん、分度器ドットコムの谷本さんとボローニャを訪ねて、この像を見ました。ヴェッキエッティにも入って、万年筆を買いましたが、今ここでその名前に出会えるとは。
このネットゥーノ1911コレクションは、今はなくなってしまったデルタの雰囲気を感じます。
デルタの元社長ニノ・マリノ氏がネットゥーノのブランド所有者から依頼を受けて製品化したのがこのネットゥーノ1911コレクションで、ニノ・マリノ氏の再起をかけたコレクションでもあります。
デルタは、一時は一世を風靡し、イタリアの名門万年筆メーカーのひとつに数えられるほどでしたが、倒産してしまった。
いろんな事情があったと思いますが、ニノ・マリノ氏の元に元デルタの職人が集まって、デルタらしさに溢れたネットゥーノ1911コレクションをまた作ることができました。
私はニノ・マリノ氏の再起を応援したいと思いました。
個人的な思い入れもあるけれど、このネットゥーノ1911コレクションは、書くこと、仕事をすることを楽しくしてくれる筆記具で、当店はこういうものを紹介したいと思いました。